囚われる
ある日の朝、夏侯惇が少し前にネット通販サイトで購入した商品が自宅に届いていた。段ボールは両手ですんなりと軽く持てる程に小さく、それにとても軽い。于禁はそれに出くわしたが、中身について言及する気など全く無かった。箱をちらりと見てから、視線を他の場所に向ける。
しかしそれをつまらなく感じた夏侯惇は、于禁に近付いてから「気にならないのか?」と問う。とても楽しそうである。于禁はそれ見て嫌な予感がしたのか、首を横に振ってからはっきりと否定をした。
「いや、お前はこれが気になる筈だ」
「いえ、全く気になりませぬ」
夏侯惇がすぐに舌打ちをすると、于禁は何事かと険しい表情を作る。そうしていると于禁は夏侯惇から離れていこうとした。
手を伸ばして于禁の腕を掴むと、夏侯惇は次にニヤリと笑う。
「開けるのを手伝ってくれ」
「それくらい……」
「手伝え」
二言目の夏侯惇の声には、重い圧のようなものがどっしりと乗っていた。それに耐えられなくなった于禁は、仕方なさそうに「はい」と返事する。
テーブルの上に荷物である小さな段ボール箱を静かに置くと、夏侯惇がカッターを持って来る。手伝うとしたらそれくらいしかなかった于禁は、夏侯惇がカッターで段ボールをてきぱきと開封する様子をただ見つめた。これ以上は、何もすることが無いからだ。
しかし段ボールが開いて出てきたのは、大量の緩衝材だった。大きな紙をふんわりと丸めたものである。おそらく、段ボールの中身のほとんどが緩衝材だろう。そう思った于禁は次々と夏侯惇の手から取り出される、その緩衝材たちを一旦広げてから小さく畳んで纏めていった。
夏侯惇が肝心の中身をようやく取り出した。小さな瓶が入っていると分かる、全体的に赤色のパッケージ。于禁は栄養剤なのかと思い、それに頼るのはよくないと言いかける。そこでパッケージの文字を凝視すると、于禁は大きく動揺した。
「精力剤だ」
何かをはっきりと口にする前に、夏侯惇が答えを言う。それも、とても堂々と。
「な……何故、それを!?」
段ボールの中身が判明すると、冷静と動揺が入り混じっている中で于禁は聞いた。すると夏侯惇は先程と態度を崩さないまま返す。
「たまにはこういうのもいいだろう?」
パッケージは他の商品とさほと変わらない仕組みをしているので、慣れた手付きで夏侯惇は開けていく。だが于禁がそれを制させようとしたので、鋭く睨んで牽制した。于禁の体の動きがぴたりと止まってしまう。
邪魔が入らなくなると、夏侯惇が用法用量を見て「一日三粒か……」と呟く。そしてキッチンに向かうと二つのグラスを取り出し、蛇口を捻って並々と水を注いでいった。于禁はそれを止めようと思ったが、再度睨まれそうなので止めている。
「三粒だ。俺も飲むからお前も飲め」
「なっ!? どうして私もですか……!?」
「そうした方が楽しそうだからな」
瓶を開封してから、錠剤を三粒手の平に出した。色は白色をしており、ごく普通の薬に見間違えてしまいそうだ。それを夏侯惇は平然と口の中に放り込むと、グラスに入れた水で喉にしっかりと流していく。
その様子を見ていた于禁は、飲まなければならないと思い込んだ。だが正直、そのようなものを飲みたくはない。今まで一度も服用をしたことはないので余計にそう思える。
しかし夏侯惇が飲み終えた頃に于禁は、意を決して瓶から錠剤を三粒出す。医療目的の錠剤と同様に口の中に入れると、グラスの水で一気に飲み込んだ。するとごくりと喉を鳴らした頃には、于禁はもうどうでも良いと思えたらしい。飲む前に微かに現われていたらしい、不安の感情も胃の中に入っていった。
効果が現れるのは、一般的には三〇〜一時間くらいらしい。つい先程に服用したので、すぐに効果が出る訳がない。
夏侯惇はその項目を読んでいたものの、一〇分が経過すると効果を待つことの我慢ができなくなったらしい。これくらいは良いだろうと、瓶から三粒出して追加で飲む。その間に于禁はリビングのソファに座ってただ瞼を閉じていた。夏侯惇の行動に気付く筈がない。そして夏侯惇は服用する量を増やしたことを、隠していた。
于禁の隣に夏侯惇が座るが、二人には何も変化が起きていない。朝であるので、于禁が珍しく眠たそうにしているくらいか。小さなあくびを漏らすと、夏侯惇にも眠気が伝染してしまっていた。
なのでしばらくの間、二人はソファに座って短い睡眠を取っていく。
ふと夏侯惇が目を覚ますと、下半身にかなりの違和感があった。まずは今まで経験したことのないくらいに、大きく勃起をしているのだ。大きく反っており硬度があり、そして血管がバキバキと浮かんでいる。
先走りにより下着がびしょ濡れになっているので、夏侯惇は急いで今着ている服を全て脱いでいった。
夏侯惇の下半身は今、用法用量を守らならないせいで凶器と相応しい見た目をしている。
しかし隣の于禁は熟睡をしていたので、自身の勃起した竿の先端を頬に近づけた。そして唇とキスをするようにくっつけると、あまりの無防備さに夏侯惇はこのままでは良くないと思い始める。夏侯惇の個人的な意見では、やはり寝ている人間よりも、寝ていない人間の方が面白いからだ。特に反応が。
指で下の唇を開いてから、先端を入れてみる。上下の歯はぴったりとは言えないものの、合わさっていた。それに舌は上顎に密着しているので、侵入させる隙が無い。
なので歯という障壁の前でどうしようか悩んでいると、于禁が目を覚ます。そして夏侯惇と同様の症状が起きたと思うと、目の前の光景を見てから自ら口を開いた。
「かこうとんどの……」
夏侯惇の方ではなく向けられている竿を見ながら、それを口に含んだ。いつもより膨らんでいるので、口腔内に収めるには時間が掛かった。
竿をしゃぶりながら、于禁もベルトを外してからスラックスのチャックを下ろしていく。下着の全面部分が濡れており、気持ち悪いと思ったのかそれも脱いだ。
「ん、んぶ、ぅ、んう、んっ、ん……!」
眠る前とは大違いで、今の于禁は意識の全てを性欲に支配されていた。当たり前のように夏侯惇の竿を口の中で包み、愉悦の顔をしているからだ。
すると夏侯惇はあまりの口淫の気持ち良さに、一度射精した。于禁の頭を離すことなく。
「……ッ! ぐ、ぁ、あ……! はぁ、はぁ……」
最初から大量に放ったのか、夏侯惇は射精の直後に息が乱れた。一方の于禁は勢いよく流れ出る精液を、余さず喉に流していく。しかし全てが喉に通る訳ではなく、両頬が膨らんでから、唇の端から流れ出た。
何度も何度も喉を上下させてようやく于禁が落ち着くと、夏侯惇は一旦竿を外に出す。その際に于禁の唾液や自身の精液が混じったものが、よくまとわりついていた。于禁はそれでさえ飲み込もうと舌を出すが、か細い糸になって切れてしまう。
「あ、ぁ……せいえき……」
舌をそのまま垂らすと、于禁は名残惜しげにそう言う。夏侯惇はその姿が、あまりにも卑猥としか想えなかった。なので于禁の腕を引くと、ソファから引き摺り下ろして床に組み敷く。
「俺は六錠飲んだから、その分頑張ってくれ」
夏侯惇がほとばしる目で睨むと、于禁は自進んで残りの服を取り払う。そして足を開いて夏侯惇を誘惑した。
「喜んで……」
于禁も竿に限界が来ているのだが、今はそこをいじられるよりも尻をいじられたいらしい。必至にアピールをするが、夏侯惇がふと何かを思いついたのか言葉を足しかけた。
「だが、俺も……」
再び手を引くと、よろりと于禁を立ち上がらせる。夏侯惇も立ち上がると、ふらふらとした足取りで寝室へと向かって行く。
目的が見えない于禁は一瞬だけ疑問が浮かんだものの、夏侯惇に期待しているのか何も言わない。そうしていると寝室に辿り着いた。ベッドへと引き連れてから、于禁をそこに乱暴に投げる。ベッドが大きく沈んだ。
夏侯惇は興奮に震える手付きで、近くの棚から何かを取り出した。于禁にそれを見せると、表情が強張っていく。期待し過ぎたのだろうかと。
「俺も、イきたいからな……」
持っているのは、平均的なサイズであろう男性器を模したディルドであった。夏侯惇はそれをシーツの上に置くと、于禁をまたもや組み敷く。そして軽く唇を合わせると、于禁の手を持ってから自身の尻に向かわせる。解せと言いたいのだろう。
于禁が尻を掴んだことを確認した夏侯惇は手を離す。だが夏侯惇の手は于禁の尻に触れていた。
「早く解した方が負けだ」
にやりと笑った夏侯惇は、于禁の竿を握る。しこしこと軽く扱くと、その些細な刺激で于禁は達した。精液を噴出させ、直後に手の平で受け止める。ぬちゃぬちゃと指先に広げると、于禁の尻に持っていった。
少しだけ腰を震わせた于禁は、それに負けじと夏侯惇の竿を握る。裏筋を親指で押してなぞると、夏侯惇も射精をした。そして夏侯惇と同じ動作を取ると、二人で入口を解しながら深く唇を合わせる。
二人は眉を深く寄せ、早速に息を切らせていく。
だがそれぞれの指の動きはというと、于禁の方が勝っていた。挿れている数本の指の関節を器用に折り、夏侯惇の内部を掻き混ぜる。先に言い出した夏侯惇も負けじと指を動かし、密着している唇で啄んでいった。それでも、于禁は夏侯惇の入口をどんどん解していく。
すると于禁は止めにと前立腺を潰すように、力強く押した。夏侯惇の唇が離れ、体が于禁の上に重く伸し掛かる。
「ぅあ、ん……そこは、よわいから……」
酷い興奮の為に、夏侯惇の目の焦点が合わなくなってきていた。一方の于禁は、まだ視線だけは正常であるのだが。
夏侯惇が腰を揺らし、于禁の腹で竿を慰め始めた。無意識になのだろう。すぐに気付いた于禁は、指を引き抜いてから夏侯惇のゆらゆらと動く腰を掴んだ。
「挿れ、ますぞ……」
舌で夏侯惇の唇を追うと、素早く捕まえて再びキスをしていく。その間に夏侯惇の入口にも竿の先端でキスをする。すると腰から下の部位までも揺らしながら、夏侯惇は早くと急かした。精力剤を倍の用量を服用している為に、夏侯惇の竿がパンパンに膨らんでいるからだ。特にくびれの部分は顕著で、我慢汁が絶え間なくなく流れている。
互いに肌や粘膜から熱を伝え合いながら、于禁は棍棒のように太く長い竿で夏侯惇を貫き始めた。
「んっ!? んん! ッ、ぅ!」
正常の用量であるが、于禁は性欲を満たすことしか考えられていない。最初は軽く埋めようと思ったが、理性が瞬時に外れてしまったので熱い粘膜に一気に最後まで刺す。同時にどろりとした精液を大量に注ぐと、肉が引き締まった。
夏侯惇は突然のことに驚きもあったが、それよりも後になって体中に駆け巡る痺れにより上書きされてしまったらしい。どう見ても目の焦点が合わなくなると、勢いのよい射精をしながら体を喜びにより震わせた。
体も心も、精力剤により堕ちやすくなってしまったのか。
そこでさすがに夏侯惇が呼吸をできないのだろうと、僅かな正常から導き出した。于禁が唇を離すと、唾液がだらりと流れ出る。夏侯惇は激しい息切れをしており、今にも窒息してしまいそうだった。
于禁は夏侯惇の逞しい背中に手を回すと、肩甲骨のあたりをなぞる。しかしその些細な動作でさえ、夏侯惇の呼吸が和らぐことはなかった。ひたすらに息を乱す。次第に、瞳からは大きな涙がこぼれていた。
「ぁ、あ……ぉ、らめ、ひ、ゃ……おれ、またイかないと、しんじゃう……! あたまが、おかしくなっちゃう……!」
「っ、は……ぅ……それは、なりませぬな……」
夏侯惇の腹の中は、凄まじく狭かった。今までこのように小さくはなかったのだが、改めて精力剤の効能を知る于禁である。
次に大きな背骨に指を這わせると、于禁は体を激しく揺さぶった。夏侯惇からは空気が割れそうになる程の悲鳴が出る。そしてベッドが大きく軋むと性交ではなく、本当の生殖行為のように二人は交わる。
「い!? ひゃあ、ぁ! あッ、ア!」
于禁は夏侯惇に何かの言葉を掛ける余裕もないくらいに、一心不乱になって竿で肉を抉る。
粘膜がまるで削れてしまうかのように、ごりごりと最奥を突くと夏侯惇は精液ではなく無色透明である潮を噴き始めた。今はそこでは、射精をもうできなくなってしまったのか。
何度も何度も精液を流し込むと、夏侯惇の腹の中は精液で満たされた壺のようになっていた。于禁が体を動かす度にごぽごぽと精液の音が聞こえる。
そこで于禁は大方満足したのか、竿を抜いていく。できていく隙間から精液が垂れると、夏侯惇は入口を閉めるように意識した。だが竿が引いていくと縁が緩んできたようだ。大量の精液が流れ、于禁の腹やシーツを汚す。
「……代わって、頂きましょうか」
夏侯惇の竿を見るなり、于禁がそう呟く。だが夏侯惇が首をふるふると横に振っていても、于禁は体勢を逆転させた。于禁が夏侯惇を組み敷く。
雄々しい夏侯惇の竿の上に跨がろうとしたが、ディルドがふと視界の隅に入ったのでそれを取る。緩みきってしまった夏侯惇の入口にあてがうと、先程のようにずるりと全て埋めていった。于禁のものよりかは遥かに小さいものの、夏侯惇は腹の中を犯される感覚にうっとりとする。
その間に夏侯惇の竿の上に跨り直し、于禁は自身の入口にそれを侵入させていった。
「ぁ……! あ、ん……」
于禁もやはり、そこを刺激されると気持ちがよかった。体をずるずると降ろしていく。一方で夏侯惇は尻にディルドが入り、そして竿が肉に包まれていく二つの感覚に目眩を覚えた。大きく混乱しながら、悲鳴混じりの喘ぎ声を上げる。
「ゃ、あ……!? ぁ、ん、っう、あ、あっ……!」
「は、ぅ……おおきい……!」
筒状の肉の感覚で夏侯惇の形や大きさを拾うと、于禁は開いた口が閉じられなくなる。喉からぬるい息と小さな嬌声を吐く。自らの肉で侵食していき、腹の中を開かれながら腰を降ろした。
途中で前立腺を掠めると腰の動きが一瞬だけ止まる。しかし于禁は腹の奥にと求めているので、ただそれだけを考えながら体をどうにか揺らしていった。
「ァ、あ……もう、イけないから、んゃ、ぁ、ッひ、ぅあ……!」
于禁は夏侯惇の訴えを無視して、更に黙らせるように挿れているディルドを動かす。指先で底の平たい部分を震わせるだけで、夏侯惇の竿が膨張してくるからだ。そして腹の奥へと進めながら、固定をするように強く締め付けた。
すると夏侯惇の竿からは潮ではなく、まだ薄まっていない精液が飛び出た。于禁の腹の中に滑り込んでいくと、それを潤滑油にして一気に腰を降ろす。于禁のへそからごぽと音が鳴り、棒の先端のような形状が少し浮き出た。
于禁は一時的に喉に空気を吸い込むことしかできなくなり、脳に酸素が行き届かなくなる。夏侯惇はそれに曖昧に気付いたのか、手を動かそうとした。しかしその時に全身が動いて于禁の中で小さな円を描き、そして尻に挿れているディルドの位置が変わる。
「ぉ……!? ぁ、お!? あ……ぁ……」
「ッひ、ァ、アぁ! ぶんそく……イく、あ、ぅ……ぁあ!」
なので二人にとてつもない快楽が襲い、思考を完全に焼き切った。
息を絶え間なく吐けた于禁は、夏侯惇を見下ろす。まだ竿が上を向いており、于禁のものも同じである。それに、まだ体力も残っているのだろう。
なので互いに体を揺さぶると、于禁の竿も精液を吐く。肌と肌が痛いと思えるくらいに、激しくぶつかり合う。精液が自身の胸にかかり、腹に垂れていくが于禁は気にならないようだ。すると次第に体が倒れていき、夏侯惇に覆い被さる。
どちらの唾液なのか分からないが深く口付けをする。そして互いの体の至る箇所が体液でべとべとになっても構わず、二人は交わり続けたのであった。精力剤の効果が切れるまで、ずっと。