君との季節 - 1/4

話し声 共に絶えない 春暖炉

 

「……で、最近の調子は?」
夏侯惇は今、椅子に座りノートパソコンの画面を見ていた。そこには一人の男の胸から上が映し出されてあり、ビデオ通話をしていることが分かる。デジタルの時計を見れば時刻は夜の十二時を回ろうとしている。季節は春の前であり、冬は越した。しかしまだ寒さが続いているので、暖房を切ることができない。
二人はビデオ通話を始めたばかりだが、その際にまだ寒いなどと言い合っていたようだ。夏侯惇はちらりと、デジタル時計の時刻と共に表示されている室温を確認した。暖房が効いているので、寒いということはない。そしてパソコンの画面の左下にある、住んでいる地域の現在の気温を見ると溜め息をついた。
「私の方は変わりはありませぬ」
画面に映っている男は普段から厳しい顔つきをしていることが分かるが、夏侯惇へはふと優しい表情を見せていた。一目で、親しい関係ということが分かる。
「ですが……」
すると相手の男の声が曇り始めると、夏侯惇は「どうした? 于禁」と訊ねる。
「実は、一人暮らしをしようと思いまして……」
「一人暮らし? 保護者とは相談したのか?」
相手の男、于禁は眉を潜める。どうやら一人暮らしをするということは、独断で決めたらしい。
そもそもこの男、于禁は現在は大学生二年生になるところであり親と同居している。対して夏侯惇は高校教師で、言わば元教え子という関係にあたる。しかし二人は于禁が高校を卒業したと共に付き合い始めたのだ。
今もなおその関係が続いており、二人はこうして暇さえあればビデオ通話をしている。だが毎週金曜日になると于禁が夏侯惇の家に泊まりに来る。そのような日々を送っていた。
「いえ……まだ相談しておりませぬ」
「俺にまずは言うよりも、保護者と相談しておけ。だが……一人暮らしをするなど、どうしたのだ?」
もしかして保護者の負担になるからなのではないのかと思ったが、夏侯惇は自身の想像でしかない意見を口にするのを止める。
于禁を見れば、少し動揺しているように見えた。どうしたのだろうか。
「いや、その……」
珍しく言葉を濁らせる于禁に、夏侯惇は首を傾げる。そうしていると、于禁が言葉をどうにか繋げていく。
「今更だと思われるかもしれませぬが、その……外泊をしていることを遂に知られてしまい、気まずくなりまして……」
「ん? つまりは、今まで外泊をしていたことを知られていなかったのか?」
于禁が夏侯惇の言葉に頷くが、今は高校生ではなく大学生だ。未成年だということでもないのだが、人の家にはそれぞれルールが存在すると思っている。夏侯惇だって教師であるので、予想もできないような家庭内のルールも存在するのを知っていた。
「はい、貴方の家で。ですが、特にそれに関しては反対されてはおりませぬ。それでも、どうにも気まずくて……」
察した夏侯惇は「あぁ……」とだけ呟くと、于禁の頭が項垂れていく。
「ですので、明日、相談してみます。聞いて頂いて、ありがとうございました」
「いや、構わん。しかしすまんな。俺は話を聞くことしかできないが……」
于禁が首を横に振るが、夏侯惇の言葉を否定したいようにしか見えない。しかしどこを否定したいのだろうかと思っていると、途中かららしい。
「本当に、聞いて頂きありがとうございました。私が自立している身であれば、貴方と二人で相談したいと言うのに……」
「ん? なんだ? 俺にプロポーズでもしているのか?」
「はっ!? いえ、違いま……いや、違う訳でも、あっ、いや!」
分かりやすいくらいに、于禁は慌てていた。自身の無意識の発言がかなり恥ずかしいらしい。顔を熟した林檎のように真っ赤にしていた。だがそれが微笑ましく、そして楽しみだと思えた夏侯惇はにこやかに笑う。
「どうして貴方は笑……! い、いえ、何でもありませぬ! では、失礼致します!」
未だに于禁が顔を赤くしながらビデオ通話が終わった。画面が暗くなったと思ったら、ビデオ通話アプリのホーム画面に戻る。夏侯惇はその画面になっていてもなお、于禁の先程の発言を思い出しては微笑んでいた。
「二人で、なぁ……」
いつかではなく、近い将来。于禁が大学や大学院を卒業し、そして将来の夢である裁判官になればそのような生活がやって来る。夏侯惇はそれが楽しみで仕方なかったが、これほどまで関係を続けられたのは于禁が初めてである。
特に将来の話など、異性と付き合っていた頃はしたことがない。いつもそれが原因で自然消滅や、別れを切り出されている。なので于禁との関わりは新鮮でしかないのだ。
夏侯惇はパソコンの電源を落とすと共に、暖房の電源も切ろうとした。しかしまだ寒いと思い、切らないでいた。この暖かさが消えてしまえば、于禁との楽しい会話が終わってしまうと思い込んでしまっていて。
時計を見れば既に日付は変わっていた。夏侯惇は今日は何曜日なのかと確認するが。まだ水曜日になったばかりである。溜め息をつきながら、ベッドに入っていた。

次の日の夜、昨夜と同じような時間帯に于禁とビデオ通話をしていた。
「すぐに一人暮らしについての相談をしました」
「ほう」
疲れているので少しだけ眠たい。そう思いながらも夏侯惇は于禁の話を感心しながら聞いていた。なのでか、于禁に「大丈夫ですか?」と聞かれるものの、夏侯惇は「大丈夫だ」と言った後に歯で小さく舌を挟んだ。痛みが走り、少しは眠気が軽減される。
眠気が少しは去ったところで、夏侯惇は「で、どうだった?」と聞くと、返事があったようだ。于禁が頷く。
「了承を得ました。ですが……土日は物件を早速見に行くので、貴方とは会えませぬ。申し訳……」
「いや、大丈夫だ。そのようなことならば仕方ない。良いところが決まるといいな」
「はい、ありがとうございます」
于禁は画面越しであるというのに、深々と頭を下げる。律儀過ぎる男だと思いながら、夏侯惇はフォローを入れる。
「まぁ、お前とはいつでも会えるところに住んでいるからな。大したことはない。気にするな」
仰々しく于禁が頷くと、話題を変えようと何かを考えた。しかし先程取り払った筈の眠気が再び襲いかかってくる。今度も同じ手ではいかないようだ。なので遂に限界がきた夏侯惇は詫びを入れた後にもう寝ると言う。勿論、于禁は頷いた。
「では、また来週会えたら、私は嬉しいです」
「俺もだ。ではな、おやすみ」
ビデオ通話を終えると、夏侯惇は昨夜のようにパソコンの電源を切ってから、暖房の電源は切らないでいる。そしてベッドに入り照明を落とすと、眠りについた。

金曜日の夜になったが、夏侯惇は金曜日から休みにかけて一人になるのは久しぶりだった。なのでどう過ごせばいいのか分からず、夏侯惇はふと于禁の歯ブラシなどを見る。
いつもならば、于禁と楽しい夜を過ごしていた。だが今日は一人だ。だが何もすることがなく、思いつかないのでもう寝るしかない。まずは風呂に入ってから冷蔵庫を開けると五百ミリリットルの酒の缶があった。于禁はまだ飲める年齢ではないが、いつでも酒のストックはある。一人で飲む為に。
なので酒を飲みながらベッドの縁に座ると、天井を見た。すると寂しい、という感情が浮かんでくるがそれを酒で飲み込む。今は耐える時だ。今耐えることができれば、この先は于禁との時間を存分に楽しむことができる。溜め息をついてから酒を飲むと、夏侯惇はそのまま眠った。明日の朝は、起こす者は居ないのだが。
朝になれば、夏侯惇はベッドの中に居た。なので起き上がってから床に足を着けると、昨夜の酒の容器を踏んでしまう。ベコっと大きな音が静かな部屋に響く。思わず夏侯惇は顔をしかめ、床に転がっている缶を睨んだ。踏んだことにより痛みはあまり無いものの、夏侯惇の気分が下がる材料になってしまったようだ。
大きな溜め息をついた夏侯惇は酒の容器を拾うと、キッチンに向かってから流しに置く。
「于禁が居ればな……」
ふといそう呟いてしまうが、ここに于禁は居ない。当然、部屋中を見渡してもだ。
「今週の金曜日は、来てくれるだろう」
言った後に週末のことを思うと、夏侯惇の気分が戻っていく。そして会えなかった分は、週末に于禁に癒やしてもらおう。なので夏侯惇は、まずは朝の支度を始めたのであった。

数日後の日曜日の夜、二人はいつものようにビデオ通話をしていた。珍しく于禁の厳しい表情が常に緩んでいるのを見て、夏侯惇は一人暮らしについて何か進展があったと察する。だが夏侯惇から聞くのではなく、本人から言わせたいと思った。于禁から、そのような明るい話題を話して欲しいのだ。
「あの、夏侯惇殿」
待っていると、何やらモジモジしている于禁がそう話しかけてきた。夏侯惇心の中で待っていたと、ガッツポーズをする。
「どうした」
しかしこれを外に出すのは何だか大人げないと思い、素知らぬふりをなるべくしていた。当然、于禁には見通されていない。
「あの、先日話した、一人暮らしの件ですが……」
「あぁ、どうだった? 良さそうな物件が一つでも見つかったか?」
パソコンのカメラに向けて笑顔を向けると、于禁は照れたのか後頭部を緩く掻く。その様子が可愛らしく、そして未だに初々しいとも思えた。
「すぐに、良い部屋を見つけたので、そこにしました」
「決まるのが早いな……だが、そこでいいのか? セキュリティや立地、家賃は大丈夫なのか?」
夏侯惇がそう心配するが、于禁は首をゆっくりと横に振った。見たところ、決めた部屋で問題ないらしい。それらに加えて、于禁は夏侯惇に説明を足していく。
「家賃については、親に甘えるのは良くないと思いまして、アルバイトをすることにしました」
「ほう、偉いな」
感心をしたが、于禁の言うアルバイトとはどのようなものなのだろうか。予想をしてみるが、どうにも接客業しか思いつかない。だが失礼ながらも、于禁に接客ができるのかどうかと思う。顔つきからして、人を萎縮させてばかりなのだから。
つい恋人の短所のような箇所を思い浮かべてしまった夏侯惇は、よくないと強く思ってしまう。なので「いや、良くないな……」と呟くと、于禁が「はい?」と返事をしてくる。聞こえてしまっていたらしい。
「いや、すまん。何でもない」
「私は大丈夫ですが……あぁ、そういえばアルバイトの内容ですが、高校生を相手にした家庭教師をすることにしました。月曜日から木曜日の夕方からになります」
「いいじゃないか。お前に向いていると思うぞ」
なるほど、と夏侯惇は頷く。夏侯惇が大学生の頃にも。同じ学年でもそのようなアルバイトをしている者が居たが、中には異性の相手をしているからか手を出しているようなことも聞いたことがある。
于禁はそのようなことをしないと信じたい。恋人であるので、不貞行為をしないと信じたい。だがしかし異性であれば、于禁だって性に関しても盛んな年頃である。もしもそうであれば、と夏侯惇は次第に心配になってきた。
「金曜日から日曜日は、貴方と過ごしたいので、その曜日だけにしました。二時間程のアルバイトですが、きっちりこなしたいと思います」
于禁から「貴方と過ごしたい」と、そう聞いた瞬間に夏侯惇の中で安堵込み上げる。やはり、自身は于禁に愛されているのだと。誇らしく思った夏侯惇だが、当然于禁を愛している。なので相思相愛だと口角が上がりかけた。しかし年上としては、それを見せるのはどうにも憚られる。
「いや、あっ! その……」
于禁からあまり好きだという言葉を聞かない。理由は分かっていて、単に照れているからだ。夏侯惇がそれを理解しているので、普段からそのような態度でも特に気にしていない。寧ろ時折に出す、好意を示す言葉が嬉しかったりする。
なので夏侯惇は遂に口角が上がるのを止められなかった。
「ん? どうした?」
わざとそう言うと、于禁の顔がどんどん赤くなっていく。そしてこのような于禁の表情を見ることができるのは、世界でどこを探しても自身だけだ。それもまた誇らしく思っていると、于禁は慌てたように訂正の言葉を言おうとしているのが分かる。
「いえ、何でも……ごほん、ですので、私がこれから借りる部屋については何も問題はありませぬ。それに実は、貴方と近い場所にあります」
「それは本当か!」
あまりの喜びについ立ち上がってしまうと、パソコンのカメラからはみ出してしまう。スピーカーから「夏侯惇殿!?」という驚きの声が聞こえると、ハッとしてから着席した。
「す、すまん……」
小さく咳払いをした夏侯惇は、控えめに謝りながらパソコンの画面を見る。見れば于禁はずいとカメラに顔を近付けていた。そこでふと、カメラ越しではなく実際に目の前に居ればと考える。そうであれば、夏侯惇も近付けばキスをすることができただろう。
一週間も于禁に会っておらず、夏侯惇の中で限界が来ていた。会いたい、触れたいという思いが自身の中で蓄積されていき、溢れてしまいそうである。そう、自覚してしまっていた。
「……あの、夏侯惇殿」
画面の中で于禁の顔が離れていくと、遠慮がちにそう話しかけてきた。なので夏侯惇は拳を握りしめながら「どうした?」と聞く。
「明日、お時間はありますか?」
「明日? 夜ならあるが」
すると于禁の顔が晴れていくのを見て、夏侯惇は期待してしまう。もしかして、明日会えないかという誘いが来るのではないのかと。
「明日、会えませぬか?」
「いいぞ」
即答をすると于禁にくすくすと笑われた。しかし夏侯惇は良い気分である。期待通りの言葉を聞けたうえに、于禁と会うことができる。それだけで、嬉しかったのだ。
「ありがとうございます。では、明日会いましょう。おやすみなさいませ」
「あぁ、おやすみ」
ビデオ通話が終わると、通話アプリのホーム画面が表示される。履歴を見れば全て于禁とのビデオ通話の記録等が表示されており、ほぼ毎日于禁と話せていることを幸せに思った。
だがそこで夏侯惇は気付く。そういえば、明日はどこで会うのか聞いていなかった。于禁とビデオ通話できたうえに会う約束をして浮かれてしまったからだ。夏侯惇は肩を落としながら、スマートフォンをゆっくりと手に持った。メッセージアプリを開き「どこで会うのだ?」と送る。そして十分程待つが返事が来ない。もしかして寝てしまったのだろうか。夏侯惇はそう思いながら返事が来ることを諦めると、ベッドに入って眠りについた。
翌朝、起床と共に夏侯惇はスマートフォンの通知を確認した。すると少し前に于禁から返信があり「貴方の家の近くのカフェで」とある。夏侯惇は思い当たるカフェがあるので、「分かった」と返すと出勤の為の支度をしていった。
勤務時間中は時間を気にしていた。早く夜にならないか、早く于禁に会えないかなどと。勿論、仕事の手を抜く訳にはいかない。ほぼ一日中授業が入っていたので、準備などに追われていた。なのであっという間に時間が過ぎ去ると、いつの間にか放課後になっていた。
三年生の補習や明日の授業の準備をしていると、外は暗くなる。なのでスマートフォンで時間を確認しようとすると、于禁からメッセージが入っていた。もう、待ち合わせ場所に居ると。夏侯惇は素早く帰る支度をすると急いで退勤をし、待ち合わせ場所に向かう。もうすぐ、于禁に会えると。
十数分後に待ち合わせ場所に到着するなり、店員が接客をしようとしていた。だが夏侯惇は「待ち合わせをしている」と告げた後に、店内を見回す。特に仕切りは無く、席の空き具合が一目で分かった。なのでどの席に于禁が居るのか容易に見つけることができる。
于禁が居るテーブル席に向かっていると店員が着いて来る。盆を持っており、その上に冷水の入ったグラスが一つ乗っていた。
「于禁!」
「夏侯惇殿」
于禁の向かい側に座ると同時に、店員が目の前にグラスを置いてから去る。それを確認した夏侯惇は于禁の顔を見るなり口角を上げてしまう。久しぶりに直接会えた喜びからか。
「お久しぶりです。先週は……」
「いや、気にするな」
今すぐ手を伸ばして于禁に触れたかった。しかしここは家の外である。職業柄としても、人目を気にしなければならない。なのでぐっと我慢をしながら、テーブルの隅に立ててあるメニューを取り出す。見れば、于禁はコーヒーを注文していたようだ。しかしまだカップに半分以上あり、湯気は既に消えている。冷めていた。それを夏侯惇は申し訳なく思いながら見る。
「ん? いえ、私のことはお気になさらず」
「あぁ、すまん。そうだな……俺も、お前と同じものでいいか」
近くを通りかかった店員を呼び止めると、夏侯惇はホットコーヒーを注文した。メニューを元の場所に戻すと、スマートフォンをテーブルの上に置く。
「貴方と久しぶりに会えて、私は嬉しく思います」
「俺も同じだ。それで……金曜日は、いつものように来れそうか? あっ、いや……すまん。無理には言えんが……」
言い始めたところでハッとした夏侯惇は訂正をするが、于禁は穏やかに笑いながら答える。
「はい、また、いつものようにお邪魔します」
「そうか、良かった」
あまりの嬉しさに声が大きくなりかけたが、夏侯惇はぐっと堪える。
そして次に于禁のアルバイトのことが浮かんだが、何か言うのは控えておいた方がいいだろう。なので口をつぐんでいると、于禁がそわそわとし始める。そしてこちらの目をちらちらと見ているが、どうしたのだろうか。
于禁の態度が気になっていると、店員が来た。盆を持っており白いカップが乗っているので、夏侯惇が注文したコーヒーだということがすぐに分かる。そして店員と目が合うなり、目の前にコーヒーが置かれた。黒い液体からは湯気が立っており、そしてコーヒーの良い香りがする。提供するなり店員が去ると、カップを持ち少しだけコーヒーを啜った。まだ熱いが、少量のコーヒーが喉を通る瞬間は心地が良い。
まだこのコーヒーが冷めない限りは、于禁と話すことができる。そう思うと于禁のアルバイトのことを少し聞くことにした。
「お前のその家庭教師のアルバイトは、全ての教科を教えるのか?」
「いえ、数学と化学だけです」
「なるほどな」
自身よりも于禁の方が遙かに頭が良く感じた夏侯惇は、もう一度カップを持つ。そしてコーヒーを啜ったところで、于禁が顔を曇らせながら口を開く。
「教えられる自信は、あります。ですが、その……私の外見で、威圧を与えないか心配で……」
于禁の悩みが漏れたところで、夏侯惇はクスッと笑ってしまった。案外、厳格な顔のことを気にしているらしい。だが夏侯惇はそのような于禁も好きである。
この場で于禁に「その顔が、いや全てが好きだ」と言ってしまえば、どのようなリアクションを見せてくれるだろうか。公共の場であるが、後で于禁が拗ねてしまいそうなので止めておく。于禁とは面白いリアクションを見るために付き合っている訳ではないのだから。
なので夏侯惇は教職員として立場でアドバイスをすることにした。
「教える立場であれば、それでいい。変に愛想良くすると、舐められてしまうからな。あまりにもは薦められないが、ある程度の怖さを持つことも大事だ」
「夏侯惇殿……!」
于禁の顔が一気に晴れた。そこで夏侯惇は先程の態度をしていたのは、その悩みが原因だったのかと理解をする。
「ありがとうございます。それで……夏侯惇殿、私の家庭教師のアルバイトは、早速明日からになります。ですが、その……」
そこで于禁は何か言葉を出そうとしているが、大きな躊躇を見せていた。それを見てすぐに焦れた夏侯惇は、どうしたのかと訊ねる。しかし于禁は目を逸らしたかと思うと、スマートフォンを取り出した。操作してから素早く文章を素早く入力すると、テーブルに置いてからこちらに見せてくれる。夏侯惇は画面を凝視した。
「……ほう」
納得の返事をした途端に于禁は顔を真っ赤にする。スマートフォンに入力してある文章とは、簡単に「どこかで少し休憩」とあったからだ。
今の于禁の年頃では、このまま金曜日まで我慢することなどできないだろう。本能的にも求められていることを改めて知った夏侯惇は、小さく頷く。
「待っていろ」
まだ熱さの残るコーヒーを一気に飲み干すと、喉が熱くなる。そして空になったカップを于禁に見せた後に「俺が払う」と言って、伝票を素早く取り上げた。
「先に外で待っていろ」
「……ッ! は、はい」
動揺を見せた于禁だが夏侯惇が誘いに応じてくれたからか、素直に引き下がってくれる。二人で同時に立ち上がると、夏侯惇は足早にレジに向かう。于禁はすぐに店の外に出た。
会計を終えると夏侯惇はいわゆる、そのような場所が集中している区画がある方向を見る。于禁が頷くと二人で目的の場所へと、普段よりも歩幅を広くしながら向かっていった。
ホテル街へと辿り着くと、二人は適当なホテルに入る。フロントは無人であり、自動精算機で料金を支払うとカードキーが出てきた。それを夏侯惇が取ると、部屋の番号が表示される。于禁の目を見てから、少し歩いたところにあるエレベーターに乗った。
「もう少しだからな」
「はい」
于禁の返事には、興奮が顕著に現れていた。その興奮している様子が可愛らしいと思いながらも、目的の階層の数字のボタンを押すとエレベーターが動く。そして到着すると夏侯惇が先に出てから廊下を歩いた。于禁はそれに後ろから着いて来る。そこから、二人は無言になった。
ようやく取った部屋の扉の前に立つと、夏侯惇はカードキーをかざして解錠をする。部屋に入り、于禁も入ったので施錠をするなり勢いよく抱き締められる。夏侯惇の体が大きく揺れた。
「夏侯惇殿……!」
強引に顎を掴まれてから唇が合わさる。于禁の舌が伸びてくるが、カフェで飲んだコーヒーよりも熱かった。それにより、夏侯惇の脳が溶けてくるように思えた。
「ん……! フぅ、ん、んんっ、っう!」
舌を捉えられると、まるで食うように吸い上げてくる。そして腰を押しつけられるが、于禁の下半身はかなり勃起をしていた。興奮していることがよく分かる。
だがこのままでは服が汚れてしまうので、まずは于禁のスラックスを脱がせていく。ベルトに手を掛けてから手際良く外すと、自然とスラックスが床に落ちる。次に夏侯惇自身のスラックスも床に落とすと、于禁の下着に触れた。既に染みができているのですぐにずらすと、ぶるんと太く長い逸物が飛び出る。
「でか……」
思わずそう呟いてしまうと于禁がニヤリと笑うので、夏侯惇はその逸物をやんわりと触る。そこは舌よりも熱く、火傷でもするのではないのかと錯覚してしまう。それに先走りによりかなりぬるついており、ついそれを指先で掬ってしまう。
やがては垂れると、床にぽつりと落ちた。それと同時に、夏侯惇は膨らんでいる逸物をゆるゆると上下に扱き始める。于禁からは地を這うような低い呻き声が盛れ、そこからは夏侯惇が主導権を握った。
「気持ちいいか?」
小さな笑みを浮かべながら于禁にそう訊ねると、当たり前のように肯定の頷きが返ってくる。それを満足気に見ていると、于禁の逸物が更に膨らみ始めた。これは、射精の寸前の予兆である。それを感じ取った夏侯惇は、逸物から手を離した。
すると当然のように、于禁が不満の目を向けてくる。
「夏侯惇殿……」
「イくなら、俺の中でイけ」
そう言ってから夏侯惇は下着をずらした。少し久しぶりであるので、完全には受け入れられる状態ではない。途端にそれを思い出すと舌打ちをしてから「浴室に行くぞ」と、側にある扉を見る。そこに浴室があると思ったからだ。
「はい……ですが、早く、貴方の中で……」
于禁は苦しげにしながら股間を押さえる。気持ちは分かるのだが、と夏侯惇は于禁の手をぐいと引いた。そして側にある扉を開けるとやはり浴室であるが、まず目に入ったのが全身を写す鏡である。
見れば于禁は勿論のこと、自身が興奮している姿がある。前は下半身が大いに勃起しており、後は于禁のものを受け入れたいと震えていることだろう。
すると夏侯惇の中でとある感情が芽生える。この鏡に写されながら、于禁の逸物で果てたいと。或いは自身が果てる姿を見てみたいと。
片膝をゆるゆると上げると、下半身の袋までも自身に見せる。とてもだらしなかった。
「良いお姿ですな」
「そうだろう?」
自慢するように更に見せていくと、于禁の息が荒くなっていくのが分かる。そろそろ、理性に限界が近付いているのだろう。
夏侯惇はそれを宥めながら服を脱ぎ散らかす。同時に于禁も服を素早く脱いでいくと、互いに全裸になった。二人の体を隠すものなど、もう何もない。
于禁の手を引くと浴室に入った。そこはかなり広く、浴槽や鏡までも大きい。鏡は先程のような大きさであり、浴槽は体の大きな二人でも余裕で入ることができるだろう。
「今、解すから、待っていろ、ぅ……あ!」
于禁と会えない間でも、時には自身で入り口を弄っていたときもあった。夏侯惇は、あまりに于禁に抱かれない為に耐えきれなかったからだ。二日程前に解したばかりなので、容易に拡げることができるだろう。そう思いながら、鏡に写っている自身を見ながら入り口に向けて指を這わす。
入り口に指先をそっと触れると、夏侯惇の中で興奮が大きくなっていく。またここに于禁の逸物を受け入れ、そして果てることができるのだから。
「は、はぁ……于禁……!」
それまでの表情を于禁に凝視されていた。勿論、于禁の口は半開きになっており、高揚が隠し切れていない。相当に、今の自身の姿に欲情してくれているのだろう。
「夏侯惇殿、もう少し、どちらかの脚を上げて下され」
「ん……」
言う通りに夏侯惇は右脚を上げると、于禁が手を伸ばしてきた。太ももを通ったかと思えば、そのまま入り口へと辿り着く。夏侯惇は一瞬だけ背中をぞわりと震わせたが、そのような反応など于禁に打ち消された。于禁の指も、入り口に向かって行ったからだ。
「ッ! ぁ、あ……」
顔を歪ませた一方で、于禁の笑みは消えなかった。そして入り口のそれなりの柔らかさを確認すると、こちらの様子を窺わずに指を強く突っ込んだ。途端に体がびくりと跳ね、夏侯惇の脳が快楽に支配される。
だがこの感覚が堪らないと思っていた。于禁にこうして気持ちの良い箇所を触れられるのは、寧ろ光栄である。なので自然を口を開くと、そのまま舌を僅かに覗かせる。
「は、はぁ、っあ、于禁、いい……」
犬のように呼吸をしながらそう言うと、于禁の顔が近付いてきた。唇が合わさったかと思うと、舌が入り口腔内をまさぐられる。上顎、舌の根元、歯列を入念に。
「んんっ……ん!」
「ふぅ、ぅ! う、ッふ」
そのまま、于禁の指が動いた。そして未だに挿入していない自身の指と同時に侵入していくと、入り口の縁を通ったところで凄まじい快楽が走った。思わず夏侯惇は背中をブルブルと震わせるが、その動きを止めるように于禁が片腕で力強く抱き締めてくる。
すると腹の中が疼いたが、何が起きたのかは分かっている。腹の中を緩やかに締め付けたからだ。于禁も当然のようにそれを知っていると思っていると、唇が離れた。太い唾液の線が形成されるが、すぐに簡単に切れてしまう。
「今、締めましたな……」
「ん……」
于禁の顔を見ると頭の中がチカチカとしてきた。本能が抑えきれなくなってきているが、それを満たす為にと腰を緩やかに振る。当然のように互いの指が入っていき、そしてずるずると深く入っていく。その感覚が来ると同時に夏侯惇は、更にだらしなく舌を出した。
自身でも意味の分からない母音を数回吐くと、于禁の指がぐいと曲がった。明らかに前立腺を触れているが、触れられた途端に夏侯惇の体が大きく跳ねた。あまりの快楽に、身を跳ばせているのだ。
「っひ、ァ、あ! やら、そこぉ……!」
「ん? ここが、よろしいのでしょう?」
わざとらしく再度指を曲げると、やはり前立腺に触れる。そして于禁の唇が耳元に寄ると、ちゅぱちゅぱと水音が聞こえた。鏡を見れば耳たぶを舌で扱い、飴のように舐めているのだ。湿った音や感覚が耳から脳に伝わり、夏侯惇の体だけではなく頭まで墜ちていく。もう引き返せないくらいにだが、引き返すつもりなど微塵も無いのだろう。
夏侯惇の全てが、甘く蕩けていく。
「ん、んっ、んんッ……!」
そして射精をしようかと思ったが、于禁に竿を握られてしまう。止められたのだが竿に血管が張り巡らされ、そしてどくんどくんと大きく浮いている。
于禁は「夏侯惇殿、また、後で……」と懺悔をするように、入り口の拡張を再開していく。ただし、竿は未だに握ったままで。勿論、夏侯惇は苦しかった。単純に思うがままに射精をできないからだ。
ここは我慢をしなければと、僅かに残っていた理性でどうにか繋ぎ止めようとした。だが本能に振り回されてしまい、于禁の腕を振り払ってしまう。なので于禁の手が離れた瞬間に射精をしてしまうと、とても気持ちがよかった。于禁の指でも入っているだけで、尿道から流れる精液の勢いによく反応してしまう。于禁の手によって、果てることができたのだと。
「あ、ッ……! ぅあ、はっ、あ……!」
「夏侯惇殿、そのようなことでは……これでは、仕置きが必要ですな」
于禁の声は呆れていない。寧ろ相変わらず鼻息を荒くしながら、夏侯惇の竿を握った。射精直後に触れられる感覚がとても気持ちが良く、夏侯惇はまたしても射精をしかける。だが今度こそはと我慢をしようとしたが、無駄だったようだ。握られた瞬間に、またしても射精をしてしまっていた。それほどに、于禁を求めていることになるのだが。
「これは……」
夏侯惇自身の腹にまで精液が飛ぶと、于禁はそれを指で少量掬った。そしてそれを胸にまで持っていくと、片方の突起の部分にぬるぬると塗り込んだ。左右や上下へ、丹念に。
途端に気持ちの良い痺れが起きると共に、またしても射精をしてしまうと、そのまま竿が下を向いた。夏侯惇の精は出し尽くしたらしい。一方の于禁は一滴も精液を垂らしてはおらず、我慢汁がダラダラと流れていた。背中をそれで時折にぬるぬると擦られるが、もう勃起する気配は無いと振り向いた。
「うきん……」
「私が、まだですので」
そうとだけ返されるや否や、指が引き抜かれた。同時に夏侯惇の指も抜けていくと、すぐさま于禁の逸物があてがわれる。夏侯惇は嬉しさのあまりに悲鳴を出すと、ずぶりと入り口に入っていく。
「はッ……! ぅ、う、ん、ぁ、あぁ……」
入り口に入っただけでも、相当な快楽である。これで于禁の逸物の全てを飲み込んでしまえば、頭がおかしくなってしまうだろう。いや、何度も頭をおかしくされている。狂わされている。
夏侯惇は期待の笑みを浮かべていると、またしても于禁に顎を強引に掴まれた。そして次も于禁から口付けの主導権を奪おうとしたが、そのまま于禁に舌を吸われていく。もう遅かったようだ。
すると力が抜けて前のめりに倒れそうになったが、後から于禁が支えてくれている。なので倒れずに済むが、その代わりに于禁の逸物がどんどん飲み込まれていく。入り口の拡張は、これでいいのか詰まる気配はない。
「ん、んんッ、っ、ぅん!?」
「ふぅ、ふ……ん、ん……」
于禁の逸物が簡単に全て入った。夏侯惇は全身が多幸感に包まれたと思うと、そのまま勃起をせずに果てた。腰がびくびくと痙攣をし、遂には于禁の支えが危うくなる。
それを察したのか、于禁が唇を離し逸物を抜いていった。夏侯惇はまだこの快楽に浸っていたいと思ったので、待って欲しいと懇願をしようする。そこで于禁に先を越されたようだ。溜め息交じりに于禁が口を開く。
「ベッドの上の方が、安全です」
どうやら于禁は夏侯惇自身の安全性を考えていてくれたようだ。なので自身の浅はかさに反省をしようとすると、于禁に軽くキスをされる。
「今夜は……貴方が失神をされるまで、続けるつもりです」
「それは、楽しみだな……」
于禁からの嬉しい言葉に、夏侯惇は媚びを売るように于禁の腰に手を回した。逞しくとも、夏侯惇はこの腰に、この体に触れるのが好きだ。なので離すつもりなど全くない。
そして二人は軽く湯を浴びた後に、大きなベッドの上に乗りかかった。体格が良く、それに身長の高い男が二人が乗っている。当然のように大きく軋んだ音が鳴るが、二人にはそれが聞こえていないようだ。ベッドの上に乗るや否や、すぐに唇を合わせたからだ。
「……ん、んぅ!」
夏侯惇が小さな声を漏らすと共に、于禁の手が伸びた。その手は肩に向かったかと思うと、そのまま押し倒された。同時に于禁の体も動くと、脚を開かされる。
「っは、はぁ、はぁ、夏侯惇殿……夏侯惇殿……」
すると于禁はあまりの興奮に手が止まってから震える。それを見てどうしたのかと見るが、様子は変わらない。なので焦れてしまった夏侯惇は、腰のみを上げた後に入り口を于禁に見せる。そこは、何度も何度も収縮を繰り返している筈だ。夏侯惇はそう思いながら、更に言葉までも加えていく。
「ほら、随分と溜まっているのだろう?」
笑みを浮かべて見せると、于禁は大きく悶絶した後に息を荒げた。目つきなどはもはや人間のものじゃない。何かの、獣と呼べば良いのだろうか。それくらいに、于禁は動物の雄のような雰囲気を纏っていた。
「ほら……来い。仕置きはまだか?」
入り口にわざと指を挿入すると、ようやく于禁が動いた。相変わらず荒い息を吐きながら、逸物を入り口にあてがう。その際に何かを言おうと口を大きく開いていたが、すぐに半開きにした後にゆっくりと逸物を埋めていく。
入り口の縁に触れられた瞬間から、夏侯惇の甘い痺れが始まっていた。
「ッあ! ぁ、来る……! ゃ、あ、ァあ……ぁ、ん……」
「はぁ、はぁ、気持ちいい……」
于禁の語彙力がもう無いらしく、ひたすらにそれしか言わなくなっていく。だが寧ろそれが良かった。それが自身に興奮してくれている証拠となるのだから。
「もっと、おく……」
腰をいやらしく振ると、于禁の逸物の侵入が早まる。先端の立派な括れまで来ると、夏侯惇の体が自然と揺れる。我慢が、できなくなっていく。竿が萎えていようとも、于禁の逸物で何度も果てたいのだ。
括れが入るところで流石に苦しかったが、于禁が首元に唇を這わせてくれたおかげで意識がそちらへ向いていた。なので直後に簡単に侵入を許してしまうと、夏侯惇の体が次は大きく跳ねた。于禁が、一気に奥へと逸物を貫いたからだ。当然、夏侯惇の体にその衝撃が伝わるが、とてつもなく大きいものである。思わず、舌を噛みそうになっていた。内臓や骨にまで渡り、しばらくその振動が体内を響いている。
「んぐ、ぅ……!?」
ようやく止んだかと思いきや、于禁が腰を振り小さな律動を始めていく。最初こそは小さい音が鳴っていたものの、律動が大きくなるにつれて乾いた音が聞こえてきた。その音を耳で拾った夏侯惇は口からただ嬌声や吐息を漏らし、そして于禁の心を更に煽っていく。
なのでか、しばらく経過すると痛々しい音が部屋中に響き始める。同時にベッドからは壊れるかと思うくらいに軋んだ音が鳴り、とてもうるさかった。その中で夏侯惇は痛みではなく、ひたすらに快楽に浸っている。
「う、ぅん! はぁ、は……うきん、そこ、きもちいい、ッは、ぁあ、ア、そこ、もっと、ァ、あん、あっ、ぅん!」
「私も、好いて、おります! はぁ……っう! は、はっ、はぁ!」
腹の奥をまるで逸物に何度も殴られているようだった。その中で夏侯惇は無我夢中で腰をゆさゆさと揺らした。その動きを一生していくかのように、一秒も止める気がない。
「ぅあ!? ぁ、あ! お……!? ぉ、おッ、あ、ぁ!」
「夏侯惇殿、貴方のこのお姿が、とても可愛らしい……」
体を激しく動かしている于禁の体が汗が垂れてきたが、その殆どが夏侯惇の体に落ちていく。ぽたりぽたりと、何滴も。于禁の匂いが充満し、夏侯惇の興奮は最高潮を迎えた。
すると夏侯惇の腹の奥が疼いたと思うと、すぐにに逸物を締め付ける。そして于禁はその刺激で射精感が込み上げてきたのか、動きを止めてから低い声を漏らす。夏侯惇は精液を全て受け止めるつもりで、于禁の汗まみれの体に触れた。
「はやく、だして……」
「はい、そのつもりで……っぐ! ぁあ、あ……!」
腹の中に熱いものが入っていく。于禁が射精をしたのだ。夏侯惇の腰を掴んでしっかりと固定されると、腹が不自然に膨らんでいくのが分かった。腹の中に、于禁の精液が溜まってきたのだ。その感覚で悦に浸りながら、夏侯惇は于禁の長い射精をひたすらに受ける。
「っ、う、ぁ、あ……! はぁ、はぁ、夏侯惇、殿……!」
ようやく射精が終わったらしく、于禁が体を抱き締めてくる。しかし夏侯惇の腹の中はただひたすらに熱く、もはや射精の終わりなど分からなかった。なので于禁のその行動で射精が終わったと認識した夏侯惇は、覚束ない手を上げて抱き締め返す。見た通りに、于禁の体は汗により手が滑ってしまう。なのでベッドの上にぼとりと腕を落とした。
「は、ははっ、うきん、おれがきを失うまで、だいてくれると、言ってなかったか?」
「もう、萎えてしまったので……」
恥ずかしげに于禁が腰を引かせると、言う通りに先程までの凶器のような逸物の姿はない。そして逸物であったものが簡単に抜けてしまうが、注がれていた精液が大量に溢れてくる。流れてくる感覚に、夏侯惇の体が反応をしてしまう。そこはもはや女の膣のように柔らかく、そして感覚が鋭くなっているからだ。なので小さな絶頂を迎えながら、于禁の顔を見る。
「夏侯惇殿……」
悔しげな顔をしているが、于禁はもう勃起をしていない。夏侯惇だって、意識してそうなった訳ではないのだ。なので「また今度な……」と返してから、于禁の体をしっかりと抱き締めた。
「シャワーを浴びましょう。シーツは……」
「帰ろう」
「えっ?」
今の夏侯惇は大きな幸福状態にある。それをここで過ごしてしまうのは何だか嫌だと思った。それにこのようなことを言えば、于禁に甘えられると思ったのだ。しばらく会えていなかった反動であり、年の差など一時的に忘れてしまう。
「……分かりました」
「タクシー代は俺が払う」
「はい」
夏侯惇はそのまま起き上がろうとするが、腰がガクガクと震えて動かすことができなかった。だが于禁と共に帰宅をしたいと、必死に体を動かしていく。
あまり力の入らない腕で体を支えると、まずは目線を平行に向けることができた。次に脚を上げようとするが、どうにもなってくれない。軽い舌打ちをすると、于禁が助けてくれた。なのでようやく、ベッドの縁に座ることができた。
「ありがとう。次は、シャワー室まで頼む」
「はい」
于禁の肩を借りて、夏侯惇が立とうとする。何度か失敗するもののようやく立ち上がることができると、二人は浴室までゆっくりと歩いていった。夏侯惇は浅く息切れをしている程度なので、体を動かすには苦しいと感じている。しかし次第に慣れていくだろうと、呼吸を整えていく。
「はぁ、は……やはり、いつもとちがう、場所だと……は、なんだか燃えるな」
「はい、確かに。私が最初から一人暮らしをしていれば……」
すると于禁が顔を暗くしながら奇妙なことを言い出したので、夏侯惇は驚きながら声を出す。そのようなことはないと、否定の声を。その時には普段のように呼吸をしやすくなったものの、体が重たいと感じた。
「なにをいって……他の話をしようか。新居の準備、なにか買い物はあるのか?」
「買い物ですか? ありますが」
ふと于禁の顔が明るくなると、夏侯惇は内心で胸を撫で下ろした。先程の表情などあまり見たくなかったし、そのような顔をさせてしまい夏侯惇自身も暗い気持ちになってしまう。それに新居の準備があると聞くと、着いて来てもいいか聞いてみたくなる。もしかしたら、于禁とデートに行けると思ったからだ。普段の于禁は、恥ずかしいのかあまり行きたがらないでいる。
「ではそれに着いて行ってもいいか?」
「……よろしいのですか?」
「あぁ、勿論だ」
浴室に着くと、于禁に頭から湯をかけてもらう。汚れの何もかもが落ちていく様子が、気持ちが良い。それに尻からは精液が未だに垂れてきており、于禁が排水溝に溜まる精液を見る度に眉を下げ続けていた。
次に于禁が自分の体の汚れを洗い流すと、シャワーは終わる。浴室から出ると于禁がバスタオルで体を包んでくれた。だがどうしてなのかアメニティのバスタオルは一枚しか無かったので、于禁に抱きつく。
「こうするしかないだろう?」
「は、はい……」
照れている表情を見せてくれるが今更だろうと思いながらも、夏侯惇は小さな笑みを浮かべた。そして于禁の体にも少しでもバスタオルで包んでやると、水気を拭う。
「お体は?」
「大丈夫だ。それに帰りはタクシーだからな。心配はいらん。だが……帰ったらお前ももう一度風呂に入るといい」
ある程度の水気を取り払うと、重たくなったバスタオルを軽く畳んでから適当な場所に置く。若干の湿り気のある体の上に衣服を被せていくが、夏侯惇の体力は消耗しきっている。なので衣服を着ることがとても難しく、于禁に途中から手伝ってもらっていた。
二人は服を着直すと、部屋から出てチェックアウトした。ベッドがかなり汚れているが、仕方がないと思いながら。そして髪の濡れ具合も気にしながら。
ホテルから出ると、夏侯惇はスマートフォンを取り出して適当なタクシー会社を検索しようとした。だが少し先にタクシーが何台か道路の側に停まっているのが見える。この辺りはラブホテルの類いもあるが、他の風俗店もあった。それを利用する者たちを狙って停めているのだろう。なので二人はそこまで歩き、タクシーの車の窓ガラスを軽く叩いた。すると空車になっていたので二人は後部座席に乗る。
乗る際に夏侯惇がよろめくと、運転手は酒に酔っている客だと思ったのだろう。顔が未だに赤らんでいるうえに、足元は覚束ない。これは良い勘違いと思った夏侯惇は、運転手の話に適当に合わせる。
夏侯惇が行き先を述べると、タクシー運転手は一つ返事で発車させた。そして走ること十数分。夏侯惇が住んでいるマンションの前に到着すると、料金を払ってから外に出る。
体が冷えているので、当然外は寒かった。夏侯惇は無意識に身震いをさせると、于禁が背中を擦ってくれる。少しは暖かいと思いながら、マンションに入った。一階のエントランスを少し入ったところにエレベーターがあるので、そこに入ろうとする。しかし夏侯惇は腰が少し痛いと思えたのか、そこをやたらと庇おうとした。それに気付いた于禁が肩を再び貸してくれる。
「すまないな」
「いえ、滅相もありませぬ」
礼を述べているとエレベーターがこの階にまで降りてきた。二人はそれに乗ってから目的の階の数字を押すと、動き出した。その間に夏侯惇は于禁に何かを話そうとしたが、何も話題が思いつかない。なので口を半開きにしていると、于禁が体の心配をしてくれる。
「お体は?」
「今は大丈夫だ」
于禁が小さな安堵を見せていると、エレベーターが目的の階に到着そいたようだ。扉が開く。体を相変わらず支えてくれながら、夏侯惇の部屋の前に辿り着いた。しかし夏侯惇は持っている通勤鞄のポケットから家の鍵を出すことができず、于禁に取ってもらうとそのまま解錠をしてもらう。
「……ようやく帰ることができたな」
玄関のところで倒れたいと体をふらふらとさせていると、于禁が異変だと勘違いしたのか、必死に腕や腰を掴まれる。
「転ぶかと……」
二人の顔が近くなるが、もう夏侯惇に体力は無い。于禁はそれを把握しているらしく、次は立たせてから腰を掴んでくる。
「貴方はもう休むべきです」
「では、今夜は一緒に休もう」
そのまま寝室に着くと、ベッドにそっと降ろされる。そこで夏侯惇がそう言うと、于禁が快諾してくれた。なのでそのまま眠ろうとしたが、于禁がそれを止める。
「貴方の家の浴室を借りたいのですが、それに、貴方ももう一度体を洗うと仰ったのでは?」
「……そうだった。あぁ、そうする。浴室まで運んでくれ」
「喜んで」
于禁が返事をすると、夏侯惇が立ち上がる。しかしやはり腰が痛く、体への負担が大きい。それでも、夏侯惇は于禁に支えられながら浴室に向かう。
早速に服を脱いでいると、于禁に凝視された。
「どうした?」
「い、いえ、なんでも」
視線をすぐに逸らされるが、ふと于禁の下半身を見ると膨らんでいた。納得をした夏侯惇は小さく笑いながら、于禁のそこをそっと触れる。
「あっ、夏侯惇殿……!」
「お前、まだ足りないのではないか?」
触れた場所は更に面白いくらいに大きくなっていき、それに比例して于禁の動揺も大きくなっていく。夏侯惇は口角を緩めながらそれを見ていた。于禁が思ったような反応をpしてくれるからだ。
「ッ、くあ……! 夏侯惇殿……!」
名をひたすらに呼んでくるので、夏侯惇はそれに毎度返事をする。そうしているとズボンに染みができてしまうので、それをゆっくりと下着ごと脱がせていった。すると先程の逸物や我慢汁が飛び出してくる。飛び散ったものが顔いにかかると、屈んでからそれを拭うこともなく逸物を咥えこんでいく。
「ッ!? ア、あ……! ぐぅ……!」
上目遣いで于禁を見てやると。ぐっと逸物の先端が膨らんできたことが分かる。それを口腔内で確認しながら、先端を吸い上げた。瞬く間に射精をしたかと思うと、逸物がようやく萎んでいく。
出てきた液体は全てごくりと飲み込むと、よろめきながら立ち上がる。
「満足したか?」
「はい……」
「それならよかった」
于禁はとても恥ずかしそうにしているが、その様子がとても初々しくそして可愛らしいと思った。このような表情や感情にさせるのはこの世で于禁しか居ない。夏侯惇はその嬉しさを噛み締めながら、于禁にもたれかかる。やはりもう、今日はまともに立てないのだ。
「体がもう動かないから、手伝ってくれ」
そっと頷いてくれた于禁は、夏侯惇の服をどんどん脱がせていく。そして近くの洗濯機にぽいぽいと投げ入れていく。慣れているので、かなり手際がいい。
服を全て脱がせられると、于禁も服を脱いでいって同様に洗濯機に入れていった。
浴室に入ると鋭くなはないのの、寒さが二人の体の肌に走る。鳥肌がぞわぞわと立っていくと、シャワーヘッドを于禁が持つ。まずは浴室の床にシャワーヘッドを向けて水を出す。最初こそは冷水だったものの、次第に温かくなっていき湯に変わる。なのでその湯が夏侯惇の頭にかかってきた。
「ん……温かい」
髪がまたもや濡れていくが、もう濡れることを心配する必要はない。どんどん温水に包まれていくと「もういい」と言ってシャワーヘッドを于禁に向ける。次は于禁に温水がかかる。
邪魔になった髪を掻き上げていると、于禁がゆっくりと顔を近付けてきた。そして額にキスをすると、夏侯惇は笑みを浮かべる。この二人きりの時間が、とても愛しいと。
湯を浴びると浴室から出てタオルで水気を拭ってから、二人はそのままベッドに入った。しかしそれだけでは寒いので、夏侯惇は暖房をつける。冬が明けたばかりとはいえ、春の初めだとはいえまだ冷えるからだ。
二人で毛布に包まると、互いに「寒い」と言いながら抱き合う。肌には人間特有の暖かさがあるので、寒い今ではそれが心地よい。なので肌を擦り合っていると、于禁がふと話しかけてきた。それは引っ越しのことである。
「私が一人暮らしをした際の買い物は、いつお付き合い頂けますか?」
「ん……? そうだな……」
少し考えた後に、夏侯惇はまずは空いている日を思い起こす。空いている日は基本的には土日祝だ。夏侯惇は何かの部活の顧問を担任している訳ではないので、基本的にはそこが空いていることになる。なのでそこからいい日を考えるが、色々と面倒になってしまう。なので「では……」という声の後に続けていく。
「いつものように、金曜日の夜からでも来い。合鍵は持っているから、勝手に入ってもいいぞ。その時に考えよう」
「ですが……」
「いいから、気にするな。買う物など、ゆっくり考えたら良いのだ。俺はお前と一秒でも、長く会いたいからな」
すると于禁の抱き締める強さが更に加わった気がするが、気のせいではないだろう。だがその強さをもっと感じていたい夏侯惇は、小さく笑いながら于禁の頭を柔らかく撫でていく。その手つきはとても優しいもので、于禁の力が一瞬だけ弱まった。
「そうですな。それに……私も、同じ思いです。私も、少しでも貴方と共に居たい」
「ありがとう」
夏侯惇が礼を言うが、その後に于禁が少しの躊躇を混ぜながら聞いてきた。
「……貴方が一人暮らしを始めたときの、心境は?」
「ん? 俺は、特にないな。だが色々と自由でいいぞ。特に外泊する時だが……」
「私の前で、昔の恋人の話をなさるつもりですか?」
しまったと夏侯惇は口を閉じようとしたがもう遅い。于禁の顔を見れば、不機嫌そのものの顔をしている。特に怖いなどではなく、夏侯惇は単純に申し訳ないと思った。
「すまない……」
「私の買い物に、きちんとい付き合って頂きますが」
「分かってる。約束しよう」
于禁の抱き締めていた手が離れていくと、本日何度目か分からない口付けを受ける。そして夏侯惇は再び于禁の頭を撫でながら、于禁と夜遅くまで話を続けていたのであった。