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ある寒い夜に春日は足立の家に呼び出されて来ており、既に到着していた。しかし鍵を持っていないので、施錠されている扉の横のインターフォンを鳴らすが、足立が出てくる気配がない。若干の苛立ちを感じた春日は、スマートフォンを取り出し足立に電話を掛ける。
四コール目で、足立がようやく着信に出たようだ。スピーカー越しに聞こえる小さな喧騒を拾うと、足立の「おぅ、春日」と言う声が聞こえる。
「足立さん、今どこに居るんだ」
「あ? 異人町に決まってるだろ」
「……それは分かってる」
溜息を吐きながらそう言うと、足立の笑い声が聞こえた。春日は次第にそれに怒りそうになる。
「もう少しで俺ん家に着くから、すまんな」
その言葉と共に、足立に通話を切られた。耳からスマートフォンを離し、通話終了の画面を弱く睨んだ後に通話アプリを閉じる。スラックスのポケットにスマートフォンをしまうと、扉の横の壁にもたれて足立を待つことにした。足立の言う「もう少し」という言葉を信じながら。
足立の姿が見えたのは、通話を切られてから約十分後である。意外と早いと思いながら、春日は到着した足立に話し掛けた。
「足立さん、用事って何だよ」
足立の方をちらりと見ると、簡単なスーツ姿で大きな茶色の紙袋を提げているのが分かる。しかし紙袋には何が入っでいるのかは分からないうえに、こちらが知る権利は無いだろう。なのでそれから視線を逸らした春日は、そう質問した。
「まぁ、とりあえず入れ」
足立が笑いながら鍵を開け中に入るので、春日は渋々と言ったような様子でそれに続く。ふと、足立からふわりと甘い香水の匂いがしたが、これはそのような店に行って来たのかと推測する。或いは、足立自身がつけたものか。
それなりに狭い家に入った足立は「あー、疲れた」と気怠げに言いながら、春日の腕を引いた。唐突のことに驚いた春日は、取られる腕を引き戻そうとする。そこで、足立が顔をしかめた。
「おい足立さん! いきなり何だよ!」
「いいから、風呂に着いて来い」
「はぁ!? 何で!?」
有無を言わせないかのように、足立が次は力強く腕を引いていく。さすがに足立の筋力には勝てない春日は、大人しく足立に脱衣所へと半ば引き摺られて行った。
「これを着ろ」
そう言って、先程から持っていた紙袋からなにかを取り出した。赤い生地の服なのだろうかと思っていると、足立がそれを広げるなり春日は困惑する。足立が持っているのは、女性用のチャイナドレスだからだ。それもかなり露出が高いものなのか胸元がかなり開いており、スリットはかなり深い。腰まであるようだ。幸いといっていいのか、スカートの部分はロング丈になっているのだが。
「俺が!? 何でこれを俺が!?」
「何でってお前、少し前にサッちゃんに『キャバ嬢に向いてる』って言われてたじゃねぇか。だから俺が、キャバ嬢に本当に向いてるか、客役としてテストしてやるぜ」
意味が分からないうえに、足立にチャイナドレスを押し付けられる。春日は溜息をつきながら「入らなかったら着ねぇからな」と言い、チャイナドレスを受け取った。どうせ、何かの悪ふざけとしか考えられないと。
渋々と服を脱ごうとしたが、足立はこの場から離れようとしない。春日は怪訝そうに、足立の方を見た。
「……そういえば、お前の入れ墨ってケツまで入ってんのか?」
「ん? そうだけど?」
足立の簡単な疑問に対し、春日はすんなりと答える。そして証拠にとジャケットではなく、ベルトを緩めてスラックスを下ろして下着をずり下げた。ワイシャツの裾を上げてから背中を向け、龍魚の入れ墨がどこまであるのかを見せる。
「なるほどな」
そう言いながら足立がまじまじと春日の入れ墨を見ていく。
「そこまでじろじろ見るなよ。何だか恥ずかしいだろ」
「どこが恥ずかしいんだよ。たまにお前、半裸になってるじゃねぇか。それに野郎に見られて、恥ずかしいもクソもあるかよ」
鼻で笑った後の足立は、春日に早く着ろと促した。思わず舌打ちをした春日はそのままスラックスを足から抜いていく。そしてジャケットとワイシャツを脱ぐと、チャイナドレスを着始めた。
このチャイナドレスはどうやら、男性用のものである。春日でも着ることができたので驚いたが、胸の部分が大きく開いているのがどうにも気持ちが悪かった。それに足立に「パンツも脱げ」と言われていたので下着を取り払う。スカートのみの状態で、下半身に何とも言えない違和感を覚えた。
春日はチャイナドレスを着て、足立の前に立つ。回ってみろと言うので、ゆっくりと一回転していく。こんな筋肉のついた厳つい中年男性の女装姿の、どこが良いのかと思いながら。
「足立さん、着たが、これでいいのか?」
「……お前、ケツだけ見たらいいな、丸くて、形がいいじゃねぇか。張りもある。桃みてぇだな」
「は……?」
眉間に大きく皺を寄せた春日は、足立を睨みながら尻の部分を手で覆う。だが足立は春日の尻に手を伸ばした。そして尻を掴まれると、春日は小さな悲鳴を洩らす。
「ひッ! お、おい、足立さん!」
足立の手を振り払おうとした春日だが、尻を触れられる手付きがどんどんいやらしいものに変わっていく。その際の足立の息が荒くなってきており、春日は恐怖感を覚えた。なのでか、抵抗をする意思をへし折られてしまう。
そして尻を何度も撫でられていくうちに、春日の中で変化が起きた。何故だか、体が疼いてくるのだ。これは、情欲から来るものなのだろうか。
だが足立に伝えずに、このままやり過ごそうとしていた。このまま何も言わなければ、終わるだろうと。しかしそこで、足立が春日の異変に気付く。
「ん? お前、勃っちまったのか?」
足立が春日の体の前部分に触れる。確かに股間の辺りが膨らんでおり、綺麗なチャイナドレスに薄い染みができていた。春日は「うわぁ!?」と驚きながら股間部分を手で隠そうとしたが、足立が尻を揉みしだいたので手が離れてしまう。
「ち、違う! これは……」
「なるほどな……」
ニヤリと笑った足立はスカートを捲り、春日の性器を露出させた。ただ一言「ふざけるだけだろう」と言いながら。
すると言う通りに、足立は膨らんだ性器を見てからスカート部分を直してやる。しかしその間にも尻を触り続けていたので、遂に春日の疼きに限界が来ていた。顔を真っ赤にして、涙を浮かべながら訴える。
「も、もう……足立さん、やめ……」
声が弱々しく震える。足立はその様子の春日を見るなり、何かの衝撃を受けていた。一瞬だけ、動きが止まる。
「そうだよな、もう、止めた方がいいよな」
先程の笑みが似合う声音とは打って変わって、言葉の音が低く重くなっていく。尻に触れていた手を引かせていく。春日はその変化を拾い、思わず肩を震わせた。嫌な予感がする、と。
そして予感に反して尻が寂しく思っていると、足立が春日を壁に追いやる。春日の逃げ場を全て塞ぐと、顔をぐっと近付けた。
「……春日、キャバ嬢はもういい」
「えっ?」
鼻先同士が微かに擦れると、足立の顔が下を向く。すると腰を触り、そこから上に這い上がっていった。さすがにかなり様子がおかしいと判断した春日は、足立を口で止めようとする。
「おい、待て、足立さん!」
右膝を上げるのスリットが大きく開き、足立の体だけでも遠ざけようとした。そこで足立の股間に当たるが、春日のもの同様に膨らんでいることが分かる。春日が目を見開くと、顔を上げた足立が喉を鳴らした。
「仕方ないだろ?」
足立の笑みは未だに戻らず、代わりに男の現実的な本能が剥き出しになっていた。普段は綺麗な女が好きだと言うだけだが、それと今を比べると雰囲気が全く違う。目付きは、とてもギラギラとしていた。
見たことのない足立の顔に春日は体を震わせると、抵抗が一切できなくなった。視線という見えない糸で、拘束をそれているように思えたからだ。
「シャワー浴びようぜ」
順番がめちゃくちゃなのだが、構わず足立は春日のチャイナドレスを脱がせていった。容易く裸にすると、足立も服を全て脱ぎ散らしていく。筋肉と脂肪が混ざっている足立の体から、未だに香水の匂いがしていた。
共に冷えた浴室に入ると、足立はシャワーコックから水を出す。二人の肌には、鳥肌が幾つも目立って見えている。数秒のうちに湯に変わったらしく、春日の頭から掛けていった。湯により体が暖まると、春日の皮膚にあった鳥肌が薄くなっていく。
それを見た足立は次は自身の頭から湯を被るが、春日は急激に寒くなってしまっていた。なので足立の逞しい体に抱き着くと「意外と可愛いんだな」という声が降ってくる。
足立の体は暖かい。湯を被っている最中だからか。なので春日は離れられなくなり、そのまま暖を取ろうとした。
「おいおい、暖まりてぇなら、ベッドの上でしてやるよ」
「……言い方が古いな」
とろりとした瞳をしてしまった春日がぼそりと呟くが、それでも文句は無いという意思を示した。抱き着く力を強め、手を足立の背中にまで回したからだ。
手の自由はあるので足立は頭を掻きながら「古いのか……」とぼやく。そしてもう一度湯を被ってから春日と共に浴室を出た。
湯から水に変わる前にバスタオルで一枚ずつ水気を取るが、何もかもが面倒であった。足立はそのバスタオル二枚を持ち、春日を寝室に連れ込んだ。
足立が湿ったバスタオル二枚を敷いてからベッドに春日を素早く押し倒すと、覆い被さった。ベッドからは聞いたことのないような音が鳴るが、足立はそれを無視する。体同士を密着させると、冷えた肌が温くなっていく。
まずは足立が互いの大きくなった性器を、固定するように手で添える。そして腰を振りながら擦っていく。どちらの性器からも我慢汁が垂れているので、潤滑油は充分にあった。
「っう! あ……ぁん、は、ぁ……」
春日は腰を揺らし、足立の背中に再び腕を回した。香水の匂いは、微かに残っている程度。それを嗅ぎながら、春日はかぶと合わせにより小さく喘いでいた。足立はそれを見て、思わずニヤリとした笑みを浮かべる。
「ふ、ふっ……はぁ、春日、気持ちいいか?」
「もう、頭が、わかんねぇ……」
春日は本当にそうなのだ。既にこの時点で混乱し、思考の処理が追いついていない。あまりの、未知の快楽を得ている故に。
「っは、おい春日。俺は、もうすぐイきそうなんだがな!」
「や、足立さん、ぁ、あ……待って、俺……!」
何か言いたげにしているので、足立は腰の動きを止める。春日の顔をじっと見ると、何やら口篭りながら何かを言おうとしていた。すると声を出すことが憚られるので、口をパクパクと開閉させている。足立がその春日の唇の動きを追ってみると、足立はようやく春日の言いたいことを理解したらしい。
足立は手を春日の膝に移動させると、大きく開かせた。とても恥ずかしい体勢になり、春日は膝を閉じさせようとするが足立にそれを阻止されてしまう。
「さっきは『俺の中でイって欲しい』って言いたかったんだろ? 大丈夫だ。やったことは無いが、やり方は知ってるからな」
そう言って、ベッドサイドに常備しているローションボトルを取り出した。慣れた手付きで手のひらの上に落とし、それを温めていく。特に指に絡ませたところで、春日の入口に近付けた。
「ま、待って、足立さん、や……怖い……」
春日は急激に怯えながら、足立の行動を拒否する。目尻には、涙が浮かんでいた。
しかし足立にだってまともな人間性を持っていた。このまま無理矢理に行為に至るというのは、かなりの抵抗感がある。
なので春日を宥めるように、手をバスタオルで拭いてからそっと抱き締めた。きついパーマがかかっている頭を、優しく撫でる。首に掛かっているゴールドアクセサリーが冷えており、足立の皮膚にそれが当たり冷たいと感じた。だがどうにか耐え、顔を弱く歪める。
「大丈夫だ、深呼吸をしろ。最初は辛いが……すまねぇが我慢をしてくれ」
再び、足立の体からふわりと香水の匂いがした。春日はそれを嗅覚で拾うと、次第に安心していく。そして小さく頷くと、足立が「いくぞ」と一言のみの合図を出してから、再び手のひらにローションを馴染ませた。
人肌で温くなったローションが、指に絡む。それをまだ何も受け入れたことのない、肉の穴に触れた。春日の体がびくりと跳ねる。再び春日に未経験の恐怖が押し寄せて来るが、足立は警察官時代に小さな子どもに接していたときのように春日を落ち着かせる。例えば「怖くない」や「俺が傍に居るから」などと。
足立の言う通りに春日は小さく短い呼吸を繰り返しながら、侵入しようとしている指を受け入れる。
「ぅ、はっ、あ……きもち、わるい……」
足立の人差し指の先が肉穴の縁に触れると、短く切ってある爪の辺りが入り込む。そして第一関節が見えなくなるが、春日は異物感に苦しんだ。なのでか、遂には瞳から涙が数滴落ちる。またもや、春日の目には怯えの色が浮かんでいた。
「ま、まって、足立さん、もう、むり……! 俺、もうこわい……! やだ……!」
「大丈夫だ、春日。俺が居るから、怖がるな。怖くないから、よしよし」
足立が優しく声を掛けた。そしてここで初めて、春日と唇を合わせる。驚いた春日だが足立の巧みな舌の動きにより、脳が蕩けていく。怯えも恐怖も不安も、全て足立の熱に一瞬にして溶かされていく。顔を真っ赤にしながら、更に足立の熱をねだる。
「ん、ふぅ……んんっ、ん」
短いキスの後に唇が離れるが、春日はまだと求めるように舌を突き出した。思わず足立は鼻息を荒くしてから「エロ……」と呟くが、春日にはそのような言葉は聞こえない。今はただ足立からの熱やそれに、快楽を求めているのだ。
もう一度、肉穴に入ったままの一本の指を動かした。すると春日の様子は先程とは違い、とても従順になっていく。苦しさはあるものの、腰をぐねらせていた。
「ぁ、足立さんっ……はやく……」
人差し指が全て入るところで、春日の体がようやく自身の肉穴が性器と認識してきたようだ。中の狭い粘膜が蠢き、足立の指を歓迎している。
そこで足立が指の関節を曲げると、春日は息や小さな喘ぎ声を漏らした。
「は、はぁ……ん……ぁ、っは、ア……」
春日の体中にある筋肉が強張り、気持ちが良いという反応を示す。足立は嬉しさにもう一度唇を寄せると、春日自ら口を開き舌を突き出した。それを、足立は食うように舌を奪う。
唾液がすぐに出てくると、それを塗りたくるように絡めた。粘液が動く、卑猥な音が聞こえる。春日は腰を振ると、足立は入れる指をどんどん増やしていった。すると春日のものは肉穴ではなく、もはや膣のように柔らかくなる。
数本の指を出し入れできるようになると、春日の瞳は虚ろになっていた。普段は輝いているのだが、その面影が全く見えない。足立はその表情が愛しいと思えたのか、ようやく長い口付けを終わらせた。
二人の唇の端から唾液を垂らしているが、そのようなことは今はどうでもよかった。それよりも肉欲をぶつけ、ぶつけられたいという思いが重なっていたからだ。
指を引き抜いた足立は、敷いてあるバスタオルで雑にそれを拭く。ローションと同じ場所にコンドームもあるので、それを一つ取り出した。しかしそこで、春日が口を開く。
「そんなもん……一個じゃ足りねぇだろ……三個くらいは出しとけ……」
挑発をするようにそう言ったので、足立は「そうだな」とギラついた目で言いながらもう二つのコンドームを取り出した。そのうちの一つを口で乱暴に開封すると、自身の張り詰めている怒張に纏わせていく。
限界だと二人は同時に思いながら、結合部を作っていった。まずは怒張の先端を膣にあてがう。
「……足立さん、でけぇの、はやく、足立さん、それで、イきてぇよ」
「分かってる」
腰を動かし、足立は怒張の先端を膣に飲み込ませていく。しかし膣がそこまでは受け入れてくれないのか、全ては埋まってくれない。なので足立は、少しずつ入れていくしかなかった。春日は苦しげな息を漏らすが、抱かれる期待から腰の揺れは治まらなかった。
そこでふと、春日は組の者には「イチ」と呼ばれていることに気付いた。それを思い出していると、先端がようやく入る。その次に竿までも、全て飲み込ませることができた。春日の膣に、足立の怒張が全て入る。とても狭い粘膜に包まれ、足立はあまりの気持ち良さにすぐに達してしまいそうだった。
「イチ、動くぞ」
「ひっ! ぁ、やめ、そう呼ぶな……!」
春日の膣が、足立の怒張を強く締め付けてしまう。名前の呼び方を、突然に変えられたからだ。普段とは違ううえに、あだ名で呼ばれたので春日はびくりと反応してしまっていた。興奮してしまっていた。
「なるほどなぁ。ちんこ突っ込まれてるときにそう呼ぶと、いい反応をするのか。なぁ、イチ」
わざとらしくそう言うと、春日は遂には泣きながらぎゅうぎゅうと足立の怒張を包んでしまう。その様が可愛いと思った足立は優しくするのではなく、虐めたくなってきていた。
「イチ、お前の中、すげぇ気持ちいいぞ」
「だから、その呼び方は、ひ、うぁ、あっ! あ、ァ!」
ゆっくりとピストンしていくと、春日の目が大きく開く。そして甲高い喘ぎ声を出すが、恥じらいなど無いようだ。口角を上げて何度も腹の中を突かれる感覚に、春日は悦の底に落ちてしまったのだ。それも、二度と抜け出せることが無いと思えるくらいに深く。
だが足立のピストンはまだ遅い方である。これ以上がある。それに気付かないまま、射精をした。春日は息を切らしながら足立を見るが、未だに雄の獣のような目は変わらない。寧ろこちらを見ているので、春日はその視線に高揚してしまった。足立をここまで、興奮させているのかと。
「俺はまだイってねぇからな……!」
そう言った足立は、急にピストンを激しくした。春日のきついパーマである髪でさえ、ゆらゆらと揺れる。案の定、春日は善がり狂った。女のように喘ぎ、そして足立の怒張を喜ばせる。
「あ、ッや、ぁ! まっ、あだち、さん! もうイったから、あ、んんっ、あぁ!」
「おい、俺はまだだイチ。それに、ゴム三つと言ったのはお前だろ? 約束くらい守れ。おれのちんこが痛くなるまでヤるぞ」
腹の中は、長い人生でも経験したことがない。それくらいに足立の理性が切れそうになっている。余裕が無くなってきた。
一度緩やかに引かせてから、最奥を目指すかのように怒張を膣に打ち付けた。春日の腹からぐぽという音が聞こえた直後に、悲鳴を上げた。どうやら、本当に最奥にあたる部分に入ってしまったらしい。
春日の筋肉に覆われた背中が大きくしなり、首を仰け反らせる。先程の場所とは比べ物にならないくらいに、足立はそこで怒張を素早く擦っていった。
「っあ、ぁ、ア! またイ……うぉ、お、ぁ、ァ!」
先端で粘膜の壁を突き続け、そして拘束されているかのように腹が締め付けた。そして摩擦が交じると、遂に足立が果ててしまった。同時に春日ももう一度射精をする。足立が動きを止めて低く重い唸り声を上げると、一旦怒張を引き抜いた。膣の粘膜がくぱくぱといやらしく伸縮しているのが見える。
「はぁ……あ……あだちさん……」
足立がコンドームの処理をするが、まだ怒張が上を向いていた。それを見た春日が恍惚の笑みで、足立に話し掛ける。
「さっき、なかに、出された感じがあったから、つぎは、なまでしてくれ……そのつぎもなまがいい……それと、おれを、イチって呼びながらだいてくれ……」
「注文が多いな。分かったよ、イチ。だがな、もう二つのゴムを使いてぇが、また今度にしてやる」
二つ目のコンドームを持っていた足立だが、それを床に放り投げた。だがそこで春日の体勢を四つん這いに変えてから、足立が背中に伸し掛かる。春日が「おも……」と呟くが、足立はそれを無視してから再び怒張を膣に、最奥に挿し込んだ。次は、ずぶりと勢いよくだ。
中はかなり熱く狭いので、改めて名器としか思えなかった。それに春日の感度が良い。足立は今から孕ませるつもりで、怒張で腹の奥を触れる。
「ひゃあ!? ぁ、ん、あ……あつい……らめ、きゅうには……」
「中に出されてぇんだろ? イチ」
足立が耳元でそう囁くと、春日の腹の中が再び怒張を締め付けた。足立がくぐもった声を漏らしながら、春日の赤い耳たぶや肩を甘噛していく。
それを止めてから太い腰を掴んでピストンをすると、先程よりも少しは奥に入ったらしい。春日の全身が引きつり、快感の海に溺れていく。
「イチ、どうだ? きもちいいか? あと何回、俺に中に出されたいんだ?」
「あ、ぁ、っは……ぁ、ア、お、らめ、イっちゃう、あたまがもう、おかしくなるから、ひぃ……あ、オ、お、ァ……!」
腰を強く掴むと、足立はそこで精液を放つ。春日がベッドのシーツを強く握り締めているのが見えるが、相当に善いと感じているようだった。足立は精液が出切ってから、またもや怒張を引き抜いた。精液がごぽごぽと流れ、敷いているバスタオルを汚す。
仰向けにさせてから、足立が座る。そしてその上に春日を跨がらせてから座らせた。バランスを崩さないように、春日の震えている腕を体に回して固定させながら。
「なんでぇ……」
春日の顔は、涙と唾液でどろどろになっている。疑問と悲しみが浮かんでいるが、足立は「もっといいことしてやる」と言う。春日の腰を上げてから、そろそろ萎えるであろう怒張の上に移動させるとその場で腰を沈めさせた。ずぶりと入っていき、春日と足立にまたもやはっきりとした結合部が作られる。
「ッあ……! お、ぉ、あだちさん……!」
「イチ、お前がイってる顔見ながら、俺はイきてぇ。だからほら、よく見せろ」
「んんぅ……」
春日は重い。だが足立はそれに耐えながら、腰を上下に動かした。体重により、腹の奥を当然のように強く抉った。その時に春日は、今中に出されてしまえば本当に孕んでしまうかと思い込んでいく。
反射的にじたばたと体を動かし、春日が仰け反る。しかし足立がその動きを封じながら、春日を犯していった。ぱんぱんと肌と肌がぶつかり合い、二人に痛みが走るものの快感により相殺されてしまう。
「くそ、気持ちよすぎて癖になっちまいそうだ! イチの体はこんなにエロかったのかぁ!?」
「オっ!? あ、ぁ、そうだから、っは、あ……おれのなかに、せいえきたくさん、いっぱいだして……!」
春日のネックレスが大きく動くくらいに下から突き上げる。舌はしまいきれなくなり、だらりと小さく垂らしていた。だらしない表情をしているが、足立にとってはそれが堕としきった証拠としか思えない。舌なめずりをしながら「イチは可愛いな」と言ってやる。
するとその言葉で春日が射精してしまい、ふにゃりと萎えてしまった。しかし足立の怒張にはまだ質量があり、硬度もある。構わず春日の腹の奥から異音を出し続ける。それに、喉から嬌声も。
「はァ、あ、ん……お! オッ! イく! あ、イく、ひ、ぁあ……ッ……!」
春日はカクカクと頭を揺らし、腰が痙攣する。そしてその瞬間に粘膜が急激に狭くなり、足立が本日は最後の射精をした。疲労により息を切らしながら、足立は春日を見る。力がどこにも入らないのか、足立にもたれ掛かっていく。
春日はどう見ても射精したような様子だが、性器は萎えている。そこでいわゆる空イキをしたのかとしか足立は考えられなかった。
しかし今は何を話しても反応ができないのかと考え、春日の大きな入れ墨が入っている背中を柔らかく擦る。そして足立は呼吸を整えてから、春日の腰を持ち上げて萎えたものを抜いた。精液が少量垂れてくる。
「あ……ちさん……」
「ここまでよく頑張ったな」
唇に弱くキスをした足立は、頭も撫でていく。すると春日は心地良さそうな表情をした後に、意識を失ったのであった。
だが春日だけではなく自身の体を綺麗にしなければならない現実に戻ると、足立は物理的にも重い腰を上げていく。
そして次の日の朝、春日だけではなく足立も腰の痛みに苦しみ、二人で全裸のままぎゃあぎゃあと騒いでいたのは言うまでもない。