体温
二人は性行為の後、サイドランプを点けたまま横に並んでうつ伏せになり、シーツを腰のあたりまでかけていた。肩を密着させて夏侯惇は両肘をついている。于禁は片側の肘をつく。もう一方は、夏侯惇の腰を片腕で抱いて少し縋る形になっていた。今日の性行為はいつもより少し軽めだったが、夏侯惇は眠たそうにしていた。時刻はまだ日付が変わるにはまだ早い頃で。
「もう、休まれますか?」
「んー……まだ……」
時折頭をガクガクと揺らしている夏侯惇を見て、于禁はくすりと笑った。
「しかしお前は、暖かいな……」
すると夏侯惇は心地よい于禁の体温が伝わってきているのか、更に睡魔に勝てなくなっていたらしい。于禁の肩に夏侯惇の頬がぴったりと着く。
「ずっとこうしていたい……」
夏侯惇は静かに言うので于禁はそれの返事の代わりに、腰に手を回していた手で夏侯惇の短めの髪を掬うように優しく撫でる。するとくすぐったい、と笑みを含めた夏侯惇は于禁と同じことをするが、少し手つきが乱暴だった。しかし于禁はそれに何も抵抗も制止の言葉も言わず、されるがままになり少し照れたような表情を見せる。
「あぁ、やはりお前と居ると落ち着くな」
「私もです」
すると二人は互いに顔を近付け、唇が触れる程の一瞬の口付けをした。だが一瞬だけというのに、二人は息を上がらせている。互いの呼吸がかかるくらいの距離を保ったままだ。性行為により熱は引いた筈なのに。
「……さて、もうそろそろ、あなたを休ませなければならないので消灯しなければ」
「それならもう一回、キスしてくれ……」
夏侯惇は名残惜しそうにそう言うと、于禁は溜息をつく。
「仕方のない御方ですね」
そう言いながら夏侯惇をするりと仰向けにさせる。それによりシーツは腰より下にずれ、夏侯惇は少し震えた。なので于禁は再びシーツを元の位置に戻すと、上半身のみ覆い被さると先程よりも長く唇を合わせた。その間に夏侯惇は于禁の首の後ろに腕を回して密着する。于禁はそれに応じるように、夏侯惇の両肩にそれぞれ手を添える。
「んぅっ……おやすみ文則」
夏侯惇は于禁からの口付けが終わった後、舌舐めずりをしながら于禁に向かってそう言うとすぐに眠りにつく。于禁はそれのあまりの妖艶さにどきりとなったが、首を横に振った。
「おやすみなさいませ元譲」
その後于禁は夏侯惇に肩までシーツをかけると、サイドランプの灯りを消して眠りについたのであった。