行為を終えた後に、二人はベッドの上で抱き合っていた。横になり、自身の上にトレーズが覆い被さっている。仄かな薔薇の香りを嗅ぐが、そこで思った。自身は年下故に、トレーズがリードしてくれている。最中であってもそうであった。今思えば悔しさが湧き、トレーズの唇を奪う。悔しかったのだ。あまり、年下扱いをして欲しくはない。
「ミリアルド……どうしたんだい」
「うるさい、黙って接吻されていろ」
口答えをしながらトレーズと何度もキスをしていき、そして体に這わせる手を移動させていった。今は腰や背中なのだが、徐々に首や後頭部へと上っていったのだ。
穏やかなトレーズであるが、やはり体はかなり鍛えられていた。背中の筋肉を指で辿りながら、首に到達した。いつもは整えられている髪がかなり乱れているので、両手でくしゃくしゃにしてやる。するとトレーズがクスクスと笑う。
「何を笑っている……!」
「ふふ、君のその抵抗も可愛らしいと思って」
言いながらトレーズは、自身からのキスを受けていく。その余裕さを崩したいというのに、いつまで経っても崩すことはできない。いつか、自身の体や手、口で戸惑わせてみたいものだ。それで、一種の優越感に浸りたいのだ。
これはトレーズを見下したい訳ではない。あくまでも、普段は見ることのできない様子を見たいだけだ。意外な一面が見たいのだ。
「くそ……!」
キスは止めなかった。このまま舌を吸い上げてやろうと思ったのだが、なかなか挿入するタイミングを窺うことができない。それに下半身が濡れている気持ち悪さが次第に湧き、集中できなくなっていた。なのでトレーズへの攻撃を止めてしまう。反射的にであった。
「そろそろ、シャワーを浴びようか。君も、疲れていることだろう。私が手伝おう」
「いい……!」
意地を張り、トレーズの体を退かせてベッドから出る。そして立ち上がろうとしたところで、急に疲労感が生まれてきた。いつの間にか疲れてしまっているのだ。歯を食いしばり、自らの脚を睨むが、そこで屈んでしまう。
「大丈夫かい」
心配そうにトレーズが掛け寄って来る。その優しさは今はいらない。なので手を払おうと思ったのだが、体が勝手にその手を握ってしまう。どうしてなのか分からなく、心の内で狼狽してしまった。
「違う……! 私は……!」
「いいんだ。いつか、私に素直になればいい」
負けた、と思えた。すると途端に自身がしていたことが恥ずかしくなり、顔が熱くなる。ここまで恥を覚えるのは、トレーズと初めて迎えた夜以来なのかもしれない。
「行こうか。君を早く休ませなければ」
「……あぁ」
それからは、トレーズにされるがままであった。体を抱えられてから広い浴室に連れて行かれ、優しく湯を掛けられていく。長い髪は行為で汚れてしまっているので、撫でるように洗ってくれた。それが心地良く、眠りそうになる。
「さぁ、終わったよ。出ようか」
トレーズのその言葉にさえ、無愛想に返すしかなかった。トレーズを見返すつもりが、いつもの雰囲気になってしまう。自身が情けないと、溜め息をつく。
「大丈夫だよ。君はゆっくりと成長したらいい」
「……!?」
どうやら自身の思考が見透かされていたらしい。目を見開いた後に顔を伏せるのだが、トレーズに顎を掬われたせいで顔が上がってしまう。慈しむようなトレーズの目が、よく見えた。目を垂らしてしまう。
「君は君らしくいたらいい」
そう言ってからキスを受けると、心臓が高鳴る。悔しいが、これは自身の完敗だ。全身を脱力させながら、トレーズと共にベッドに戻った。