朝から夜まで
ある朝、于禁はとても動揺していた。私室に居る夏侯惇に竹簡をたった一つ持って来ただけだというのに、待てと強く呼び止められたのだ。それも、竹簡を広げることもなく。
持ってきた竹簡自体を間違えたのだろうかと思ったが、于禁は間違えていないと思っている。自身の私室の机に置いていたのは、今は夏侯惇が持っている竹簡のみであったからだ。
「あの、何か……?」
なので于禁は恐る恐る疑問を口にすると、夏侯惇は竹簡を近くの机に雑に置く。竹簡に記されているのは、重要な軍務についてである。夏侯惇が直接、手が回らないと于禁に頼んでいた。于禁は何も思うこともなく、すんなりと引き受けていたが。
しかし于禁はそこまでの扱いをするのは良くないだろうと、指摘をしようとした。そこで阻止をするかのように、夏侯惇がぐいと詰め寄ってくる。互いの鼻先が、触れてしまうと思える程に。
「俺への用事が、まだ終わっていないぞ」
夏侯惇の表情が、ムッとしたものに近くなっていた。まるで、親に構って貰えない子のようだ。于禁の平服の襟を掴むと、それを開こうとする。だが于禁は何をするのかとその手を止めようとしたが、夏侯惇が鋭く睨んだ。于禁の手が素早く引いていく。
すると夏侯惇は于禁の手首を掴み、壁へと押しやった。身動きがほとんど取れなくなってしまった于禁は、そこで初めて抵抗の意思の全てを露わにする。まずは腕に力を込めて振り払おうとしたが、唐突に夏侯惇から軽い接吻をされた。一瞬にして力がするりと抜けていき、頭から抵抗という言葉が落ちていく。
「陽が高くとも、俺が呼んだのだからいいだろう?」
「か、こうとん……殿……」
体をだらりとさせた于禁の体を、夏侯惇は引っ張って行く。私室と寝室が繋がっているので、寝室へと真っ直ぐに。
「いえ、今は、なりませぬ……!」
そして寝台へと連れて行かれる直前で、于禁はどうにか夏侯惇の手を振り払う。首を勢いよく横に振ると、夏侯惇の表情が一気に機嫌が悪いものになる。とても険しい目付きをしていたが、それを覚悟の上で于禁は意見を述べた。
「……もうじき、鍛錬があるので」
于禁の言葉は本当である。もう少し太陽が高く昇ったら、兵や自身の鍛錬をこなさなければならない。これは一日でも怠ることは厳禁である。夏侯惇はそれを理解しているだろうと思いながらも、顔色をうかがう。だが機嫌が直らないらしい。
そこで折れた于禁だが、今夏侯惇の誘いに乗ることはできなかった。なので妥協案を出す。
「鍛錬が終わるまでお待ち下され」
于禁としては気のせいだと思うが、夏侯惇の目が少しだけ緩やかになった。その提案を、仕方なしに受け入れようとしてくれているのだろう。「どうかお願い致します」と付け加えると、夏侯惇はようやくその妥協案に頷いた。
「仕方ないな。だが、鍛錬が終わったらすぐに来い。少しでも暇を作るな。俺はここでずっと待っている」
「はい!」
はっきりと返事をした于禁は、夏侯惇の自室を出る。そして準備をするために自室へと戻ってから、城内で兵たちと共に鍛錬を始めたのであった。
本日の鍛錬は、実戦用の鎧とそして武器を用いる。最近は戦が増えた。なので明らかに実戦向けではない薄い鎧と、刃を潰した剣では兵たちの緊迫感を切ってしまう可能性がある。于禁はそれを大きく心配したので、実戦用の鎧と武器を持って鍛錬を始めたのであった。
鍛錬が終わったのは、陽が沈む前である。兵はまるで戦の最中のような様子を見せていたので、于禁は今回の鍛錬の内容が正しかったと思う。于禁は急いで夏侯惇の元に向かわなければならないが、近くの身を清める為に着物を脱ぎ池に入ってから全身を濡らしていった。
ここの水はとても清らかで、このような用途専用の池だ。だがここに人気はない。于禁は髪まで水で濡らすと身を清めた。そこで何かを思ったのか、人目にあまり触れない場所に移動してからしばらく何かをしていた。
体を清め終えた于禁は手ぬぐいである程度の全身の水気を拭き取る。そして髪を簡単に纏めてから着物を着ると、急いで夏侯惇の自室へと走って向かって行った。
「只今、とうちゃ……うわ!」
夏侯惇の自室に合図も何も無しに入ってしまう。このようなことをするのを初めてであり、まずは夏侯惇に謝罪をしようとした。だが宣言通りにここに居た夏侯惇は、于禁の腕を容赦なく引く。于禁を待ち侘びていたのか眼帯を外し、潰れた眼を晒している。
「俺を待たせ過ぎだ。お前の軍は、少し前に鍛錬が終わっていた筈だ」
声には怒りが混ざっているので、于禁は顔を青ざめさせながら謝る。だが夏侯惇の感情が変わらないまま、于禁は寝台へと強引に連れて行かれてから押し倒された。
抵抗などしないまま、于禁が夏侯惇を見上げる。夕闇が差し迫っており、視界が若干悪い。そして夏侯惇の声には、明るみが無かった。
「だが、好きなのだろう? 罰を受けるのが」
「いえ、私は……」
于禁が顔自体大きく逸らすと、夏侯惇が顎を掴んでから元の向きに直す。そこで観念した于禁は、脳だけは嘘でも肯定の言葉へと修整させた。
「はい……」
待っていたかのように、夏侯惇がニヤリと笑う。于禁はその顔を見て、ゾクリと体を震わせたがもう遅い。着物の襟をすぐにぐいと広げられ、上半身の白い肌だけでも剥き出しにする。
だがそこで早速、下半身が大きく膨らんでしまっていた。夏侯惇がそれに気付くと、玩具のように布の上から乱暴に揉み始める。当然、于禁は腰を緩やかに揺らしながら甘い快楽により喘いだ。
「あ、ぁん、んぅ……! あ、まだ、そこはっ……!」
「口答えをするな」
未だに夏侯惇の声に怒りがあったが、手付きはいつもと変わらない。于禁の好い場所を熟知しているので、そこを確実に激しく責めていく。下半身を揉んでいる中で、剥き出しにした胸をやわやわと揉みながら。
定期的に揉んでいるので、やはり触り心地が良い。夏侯惇は何度も何度も触れても飽きないその感覚に、笑みを作り始める。ようやく、声にあった怒りが消えていった証拠であった。
だが于禁は安堵をしていいのか、またはそのまま快楽に溺れてしまえばいいのか分からなかった。それ程に、頭が回らなくなってきている。目が垂れてきており、夏侯惇の顔を直視できなくなっていた。
「何を考えている?」
そこで夏侯惇が于禁に聞くが、曖昧な返事が返ってきた。「ぁ、あぁ……」と、どちらとも言えないようなものが。まともに答える余裕が無くなったのかと判断した夏侯惇は、于禁に甘い痺れを与え続けた。于禁の腰の動きが、激しくなっていく。
だが数秒だけ腰を突き上げた思うと、そのまま体を痙攣させた。着物の下半身の部分から、粘液の音が聞こえる。于禁は息を上げてただ呆然としながら、天井を見つめた。しかし下半身は平らに戻っていない。
「まだ勃っているぞ」
指摘しながら、夏侯惇が該当する部位を指で突いた。敏感になってしまっているのか、于禁は軽く体を仰け反らせる。途中で声を出すが制止を求めるものではなく、夏侯惇を誘ってしまうような淫らな言葉であった。
「っは、ぁ……もっと、イきたい……まらが、ほしい……」
「ほう」
片眉を上げた夏侯惇は、于禁と顔をぐっと近付ける。
すると于禁から唇を近付けてきて、触れる程の口付けをした。行動でも、夏侯惇を求めていることを示すためなのだろう。くつくつと笑った後に「あぁ」と呟いた。その瞬間に、于禁の視線が夏侯惇の瞳へとぎこちなく向く。
「ありがとうございます……」
礼を述べながら、于禁が着物を自ら脱ぎ始める。しかし着物を幾つも重ねている訳ではないので、数回手を動かしただけで裸になってしまった。何度抱かれたのかさえ、数えることが面倒になった体を夏侯惇に見せる。
戦をする身なので、全身が筋肉に覆われている。同性から見たら、むさ苦しいと言われる可能性が高い。だが夏侯惇だけは、この于禁の体が好きで好きで堪らなかった。この、白く触れただけで可愛らしい反応をする体を。なのでずっと、一生独占したいと常に思っていた。
早速夏侯惇は、于禁に覆い被さってから胸にむしゃぶりつく。厚い唇や舌で胸の尖りを弄ぶと、于禁は喜ぶように嬌声を上げた。喉から出る声は男の低い声そのものだが、微かに艶めかしい音が混じっている。夏侯惇はそれをよく聞くと、弱く歯を立てた。
「ぁ、あ……ん、ぅ……! あっ、あ……ゃ、音が、ア、ぁ!? ひゃ、ァ……!」
そしてじゅるじゅると軽く吸い上げると、于禁は恥ずかしげに言う。相変わらず顔が赤く、震えている両手が夏侯惇の後頭部に向かっていた。しかしそこで夏侯惇が胸を強く吸ったので、于禁の両手が布団の上に落下する。
同時に下半身から白い粘液が射出されたが、膨らみが引く気配がない。于禁は胸を僅かに上下させながら、小さく声を出す。
「そこではなく、ここを、かわいがって下され……」
夏侯惇の体を必死に退けてから、足を大胆に開いた。恥部が、よく見えるように。だがこの頃には陽が沈んでいる途中であったので、あまりくっきりとは見えなかった。
「……遅かったのは、そのせいか」
軽い舌打ちの後に納得の言葉を吐く夏侯惇だが、それには疑問と少しの怒りが混じっている。于禁が夏侯惇の自室に来るのが遅かったのは、入口を指で慣らしていたからだ。既に香油がたっぷりと塗られてふやけており、ぱっくりと口を開いていた。
「途中で、貴方のことをかんがえていたら、がまん……が、でき……ひ、ゃあ!?」
于禁が言い訳を終える前に、夏侯惇が入口に太い指を三本一気に突っ込んだ。すんなりと入ると、ぐちゅぐちゅと激しく掻き回していく。粘膜の壁に指先が当たる度に、于禁は規則的な喘ぎ声を出した。次第に半開きになっている口から唾液をとろとろと流す。
「……ぁ、ゃ、あっ、あ、あ、あ!」
「我慢、だと? 俺を差し置いてか?」
夏侯惇の怒りが復活していくごとに、指の動きも大きくなっていく。だが于禁にその感情が理解できないのか、言葉の表面だけを汲み取った。ので謝罪を途切れ途切れに述べていく。
「あ! んぁ、ァ、もうしわけ、ありま、ア、ぅ……あっ、アぁ!」
言葉が終わる頃に夏侯惇が前立腺をぐいっと押した。于禁の体が大きく跳ねようとしたが、それを強く全身で布団に縫い留めるように押さえる。跳ねる代わりに大きく体が荒波のように揺れていた。
少し薄まった粘液が噴出して、夏侯惇の腹の辺りに飛んでくる。しかしそれを気にしていないのか、指を引き抜くと着物を脱いでいった。夜着なので一枚のみである。夏侯惇があっという間に裸になると、浮いた血管が張り巡っている怒張を于禁の引き締まったへその下に向けた。
「ここに、欲しいか?」
「ほしい、れす、まらで私を、っう、ぁ……かわいがってくだされ!」
腰を動かした于禁は、皮膚で夏侯惇の怒張の竿をか弱く擦る。これ程に、求めていると必死に強調するように。最中にへその下に触れられただけで、于禁は体をびくびくと震わせた。
鼻を鳴らしただけの夏侯惇は暗くなった室内で、于禁の肉を唐突に割っていく。すると焼けるように熱い粘膜が、怒張を追い返すように抵抗してきていた。夏侯惇はそれをもはや『歓迎』と思っている。なので挿入を止めようとはしない。
一気に奥まで挿入できたので、すぐに怒張が全て収まる。言葉を掛けず、そして視界が悪かったので于禁には瞬く間に大きな驚きが起きた。
「ひゃ!? ぁあ、あ! ッぅあ、ぁ……お!? やァ、あ!」
怒張でずるずると于禁の狭い腹の中を抉っていき、夏侯惇は肉の締め付けを楽しんだ。時折、于禁のへその下が小さく膨らむ。癖になってしまっている感覚に、夏侯惇は自然と鋭い笑みを浮かべた。
寝台から悲鳴が上がるくらいに腰を揺さぶり、穴が空くのかと思うくらいに強く突いた。それにより于禁はどろどろとだらしなく啼く。
「ッは、う、きつい……ぁ……! さすが、俺が作った名器だな……!」
「や、ぁ、あッ! まらがきもちいい……!」
于禁の両方の瞳からも液体が流れてくる。すると顔が涙や唾液で侵食されているが、于禁はそのようなことを構っている余裕などない。夏侯惇により腹の中を犯されている興奮に、于禁は喜んでいた。蔑むような言葉を掛けられてもなお。
「イく、ッ……ぁ、あ!」
体に電流でも流されたかのように、びくびくと痙攣した後に于禁は弱い射精をした。対して夏侯惇は、植え付けるように精液をしっかりと注いでいく。
最後まで精液を出し切ってから怒張を抜いた。粘膜に擦り付けるように、浸透するように。于禁の入口はぬるぬると蠢き、精液をごぽごぽと吐く。すると股が疼いてたまらないのか、空洞になっていても収縮していた。
それとは反対に、于禁の口からは「らめ、でないでぇ……!」と足を閉じた。それを見た夏侯惇は于禁の足をかぱりと開いて、暗い部屋で精液が流れ出る音を楽しむ。
「まだくれてやるから、そこまで必死になるな」
ほくそ笑みながら、夏侯惇はまだ勃起し続けている怒張で于禁の太腿を突いた。まだ熱く硬い棒の感触に、于禁も笑みを浮かべる。
「ん、んぁ……あ……こだね……もっと、はらみたい……」
于禁の思考が次第に停止し始めた。言葉の欠片を並べてどうにか声を出すが、言語としてはほとんど成立していない。だが夏侯惇には意味が分かったらしい。小さく「あぁ」と返事をすると、于禁の腹の奥を再び犯していく。
夏侯惇が腰を揺さぶる度に、于禁の思考がどんどん停止していく。いつか完全に停止するのではないかと、ほんの一縷の理性で考えた。すると夏侯惇がそれを断ち切るようにもう一度貫く。
「ひぁ!? あ、ァん、やだぁ! こわれる、うめなく、なっちゃうからぁ!」
わんわんと泣くように于禁が喘ぐが、夏侯惇は腰の動きを止める気はない。戦に出ているので、夏侯惇には相当な体力がある。まだ疲れが見えておらず、于禁をさらにわざと責め上げていく。
「大丈夫だ。お前の中は、まだ食うように締め付けてくるからな」
そう言い終えた後に、一時的に体を止めてから精液を注ぎ込む。うめき声を出しながら出し終えると、律動を再開させた。ぱんぱんと、皮膚を激しくぶつけ合う。
その頃には、于禁の下半身は完全に萎えていた。体を揺さぶられながら、ふにゃりとした性器がぶるんぶるんと踊るように動く。普段の于禁ならばとても情けない格好であるが、今は違った。この様子が、夏侯惇の前では相応しいと思ったのだ。なので善がりながら、遂には舌までも出して枯れつつある嬌声を喉から出す。
「……ッ! ぁ、は……あ、ぉ、あ!」
すると何度も何度も精液を出されていくうちに、于禁の意識が落ちる寸前にまできていた。しかし夏侯惇にはまだ腰を振る体力があるので、まだ腹の奥を犯され続ける。
「まだ欲しがっているぞ? ……っ、ぐ、ん、はぁ……!」
大きく笑った夏侯惇は、薄くなりつつある精液をまだ注いでいる。そのおかげか、于禁の筋肉により割れている腹は、精液により不自然に丸く膨らんでいた。于禁は自身の腹を撫でると、恍惚の声を吐く。
「……あ、なたの……子が……」
「まだだ、もっとくれてやる」
すると低く地を這うように夏侯惇がそう言ってから、于禁の股の粘膜を潰すように怒張全体で叩く。于禁からはもはや悲鳴しか出なくなってきたが、夏侯惇はそれに構わず于禁を抱いたのであった。夜が明けるまで、休む間も与えず。