甘い果実は花弁となりて - 2/2

甘い果実は花弁となりて

情勢が落ち着き、二人が退役できると曹操が判断したのはそれから僅か一か月後である。予想よりも早いと思ったのか、夏侯惇はつい曹操に何度も何度も確認してしまう。曹操はその様子に、かなり呆れていたが。
一か月しか掛からなかったのはとある要因がある。まずは他国間の条約の承認が、思ったよりも早くなったからだ。先日までの戦争により、まずは敗戦国側は自国の復興を優先にしたいらしく。
そして二つ目は、曹操側が敗戦国に対してこちら側が譲歩した条件を出したからだ。他国はそれを飲み込めない訳ではないので、次々と条約が締結されていった。
すると曹操から「退役を希望する者はとある期日までに荷物を纏めろ」という命令が下されたが、二人の他にも退役を希望している者が何人も居た。理由は聞いていないが、大半の者は静かに暮らしたいのだろう。実際に、従軍中よりも収入は大きく下がるが、年齢にしてはかなり早い年金が支給される。決して裕福に暮らせないことはない金額だが、今までの貯蓄があるのであまり心配はない。一斉に退役させるのは大変なので少しずつで、二人は割りと最初の方の順番だった。当日は曹操に勲章を返すとのこと。
だがそれでも期日にかなり余裕がある日程なので、二人はのんびりと小さな旅行鞄に荷物を纏めていった。二人の全ての荷物が少ないからだ。確率からして、いつ死んでもおかしくない職業ゆえに。
同時に、目的地に移動する為の列車のチケットも楽しそうに手配する。だがさすがに住む場所をここからでは決められないので、現地に着いてから探すしかない。二人はそれについては溜息をつくことしかできないのである。
それまでは武器の手入れなどの雑務をすることになった。これ以上は、例えば作戦の会議や警護などに出席はさせられないと。なので二人は雑務をこなしていった。本来はかなり下の階級の者の仕事なので、周囲に驚かれていたのだが。
そして退役する日に二人は軍服から一般的な服装に着替え、纏めていた荷物を持つ。夏侯惇の格好は、遠目から見たら一般人と見えるものであった。普段から着けている眼帯は外しており、潰れて閉じている瞼がむき出しである。たまに軍の者とすれ違うと、夏侯惇のその姿を思わず二度見していた。夏侯惇は軍の者の反応を見て、どうにも言えなかったのだが。
他にも数名退役する者も居る中で、二人はそれぞれの勲章を曹操に返した。曹操は夏侯惇にさえも「今までご苦労だった」と言った後に受け取る。これで、二人は階級の高い軍人ではなく一般人だ。望んだことではあるが淡白な軍人生活の終わりに、二人は思わず夢なのではいかと思っていた。
二人は短い敬礼の後に鞄を持ち、曹操の前から立ち去ると軍の施設から出た。そして向かったのは、すぐそこにあるバス停だ。軍の施設の近くにバス停があるということは、恐らく他の国にとっては不思議なことだろう。街から外れた場所にあるのが普通だからだ。
二人は改めてこの地域の不思議さを感じたところで。バスに乗って十数分の場所にある駅に歩いて移動していく。見渡す限りずらりと建物が並ぶ平和な景色しか見えない立地なので、十分の間に何本も来る。二人は列車の時間のみを気にしながらバスに乗った。
十数分を要して人だらけの駅に到着するが、目的地に向かう列車の出発時刻までは少し時間がある。二人は一旦、構内にある空いているベンチに座って休憩した。二人の間に軽い鞄が二つ並んでゆっくり降りる。大量の一般人が歩いていく光景は、二人にとってはあまり見慣れない。職業からして、一般人が利用する駅にはあまり立ち入らなかったことが原因だ。
二人は自ら望んで軍に入ったが、そこで本当に退役したのだと実感した。口を半開きにしつつも時刻を確認すると、それなりの時間が経過していたようだ。
「……そろそろホームに向かうぞ」
「はい」
再び立ち上がった二人は荷物を持ち、ホームへと歩き出した。列車が出発する三十分も前だが歩幅を小さくしながら向かうと、ホームには他の線路を利用する客で溢れている。それに列車の発着の音で賑やかだ。二人は人混みをひたすらかいくぐる。
これから乗る列車が来る場所のホームに行き、またもや付近の空いているベンチに座る。先程から座ってばかりだと思いながらも、二人は無言で周囲を見ていた。すると他の利用客がまだ列車が来ていないのに並び始めたので、二人は慌てて立ち上がってその後ろに並んだ。やはり、公共交通機関を利用してないせいからか。
その数分後に列車が来ると、前に並んでいる人々が吸い込まれていく。二人も同じように列車内に入ると、前から取っていた席を探して座る。夏侯惇が窓際で、于禁が通路側に。荷物を座席の上の置き場に置くと、二人は手ぶらだ。自由になっている両手で、それぞれが膝や太腿の上に添える。
所要時間は約一時間なので、すぐに着く。二人は列車内から、先程居たホームを車窓から見た。
「……そういえば話していなかったが、着いたらどうする? まだ住む場所が無いから、ホテルに泊まりながら家探しか」
「そうなりますな。ここのように治安が良いので、すぐに見つかるでしょう」
車窓から于禁の方に向くと、夏侯惇は頷いた。すると列車が出発するのか、車内でアナウンスが大きめに響く。二人はそれを聞くと、夏侯惇が車窓の方を再び見た。窓に向かい「これで、お別れだな。孟徳とも、こことも……」と寂しげに呟く。それが聞こえた于禁は、夏侯惇の手をそっと握った。
「別れとは言え、一生ではありませぬ。生きている限りは、再び会えます」
「そうだな」
窓を見たまま夏侯惇がそう返すと、列車が動き始める。最初はゆっくりと走り始めたが、次第に速度が上がっていった。すぐに離れていく街を夏侯惇は視界の端で何とか見た後に、于禁の方へと視線を戻す。視界の端の車窓から見える景色は、案外平和であった。人々が普通に暮らし、歩いているからだ。終戦直後ではないので、火は見えなくとも瓦礫は定期的に見ていたが。
「すまんな、空気を暗くしてしまって」
「いえ、お気になさらず」
「……なぁ于禁。眠たいから、少し寝てもいいか? 着く前に起こしてくれ」
よく見れば、夏侯惇の瞼が重そうにしていることが分かった。列車の揺れにより、はっきりとそれが確認できなかったのだろう。于禁がシンプルに「はい」と答えると、夏侯惇が「すまんな」と言って瞼を閉じた。すぐに于禁の肩に、そっと頭が落ちる。そして夏侯惇はすぐに眠ると、于禁はその様子を見ながら列車の到着をのんびりと待ったのであった。
夏侯惇の言う通りに、列車が到着する前に起こす。夏侯惇は眠たそうにしているので、于禁は「少し休まれますか?」と尋ねる。しかし夏侯惇は首を横に振って断った。表情は微かに笑っており、于禁はそれに思わず見とれてしまう。
「いや、まずはホテルを探そう」
そう言って、于禁の瞳を見つめた。瞳孔の細かい線を一本一本を、まるで漏らさず探すように。
于禁はゆっくりと流れていく車窓からの景色を見ながら提案を受け入れると、列車が完全に停止した。ホームからと車内から聞こえる到着したという、アナウンスが流れてから列車の扉が開く。于禁がまずは立ち上がり、続けて立ち上がった夏侯惇の分の荷物も取るとそっと渡した。夏侯惇は礼と共に受け取ると、二人は列車から降りて駅構内へと移動する。そして短い列ができている受付で、入国手続きを済ませた。
国境を越えても、人の多さは乗る前とほとんど変わらない。大量に流れていく人の波を見ながら、二人は素早く駅から出る。街も同様に活気があった。ここは戦火に見舞われておらず、不法入国した者も居ない。今の時間帯は夕方前なので余計に。
「ホテルを探しましょうか。ここも治安が良いので、どこでも大丈夫だとは思いますが」
于禁は周囲を見ながらそう言う。実際に、二人が今見ている街は綺麗な状態である。ゴミのポイ捨ては無く、歩道や道路に異物が置いていないからだ。行き交う人々の様子まではさすがに分からないのだが、久々に知り合いと笑顔や涙で再会する場面は何度も見かけた。
頷いた夏侯惇は少し考えると「駅から近い場所にしよう」と提案をした。もしも地理が分からないこの街ではぐれても、それがとても分かりやすい目印になるからだ。納得をした于禁は、ぐるりと見渡してどのような外観のホテルがあるのかを確認する。
駅の近くなので高級なホテルからビジネスホテルまである。現在の所持金からして余裕が無いという訳ではないが、高級ホテルは避けようと二人で話し合う。その結果、少し高めの観光客向けのホテルを選ぶことにした。二人は駅構内に戻ると、観光案内所に行く。そして係員にホテルを探していることと、予算を伝えると何件かのホテルのパンフレットを渡された。二人は係員に簡単な礼を告げると、構内の端に移動してから先程渡されたパンフレットを見ていく。
どうやら五件分のホテルのパンフレットを厳選して差し出してくれたようだが、三件まで絞ったところで二人は迷った。その三件は立地も部屋からの景観も良いからだ。夏侯惇が「何日か毎に分けて宿泊しよう」と言ったが、于禁は首を横に振った。あまりに合理的ではないと。
夏侯惇は少し考え直す。家が決まるまで宿泊するホテルを一つに絞る為に、アクセス情報を見直していく。そしてこの中で一番簡単に、ここから辿り着くことができるであろうホテルを選んだ。場所は徒歩で現在地から約十分である。ホテルが決まるなり、二人は早速向かって行った。
二人が宿泊するホテルは、それなりの階層まである。まだできたばかりなのか、外壁も内装も白色で何もかもが真新しい。清潔感という言葉が相応しいだろう。そしてここには一階にレストランがあり、何かあってもわざわざ外に出なくても良い。
更にこの時期は、それより以前に終戦後なのでわざわざ宿泊する観光客は少ない。なので空き部屋はたくさんあり、フロントにチェックアウトがいつになるのかは不明だということと、ルームサービスの類は必要であれば利用すると伝える。ホテルのスタッフは「大丈夫」だという旨の返事をすると、二人はチェックインした。やはり利用客が少ないので、最上階に近いツインルームのカードキーを渡される。夏侯惇がそれを受け取った。
エレベーターに乗ってから部屋がある階層に昇ると、カードキーに記載されている部屋番号を探した。結果、一番奥にある部屋だということが分かる。二人はカードキーの数字と部屋の扉の横の壁に記載されている番号が一致していることを確認すると、すぐに部屋に入った。扉が閉まると同時に、自動で扉にロックが掛かる。二人は部屋のリビングの部分に入った。ホテルの外観と同じように、部屋も全体的に白色が目立つ。
入ってすぐそこに一人用のソファが二つ向かい合って設置してあり、間には小さなテーブル、その奥には大きな窓がある。今はレースのカーテンが閉められているが、その状態でも街がほぼ一望できていた。
ソファに二人はそれぞれぐったりと座り込む。慣れない環境の中を歩き、二人は安堵からか少し疲れたのだろう。退役した直後の軍人とは思えない様子だ。持っていた旅行鞄は、乱暴に床に置く始末である。夏侯惇が持っているカードキーは、小さなテーブルの上に滑らせた。
「夕食は、どうしますか」
「この辺りで適当に済ませよう」
座って項垂れている姿勢になった夏侯惇は、考えることが突然に面倒になったらしい。于禁もほぼ同じ状態なので、夏侯惇の返事に賛成してからソファに深く座った。このソファは柔らかく、体を動かすと想定よりも跳ねてしまうからか。
「……夏侯惇殿、そちらに座ってもよろしいでしょうか」
「ん……」
于禁の言葉を聞くなり、夏侯惇は姿勢を変える。今の于禁のように深く座ったのだ。于禁は立ち上がり、夏侯惇の元に向かうと脚の間に浅く腰掛ける。振り向いて夏侯惇と顔を近付け唇を合わせようとしたが、途端に于禁の腹が鳴った。于禁はあまりの恥ずかしさに顔を赤らめ、視線を大きく外す。
「少し早いが、飯にしよう。何がいい? とりあえず、この中のレストランではなく、外で食うか? 散策がてらにでも」
顎を上げ、夏侯惇は于禁を見上げる。そして于禁の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。空腹であるのに、于禁は心地よさに浸ってしまう。なので夏侯惇は「聞いているのか?」と、于禁の片方の頬を軽く引っ張った。
「ひゃい……」
困った顔で、于禁はそう返事する。夏侯惇はその様子をおかしそうに笑いながら、頬を引っ張ることを止めた。
「だが、特に決まってはいないから、出てから決めよう」
それを聞いた于禁はのそりと立ち上がり、夏侯惇も立ち上がった。二人は床に放り出していた小さな旅行鞄から、財布のみを取り出すと夏侯惇はカードキーをテーブルの上から拾い上げる。そして二人はホテルから出て、街を歩き回りながら夕食を取る店を探していったのであった。
夕食を済ませた二人は、その後は街中をぶらつく程の気力は無い。なのでホテルに戻るとさっさとシャワーを浴び、軽装に着替えるとベッドルームへこの時初めて入る。
夏侯惇は片方のベッドにすぐに横になった。髪を乾かすのが面倒なのか、バスタオルを持っている。しかし于禁は空いているもう一方のベッドではなく、夏侯惇が既に横になっているベッドに乗り上げる。夏侯惇はそれに驚くことなく、于禁も横になれるようにスペースをなるべく空けた。体格の良い男二人が並んで横になると狭い。少しでも手を広げたらはみ出てしまいそうだ。
二人はそれでも、不満の表情を出さずに互いの体に触れてから抱き合う。
「家に置くベッドは、なるべく大きいものがいいな」
思い出したように夏侯惇がそう呟くが、于禁は「今はその話は置いておきましょう」と返す。夏侯惇の体を大胆にまさぐり始めた。
「ゴムは無いぞ」
だが夏侯惇は于禁のその手を中断させる気は無いようだ。軽く笑いながら、于禁の顔を見る。于禁はそれにまるで対抗するかのように、眉間に深い皺をひたすら寄せていたのだが。
「構いません」
すると于禁がそう即答したと共に、夏侯惇は口付けをした。だがいきなり深いものをするのか、舌で于禁の唇を割っていく。于禁はそれをすんなりと通すと、互いの舌がぬるりと絡みあった。二人は夢中になりながら、舌をむさぼる。互いの息が、ずっと掛かるくらいに顔を離すつもりはない。久しぶりに、一年以上の間が空いたが交わることができるからだ。
「ッん、んぅ……ん……!」
夏侯惇の舌が優勢のようだ。そのまま主導権を握ると于禁の胸を触り、揉みしだく。于禁はすぐに舌をうまく動かせなくなったのか、夏侯惇に舌を翻弄されていった。そして上顎を撫でられると、力が急激に抜けて唾液が垂れ始める。それを掬うように、夏侯惇は顔の角度を変えていった。同時に、于禁の胸の尖りに指で触れる。
目を見開いた于禁だが、素早く目を閉じるように細くなっていく。それを視界の端で確認した夏侯惇は、于禁の上に覆いかぶさる体勢へと変えていった。
胸の尖りを指で摘まむと、于禁の体がびくりと跳ねる。特に肋骨の部分が、大きく反れたのだ。夏侯惇は于禁の太い腰を空いた手で撫でると、服を捲っていく。軽装なので捲ることは容易い。しかし服を脱がせるには、キスを中断しなければならない。服を捲っただけでは、邪魔だ。
夏侯惇は内心で舌打ちをしながら舌を引かせ、于禁と唇を離す。
「なぜ……」
何も考えることができなくなった于禁は、目を垂らしながら夏侯惇にそう問い掛けた。とても不服そうであり、唇の端からは唾液がだらだらと漏れる。しかし夏侯惇は何も答えず、于禁の服を脱がせていく。ズボンや下着までも、素早く。
次に夏侯惇も服を全て脱いでいくと、二人の下半身が腹にまで着いていることが確認できた。夏侯惇の笑みが深くなると、自身のものと于禁のものを手で一緒に握る。だが二本とも太く長いので、手で軽く握った程度。それらはかなり熱く、どくどくと脈打っていて卑猥でしかなかった。
「こっちの方が、お前は好きだろう?」
夏侯惇はその二本を手で軽く固定しながら、于禁の体の下にバスタオルを器用に敷いて腰を振る。すると二人分の先走りがぬちゅぬちゅという音を立てながら、擦れていった。潤滑油になっているので、夏侯惇の腰がとてもスムーズに動く。気持ちが良いのもあって。夏侯惇はピストンをするように腰を激しく振っていった。二人分の淫らな喘ぎ声や吐息と、ベッドが軋む音のみが聞こえる。
「ァ、あ、んぐ……は、あぁ、あ……!」
「やめ! かこうとんどの……あ! ひぁ、きもちい、ッぁ、アぁ」
すると二人は体を一瞬だけ小さく震わせた後に、勢いよく射精をする。二人の胸に同じくらいの量の、濃い精液が飛んだ様子を見た。夏侯惇は小さな笑い声を出し、于禁は何も言わずにそれを見る。
「は、ぁん……かこうとんどの……」
于禁は誘惑でもするかのように、その胸を揺らした。いや、正確には胸部を動かしただけである。
胸に散った精液がどろりと垂れ、バスタオルの上に落ちていく。夏侯惇はその様を見てから、于禁の膝裏を持ち上げた。体勢からして久しぶりであるので恥ずかしいと思ってしまった于禁は、脚に力を込める。しかし力が上手く入らないうえに、夏侯惇が力を加えたので簡単に阻止されてしまった。
「どうした?」
開いた于禁の体を舐め回すように見ながら夏侯惇はそう訊ねるが、于禁は「いえ……」と返事を濁す。どうしてなのかと色々疑問に思った夏侯惇だが、下半身に限界がきている。なのでそれは一旦無視してから、于禁の胸を触れて数本の指で精液を拾った。それを入口に持っていくと、指先で精液を塗りたくる。
于禁の片足がベッドの上に落ちたが、夏侯惇はそれを気にしない。
「は……っん、ぁ、あ……」
すると前の感覚を完璧に思い出すように、于禁の腰が揺れ始めた。興奮が収まらなくなり、寧ろ爆発する直前である。しかし入口は硬く閉ざされているので、すぐには興奮の先には行けないのだが。
夏侯惇はその于禁の様子を見るなり、少しでも好くしてやりたいと唇を再び合わせた。于禁から舌を動かすことは難しいので、夏侯惇が先に舌を侵入させて蹂躙させていく。于禁の口腔内を味わうように、隅々まで。すると意識が逸れたのか、指を動かすと入口が緩くなっていく。夏侯惇は舌を動かしつつ、入口を解していった。
指が第一関節にまで入ると、于禁の瞳が潤んでくる。様々な感情が混じり合った結果なのだろう。だが夏侯惇はその潤んだ瞳を見ると、もっと涙を流してやりたいと思ったらしい。入れた指先をぐにぐにと大きく動かし、まずは前立腺を到着させることを目指した。
于禁は久しぶりの異物感に動揺してしまったが、どんどん入っていく夏侯惇の指に期待を覚えていく。快楽や幸福感があるのは、心の奥に深く刻まれたかのように知っている。なので熱く狭い粘膜に触れられる面積が増えていくのを感じた。
順調に進むと、遂に夏侯惇の指が前立腺にまで到達した。そこをすぐに一本の指の腹で軽く撫でてやると、于禁は悦びにより背中をしならせる。
「……ん、んぅ!? んっ、んんー!」
胸を再び真っ白に染めた于禁は、塞がれた口で呼吸をすることが困難になった。顔を真っ赤にする。ベッドを弱くたんたんと叩き、夏侯惇にそれをアピールしていく。気付いた夏侯惇は唇を離すが、指を引き抜く気はない。そのままの状態で、于禁に話し掛ける。
「それだけで降参するのは、まだ早いぞ」
指を少し動かした夏侯惇だが次は前立腺をわざと避けると、その意地悪さに激しい息切れをしている于禁は焦れてしまう。呆けてしまった顔をしながら、夏侯惇に躊躇なくねだる。
「ひ、ぁ、やだぁ! まらで、めちゃくちゃにされたい!」
于禁は堕ちてしまった。
夏侯惇は「待て」と宥めるように言うが、本心では違う。于禁の望み通りに、今すぐにでも抱き潰したくてたまらないのだ。しかし于禁の体に大きな負担がかかるので、入口の縁をゆっくりと拡げていく。その時の夏侯惇の鼻息は、とても荒い。
指がどんどん沈んでいき、根元にまで入ると夏侯惇はすぐに指を増やしていった。一本のみを入れたときよりも簡単に入るので、ずるずると入っていく。于禁は埋まっている指の本数が増えたことにより、腰がより大きく揺れた。夏侯惇により持ち上げられていたもう一本の脚が、シーツの上にぼとりと降りる。だが夏侯惇はそれを見る余裕が無くなったのか、指をひたすら動かしていった。
そうしていると、指を合計で四本まで入れることができた。夏侯惇はもう良いだろうと指をゆっくりと抜き、一度しか射精していない怒張を于禁の入口に宛がう。于禁の入口は、もはや排泄器官ではない。立派な、夏侯惇を悦ばせる為の性器となっていた。縁が弛み、粘膜が収縮を繰り返しているからだ。
一通りの舌なめずりをした夏侯惇は、怒張を于禁の入口に押し込んでいく。だが先端のくびれの直前にまで入ったものの、そこから先は入らなかった。夏侯惇は動きを止めてから、思わず舌打ちを出す。
「……入らないな」
地を這うような声でそう呟くが、于禁はぞくりと体を震わせる。自身でも分からなかったが、夏侯惇の怒張が相当に大きくなっていることだけは理解できた。なので目一杯に突いて欲しいと、于禁は夏侯惇を急かした。欲した。
それで、心が一時的に壊れてしまうくらいに。
「かこうとんの、おっきいまらで、はやくあたまが、おかしくなりたい……!」
それを聞いた夏侯惇は、途端に腰にぐっと力を込めた。無理矢理に怒張を捻じ込もうとしているので、于禁はかなり苦しそうである。だが夏侯惇はそれを無視するとくびれをどうにか埋め、竿全体を一気に打ち込んだ。于禁の口からは声ではなく、薄い空気が吐き出される。
そこで、夏侯惇は止まらなくなった。腰を激しく振り、ぐちゅちゅという音を立てながら怒張で于禁の粘膜を擦る。于禁は体だけでなく粘膜もどこもかしこも熱くなり、溶けてしまうと思った。
まだ根元までは入れていないが、それでも凄まじい快楽を得ていた。于禁は盛大に善がり狂う。
「ひゃ、ぁ! ぁ……あっ、あ、ぁ、ア! イく、イく! ほんとうに、あたまが、もうおかしくなっちゃうから、っや、イぐ、あ、ァ! ぁあッ!」
痙攣の後に于禁の下半身から精液が噴出したが、薄いものになっている。その一方で夏侯惇は于禁の腹の中で射精をしたが、とても濃厚であった。どろりとした感覚に、于禁はへその下を弱く触れ、恍惚の笑みを浮かべる。
しかしそれは、ほんの数秒の出来事であった。夏侯惇は容赦なく、于禁の腹の奥にまで怒張を叩きつけたのだ。おかげで根元にまで入り、二人の肌が強くぶつかる。弾けるような音と共に于禁は瞳が揺れ、涙の洪水が発生した。
夏侯惇は次々と流れていく于禁の涙を見ながら、腰を振る。纏わりつく粘液のような精液を、腹の中でしっかりと混ぜるように。すると于禁の声がすぐに枯れてしまったので、掠れた吐息をひたすらに漏らす。
「っは、ぁ、かこう……ッア……はっ、は……!」
「ぐぅ、あ……! 狭い……!」
顔をしかめ、夏侯惇はそう呟く。于禁はそのような言葉を聞き取る余裕が無いので、与えられる快感に狂い続けた。
何度も何度も怒張で突いていると、夏侯惇はもう一度射精をしたくなったようだ。動きをぴたりと止めると、次は于禁の腹の奥に精液を撒き散らした。于禁はか弱い悲鳴を上げるとつま先をぴんと張り、全身の表面が硬直してからぐったりとさせていく。
その際に于禁も中に出されたので射精をしていたが、とても薄い液体が垂れて萎えていった。しかし夏侯惇はまだ芯を持っているので、そのまま律動を再開する。まるで、獣のように于禁を犯していった。
「めちゃくちゃにして欲しいのだろう?」
夏侯惇はそう言いながら、まだ熱く狭い于禁の腹の感覚を楽しむ。止まらない腰を動かすと、次の射精間が込み上げる。于禁の萎えた下半身がぷるんぷるんと上下に揺れているので、本当に雌のように見えた。そこで于禁の顔をもう一度視界に入れると、涙や唾液で塗れていたのでそれを見ながら射精をした。直後に夏侯惇が呻き声を吐くと、于禁の中がより一層狭くなったのが分かる。
ようやく夏侯惇の怒張が萎えると腹から引き摺り出す。共に出した精液が流れると、バスタオルの広い範囲を汚した。夏侯惇はぼんやりとし始めた于禁をそっと抱き締めると、優しいキスをする。
「かこうとんどの、すき……」
于禁が声を絞り出してそう言うと、夏侯惇は微笑んだ。先程の、獰猛な様子が嘘かと思えるくらいに。
「俺も好きだ」
そう返した夏侯惇は、次第に冷静になっていく。すると汚したバスタオルのことで頭が一杯になり始めた。だが、于禁を隣の空いたベッドで休ませることを優先にした方がいい。そう考えた夏侯惇は、于禁をゆっくりと起こしていく。
まずは于禁の体を綺麗にしてなければという思考を過らせていると、気を失っているのが分かった。夏侯惇は暗い表情で于禁の体を、肩を貸す形で持ち上げてから浴室へと運んで行った。
于禁をベッドに寝かせると、今にも眠ってしまいそうだ。夏侯惇は眠気を更に促すように、縁に座って于禁の額を撫でる。そこで何かを思ったのか、冗談交じりに言う。
「……もしも住む場所が見つからなければ、傭兵にでもなるか? 俺たちなら、それで食っていけるだろう」
すると横になっていた于禁は「違う」と無理矢理に体を起こす。夏侯惇の驚いた表情が見えたが涙により視界がすぐに霞んでいき、溺れていった。夏侯惇に、弱い反対の言葉を向ける。
「他の国にとっては、今まで奪う立場であった私が言うべきではありませぬが、戦争は、もう……」
溺れたまま沈んでいくが夏侯惇が体を引っ張るように、額を撫でていた手がいつの間にか流れていく涙を掬っていた。そして「すまん」と一言だけ言うと、于禁をそっと抱き締めていたのであった。

次の日の朝、どすんという音により于禁は目を覚ました。瞼を開けると見たことのない景色が広がっている。それに服を何も着ていない。于禁は何が起きたのか分からないので起き上がろうとしたが、腰の痛みにより断念してしまう。だがそこで、夏侯惇との性行為を思い出し赤面した。
「……于禁!? おい、大丈夫か!?」
髪がぼさぼさになっている夏侯惇が、覗いてくる。そこで于禁はベッドから落ちてしまったことが分かると、寝ていたであろうベッドに戻ろうとした。しかし腰の痛みにより体が上手く動かせないので、いつの間にか同じ目線に居た夏侯惇に支えられてベッドへと戻されていく。
「今日は一日休もう。明日、家を探すぞ」
「申し訳ありませぬ……」
丁寧にシーツを掛けられながら、于禁は悔し気な顔をする。喉は昨夜と変わらず枯れており、声が出しにくい。なので夏侯惇が「止められなかった俺が悪かった」と言うと、于禁の顔が鮮やかな赤色に変わっていった。夏侯惇はそのような状態の于禁の頭を撫でると「いいから休め」と、命令するように告げてから部屋の冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターのペットボトルを見せる。開封だけしてあった。于禁は声を出すことが辛いので、それと夏侯惇を交互に見てから素直に頷いたが。
だが結局は、昼を過ぎると于禁はベッドから出られるようになっていた。元軍人なので、体力が一般人よりもあるからだろう。夏侯惇に心配されながらも服を渡され着ていく。そして一階にあるレストランにて食事の後に部屋に戻り、再び于禁はベッドの上で休んでいたのであった。そこでふと夏侯惇は汚れたバスタオルをどうしたのか気になったが、聞いて良いのか分からないでいて。

そしてまた次の日の朝に、于禁は体をまともに動かせるようになった。二人は別々のベッドに寝ていたが、于禁が夏侯惇のベッドに乗り上げる。すると夏侯惇が「次は手加減をする」と言うが、于禁はそれを頑なに断った。今は普段の声に戻ったことを確認しながら。
「いえ、それはなりませぬ」
「だがな……」
夏侯惇が言葉に迷っているのが分かる。そこで于禁はこれ以上は話題を続けても、平行線を辿るだけだと考え、話を変えた。今日、この街に住む為の家を探すことだ。
「そういえば家は、どのあたりの地域がよろしいと思いますか?」
「……分からん」
ほとんど何も決めていないので、夏侯惇もそこまでは考えていなかったらしい。于禁はその答えに思わず吹き出してしまいそうになったが、どうにか堪えてから話を続ける。
「まずは治安の良さそうな場所を探しましょう。移動手段は、電車でよろしいでしょうか」
「ああ、そうしよう」
本日の行動方針がすぐに固まると、二人は身支度を整えてからホテルを出た。今日は平日であり、まだ午前中だ。通勤途中の歩行者をまばらに見かける。二人はそれを横目で見ながら駅構内に入り、一つ隣の駅まで電車で移動した。駅から出るが、ホテルがある駅周辺とあまり景色が変わらない。ここも同じく歩道もどこも、綺麗に整備や清掃をされているのだ。道行く人々は、挙動不審な様子とは程遠い様子。
だが違う点が幾つかあり、文化的に恵まれていることだ。美術館や図書館、それに映画館が最初に来た駅周辺よりも多く見られる。二人にはあまりそのようなものに縁が無かったので、珍しそうに見ていたが。
二人はこの国の中であればどこでもいいのではないかと思い、ここでまずは家を探すことにした。一軒家ではなくマンションだがすぐに見つかると思いながら、不動産へと足を運んだ。
不動産屋は二人の職業を聞くが、元軍人だと聞いた途端に驚いていた。身分証明書を持ち歩いているが、今は一般人だからだ。しかし今まで稼いで貯蓄している大まかな金額や年金のことを説明すると、支払い能力があると判断してくれた。不動産側は様々な物件を紹介する。だが選択肢がありすぎて、二人は困惑してしまった。ぼんやりと、治安が良い地域で家を見つけられたら良いと思ったのだ。
結果、少しずつ内見をさせて欲しいという答えを二人が告げると、不動産側はそれを了承した。そして早速、三件ほど内見に向かうことになる。どれも二人が希望しているマンションであり、なおかつここから徒歩で行ける距離だ。なので二人とそれに不動産屋の従業員と共に移動していった。
この日の夕方まで日中を費やして三件の内見をしてから、不動産屋に戻って行った。そこで夏侯惇は紹介されたものの中から良いと思うものが見つかったらしい。見取り図などが記載してある紙を、于禁に見せた。しかし于禁は首を傾げるので、夏侯惇は改めてこの物件の何が良いのかの説明を始める。
かなり抽象的ではあるが、日当たりが良いことと駅から近いことだ。それに部屋の広さに余裕があり、不動産屋曰く「この辺りが一番治安が良い」とのこと。
于禁はそれを聞いてから頷いた後に、内見をしていた時を思い出す。確かにそうだと納得すると、夏侯惇の意見に賛同した。それを不動産側に伝えると、早速手続きを踏んでいく。しかし今すぐに入居はできず、遅くとも一週間は掛かると不動産側から説明を受けた。だが入居できるようになれば、ホテルづてに連絡をしてくれるとのこと。
二人はそれに反論は無いので、契約書にサインを書いてから不動産屋を出る。このときにはいつの間にか、陽が沈んでいた。
「もう夜か。早いな……飯はその辺で食おう。周辺の散策も兼ねてな」
「はい」
二人は暗くなった空を見てから、明るい街を見ると夕食を済ませる為に街中を歩いて行ったのであった。
不動産屋から連絡が来たのは、それから二日後のことである。二人は電車に乗り、他の駅に降りてのんびりと観光をしていた。その帰りに、フロントから連絡があったと告げられる。だが今は夕方なので、明日に不動産屋に行くことになった。

次の日の朝に、二人はホテルをチェックアウトしてから不動産屋に来た。新居へと移動して従業員の案内と共に鍵を渡されると、従業員は契約の礼の後に去っていく。二人は、家具も何もない部屋を見た。
部屋はリビングとダイニングキッチンと寝室があり、二人で住むには丁度よい。まだ空っぽの部屋を眺め、于禁はぽつりと呟いた。
「家具を買いに行きましょうか」
「あぁ。だが、ベッドが優先だ。大事だからな」
于禁は夏侯惇のその言葉が、空耳かと思ったが違う。すると夏侯惇は聞こえなかったのかと思ったのか、改めて言うので于禁は「分かりましたから!」と顔を赤らめる。
「分かったのなら早く買いに行くぞ。これが最優先だ」
ニヤニヤと笑いながら夏侯惇が于禁の腕を引いた。于禁は再度「分かりましたから!」と返し、腕を振り払おうにも振り払うことができない。すると夏侯惇の現在の表情が強まるのを見て、于禁は何も喋ることができなくなると判断したのでようやく腕を振り払う。
「……さぁ、い、行きましょう! 生活用品を買いに!」
于禁の顔が硬いと思える程に口がぎこちなく開きながら、玄関へと向かおうとする。夏侯惇は何も言わずに着いて行くと、玄関前で背中を向けている于禁に抱き着いた。唐突のことに驚いた于禁は前のめりに倒れそうになったが、夏侯惇がそれを支えていたのでどうにか防ぐ。相当に、夏侯惇の抱き着く力が強い故に。
「待て。ここはもう俺たちの家だ。出る前に、しなければならないことがある」
夏侯惇の抱き着く力が弱まると于禁は何か分かったのか、体の向きを変えた。夏侯惇と顔を近付けるが、そこでこれが正解なのか分からなくなる。鼻と鼻がぴったりとくっつきそうな距離で止まると、夏侯惇は緩やかに口角を上げた。于禁に「惜しい」とでも言うように。
その夏侯惇の様子を見た于禁は、悔しいと感じてしまう。なので自身で導き出した答えの通りに、夏侯惇にそっとキスをした。
「正解だ」
抱き着く力を元に戻した夏侯惇は、于禁と体を密着させる。まるでまだ片思いの相手と話しているように、心音がうるさかった。
「わ、分かりましたから、ベッドを買いに行きましょう!」
夏侯惇の拘束を無理矢理に解いた于禁は、玄関の方を向く。耳を触れたら熱いくらいに、ほんのりと朱色になっている。夏侯惇はその耳を見ながら「ああ」と短い返事をして、于禁と共に玄関を出た。すると二人は同時に、この瞬間が今までで一番幸せだと思いながら街へと向かう。そのことは互いに言わなくとも分かると思い、触れなかったのだが。
平日でも人で溢れる街中を歩くと、道中に家具屋が大量にあった。二人はベッドを選ぶ以前に、どこの家具屋に入れば良いのか迷ってしまう。なので二人で幾つも家具屋を見つけては、素通りしてしまうことを繰り返していた。溜息をついた夏侯惇は、きりがないと思ったらしい。次に視界に入った家具屋に入ろうと提案すると、于禁は勿論だと頷く。
そして数分歩いた地点で、本日で何店目か分からなくなった家具屋を見つけると二人はそこに入った。他にも客がいる中で二人は店内を歩いて行くと、目当てに近いベッドが見つかる。キングサイズよりも大きな、ワイドキングサイズのベッドだ。これは組み立てて使うものらしく、既に組み立ててある見本の隣に並んでとても大きな段ボール箱が積んである。
二人はこれが良いと思ったのか、ほぼ同時に即決の言葉を出した。互いにそれを聞くとおかしそうに小さく笑ってから、カーテンや一番無難な色である白色の寝具を数セットと一緒に購入する。そして今日の午後、家に届けてもらうように店に手配を依頼した。結果、午後の四時に到着することになる。
二人が店を出た頃には、時刻は昼になっていた。空腹を感じたので、適当に歩いて飲食店を見つけると昼食を済ます。まだ飲食店からは出ていないので、次に何を揃えるか于禁が夏侯惇に質問をした。しかしベッド以外は何も考えていなかったらしい。考える素振りを見せた後に、于禁へ答えを示した。
「分からん」
「分からない、とは……」
于禁はがっくりと項垂れる。対して夏侯惇は、自身の答えにおかしい箇所は無いと思ったらしい。首を傾げる。
「……では、于禁。後はお前に任せよう。ベッドが来る、四時前になるべく決めるぞ」
楽し気な顔で夏侯惇がそう言うと立ち上がる。そしてテーブルの上に置かれた注文伝票を持つとそのまま会計しに行った。僅かに何を買うべきか考えていた于禁はそれに気付く。慌てて追いかけるが、夏侯惇は素早く会計を済ませていた。店の出入口で于禁を待っていたからだ。
「遅いぞ。何をしている」
于禁の背中を、夏侯惇がバシバシと軽く叩く。そしてスキップでもするかのように、于禁と共に街中を再び歩いて行った。
夕方の四時になる直前に、二人は帰宅した。日がもうじき暮れるので、リビングや寝室に照明を点ける。
それぞれの両手には、最低限の生活用品が入った買い物袋などを抱えている。途中でたまたま見かけたスーパーを見かけたので、明日の昼の分までの食料も入っていた。
二人は慎重にそれらをリビングに置いていくと、ちょうどインターフォンが鳴った。于禁が応対の為に出ると、相手は配送業者である。午前中にベッドを買った店の名前と、二人の名前を確認の為に告げたので于禁はそうだと頷いた。
その直後にベッドの入った段ボールや寝具などを、配送業者が部屋に入れてからすぐに立ち去る。次の予定があるらしい。
二人は丁寧に床の上に置かれた段ボールを開き、早速に組み立てていった。
説明書にはかなりの力が必要だと記載してあったが、二人としては容易いことであった。説明書の予想の組み立て時間よりも早く完成すると、部屋の全ての窓にカーテンをつける。
するとシーツなどの寝具を敷いた夏侯惇がベッドに横になっていた。于禁はその近くで組み立てた後の片付けをする。それを見てつまらないと思った夏侯惇は、于禁の服を弱く引っ張った。
「おい于禁。シャワーを浴びるぞ」
「ですが……」
「早く」
夏侯惇から出てくるプレッシャーにより、于禁はそれに簡単に負けてしまった。なので夏侯惇が立ち上がり、全く手を付けていない脱衣所へと入っていく。
何もない床に、夏侯惇は服を乱雑に脱ぎ散らした。だが于禁は手が止まっているかのように遅いので、既に下着のみの姿になっている夏侯惇が急かす。于禁の服の裾を掴み、早くと促しながら。
「早く」
于禁がふと夏侯惇の下着姿を見ると、大きく盛り上がっているのが見えた。それも、かなり狭そうにしている。だからこれ程に急かしているのかと理解したが、自身の下半身も真似をするように同じ状態になっていく。次第に我慢ができなくなってきた于禁は、夏侯惇の言う通りに服を次々と取り払っていった。
同様に下着のみの姿になると、夏侯惇は于禁の膨らんでいる部位に触れた。于禁の肩がびくりと跳ねるが、ここは負けじと夏侯惇に仕返しをする。しかし反応は于禁とは違い、嬉しそうにしているだけであったが。
そこで夏侯惇が于禁に聞く。
「……今日は、お前がやるか?」
ぽかんと于禁は口を開き、疑問の様子を見せた。だがすぐに口を閉じると、慎重に言葉を流していく。
「はい……ですが、よろしいのですか?」
「ん? 何だ? 度々に、俺に了承を取らなければならないのか?」
首を素早く横に振った于禁は、返事を忘れてしまったまま夏侯惇の唇を食うようにむさぼる。夏侯惇は抵抗も特に無く、寧ろ受け入れるように于禁の体を寄せた。背中へと手を回していく。
寒い時期であるのに温かい肌に、微かな安心感を得られる。しかしその肌の熱は、次第に火のようになることは分かっていたのだが。
唇を合わせた直後の于禁は、舌を丁寧に這わせていく。夏侯惇の顎髭がチクチクとするが、そのようなことなどは気にならない。于禁は夏侯惇の唇を夢中になって舐めた後に、口腔内へとぬるりと侵入させていく。
「んっ……ん、ふぅ……ぅ……」
舌が緩く絡むと、夏侯惇は気持ち良さげな吐息を隙間を出す。間近でそれを聞いた于禁は、そのような様子が嬉しいのか深く絡めていった。夏侯惇の一つの瞳が揺れると、着実に濡れていく。すると于禁が射精をしてしまったので、夏侯惇と未だに唇を合わせたまま器用に下着を降ろした。グロテスクという感想が相応しいほどに、バキバキと血管が何本も見える。そして色は赤黒い。
すると背中に夏侯惇の爪が立った感覚を拾う。自分の分も下着を降ろせと言いたいのだろう。于禁は精液で汚れた下着を見ながら、夏侯惇の下着に手を掛けてから降ろす。射精こそしていないものの、先走りで塗れていた。
もう限界だと思った于禁は、夏侯惇と顔を離してからまだ生活感の無い浴室へと入っていく。シャンプーやボディーソープの類を買っていたが、リビングに置いたままの買い物袋から出すことを忘れていたことを思い出す。だが今はそのようなこともどうでもいいので、シャワーヘッドからぬるま湯を出した。夏侯惇と共に、徐々に暖かくなっていく湯を頭から被る。
全身がずぶ濡れになると出していた湯を止めた。夏侯惇を壁に追いやってから、于禁は先程の続きをするかのように口付けをする。待ち構えていたかのように夏侯惇が口を半開きにしているので、于禁はそこに舌を捻じ込む。ここは浴室なので二人分の唾液の音と、既に荒い息がよく聞こえた。于禁はそれらに聴覚を侵食されながら、何度も何度も夏侯惇と唇や舌を合わせる。
そこで手が自由である夏侯惇が、于禁の雄を弱く握った。于禁の肩が震えると負ける訳にはいかない、あるいはそのような暇を夏侯惇に与える訳にはいかないと強く考える。なので舌を伸ばして上顎を満遍なく這わせ、歯列を優しくなぞった。すると夏侯惇の手が握る力が多少は落ちたのか、于禁の雄に手をただ添えるだけになる。
「ッは! はぁ、あ……はっ……」
于禁が一旦唇を離すと、夏侯惇の呼吸が整っていないことに気付く。于禁は多少は治まるところを待つように、夏侯惇の首に唇で触れた。喉仏の凹凸を楽しむように遂には舌でも触れると、夏侯惇の喉から呼吸とは別の音が鳴る。
「ぁ、はぁ、ん……」
性感帯に刺激されたかのように夏侯惇の淫らな声を聞き取った于禁は、舌を喉仏から鎖骨へと移動した。ここは薄い皮膚しかないので、いつかの日のように口で軽く赤い痕を一つつける。すると夏侯惇は弱い射精をして、自力では立っていられなくなった。于禁は唇を離してそれを支えながら、浴室の床に座らせる。
于禁はそのような夏侯惇を、説得するように話しかけた。
「続きは、ベッドの上でしましょうか」
「ん……」
表情をとろりとさせた夏侯惇は、瞳だけを于禁に向けてから返事をした。今は于禁とただ交わることしか考えられないのか。それを確認した于禁は夏侯惇を優しく持ち上げると、バスタオルですら準備していないことを思い出しながら浴室から出る。
だが買ったばかりのベッドを駄目にする訳にはいかないと、于禁に少しの冷静さがあった。なので夏侯惇を抱えて床を濡らしながらリビングに向かうと、最初から袋に詰められているバスタオルを何枚か取り出す。
夏侯惇を濡れた猫を拭くようにバスタオルで撫でてから、于禁自身も別のバスタオルで水気を取っていく。残りのバスタオルは、ベッドの真新しいシーツの上に敷く為に手に持った。
照明を点けたままの寝室に辿り着くと、于禁はベッドにバスタオルを敷いてから夏侯惇をその上に乗せる。発情が抑えられないのか、夏侯惇は自ら脚を震わせながら開く。恥部が全て露わになっており、竿からは未だに精液が垂れている。
「すき……うきん……」
于禁はその姿がとてつもなく愛しく、そして官能的だと思えた。すぐに夏侯惇の上に覆い被さる。
「……成程。では貴方も、私のようにゴムは必要ありませぬか」
眉間の皺を緩めながら于禁がそう聞く。しかし夏侯惇は無言である代わりに、開いた脚を于禁の腰に巻き付けた。上半身が重くなった于禁は、そのまま夏侯惇の見た目よりも柔らかい胸に顔を押し付けられる形になる。すると于禁は顔を上げながら、その胸を両手で揉み始めた。
「っ! あ……はぁ、ん……んっ、あぁ、あ……」
弱くなってしまっているそこを弄られ、夏侯惇は腰を揺らしてしまう。それを見逃さなかった于禁は次にと手の代わりに舌で夏侯惇を可愛がる。直後に腰に巻き付いていた夏侯惇の脚を降ろしながら、尖りをしゃぶった。そして空いた手で夏侯惇の竿に触れるが、あまりにも熱いので僅かに触れたのみである。夏侯惇が少し残念そうな顔をするが、于禁はすぐに腹につくまでに勃起している竿を強く握った。夏侯惇の体が、ベッドの上で勢いよく跳ねる。
「ゃあ! あ、ぁア、ぅ、あ!」
于禁はその夏侯惇を抑えるように、次は竿を扱いた。すぐに精液が噴き出てから手に付着すると、于禁はそれを少量だけ口に運ぶ。気のせいか果実のように仄かに甘いと思うと、余った精液を指先に絡めてから夏侯惇の尻に持っていく。ぬちゅり、という音と共に挿入口に于禁の指先が立つ。
その感覚から期待の眼差しを向けた夏侯惇は、胸をしゃぶられながら于禁に尻を解されていく。
「う、ぁ! アん、んっ、はぁ、ァ……むねも、しりも、きもちいい……」
于禁の予想通りに夏侯惇の体温が上昇して、火のように熱くなってきた。だが感じ慣れているであろうものとは、今回は違うように思える。その熱で燃えてしまうのではないかと、初めて思ったからだ。どこの皮膚も、そして粘膜も。
指先を順調に入れていきながら、于禁がそう思っていると甘い熱に囚われ過ぎたようだ。つい指先が前立腺に当たると、夏侯惇は嬌声を上げる。
「ひゃ、ぁ!? ぁ、やぁ、あ! ァん、ん……!」
膣のように強く締まり、于禁は指が千切れるかと錯覚してしまった。しかし夏侯惇は更に求めているのか、于禁の背中に手を震わせながら回す。肩甲骨や背骨を弱々しくなぞられたが、于禁にとっては煽られているようにしか思えない。恐らく夏侯惇本人は辛うじて于禁の肌の、どこかに触れたいだけかもしれないが。
それを知らない夏侯惇は、于禁の呼吸の雰囲気が変わったような気がしていた。それを口にしようとしたが、于禁が指摘を止めるように入れる指の本数を増やす。すると夏侯惇から、まともな言葉が出なくなる。
「っや、ん、ぅん……そこ、うきんの、ふといちんこで、ずこずこしてぇ……!」
出たものの知能が極めて低いが、于禁にとっては理性を壊す呪文のような存在となっていた。胸の尖りに軽く歯を立てながら前立腺を強く押すと、夏侯惇は体を反らしてもう一度射精をする。夏侯惇の体がびくびくと震えるが、于禁はそれを無視して指の動きを大きくしていった。口に含んでいる夏侯惇の胸の尖りが、僅かに腫れてきていると思いながら。
次第に夏侯惇の挿入口や粘膜が弛んでくると、于禁は指を引き抜き胸から唇を離す。夏侯惇を見ると少し前の自身のように、種付けを待っているように見えた。
その夏侯惇の脚をがばりと開くと、その間に于禁は体を密着させる。互いの興奮しきっているものが、時折に触れていた。
「貴方のお好きなものですよ、ほら」
挑発するように、挿入口の辺りを雄でぬるぬると擦る。先走りが付着すると卑猥な水音が鳴り、夏侯惇の興奮をより一層大きくさせたようだ。勃起している下半身が腹に付いたままである。
「ぁ、らめ、じらさないで……はやく、すきなうきんの、おっきなちんこがほしい……!」
「仕方のない方だ」
于禁はわざとらしくため息をつくと、雄の先端を挿入口にキスをするようにぴたりとつけた。
硬い雄がそれなりに柔らかい粘膜に密着すると、于禁はそこから雄をぐいと押し込んでいく。夏侯惇から喜びの悲鳴が聞こえる。于禁はそれを大きくしようと雄の先端のくびれまで、一気に捩じ込んだ。直前に夏侯惇が苦しそうな様子を見せていたが、くびれまで埋まると嘘であったかのように蕩けた顔に戻っていく。
「ぁ、っは、ちんこが、くる! うきんの、ちんこ!」
より早く挿入を促す為に、夏侯惇は腰を振る。そのねだりを見ながら、于禁はただ一言「愛しております」とだけ放ち、根元まで一気に挿入した。
夏侯惇は何が起きたのかは分からないが、気持ちが良いということは分かったらしい。背中を大きく反らし高い悲鳴を上がったので、于禁は締まりの良い肉の中をゆっくりとピストンをしていく。
「……はッ!? あ、ぅ、やァ、あ、ァ、あ! きもちい、ぁ、ッあ、すき、うきん、すき!」
軽い律動により夏侯惇の体が揺さぶられた。まだ組み立てたばかりのベッドからは、ギシギシと小さな音が聞こえる。
「ぐ、ぅ……! 私は、愛しております、っあ、ぁ……!」
肉の中はかなりの狭さである。しかし于禁はもう雄を出し入れするという、とても単純な動作のことしか考えられなかった。夏侯惇の腰を強い力で掴むと、ピストンの速度を上げていく。
夏侯惇は悲鳴混じりの嬌声を上げながら、びゅるびゅると射精をした。精液が于禁の腹にまで飛んでくるが、それでもピストンを容赦なく続けていく。それほどに、于禁の本能が脳を支配してしまっているからだ。
すると肉を苛めていくうちに、ひっかかりのような箇所を先端が突く。だが于禁はそこは明らかに結腸のあたりだということを分かっているので、そこに目掛けて腰を打ち付けた。
「……ひゃ、あ!? ぁ、お、ォ! ゃ、そこ、らめ、イくから、ひゃ、あ! ぁん、ア、っお、っあ、あ!」
「はー……ぁ、ぐ! ぅあ……あ……!」
夏侯惇の体にある全ての筋肉が痙攣し、汗が吹き出た。于禁はその肉の奥に精液を吐き出す。そこで確実に種を付けられたことに満足した于禁は芯を失った雄を引き抜いた。夏侯惇も射精をしていたが、直後に体力が全て消えてしまったのか萎えてしまう。
出した精液が肉の穴から急激にではないが、流れ出る。それが敷いたバスタオルの上に落ちる様子を于禁は見た後に、疲れ果てている夏侯惇にそっとキスをした。すると夏侯惇が力があまり入らないらしい、手を伸ばして于禁の頬に添える。すぐにずり落ちてしまいそうだったので、于禁がそれを拾っていった。
「……夏侯惇殿」
先程出た汗が冷え始めたのか、夏侯惇は寒そうにしている。于禁はその夏侯惇を敷いているバスタオルで包んでから、まずは体を清めようとした。今の夏侯惇にそのような体力が無いことは分かっているが、体調を崩さないことを優先にしたのだ。
夏侯惇を抱えると于禁は急いで浴室に入り、丁寧に体を清めていったのであった。その際にリビングに置いたままのボディーソープなどを取り出していたのだが。
ベッドに横になって落ち着くが、夏侯惇は気を失っている訳ではなかった。疲れた顔をしながら、于禁に抱き着く。夏侯惇の肌は湯を浴びた直後でも、少しばかり冷たい気がしていた。
「もしかして、体が冷えますか?」
于禁は包むように手を回していくが、夏侯惇は「違う」と否定した。
「言い忘れていたことが、あった……」
「言い忘れていたこと、とは?」
体勢を変えないまま于禁がそう聞くと、夏侯惇がそっと囁いた。
「お前を好きではなく、愛しているだったな」
それを聞いた于禁は穏やかに笑うと、本日で何度目になるのか分からない口付けをする。夏侯惇はそれを嬉しそうに受け止めるが、直後に腹の虫が鳴った。二人はその音にくすくすと笑う。
「果物を買っていただろう? 皮を剝いてくれ。それでいい」
「はい」
于禁はすぐに返事をすると「少し待っていて下され」と付け加えてベッドから出た。リビングで適当な服を着てから、キッチンで手を洗い買っていた果物も洗う。そして蓋のついているナイフや紙袋を持ってくると、夏侯惇の元に戻った。ベッドの縁に静かに座る。
自身が入院していた際に夏侯惇がしてくれたように、ナイフで果物の皮を剝いていく。しかしその当時と同様にぎこちなく剝いていくので、果物の皮が一枚の小さく厚い花弁のようになっていた。紙袋の中にそれが降り続き、夏侯惇はそれをただ見ていく。
于禁は真剣に果物の皮を剝いているので、それに気付かない。
「なかなか、上手くできていませぬな……」
途中で気付き手を止めた于禁が眉を下げ、困ったような顔をした。しかし夏侯惇は「気にするな」と言ってから「腹が減った」と急かす。剥く手を再開させた于禁は「分かりました」と返事をしてから、残りの皮を剝いていった。だが残りの皮も、小さな花弁となって、紙袋の中に落ちていく。
ようやく剥き終えた于禁は、小さく切り分けてから一切れを夏侯惇の口にそっと入れる。しゃくしゃくと、美味しそうに咀嚼をした。
「美味いな」
夏侯惇のその様子に笑みを浮かべた于禁も、続けて切り分けた果物を一切れ食べていく。果実の甘さとは、やはり沁みていく程に癒やされると思った。笑みを更に大きくしていると、夏侯惇がもう一切れ食べたいと言う。なので夏侯惇にもう一切れを渡すと、すぐに食べてしまった。それを見た于禁は一旦ナイフに蓋をしてから床に置くと、夏侯惇が唐突にぐいと袖を引っ張る。于禁の体が若干よろめいた後に、正常な向きを取り戻した。
「何を……ん、ぅ……」
于禁が苦言を唱えようとしたところで、夏侯惇に唇を塞がれた。上品な甘い香りが広がり、思わず于禁はうっとりとする。
「っは、ぁ……夏侯惇殿……」
しかしすぐに唇が離れる。于禁はまだその甘さを味わっていたいと思うと、夏侯惇の唇を追い掛けて再度キスをしていた。
二人の唇が螺旋のように深く、あるいは花弁のように絡みながら。