充電
ある深い夜のことだ。夏侯惇が既に寝静まっている時間帯に、于禁はその時間に帰宅した。
静かに家に入ると、音を極力立てずにすぐにシャワーを浴びる。そして寝間着に着替えて寝室に入ると、夏侯惇の寝息と自身の体内の様々な音だけが聞こえた。サイドランプはついたままなのか、夏侯惇がベッドのどこにいるのかおおよそ見える。帰りを待ってくれていたのだろうか。
仰向けに寝ている夏侯惇の隣に、ゆっくりと座る。夏侯惇の左手にはスマートフォンが握られているので、それが寝ている間に壊れないように取る。だがその拍子に指が触れてしまったのか、ロック画面が表示された。幾つか通知が出ていてなるべく見ないようにしていたが、充電が残り二%という通知は見逃せなかったので充電ケーブルを挿すと、サイドチェストに画面を伏せて置く。于禁は人のスマートフォンなのだが充電切れを起こさずに済むとホッとした。
改めて夏侯惇を見ると若干寝相が悪いのか、かけていた布団が少し捲れていた。なので肩まで布団を上げる。前は寝相が悪くなかったが、今の時代の夏侯惇は若干寝相が悪くなったようだ。だがそういうところが、于禁は愛おしく思えた。
于禁は夏侯惇の寝顔を見る。起きているときは精悍な顔をしているが、寝ているときはそれを忘れるくらいに穏やかな顔。そのギャップが、于禁は堪らなく好きだった。于禁は触れるか触れない程度に、夏侯惇の頬に触れる。
「おやすみなさいませ……」
そう小さな声で言った後に手を離した後、于禁は自分のスマートフォンにも充電ケーブルを挿す。そして夏侯惇のスマートフォンの隣へ、画面を伏せて置いた。
隣へ横になるとサイドランプの灯りを消し、夏侯惇の隣で暖かく眠りへとついたのであった。