暗密

 自身の救出後に、別の基地へと移動した直後であった。様々な者から帰還を祝福され、簡易な診察の後に綿密な診察を受ける。結果は肋骨にひびが入った程度で、別条はないらしい。顔は多少は皮膚が裂けており、出血している程度。基地内を普通に歩くことができるし、モビルスーツに搭乗することくらいなら可能だ。
 しかしこちらに新しいモビルスーツを充てる余裕はなく、ひたすらに待っているところであった。連邦政府のように、何もかもが潤沢ではない。
 まだ狭い医務室で観察を受けているのだが一人きり。暇を持て余しているので他の者の手伝いをしたいのだが、ベッドに寝かされている。時刻を確認したが怪我人としては消灯時間だ。だが寝心地が悪い。顔をしかめていれば、扉の向こうから声がした。ハサウェイだ。
「ガウマン、いいか」
「あぁ、いいぞ坊やちゃん」
 入室の許可を与えれば、ハサウェイが入ってくる。今はTシャツにスラックスと、ラフな格好をしている。休む前なのだろうか。
「ガウマン」
「どうした? 寝れないのか?」
 軽く返せば、ハサウェイが頷く。
「あぁ、そうらしい」
 アジア人特有の若い皮膚を持っているハサウェイが、若干の笑みを浮かべていた。そして返事をするのだが、まるで他人事のようだ。
 ハサウェイは数時間前にクスィーガンダムに搭乗し、敵モビルスーツであるペーネロペーを撃ち倒す直前までいっていた。しかし逃げるには充分に無力化させている。充分な戦果だ。そこでハサウェイのモビルスーツの操縦能力は凄まじいと思った。自身ならば、できないのだろう。いや、クスィーガンダムを動かすことすらできないと感じた。
 見ればハサウェイは少し疲れているように思える。目がいつもより細くなっていた。喉を鳴らしながら、慣れた舌で話し掛ける。
「どうした? 一緒に寝てやろうか?」
「……あぁ、そうしてくれ」
 冗談だと言おうとしたのだが、自身の言葉の前にハサウェイが狭いベッドの上に乗る。成人男性二人が乗ったベッドからは、小さな悲鳴を上げていた。
 ハサウェイがこちらち来るのならと、体を隅に寄せた。狭いベッドには限界があるので、少しだけ動かせた程度である。ハサウェイはその隙間に入り込んだ。自身よりも細い体が、ベッドの上に寝る。
「ハサウェイ、ここは寝心地悪いぞ」
「……いいんだ、いいんだ……ガウマン」
 そう言いながらハサウェイが抱きついていた。心地は悪くない。そう思っていれば、ベッドが揺れているのが分かる。ハサウェイが、体を震わせているのだ。
「……ガウマン、無事でよかった」
「何だ、坊やちゃん。俺のことがそんなに好きなのか?」
 またしても冗談を述べるのだが、ハサウェイの体は更に震えていた。クスィーガンダムを見事に操り、生き延びた者だとは思えない。すると手が勝手に動き、ハサウェイの体を抱きしめていた。
 いつもより、体が小さく思える。目の前の人物が、本当にマフティーとして世に憚る者だとは見えなくなった。ただの、アジア人の青年のように見えるのだ。この、今だけは。
 そして自身の問いに対して、ハサウェイは否定をしない。しようとする気配すらない。それならばと体を弄れば、ハサウェイから小さな音が出る。それは、いつもは聞かない艶めかしいものだ。
「ぁ、っは……」
「ハサウェイ……」
 聞いた自身は、身を震わせる。それは気持ち悪さでも恐怖でもない。どうしてか、興奮を覚えるのだ。このようなことは一度も知り得たことはない。今までは異性のそのような音を好んでいたというのに、まだ若いとも呼べる体が反応をしてしまう。
「ッう……ガウマン……僕は、ガウマンが二度と帰って来れないと、思ったんだ……でも、帰ってきてくれた……僕は……」
 ハサウェイが悲しげな声を漏らす。それは自身の安否を心配しているものであった。だが無事であったことはこの身が証明している。
「ありがとうよ、坊やちゃん。だが、今はそれは後にしてくれ」
 しかしこのような生活をしていれば、欲求は溜まる一方だ。完全に反応してしまった体をハサウェイに知らせる為に、下半身を押し付ける。そこでハサウェイから微かな悲鳴が聞こえた。
「分かるだろ、ハサウェイ……相手に、なってもらおうか……」
「ガウマン、分かった」
 拒むことなく、ハサウェイはすんなりと受け入れた。自身の下半身に寄り添うように、更に体を密着させくる。その時にはハサウェイまでも興奮を示していた。互いに、生殖器を勃起させているのだ。しかしこれはあくまでも性欲処理という行為、そうしたいのだが胸が詰まってくる。何故だろうか。
「ふぅ、ふぅ……ハサウェイ、俺は怪我人だ。上にさせてくれ」
「な、上……!?」
 さすがにそれは予想外であったらしい。ハサウェイが目を見開くがもう遅い。素早くハサウェイの体の上に乗れば、顔を近付けた。やはりアジア人の血を持つ者の皮膚は、柔らかい。本当に同じ人間なのか、少し不安になった。
 唇をまずは頬に落とせば、男性ホルモンとは無縁の肌とぶつかる。無駄な体毛とは存在するのだろうか、そう思いながら着ているTシャツをめくった。自身としては薄い胸板を触る。さらさらとしていた。気持ちがいい。
「ハサウェイ……キス、していいか」
「……少しなら」
 許可を得た。なので唇同士を合わせるのだが、水のような味がした。自身と会う前に、水を飲んでいたのだろうか。
「っは……ハサウェイ、脱がせるぞ……」
「あぁ」
 早くこの欲をぶつけたい。そう思ったのだが、乱暴にするのはどうかと思った。なので幾度聞いていく。
 まずはTシャツを脱がせると、やはり薄い胸板がさらけ出された。女のように胸は盛り上がっていないし、柔らかくもない。だがこのハサウェイの皮膚を見ていればペニスが更に膨らんでいくのを感じた。
「はぁ、はぁ……ハサウェイ……」
 夢中になりながらハサウェイの何もない胸を見、そして荒い息を漏らしながら体を丸める。唇の行き先は胸だ。まずは谷間と呼べる部分を、少し舐めてみた。少し、甘い香りがした。ハサウェイ特有の匂いなのだろうか。
「っう……! ガウマン……擽ったい……」
「ハサウェイ、だが、あんたの体は、どうやら俺は好きなようだ……そうだろ?」
 尋ねながらハサウェイの腕を掴み、そして勃起が鎮まらないペニスをズボン越しに触らせる。ハサウェイの顔が、一気に赤くなった。
「分かっている……!」
 眉間に皺を寄せるのだが、怒った表情を見せたいのだろうか。しかし自身としては、単に煽っているようにしか見えない。顔を赤らめ、表情を変えただけだというのに。
「だから、っふぅ……ふぅ、ハサウェイ……」
 言葉の途中で胸を舐め回した。もう止まらない。胸を舐めていけば、ハサウェイの擽ったい反応をしばらく続けていった。だが何度も舌を這わせていくうちに、ハサウェイの喉から出る息が桃色になっていく。感じ始めているのだ。
「ぁ、あ、はぁ……ガウ、マン……!」
 ハサウェイとは性とは無縁のような外見をしているように感じた。それなのに今はこうして乱れているのだ。男としては、これに喜ばない訳がない。
「ん、んっ……!」
「ここ、好きか?」
 好きかどうかとそう聞けば、ハサウェイは首を横に振った。素直じゃないと思っていれば、ハサウェイが口を拙く開く。
「ァ……は……きもち、いい……」
「気持ちいい、か……」
 復唱した後に、掴み続けていたハサウェイの手を離した。しかし次に向かうのは、胸である。乳首である。そこを、指先で押し潰してみた。ハサウェイの腰が震えた。
「ぅあ!? はッ、はぁ……ガウマン、そこ……」
「いいのか……素質があるな」
 ハサウェイの反応を見た後ににやりと笑えば、スラックスを脱がせていく。
 下着を見れば、股間のあたりに染みを作っていた。胸だけで、そうなってしまっているのだ。それに膨らんでおり、下着をずらしてすぐに解放した。ぶるんと、男の象徴が出てくる。
「ぁ……や、ガウマン、もう、そこは……!」
「なんだよハサウェイ。あんたから俺を誘ってきたんじゃないか」
 生んだ矛盾を指摘すれば、ハサウェイの股間から更に液体が漏れる。それに違うと否定しているのだが、今の状態では嘘も何もない。
「今更、恥ずかしがるなよ。俺も、脱ぐからよ……」
 そう言いながら膝立ちをし、履いていたズボンや下着を下ろしていく。何度も異性の膣を通ったペニスは、バキバキに勃起をしている。それをハサウェイに見せれば、怯えたように「僕のより、大きい……」と凝視していた。まるで、この世のものではないものを見ているかのようだ。
「大きいか、嬉しいじゃねぇかよ……」
 先端からはよく我慢汁を垂らしており、太い毛の中からそびえるペニスからハサウェイは目を離さない。怯えているというのに。
 だが男同士でするには尻しかないのだが、慣らすにはと考えながら周りを見れば少量のローションが入っているパウチが複数あった。医療目的で使うローションなのだろう。物資を調達する者に心の中で謝りながら、その中から一つ手に取る。
「が、ガウマン……同性同士では、ここを使うのは、知っている。でも、僕の体には、ガウマンのものは……」
 ようやくハサウェイが視線を逸らしたところで、言葉を遮った。それは有無を言わせないものだ。
「入るさ」
「で、でも……うわ!」
 膝裏を持ち上げてから、秘部が見えるようにハサウェイの体を少し折った。そこは何も受け入れたことがなく、綺麗な色をしている。まるで処女のように思えれば、ローションのパウチを雑に開封した。手のひらに少量のローションを垂らせば、冷たい感覚が乗っていく。指先を開閉しながら、ローションを温めていった。
 ハサウェイの表情は、未だに怯えている。今から行うセックスは、あまり乱暴にはしたくない。ハサウェイの体が、大事なのだ。なので指先で秘部の周りに弧を描きながら言った。今の指先にはローションが塗れている。なので秘部の周りが、ぬらぬらと光っていった。
「……坊やちゃん、今からするセックスは、俺としては溜まってるからにしたくねぇよ……無理矢理には、したくねぇよ……言っただろ? あんたの体が好きだってな」
「ガウマン……」
 眉間の皺が、少しは消えた気がした。なのでそのまま唇を近づけて、キスをしていった。唇同士が触れるだけの、軽いキスだ。そこで指先と秘部の入り口がぶつかれば、ハサウェイの体がびくりと跳ねる。未知の感覚に、驚いてしまったのだろう。
 それを慰めるように、ハサウェイの唇を舐めた。横へと、縦へと。
「ん、んっ……ぁ、あ……ガウマン……」
「ハサウェイ、入れるぞ……」
 相手は言うならば処女だ。ゆっくりと快楽に漬け、そして浴びせたい。そう思っていれば、次第に自身の中で性欲を性愛が侵食していく。支配していく。
「ぁ、は……ガウマン、きて……」
 自身の想いに応えるように、ハサウェイの膝から下が動いた。自身の体に巻き付くように、方向を変えているのだ。嬉しくなったので、指先をぬぷりと挿入していく。今からここを、排泄器官ではなく性器へと変える為に。
「っ……! ァ、あ……! ガウマン……!」
「ハサウェイ……! 少し、我慢してくれ……!」
 入り口付近は、堅く閉ざされていた。指を追い出すように、拒絶するように蠢いていくのが分かる。しかしそこで簡単に引き下がる考えなどないので、ハサウェイと何度も何度も軽いキスをしていきながら指を動かした。
 入り口の縁が少し緩まったところで、指をぐいと押していく。第一関節が、ハサウェイの腹の中に入った。中は今まで経験したことがないくらいに、熱く狭い。この中に、ペニスが通っていくのだと思えば昂りが止まらない。
「ぐ、ぁ、あ……! が、ガウマン……!」
 そしてハサウェイが助けを求めるように叫ぶので、唇を塞ぐようにキスをした。必然的に顔が近づき、目が合うのだが目尻から涙を流しているのが分かる。怖くなってきているのだろう。だがそれを早く快楽に変えてあげたいと思った。ハサウェイには、泣いて欲しくない。
「ん、んん! ん、ぅ……! ぅ、んん!」
 唇を塞がれてもなお叫ぶハサウェイを見ていれば、次第に指が沈んでいくのが分かる。少しずつでも、入り口が解れてきているのだ。遂には一本の指が全て入ったところで、しこりを掠めたような気がする。不思議な箇所であった。
 何度も擦ってしまっていれば、ハサウェイの様子は急変する。苦しげにキスを受け止めるので、酸欠になる前に唇を離した。唾液をよく分泌しており、糸が引いた。
「ッぁ、あァ! ガウマン、そこ、やめて、くれ……!」
「ここか? だが……あんたのモノは喜んでるぞ」
 ハサウェイの股間を見れば、一度射精をしていた。腹や胸に白濁液を散らし、官能的な姿になっている。壮観であった。
「ちがう、これは……ぅあ! ぁ、ァ……! もう、やめてくれ! ァ、あ! イくから! ぁ、はぁ、あ……んん!」
 反応を見るに、止められなくなってしまう。なので腹の中にあるしこりを何度も可愛がっていれば、またしてもハサウェイが射精をした。柔らかい皮膚の上に、いやらしい体液を更に撒き散らす。
「ハサウェイ……」
 何とも言えなくなったので、そのまま指を動かしていく。するといつの間にか入り口は許したように柔らかくなっていく。この調子で何本もの指を飲み込ませていけば、簡単な結合部ができる。堪らないと思った。
「ハサウェイ、ハサウェイ……!」
 何本もの指で腹の中を弄れば、順応するように絡みついてくる。この中にペニスを挿入したら、どうなってしまうのだろうか。性的な期待を持ってしまいながら、指をゆっくりと引き抜く。ハサウェイが弱く啼き、心臓が高鳴る。二人は、荒い息を吐いていた。
 指には残りのローションと、微かに腸液が付着しているように思えた。それを勃起してから疼かせているペニスに、ぬちゃぬちゃと纏わせていく。ペニスが液体でてらてらと輝けば、それをハサウェイの入り口にあてがう。だがやはり性愛は忘れてはいけないと、何度も深呼吸をした後にハサウェイに言う。
「ハサウェイ、言っただろ、俺は……」
「体じゃなくて、僕を、好きに、なってくれ……!」
 次はハサウェイが言葉を遮った。そして見れば、ハサウェイの目尻には乾いた涙の線が描かれている。どのようなものよりも、綺麗だと思えた。
「ハサウェイ……あぁ……」
 返事には、勿論のようにイエスだ。なのでそのまま入り口とペニスの先端でキスをさせた。今からここに、腹の中にペニスを収めるのだ。ハサウェイと、体を繋げるのだ。
 そう思いながら、ゆっくりと挿し込んでいった。しかし当然のように、ペニスは指よりも大きいので入らない。ハサウェイは眉を下げながら「入ってくれ……!」と祈るように腹を擦った。
「入る、さ……ハサウェイ……」
 少し引かせてから、再度密着させる。そう繰り返していれば、入り口がまたしても緩まった気がした。すると今がチャンスだと思い、ぐりぐりとペニスを押し付ける。ペニスが、入り口の中にめり込んでいった。
「ぅあ……!? あ、はぁ……ガウマン、もっと、きて、くれ……! ガウマン……!」
 求めるようにハサウェイの手が伸び、そして背中へと回っていく。そして指先が背中の皮膚に弱く刺さった後に、ペニスのカリがぬぷりと入った。その勢いで竿を入れ込み、ハサウェイの体を抱き締める。ハサウェイの胸は、激しく上下に動いていた。
「は、はぁ……はぁ、はぁはぁ、はぁ、はぁ、ガウマン……! 僕、僕……!」
「ハサウェイ……! 入ったが、狭いな……!」
 指でも感じていたのだが、やはりハサウェイの腹の中は狭い。それは膣よりも好く、すぐに精液を吐き出しそうになってしまっていた。だが耐えながら、腰を小さく揺らしていく。まだ根元までには入っていないのだ。
 根元にまで入るように意識を集中させれば、すぐに入る。ばちゅんと音が鳴った、その直後にハサウェイが声ではない音を喉から鳴らす。相当に、気持ちが良いらしい。
「ハサウェイ……!」
 もはや名を呼ぶことしかできない。余裕がないのだ。今までとは違って。
「ッうぅ! あ、はぁ……! がう、ま……!」
「ハサウェイ!」
 名を呼びながらピストンを始めていく。肌同士が衝突する音が聞こえ、そして粘液が粘膜の中でかき混ぜられる音が聞こえる。そしてハサウェイの喘ぎ声である。それらを聞きながら夢中で腰を振れば、達した。腰の動きを止め、そしてハサウェイの体を固定した。本能からして、逃げないようにだ。
 ハサウェイほ腹の中に精を放ち、低い呻き声を出す。かなり久しぶりの、勢いの良い射精であった。奥にまで届くように、ぐりぐりと腰を押し付ける。
「……っぐ! ぅ、う……! あ、ぁ……!」
「っあ……! ひ、あぁ……!」
 腹の中に目一杯に精液を注ぎ込めば、そこで勃起は収まる。同時にハサウェイも果てたのか、体が白く染まっているようだった。美しい。
 息が絶えそうに見えるのだが、ハサウェイの心臓はよく動いている。
「はぁ、はぁ……ハサウェイ……」
「が、ガウマン……キス、キスを、してほしいんだ……」
「あぁ……」
 そこでハサウェイの体を自由にさせてから、唇同士を合わせた。これが、幸せというものか。これが、通じ合っている者とするセックスなのか。喜びを噛み締めながら、ハサウェイともう一度、キスをしていた。