黒色から桃色へ

「あ! 家の鍵どったやっちまった! やべぇ!」
 そう騒いだのは、大吾の自宅前に到着した頃であった。玄関まで送ることが習慣になっている峯は、驚きながら「えっ?」と首を傾げてしまう。
「いや、マジで! どこやっちまったかな……あれ……?」
 着ているスーツのあらゆるポケットに手を突っ込み、大吾は焦りながら確認をしていく。しかし自宅のカードキーが無いらしく、大吾が泣きそうな顔でこちらを見た。
「六代目、それではどこかの、ホテルにでも……」
「そうだ峯! 泊めてくれ!」
 同時に二人がそう言えば、互いにきょとんとする。どちらの意見も、食い違うからだ。
「……ん? おい、峯、ホテルだって……?」
「いえ、その、私の家で、よろしいのでしょうか……!」
 峯は顔に大量の冷や汗をかきながら、手を横に振ってしまう。これはどのような意思表示か分からないまま、そう質問した。そこで返ってきた答えは、イエスである。大吾が頷いた。
「お前の家に、そういえば行ったことないんだ。だって、俺の家ばっかだっだろ……?」
 顔がずいと近付き、大吾の整った顔がよく見える。この顔を、平時はおろか乱した様子まで見た仲だ。そのような中で、大吾の言う通りに、自宅に招いたことがなかった。
 すぐに「分かりました……」と言えば、大吾と共に一階に引き返す。その際にエレベーターの中に入って一のボタンを押し、扉が閉まったところで大吾が唇を奪ってきた。
「だ、大吾さん……!」
「なぁ、峯……」
 大吾が熱い息を吐きながら、話しかけてくる。このままでは二人きりになっているときの顔になってしまう。峯はそれに耐えながら「はい」と相槌を打つ。
 エレベーター特有の浮遊感を覚えたところで、大吾が囁いていた。それは、予想外のものである。
「泊めてくれる代わりに、体で払うから……」
 峯としては、何とも魅力的な言葉なのだろうか。そのような言葉を何度聞いても、下半身が疼いてしまう。しかしここは半ば公共の場であるので、舌を強く噛んで意識を逸らそうとした。舌が痛い。それを分かっているのか、大吾にどんどん煽られていく。
「今夜は、どうしたい?」
「………………」
 しばらく沈黙するが、峯は何も思いつかない。
「……分かった。じゃあ、まずは服屋に連れて行ってくれ。女物だ」
「服屋……ですか……? 女物……?」
 これもまた予想外の提案で、思わず舌を噛むのを止めてしまう。ほんのりと鉄の味がする中で、首を傾げれば一階に辿り着いた。エレベーターの扉が開く。
「分かりました。では……」
 フロントに到着した後にエントランスに出れば、自身の車に辿り着く。ドアを開ける前に、大吾が既に開けていた。場所は後部座席なのだが、どっかりと座る。
「ほら、行くぞ」
「はい」
 女物の服屋といったら、幾つかは目処がある。その中でどこに行こうか考えていれば、大吾が口を挟む。
「えっとアレ……あっただろ。女装用の服専門店が」
「じょ、女装……!?」
 あまりの驚きに大声を上げてしまうが、ここは駐車場だ。声がよく響く。だが幸いにも人が居なかったので、峯は胸を撫で下ろした。
「なんだ、どうしたんだ。女装と言っても、お前がするんじゃねぇからな」
「え……?」
 更に驚いていれば、大吾が顎をくいと動かした。はやく運転席に乗れということなのだろう。頷いた峯は言う通りに運転席に乗る。そして振り返ってから、大吾に質問をした。女装用の服専門店が、分からないのだ。
「あの、女装用の専門店とは……?」
「何か探せばあるだろ。新宿二丁目とか……」
 何とも適当な答えなのだろう。しかし大吾の意見には一理ある。確かに、新宿二丁目に行けばあるような気がした。なので車を走らせて、新宿二丁目まで向かった。峯にとってここは、あまり縁が無い場所である。路肩に停車した。
 すると到着と共に大吾が車から出た。峯は急いでエンジンを切って出れば、施錠をして大吾に着いて行く。
「お待ち下さい! 大吾さん!」
 街中では「六代目」など呼ぶ訳にはいかない。なので一般人かのようにそう呼ぶが、正直高級車から降りたものなのだから普通の人間ではないのは明らかである。少しだけ、道行く人々の注目を浴びてしまう。ここが銀座や神室町であれば、そのようなことはなかったのだが。
「適当に探せば……あった。峯、ここに入ろう」
 大吾が指差したのは、明らかに女装をする者が入るような店であった。建物は普通の白塗りなのだが、看板には女装屋などと書かれている。峯は溜め息をつくのだが、そのような店に入る者など珍しく無いのだろう。そこだけは、周囲の人間はこちらの様子など気にならないようだった。
 先に大吾が店に入れば、峯も続く。すると入った瞬間にピンク色がよく見えた。これは売っている服の色なのだが、どうやらドレスのようだ。胸元はよく開いており、直視がどうにもできないでいた。これを、大吾が着ている姿を想像してしまったからだ。ハンガーに掛かっているだけでも、そう思えてしまう。
 豊かで柔らかい胸がよく見えるドレス、想像しただけで興奮してしまう。しかし公共の場で性欲を剥き出しにはしたくないので、またもや舌を強く噛んだ。このままではちぎれそうに思える。
「んー……あ、これはどうだ?」
 すると峯が見ていたそれを大吾が見つけたのか、指差していた。だが峯はすぐに反対をしようとしたのだが、ドレスを凝視した大吾が大層に気に入ったらしい。ハンガーを手に取れば、大吾自身で体に当ててみる。サイズはおおよそちょうどいいらしい。
「これ、いいな! これにするか!」
「いや、他の商品も……」
「だってこれ、お前ずっと見てただろ? これがいい」
 どうやら大吾に、ドレスを観察している様子を見られていたらしい。今更ながらに恥ずかしいと思っていると、大吾がそそくさと会計の為にレジに向かう。
 そこまで来たからにはもう遅いと、峯は諦めながら店から出た。出入り口で待っていれば、紙袋を持った大吾が出てきた。その紙袋の中には、ピンクのドレスが綺麗に畳んであることだろう。大吾の顔を見れば、とても嬉しそうな顔をしているのだが、自身の目の前で女装を晒すことが、そこまで楽しみなのだろうか。
 理由のわからない疑問に翻弄されながら、大吾が車に戻っていく。なので峯も着いて行き、運転席に座った。大吾は後部座席に居るのだろう。そう思いながらハンドルを握り締めれば、隣に大吾が居ることに気付く。いつの間にか、大吾が助手席に座っていたのだ。驚きのあまりに目を見開いていれば、大吾が紙袋を抱えながらシートベルトを締めていく。
「あの、六代目……!」
「ん? 俺がここに座っちまうのは悪いことなのか?」
「そうです! もしも狙撃でもされたら、助かる命はほとんど無いんですよ!? 狙撃者にとっては、格好の的なんですよ!? それに……」
 峯が言葉の続きを言おうとしたところで、大吾が面倒になってきたのだろう。子供のように「分かった分かった」と言いながら、紙袋を握り締める。そして、席を移動する気は無いようだ。
 正直、もう面倒である。なので峯はそのまま車を走らせ、自宅へと向かって行った。現在地から峯の自宅までは、おおよそ二十分程度なので長時間の運転にはならない。なので安堵をしながら、車を走らせて行った。左折や右折の度に、大吾の顔を確認するような仕草をしながら。
 ようやく峯の自宅マンションに辿り着けば、すぐに車から降りた後に施錠をしてからエントランスに入る。フロント入り口にあるオートロックを抜ければ、すぐにエレベーターに乗った。
「峯……」
 湿り気のある声で大吾がそう囁くのだが、峯はやはり動じないようにしていた。このまま大吾の煽りに乗っていれば、人前で性欲を晒すことになるからだ。良くない。裏社会の存在の前に峯は一人の人間である。二人きりの時に、大吾を目一杯愛したいと思った。
「大吾さん、後で……」
 大吾が近付いて来て、そして手を繋いでくる。手の平からも伝わってくるくらいに、脈打っていた。それくらいに、大吾は興奮しきっているのだ。知らない振りをしながら、エレベーターに表示される現在の階数を見るが、真横から自身の名を呼んでくる声が何度も聞こえた。峯が必死に無視をしていれば、ようやく目的の階に辿り着く。
 するとすぐに峯が大吾の手を掴み、ずかずかと部屋に入る。その仕草はとても素早かった。そして部屋に入るなりすぐに大吾の背中を壁に押し付けてから、唇を合わせていく。もう、我慢の糸などばっさりと切ってしまったからだ。
「ん、んん……!」
 喜んでような息を漏らした大吾だが、そこで唇を離すとピンク色のドレスのことを思い出す。今からこれを着てもらわなければならないからだ。
「大吾さん、ドレス、忘れてますよ……」
「あぁ……」
 紙袋をちらりと見た大吾がドレスを取り出すと、まずは自身に渡してくる。そしてその場で服を脱いでいくと、あっという間に全裸になる。股間は既に大きく勃起しており、我慢汁に塗れていた。それが部屋の照明を照らし、ごくりと喉を鳴らしてしまう。
「ん……」
「はい」
 ドレスを渡せば、背中のチャックを開けてからまずは足を通していく。白い肌にピンク色が重なれば、とても綺麗だと思えた。大吾の生足を見ているが、すぐに視線を逸らす。だがすぐにまた生足を見てしまうことを繰り返していた。それに気付いた大吾が、軽く笑う。
 そして肩にまでドレスを通した後に、次は腕を通していく。これは半袖のドレスであるのだが、大吾の太い腕や大きな胸ではぱんぱんであった。サイズが、少し合わないのだ。それに胸の開いている部分には、盛ったかと思うくらいに胸が強調されている。思わず、凝視をしてしまっていた。
 少し不快そうな顔をした大吾だが、最後にと背中を向ければ、チャックを閉めて欲しいということらしい。なので峯がチャックを閉めようとするのだが、胸囲などがあるせいで上手く閉まらなかった。肩甲骨の下くらいまで閉めたところで、諦めてしまう。
「大吾さん……サイズが、合っていません……」
 こう言ったのだが気まずい。視線を逸らせば、大吾がこちらの様子を伺う。上目遣いでこちらを見るので、更に下半身に血が集まってしまう。その顔は止めて欲しいと、心の中で警報を鳴らした。
「な、何でだ!?」
 筋肉のせいなのだろう。そう思った峯なのだが、やはり言う訳にはいかない。どうにも言い辛いのだ。
 なので口を噤んでいれば、大吾がしょんぼりとしながら「俺は太っているのか……?」と呟く。そのような訳がないと心の中で返すと、サイズの合っていないドレス姿の大吾を抱きしめる。
「大吾さん、お似合いですよ」
 これは本心である。なのでそう言った後にキスをするのだが、大吾は不服そうにしていた。サイズが合っていないと言ってしまったのが原因であることは、充分に分かっている。峯は反省をしながら、言葉を考える。
 似合うという言葉でも駄目だったらしい。そうであれば次に思いついた言葉で、大吾を褒めていく。
「大吾さん、この姿はずりぃですよ。ほら、俺のちんこがこんなに……」
 勃起した股間を押し付ければ、そこで大吾は納得したらしい。抱き返してくれると、大吾もまた勃起したものをぐいぐいと押してくる。ドレスの股間部分を見れば、濃いピンク色の部分があった。我慢汁で、染みができているのだ。
「でも、大吾さん、もう少しこの格好を見たいですね」
「ん……そうか」
 大吾が唇を近付けてきた。それに勢いよく食らいつけばぬちゅぬちゅと唇を合わせていき、そして舌を絡め合う。今や慣れた感覚であるのだが、何度してもこれは峯にとっては堪らないものである。脳に性的な刺激が流れ、どんどん思考能力を奪われていく。もはや、大吾を抱くことしか考えられなくなっていく。
「ん、ふぅ……う、ぅ……んん、ん……」
 大吾が息を漏らす毎に、峯の手がどんどん動いていく。抱きしめていた筈の手がまずは大吾の顎に添えられた後に、次に喉をさらりと撫でる。より大吾の息が艷やかになったことを感じれば、大吾の舌を無視してから口腔内に侵入した。上顎をざらりと舐めれば、一瞬だけ目を大きく開ける。驚きもあるが、感じてくれているのだろう。更に上顎を舌で舐めれば、大吾が吐く息が更に多くなる。終いには、唇を離していた。それくらいに、上顎を舐められることが気持ちが良いのだろう。
 何とも大吾が可愛らしい、そう思いながら顔を見ればかなり蕩けていた。顔は赤いうえに目を垂らしている。唇からは唾液を垂らしており、淫らな顔をしていると思ったが、もっと乱れさせなければならない。なので手を伸ばして開いた胸の部分を触った。胸は柔らかく、しっとりとしている。顔を近付けてみれば、大吾の匂いがした。甘く、そして清らかな匂いだ。まるで女神のように見えながら、胸をぺろりと舐める。大吾の体が跳ねた。
「ッう、ん……ん、峯ぇ……」
「どうしました? 大吾さん……あぁ、ここも甘い……」
 胸の谷間ができているのを見て、そこに舌を這わせていく。良い弾力と柔らかさがあり、女の物では得られなかった心地よさがある。そして大吾の匂いで興奮してしまっていると、ベルトをかちゃかちゃと外し始めた。すぐに脱いでしまえば、下半身は下着一枚のみになる。
 ずっと、大吾に煽られ続けていたのだ。それを返さなければならないと、下着までも脱いだ。すると大吾がそれを手で握ってくれた後に「でっけぇ……」と呟く。
「なぁ、峯……」
「どうしました?」
 わざと聞くが、峯は知っている。このペニスを、舐めたくて仕方がないのだろう。なのでそう答えれば、大吾は恥じらいもなく返してくれた。
「お前の、ちんぽ、しゃぶりてぇんだ……」
 卑猥にも程がある。しかしそれが良いのだ。恥じらいを込めながら求めてくれるのもいいが、こうしてストレートに欲のままに求めてくれるのも好きだ。なので笑みを浮かべていれば、大吾自ら膝を着いてペニスに顔を近付ける。そして物欲しそうに見ており、頭をつい撫でてしまっていた。
「俺が、いいって言うまでは駄目ですよ大吾さん」
 まるで犬を躾けるようにそう告げれば、大吾が上目遣いでこちらを見る。サイズの合わない女装にこの光景は、下半身がよく疼いた。何度も熱い鼻息を出しながら、大吾と見つめ合う。何度、この瞳を見ただろうか。何度この瞳と目を合わせただろうか。数などもう数えきれない。そう思いながら、撫でていた頭から手を離す。
「しゃぶって下さい」
 そう言った瞬間に、大吾が素早くペニスを口に咥える。大吾にぱんぱんに勃起したペニスを丹念に舐められ、峯は息を吐いては吸っていく。この時点で、もう耐えられなくなっているのだ。大吾の口腔内もまた、ペニスを気持ちよくしてくれる箇所故に。
「ん、んぅ、ん……ん、ッん、んぶ、んぶ、んぶ……ん……」
 喉奥までペニスが入れば、中は生暖かい。それに柔らかく包みこんでくれる感覚は、腹の中とは違うのだがそこもまた良い。時折に歯に当たれば、舌でぬるりとペニスの裏筋に這わせていく。舌遣いは慣れたもので、峯のペニスの弱いところばかりを責めていく。何度も口淫をしたおかげで、経験値を積んでいるのか。
 大吾と視線が合えば、目尻を細めてくれる。その顔が峯としては興奮する材料にしかならず、ペニスを膨らませてしまった。一瞬だけ大吾が険しい顔をするものの、すぐにまた目尻を細めて笑っている。
 それに上から胸部を見れば、やはり肌がみっちりとしているのが分かった。胸元の開いている布地からはみ出ていた。それのおかげで、胸が大きく見える。先程舐めたところは控えめに光っており、いやらしい見た目をしている。それにこのみっちりとした肌にもっと溺れたいと思った。これをチョイスした大吾が、何ともセンスが良いのだろうか。
 心の中で称賛をしながら、大吾がペニスをしゃぶる光景を上からひたすら見る。時折に顔の角度を変え、ペニスの側部も舐めていく。そして時折に覗かせる自身のペニスは、唾液に塗れて光っていた。
「ん、ん……んんっ、ん、う、んん」
 次第に大吾の目が細くなっていけば、そのまま目を閉じる。ペニスの味をよく感じ、そして味わっているのだろうか。峯はつい「大吾さん、可愛いですよ……」と言うが、嬉しいらしい。少しだけペニスを抜いてから、先端を飴のようにぺろぺろと舐め始める。さすがにここは弱いので、峯は息を何度も吐いては射精感に耐えた。ここは、本当に峯は弱いのだ。
「っぐ、ぅ……! 大吾さん、まだ、そこは……!」
 言葉でも意思を伝えるのだが、大吾は聞こえないふりをしているようだ。次は先端を丸々口に含み、果汁でも飲むかのように吸い上げていった。峯の腰が力強く反れた後に、我慢などできなくなる。そこで大吾の口腔内に射精をするよりも、顔に向けて射精をした方が良い。なので申し訳なく思いながらも、大吾の頭を掴んでから強引に離す。
「っは……みね……」
 大吾は峯の行動を予測していたのだろう。目を閉じたのでペニスを顔に向ければすぐに射精をした。目元や額、そして口の周りを中心に、熱く白い液体が大吾の顔に発射させられていく。大吾は恍惚の声で「あぁ……あつい……」と言っていた。
 射精をし終えると、口元に落ちてくる精液を舌で舐め取っていく。そしてゆっくりと目が合えば、官能的な姿をしているのがよく分かる。サイズの合わない胸の部分が開いたドレスで女装をしており、それに首から上は顔射されたので白い液体が滴っていた。顎を中心に真っ白な精液を垂らす。
「お前の、うまいな……もっと……」
 そう言って再びペニスを咥えようとしていたのだが、このままでは吸い付くされると思った。なので大吾に対して首を横に振った後に、ベットに誘う。このまま、早く抱いてしまいたいのだ。
「大吾さん、ベットへ……」
「ん……だったら、運んでくれよダーリン」
「ダーリンって……貴方もダーリンでしょう」
 大吾の言葉に笑いながら体を持ち上げる。大吾の体は重いものの、鍛えているので幾分かは筋肉で賄えた。どうにか歩きベットルームに到着し、そしてベットの上に大吾の体を乗せる。すぐに、峯もベットの上に乗って大吾の上に覆い被さった。両手首を掴めば、大吾は困っているような演技をする。
「峯、離してくれ……」
「どうしてですか?」
 自身が発する息は荒い。抑えきれない興奮を剥き出しにしながら、勃起したペニスをドレスに擦り付ける。多少の精液や我慢汁が付着すると、良い眺めだと思えた。
 精液が掛かった顔から、重力によりシーツに流れ落ちていっていた。しかし口元に近づく精液を大吾が舌を伸ばして舐め取る。顔を近付け、その舌を唇で捕まえた。そして舌を突き出して絡めれば、再び濃厚なキスが始まっていく。何度も何度も、互いに角度を変えながらキスをした。途中で精液の味がしたが、それは大吾の唾液によって甘くなっている気がする。
 大吾からくぐもった息が漏れると、掴んでいた手首を離してから同時に峯は残りのスーツを脱いでいく。ジャケットを邪魔そうに脱ぎ、ネクタイは乱暴に緩めてから抜き、シャツはボタンの一つ一つのボタンを荒く外していった。
 ようやく全裸になるのだが、大吾は未だにドレスを着ていた。可能ならば、このまま致したいとも思える。なので唇を離してから、ドレスのスカート部分を捲った。先程見ていたので分かるのだが、下着は履いていない。そして下半身は見事に勃起をしており、今の格好には相応しくなかった。それでも良い、峯としては良いのだ。
「大吾さん、本当にお似合いですね」
「ッは、はぁはぁ、は、はぁ……だって、これ、お前が選んだんだぜ……」
 そう言いながら大吾が腰を抱いてきた。このまま来て欲しいということらしい。なので足を開かせてから尻を触る。ここも筋肉があるうえに、硬いと思えた。それでも峯は優しく擦れば、大吾が色っぽい息を吐く。
「っう、ん……んんっ、ア、はぁ……みね……」
「いけませんね、大吾さん。そんな格好してるのに、ちんこがあるなんて」
 上辺だけの注意をしたあとに、大吾の股間を掴む。本来は女の膣に収まるべきの存在は、今は自身の手のひらの中にある。そして垂れてくる我慢汁を潤滑油にしながら上下に扱いていけば、大吾の腰がうねった。やはりここをこうされるのが気持ちが良いらしい。
「ぁ、あ、あ! みね、それ、すき! ァ、あん、ん、そこ、いい! もっと! みね!」
「大吾さん、ちんこをイかせてからですよ」
 つまりは大吾の股間を枯れさせてから尻を弄るつもりだ。そう言えば大吾は首を横に振るのだが、本心は嬉しい筈だろう。なので素早く上下に扱いていけば、すぐに大吾が射精をした。ドレス等に精液を付着させるが、もはや汚れてしまっている。だがそれがそそられた。
「っうぅん! は、はっ、はっ……みね、手を離し……ぅあ!? あっ、ぁ、やめ! みね!」
 射線後ではあるのだが、峯は容赦なく大吾の股間を扱いていく。速度は変わらず、大吾の腰が震えた後にすぐさま二度目の射精をした。自身の手も精液で汚れていくが、それも潤滑油にする。
 三度目の射精を促す為にまたしても扱こうとするが、そこで大吾がイヤイヤと首を横に振った。
「やだ……! 次は、峯のちんぽでイきたい……!」
「だめです。今の大吾さんは女なんですから」
 そう言いながら股間を手のひらでしっかりと擦っていけば、反論の代わりに嬌声が吐かれる。腰を震わせた後に大吾は達してしまったのだが、そこで股間は萎えてしまっていた。
 しかし峯としてはここからが本番だと、口角を上げながら大吾に言う。
「大吾さん、もっと足を開いてください。ここを、気持ちよくさせたいので」
 股間を通り越して尻に精液に塗れた手を伸ばせば、大吾の腹の中への入り口が蠢いた。体は自身を求めているのだ。それが分かれば、すぐに指を突き立てた。大吾が短い声を出し、足を閉じようとした。
「あっ……!」
「だめです。足を開いてください」
「でもぉ……!」
 まだ自身は一度も達していないのだ。大吾の痴態を見ながら我慢していたというのに、このまま長引かせる訳にはいかない。なので大吾の片方の膝裏を持ち上げた後に、肩に乗せる。これで強制的に足を開く形になれば、ようやく指をぐりぐりと更に突き立てていった。大吾の体がうねれば、入り口にずぶずぶと指が入っていく。体は挿入に慣れきってしまったのか、狭い入り口が順応に柔らかくなってくれた。
「っは、はぁ、ァ……みね、そこ……」
「ほら、気持ちいいでしょう? ここも、ほら……」
 ぐぽりと指が入っていけば、そのままずるずると侵入できてしまう。これは、何度も体を重ねた結果であるのではないのかと思えた。それくらいに、体が許してくれているのだろうか。
 指先で粘膜に触れれば、大吾のいやらしい格好が揺れる。ドレスの柔らかな生地が揺れ、そして可愛らし気なピンクも揺れる。萎えた股間まで揺れる。それを見るたびに今まで見たことのない光景だと思えた。こうして、大吾に女装をさせるのは初めてである故に。
「ぁ、あ、まんこ……俺の、まんこ、もっと……!」
「もう、まんこなんて呼んでるんですか? 全く貴方は」
「だって、まんこに指が入ってきて、疼くんだよ……! ムラムラするんだよ……!」
 かなりストレートな言い訳に苦笑をしてしまうと、入れる指を更に増やした。柔らかいままであるので、数本を一気に入れることだってできる。なので何本もの指で、まずは前立腺に触れる。
「ほら、まんこの奥のここ、好きでしょう?」
「はぁ、は……ぁ、ん……ん、はぁ、イく! はっ……っあ! ぁ、あ!」
 そして何度も指先で連続で突けば、大吾の体が様々な方向に捻れる。相当に気持ちがいい証拠だ。なのでそのまま強く潰すように前立腺を押せば、大吾が仰け反り腰を震わせた。空イキでもしたのだろうか。
「……っは、はぁ、ぁ……俺、イっちまったよ」
「ふふ、偉いですね大吾さん、ほら、もう一度イってもらいましょうか」
 笑顔で指を小刻みに動かせば、その振動が前立腺に伝わったらしい。微かに揺れたような気がしながら、大吾がこくこくと頷く。まだ、ここの快楽を求めているらしい。
 次は指で前立腺を軽く挟めば、大吾の喉から苦しげな声が上がる。しかしこれもまた悦んでいる証拠なのだ。峯はよく知っている。なのでそのまま強く挟むと、大吾の腰がまたしても震えた。
「ぁ、あ! イく! っは、はぁあ……!」
 これで二度目の空イキだが、あと何回空イキができるのだろうか。そこだけは未知の領域であった。なので指で腹の中を充分に拡げた後に、引き抜く。腸液が分泌されていたのか、指はかなりぬるついている。それを自身のペニスに塗りたくっていけば、いい潤滑油となった。勃起したペニスがいやらしく光り、起き上がった大吾がそれを見る。
「ぁ、あぁ……エロ……」
「これ、貴方から出た汁ですよ。やらしい汁か、貴方から出たんですよ」
 見せつければ、大吾がしゃぶりたそうにしていた。しかしそうさせては腹の中で締め付けられて達することなどできない。次は腹の中で気持ちよくなりたいのだ。そして大吾を気持ちよくさせたい。
 そこで大吾の体を起こせば、腰を掴んで持ち上げる。自身の上に大吾の体を乗せようというのだ。そこで「俺の上に乗ってください」と言えば、大吾がのろのろと体の膝の上にまずは跨がる。そして肩に手をつけたあとに、ペニスに向かって屈もうとした。ゆっくりと腰を下ろしていきながら、落ちてくるドレスのスカートを捲っている。
「やっぱ、これ、脱がせて……」
「だめですよ。そんなんじゃ、女装した意味が無いじゃないですか」
「お前って、変態だな……」
「大吾さんこそ」
 短い会話をした後に、大吾を抱き締めた。相変わらずいい匂いがするのだが、やはりこれは自身のみを惹きつけるフェロモンなのだろう。そう思えば口角が上がらない訳がない。
 ニヤニヤとしていれば、大吾がずるずると腰を下ろしていく。ペニスの先端に腹の入り口が当たれば、そこで大吾が短く喘ぐ。
「あ、ぁ、ん……!」
 先端がぶつかっただけでも、入り口は収縮を繰り返していた。ペニスを待ち望んでいるのだ。もう男の象徴は今は使い物にならないというのに。
「ここですか、大吾さんのまんこは」
 またしてもわざと下品な言葉を出せば、大吾がこくりと頷く。
「ここ、俺のまんこはここ……はやく、ちんぽでたくさんイかせてくれ……」
 ねだる言葉さえ上手い。興奮が更に高まれば、大吾の体がずるずると下りていく。自然にペニスに入り口が包まれていけば、すぐに根元までずどんと入った。大吾がどっしりと自身の上に跨ったからだ。その反動で急激に中に包まれ、そして峯は達してしまう。すぐに腹の中に精液を注いだ。
「っア! だすの、はやい……!」
「ふ、っう……! 仕方ないでしょう……! 貴方のまんこは、名器なんですから!」
 大吾の鍛えられた太い腰を抱けば、すぐに背中の不動明王に手を這わせる。これにも何度直接触れたのか分からない。そして今の体勢からして無理であるが、何度これに口付けたのか分からない。そう考えながら、肩甲骨のあたりまで手を伸ばす。
「はぁ、は……もっと、触って……俺、峯に触られるの、すげぇ好き……」
「俺も、大吾さんの体を触るのが、好きですよ……」
 不動明王を撫でた後に、腰を揺さぶった。大吾の体が揺れ、そしてペニスが更に奥へと入っていくように思える。中にある精液が動く音が、近くなっていくからだ。
「ん、んッ、ん……ぁ、はぁ……あっ、ア! 奥、好きぃ……!」
 次第に奥へとペニスが誘われていき、大吾の顔が惚けたようなものになっていく。その顔に口付けていけば、またしても深いキスをした。舌を絡め、唾液を絡めていく。大吾が呼吸をする度に胸が膨らめば、胸がまたしても大きくなったように錯覚する。片手で胸を揉んでいけば、大吾がキスの間に空気を漏らした。
 唾液を幾つも、いや顎が濡れるくらいにキスをしたところで唇を離す。その際に腰をまた動かし、そして大吾の体を固定したところでどちゅ、と音が鳴った。腹の奥に到達したらしく、締まり具合が凄まじい。硬度のあるペニスを挿入していても、潰されてしまいそうであった。
「っは……!?」
 空気のみを漏らした直後に、大吾の股間から無色透明の液体が噴き出た。潮を噴いたのだ。自身の体が濡れるが、峯はもう止まらない。何度も何度
下からペニスを突き上げていく。これは子宮かと思えるような締まり具合の腹の奥を貫けば、大吾が何度も何度も甲高い嬌声を漏らす。
 時折に肩をガクガクと震わせていたが、とても良い眺めであった。大吾は女装をしているうえに、股間が萎えた状態で何度も達しているのだろう。
「っあ、ぁ、ん……! ん、はぁ、あ、あ! ァ! また、イく! イくから!」
「はぁはぁ、大吾さんのまんこ、気持ちいい……はぁ、はぁ……っぐぅ! また俺、イく……!」
 体の動きを止めた後に精液を注ぎ込む。腹の奥であるのだが大吾はそれを飲み込んでしまっていた。さぞかし嬉しいのだろう。片手で触れていた背中がうねっている。
「ッあぁ! あつい! みねの、ザーメン、あつい……!」
「は、はぁ、っあ……! はぁ、はぁ、大吾さん……!」
 胸を触れるのを止めた後に大吾の体をぎゅうと抱き締める。露出している肌には大量の汗が乗っており、やはりそれも匂いが甘く思えた。自身の肌で拭き取るように皮膚同士を密着すれば、大吾の腹の奥が更に締まる。大吾は喜んでいた。
「みね……ぁ、はぁ……もっと、ザーメンくれ……」
「ええ、勿論です」
 唇を重ねると、今度は腰を強く揺さぶる。大吾の体のあらゆる部位が震え、そしてぐにゃぐにゃとうねっていく。どこから見ても、大吾の体が美しく思えた。白い肌、艶めかしい曲線を描く筋肉の塊の体、そして甘い匂いの全てが。
 ペニスがよく粘膜にぶつかってくるのか、大吾は甲高い声で喘ぎそして身じろぐ。あまりの快楽に逃げようとでもしているのだろうか。しかし峯が力強く体を抱き締めれば、大吾の体がただ揺れるだけだ。力が入らず屈したのだろうか。
「うぁ、あ、あっ……! そこ、らめ、ぁ! ぁ、っう、ん……! ァん! ん、はぁ、はっ、きもちい……! あ……ぁ、ん、ん!」
「はぁ、はぁ、大吾さん……俺、もう……!」
 腹の奥はあまりにも気持ちがいい。何度も擦っていくうちに、達してしまいそうになる。なので仄めかす言葉を吐いてから腰の動きを止めると、大吾が体を抱き締めてくれた。しかし力は弱く、まるで子供のようだった。そのような大吾の腹の奥に目掛けて、精液を放つ。大吾は中で感じる熱さに、体を震わせながら顔を仰け反らせた。あまりの、気持ち良さに。
「ぁ、あぁぁ! っあ、あ……!」
「っふぅ……ふぅ……ふ……はぁ、はぁ! 大吾さん……」
 峯のペニスが萎えてしまい、結合部が崩れていく。隙間から精液が垂れるものの、二人は尚抱き合ったままである。
「ぁ……はぁ、は……おれ、にんしんしちゃうかも……」
 頭を若干左右にふらふらと揺らした大吾がそう言えば、峯はそれを信じるかのように「えぇ、そうですね」と頷く。
「孕んじまえばいいんですよ」
 そう言って大吾の肩に乗る甘い汗を舐めながら、ピンク色のドレスをようやく脱がせる作業に入った。汗でじっとりとしており、大吾の匂いで充満する。背中のチャックを開けた後にペニスを引き抜き、ドレスを脱がせる。ようやく全裸になった大吾を眺めれば、顔を近付けてから軽いキスをしていった。
 額同士を合わせれば、大吾の瞳が目の前にある。とても綺麗な色をしており、これに代わる美しい物など無いと思えた。
「……次はどのような格好で俺に抱かれたいですか?」
 そう聞いた峯は大吾の女装が気に入っていた。大吾はやはりどのような姿であっても好きなのだ。それを再確認しながら、笑顔でそう質問した。
「すげぇ気に入ってんじゃねぇか」
 弱く笑いながら返事をする大吾を見た峯は、素直に肯定をした後に軽いキスを繰り返していた。大吾の甘い汗が引くまで、何度も何度も。

 仕事中にも関わらず次の女装を考える。だが今は仕事が終わる直前なので、それくらいは良いだろうと。
 峯は生憎にも、何かの仮装でのプレイを異性ともしたことがなかった。単純なセックスしかしたことがなかったのだ。なので先日の大吾とのアブノーマルなプレイを経験し、火が点いてしまった。
 なので次の女装を考えるのだが、クリーニングに出したピンク色のドレスを見つめる。サイズからしてやはり大吾には無理があった。胸の開いた部分からは胸の肉が盛り上がっており、谷間のようになっていたのだ。その光景をもう一度見たいと思ったのだが、また同じのは嫌がられるだろう。なので考えてみれば、そういえば秋葉原ではメイドカフェなるものが流行っているらしいと聞いたことがあった。メイド服、あまり現実で見たことがないのだが大吾で想像をしてみる。まずはフリフリのエプロンにボリュームのあるスカート。スカートは短い方がいいのか長い方がいいのか悩む。しかし肌は露出していた方がいいと考えて短い方を選んだ。大吾の脚を舐めるように見るには最適だろう。
 それならば、と考えていれば社長室に秘書が入ってきた。そこで秘書のスカートの長さをあまり見たことがなかったのだが、そこでちらりと見てみる。長さは膝くらいなのだが、メイド服でミニスカートのようなものはあるのだろうか。それも、男装用だ。調べてみるためにノートパソコンを開くのだが、そこで秘書が確認の為に明日の予定を伝える。明日はそういえば早起きなどしなくてもいい。朝早くから会議が入っていないからだ。安心した峯はノートパソコンを閉じた。不思議そうにみた秘書だが、峯はそれを無視すれば帰る支度をする。家に帰って、ゆっくりと女装用のメイド服を調べようと思ったのだ。
 立ち上がってから、すぐに帰宅していった。
 自宅でノートパソコンを開き、インターネットに接続する。そして検索エンジンで女装用のメイド服を調べたのだが、それなりの数のネットショップがあった。しかしそこで見覚えのある店名が見える。これはたしか、ピンク色のドレスを買った店なのかもしれない。そのネットショップにアクセスした。
 まず見えるのが痛いくらいにあるピンクのハートだ。女装の象徴として掲載しているのかもしれない。それが鬱陶しく思いながら、メイド服を探したらすぐに見つかる。サイズ展開は様々であるのだが、前回はサイズミスのおかげで大吾の胸の深い谷間を拝むことができた。しかし今回は胸元が開いていないメイド服かと思ったのだが、これもまた胸元が開いている。そしてスカートが短い。
 正直、これがピンときてしまった。なので買ってしまえば、購入画面を眺めてはニヤニヤとする。
「これを……大吾さんが……」
 一人でパソコンの前でそう呟くと、峯は大吾のそのメイド服姿を想像したのであった。

 数日後、メイド服が届いた。ごく普通の大きさの段ボール箱に、丁寧に畳んであった。そのうえに中身が見えないように袋に入っていたのだが、それを開けるには勇気がいる。この後、綺麗に畳める自信がないからだ。あまりの、興奮故に。
 あとは大吾を呼ぶだけなのだが、どう言って呼ぼうか悩む。直球で「メイド服がある」はあまりにも下心がありすぎる。では何と言えばいいのか考えるのだが、何も思いつかない。
 しかしそうしていれば、一つの考えに辿り着く。互いに好きであり恋人同士であるのなら、会うことに理由は必要ないのでは。そう思った峯は、携帯電話を開いてから大吾に電話を掛ける。二コール目で通話が始まった。
「もしもし、大吾さん、突然に申し訳ありません」
『どうした?』
「大吾さんに会いたいです。会いに行っていいですか?」
 数秒の沈黙が生まれたのだが、その後に大吾がくすくすと笑った。
『あぁ、いいぞ。だったら、俺の家に来い』
「今どちらに?」
『家に居る。だから早く来いよ』
「はい、すぐに行きます」
 通話を終えると、峯はメイド服が入っている段ボール箱を抱えてから家を飛び出した。そして急いで車に乗り、大吾の居るマンションに向かう。
「大吾さん!」
 すぐに部屋に辿り着けば、到着した瞬間に扉が開く。目の前には、入浴後であったらしい大吾の姿があった。髪を下ろし、ラフな格好をしている。
 家に入れば、大吾からはジャンプーなどの良い匂いがした。
「おい峯……その段ボールは何だ?」
「……メイド服です」
 正直に答えれば、大吾から笑い声が聞こえた。そして「見せてくれ」と言うので、段ボール箱を渡した。開いた大吾なのだが袋があるので、袋の中にあると答える。なので大吾が丁寧に袋を開けていけば、メイド服が見えた。それを取り出し、大吾がそれと峯を交互に見る。
「……お前が着るのか?」
 疑うような顔をしてくるのだが違う。これは大吾にと買ったものだと伝えれば、大吾は更に笑った。メイド服を広げながら言う。
「おう、いいぜ。着てやるよ。シャワー浴びてこい。楽しませてやるよ」
「だ、大吾さん……!」
 峯は心臓を撃ち抜かれた気分になった。言葉だけで、心臓がどうにかなりそうだったからだ。急いで「お借りします!」と言えば、脱衣所まで走る。遠くから大吾の「転ぶなよ」という声がしたのだが、曖昧に答えながらスーツを脱いでいく。
 手つきはかなり荒いものだ。だが大吾の女装姿など、この高価なスーツが破れても釣りは幾らでも出ると思うくらいに嬉しいものである。鼻息荒くしながら床に脱ぎ散らし、そしてシャワールームに入った。その時には既に勃起しており、鏡には余裕の無い自身の顔が見える。
「まだ、目の前には大吾さんは居ない……落ち着け……!」
 言い聞かせながらシャワーを浴びていく。髪は湯を浴びるだけで良いかと思ったのだが、体はさすがにボディーソープを塗りたくるくらいはした方が良いと思えた。なのでそうした後に湯で流せば、すぐにシャワールームから出る。おおよそ、五分でシャワーを終わらせた。
「大吾さん!」
 かなりシュールになるのだが、全裸で脱衣所から飛び出した。大吾の居るベッドルームに向かえば、笑いながら出迎えてくれる。この格好に対して笑っているのは分かるのだが、それよりも大吾のメイド服を堪能したかった。その場に立っている大吾を見れば、きっちりとメイド服を着ている。胸元は開いており、やはり胸を拝むことができた。それにスカートが短いので生足が見えるのだが、しゃぶり尽くしたいと思えるくらいに壮観である。
「だ、大吾さん……!」
「まぁ落ち着けよ。ほら、どうだ?」
「お似合いです……!」
 即答をすれば、大吾がおかしそうに口角を上げる。そしてベッドの上に乗れば、わざと股を開いて座っていた。あぐらをかいたのだ。その時に当たり前のように見えたのだが、下は履いていない。峯は我慢汁を垂らしてしまう。
「お? そんなにいいか? ほら、来いよ」
 理性など邪魔だ。人ではなく獣として大吾を襲いたい。全身を食ってしまいたい。そう思えた峯は、大吾の目の前に座ってから顔を近付ける。まずは、キスから始めようとしたのだ。だが大吾がそれを拒否する。
「その前に、お前のちんこ、俺の胸で扱いてやるよ。好きなんだろ?
俺の胸が」
「勿論です」
 大吾の言葉に対しては人生で一番反射神経が凄まじいと思えた。恐らく、これ以上の返事の早さは無いだろう。そのようなどうでも良いことを考えてしまいながら、大吾の胸を凝視する。先日のように谷間は無いのだが、それでもそそられた。
「では……」
「まかせろ」
 そう言いながら大吾が胸を突き出し、勃起しているペニスに接近する。そして胸が当たるのだが柔らかい。まずは先端の我慢汁を塗りたくるように胸を動かすのだが、いちいち息を漏らしていて「エロ……」と呟いてしまっていた。もう語彙力などない。目の前にあるのは、峯としては卑猥の権化とも呼んでいい存在なのだから。
 胸が我慢汁で濡れば、ごくりと喉を大きく鳴らした。今すぐペニスを擦り付けたい気持ちもあったのだが、抑えながら大吾の頭頂部を見る。大吾の顔はちょうど自身の肋骨の辺りに触れているのだが、漏れる熱い息が何度も掛かっていた。
「ん、ふっ……かてぇな……はぁ、はぁ、ふっ、ふ、ん……!」
 そして大吾が体を上下に動かして、必死に柔らかい胸でペニスを擦り付けていく。我慢汁で濡れているので、よく滑っていた。
「っぐ、ぁ、あ……大吾さんの胸、柔らかくて、気持ちがいいです!」
「はぁ、はぁ、そうか……嬉しいな……じゃあ、もっと気持ちよくなってくれ……はぁ、はぁ……ッふ、ふ……お前のちんぽから、エロい匂いがしてきた……」
 雄臭い匂いの筈なのだが、今の大吾にしては慣れたものなのだろう。敢えてそう言ってくれたのが、興奮を増大させていく。
「大吾さん、煽るのをやめてくださいよ……出ちまうじゃないですか」
「ふっ、こんなことで出ちまうのか?」
「当たり前です」
 この時点で早く大吾を押し倒し、抱き潰したい気持ちでやまやまだ。しかしせっかく大吾がこうしてメイド服を着てくれたのだから、それを堪能したい。それに胸も。
 なので耐えていれば、大吾が顔をこちらにゆるゆると向ける。少し首がきつそうであったのだが、体勢からして峯はどうすることもできない。なので大吾の目をひたすらに見ていた。よく見れば目はとろんと垂れており、可愛らしい。
「そんなに、か、だったら……これはどうだ?」
 すると大吾が頭や体を下げるのだが、何か硬く小さいものに当たった。しかしこれの正体をすぐに分かってしまう。大吾のぴんと張った乳首である。
「っは、は……みね、おれ、きもちいい……」
「ふぅ、ふぅ……大吾さん、俺を、気持ちよくさせるんじゃ、なかったんですか……っふ、う、あ……!」
 硬い感触はペニスによく伝わる。それが乳首だと分かれば余計になのだが、ペニスの先端と乳首がぶつかった。硬い、そうとしか思えなかった。
 互いに体を弱く痙攣させるのだが、その際に峯は達してしまった。豊満な胸に向けて白濁液を噴出させれば、皮膚に感じる熱さに大吾が小さく喘いだ。
「っは……ぁ……あつい……!」
「ふぅ……ふぅ……! 大吾さん……良い眺めですね」
 大吾の胸が白い。それに際立つ白い肌にうっとりとしていれば、先端に残った白濁液を求めて遂には大吾が咥えた。そしてフェラチオをしていくのだが、何とも淫らなのだろうか。こちらを見ながら必死に、膨張しかけているペニスを咥えているからだ。
 口の中はとても熱い。これが大吾の興奮の証拠なのだと感じたと同時に、舌が巧みに責めてくる。先端の発射口を舌先で突いた後に、裏筋を丹念に舐めていった。まるで、清潔にした筈のペニスを舌で掃除しているかのようだ。気持ちが良すぎる。
 ちくちくとする髭や鋭い犬歯が時折にペニスの粘膜に当たるのだが、それですら快感に置き換わってしまう。とうとう峯が唸り声を上げれば、大吾の口腔内に精液を発射した。
「ん、んんぅ!? ん、んぐ……ん、んぅ……ん……」
 驚いた顔をしているが、すぐに勢いよく精液を吸われていく。赤子が乳を飲むかのようにちゅうちゅうと吸い出しているのだが、頬がたまにしぼんでいっていた。下品なのだが、それが更にそそられる。もう一度口腔内に精液を吐き出したくなったのだが、やはり次達するなら大吾の腹の中がいい。そう思えた峯は、無理矢理に大吾の口からペニスを剥がす。唾液の他に、精液が付着していた。
「まだ、峯……」
 大吾が舌でペニスを追うのだが、その動きを封じた後に押し倒す。そして腰を掴んでから四つん這いにさせれば、何も言わなくとも大吾が尻をよく見せてくれる。ミニスカートなのだが、やはり太ももや尻がよく見えていた。
 下着も何も無いので、腹の中の入り口がよく見える。桃色になっているそこは、収縮を既に始めていた。ひくひくと蠢き、たまに粘膜が見える。そこもやはり桃色をしており、性器としか言いようがない。すぐにでも、この肥大化したペニスを飲み込んでくれるように思えた。
「ん、ん……はぁ、峯……峯のちんぽと、ザーメンが、欲しい……だから、来て……ちんぽでたくさん、イきたい」
「ええ、大吾さんのお望み通りに」
 ぬめるペニスでまずは入り口を触れる。次に大吾の太い腰を力強く掴んだ後に、逞しい背中にのしかかった。
「ほら、大吾さん……俺のちんこが、入っていきますよ……」
「あ、あぁ……ちんぽ……」
 呆けたように大吾が呟く。その唇を塞いでしまいたいが、生憎にもこの体勢では届かない。なので首をぺろりと舐めながら、ペニスを入り口に侵入させていった。やはり性器となりつつあるそこは、柔軟に拡がっていき受け入れていく。喜んで、迎えてくれているようだ。柔らかい粘膜に包まれていく。
「ァ……あ……ちんぽが、ちんぽが……まんこにどんどん、入っていく……おっきい……!」
「大吾さんのいやらしいまんこを、俺のちんこでたくさんイかせてやりますよ」
 亀頭がすんなりと入れば、後は勢いよく根元まで挿入した。ぬぽと音が鳴った後に、大吾の体が痙攣していくのが分かる。これだけで、大吾は達したのだろうか。腰を掴んでいる手を前に移動させれば、短いスカートが熱い粘液で濡れているのが分かった。
「っあ……! 峯……!」
「もうイったんですか? ちんこがまだ入ったばかりなのに」
 首の薄い皮膚をやわやわと噛めば、大吾の顎が上に向き始める。何をされても気持ちがいいのか、太ももにも手で触れただけで体がまた震えた。
「あ、あッ……! っぐ、ぁ、あ! 峯、触るなよ……!」
「大吾さんがすぐにイくからでしょう? もう、スカートがザーメンで汚れてるじゃないですか」
 触ってみれば大吾のものはまだ元気だ。なので腰を揺らせば、次第に出していく嬌声を高くしていく。そしてあまりの気持ち良さに、大吾の胸が柔らかいシーツの上に落ちてしまっていた。尻を突き出す形になり、より淫らな体勢になる。
「もっと、ずこずこして……! ちんぽ……!」
「はぁ、はぁ、仕方ないですね」
 腰を再び掴んだ後に、腰の動きを大きくしていく。そして大吾の体を揺さぶっていけば、太ももがガクガクと震える。また達したのだろうかと思いながらも、次はピストンを始めていった。ペニスが出し入れされる度に、腹の中が食うようによく締め付ける。
「ッ! ぁ、あ! あ、ん……! んん、ん! ァ! ちんぽ、ちんぽきもちいい! おれ、みねの、ちんぽすきぃ!」
「だらしないメイドだ……!」
 大吾が吐き出す言葉に欲情した峯は、ピストンを激しくしていく。肌と肌がぶつかり合うのだが、少し痛いと思いながらもやはりペニスで快感を覚える。気持ち良さが勝っていけば、そこで腰の動きを止めて大吾の腹の中に精液を注ぎ込んだ。射精時の快楽を感じながら、大吾の腹を少し膨らませる。
「っは、はぁ……大吾さん、もっと奥、欲しいですか?」
「ん、ん……! おれの、子宮に、ザーメンくれ……!」
「子宮とは……」
 大吾の体に子宮などある筈が無いのだが、ピストンを再開していく。その際にメイド服の背中の部分にチャックがあった。それを下げれば立派な不動明王が見える。それに舌を這わせた。
「ん、んんっ! ぁあ、あ、そこ、だめ……」
 腹の中がより締まる。背中をそうされて嬉しいらしい。なので不動明王にキスを落としていきながら、ペニスをずるずると引かせる。目指すは腹の奥である結腸部分である。ここを責められるのが、大吾は好きであるのは知っている。同時に自身のペニスも喜ぶ。
 曖昧になった結合部が見えるのだが、入り口の縁がずるりと伸びていく。大吾の舌のように、ペニスを追っているのだ。思わず「エロ……」と呟いた後に、腰を強く打ち付ける。衝撃が走り、またペニスが腹の奥を突けば大吾が全身を強張らせた。背中はよく反れ、力強くシーツを握り締める。だが力が入らないのか、すぐにシーツから手離してから全ての指をわなわなと動かしていた。
「っう! う……! ぁ……!」
「大吾さん、子宮まで入りましたよ」
 冷静にそう言うのだが、すぐに興奮が襲いかかる。予告も何もなくピストンを始めていけば、ペニスと粘膜がよく擦れる。気持ちが良すぎて、頭の中が空になっていく。もう腰を振ることしか考えられない。無言で大吾の腹の奥を貫いていく。
「っは……! はぁ、は……! ァ!」
 まともに喘ぎ声すら出せないのだろう。大吾が掠れた吐息を出すのみなのだが、しっかりと感じてくれているらしい。腹の奥の締め付けは最高潮にまで達しており、反射的に大吾の背中の皮膚を弱く噛んでしまった。しかしそれが好かったのか、大吾が一瞬だけ甲高い喘ぎ声を上げる。
「……ぁあ!」
 するともはや峯は種付けのことしか考えられなくなる。そして大吾の口数が減っていけば、あとは二人の荒い息が室内で聞こえるのみ。本当の交尾をしているような気分になる。
 何度も何度も腹の奥を、ぐぽぐぽという音が鳴るくらいに刺していく。締め付けを何度も繰り返した後に、峯が唸り声を上げながら射精をした。精液しっかりと注いでいけば、大吾の腹が膨らんだように思える。ほんの僅かな時間だけ、それを考えた後に大吾の腹を撫でる。不自然に膨らんでいた。
「ぁ、あ……ん」
 膨らみを皮膚で感じた後に、またしてもピストンを始めていく。だがこれでもう精液は今日は尽きると思えた。最後にとどめを刺すかのように、抜けるところまでペニスを引かせていく。
 あまりの奥に精液が留まっているのか、予想よりかは入り口からは流れて来ない。それを観察しながら、一気に挿し込んだ。ばちゅんと大きな音が鳴ったと同時に、大吾は空気のみを喉から出しながら達した。それは長い快楽なのか、数秒間体を震わせている。
「っう……! かは! はぁ……ぁ……!」
 その様子を後ろから見てもかなりペニスに効いた。射精をした後に萎えるのだが、次第に冷静さが脳内を侵食していく。だがそこで大吾の股間を触れば、まだ元気であった。あまりの淫乱さに、峯は恐怖に思えてくる。
「だ、大吾さん……」
「もっと、みね……」
 どうしようか、そう思っていれば後は手淫しかないと考えた。なので大吾の股間を手のひらで包んだ後に扱いていく。垂れている精液を潤滑油にしていくのだが、大吾はなかなか達しない。なので裏筋や玉袋を擦っていけば、ようやく射精をした後に萎えていった。峯は安堵すると、萎えたペニスを引き抜いてから、大吾の体勢を変えさせる。仰向けにしたのだ。
 メイド服の姿をしているが、胸に精液の跡がある。メイド服をよく汚しており、それにスカートの前部分は大吾自身の精液でびしゃびしゃであった。それくらいに何度も果てたのを確認する。
「ん、んぅ……みね……よかったか?」
 疲労感が出てきたらしく、大吾がぐったりとしながら聞いてくる。
「はい……大吾さんとのセックス、気持ちよかったです。それに、楽しめました」
 軽くキスをしていくのだが、自身にも疲労がどっしりと乗ってきた気がした。大吾の体の上に落ちてしまうのだが、互いの唇が近い。なので唇を合わせながら考えた。
 大吾の唇は柔らかく、そして舌はまだ熱い。まだ自身のペニスに熱があるならば、まだ大吾の体を食っているところであった。永続に熱が続いていれば、と少し考えながら大吾の唇を舐める。
 顔を見れば蒸気で頬が赤くなっており、髪は大きく乱れている。だがそれが可愛らしい。
「ん、ふっ……大吾さん早く休みましょう……そのままでは……」
「ん、まだ……」
 疲労もあるが、行為の後の多幸感に包まれているらしい。大吾が控えめな笑みを浮かべながら、腰に手を回してくる。
「分かりました。ですが、もう少ししたら、シャワーを浴びましょうか」
「ん……」
 自身の言うもう少しなど、いつなのか分からない。
 近くにある時計を見るのだが、まだ大吾とこうしていたい。事後の後のこの雰囲気は何にも代えがたいのだ。疲れもあるものの、峯はそう思いながらメイド服をまだ着ている大吾を見ていた。