最近、どうやら巷で妙な噂が流れているらしい。ある夜にリトルジャパンエリアにあるサバイバーで、春日は桐生と軽く飲んでいた。その時にそのような話題を振られる。
「えっ? 何ですか? 子供に戻る?」
桐生から聞いたが、あまりにも現実から離れ過ぎていることだ。子供に戻るなど、あり得ない。もしくは聞き間違いでもしていると思ったが、桐生は首を傾げながら再度その噂を言う。
なので春日は本当なのだろうと頷く。だがその情報主は誰なのか聞くと、かなり意外な人物であった。それはここのマスターであるが、現在はカウンター内に居ない。客を放っておいて何をしているかと思ったが、元々ここを紹介してくれた桐生は気にしていないらしい。なので春日もそうすることにした。
「あぁ……ちょうどこの近くで、変な呪文を唱えてる男がな」
「それ、ただの不審者じゃないですか……! いや、もう今更なんですけど……」
春日はスジモンマスターになったり、ハワイの街中で様々は不審人物に出くわしている。なので言葉の通りに今更だと思った。
注文していたウイスキーのロックで、春日は唇を濡らす。だがその時に桐生の方を見れば、何だか楽しそうな顔をしている。
「あの、桐生さん……?」
「ん? あぁ、すまねぇ、少し考え事をしていたな」
「考え事……?」
桐生の言葉を復唱した春日が首を傾げると、同じく注文していたウイスキーのロックをちびちびと喉に流していく。
「少し、面白そうじゃねぇか」
「桐生さん、酔ってません?」
すかさずそうツッコんだ春日は、持っていたグラスをテーブルに置いた。そして桐生の顔を見るが、いつもと変わらない。渋い顔つきをしている。だが顔色も変えずに酔う、というタイプの者も居るらしい。桐生もその分類に含まれるのだろうかと思った春日は「これを飲んだら帰りましょう」と言うが、桐生は首を横に振った。
「いや、俺はこのまま、変な呪文を唱えている男を見に行く」
「帰りましょう!」
ウイスキーを喉に一気に流すと、喉がひりひりとした。一気に飲んだことはあまりなく、胃に入り込んだ瞬間に頭をがつんと殴られたような気がした。それくらいに、春日としては刺激物である。
「っう……! 桐生さん、俺はもう飲んだので、ホテルに帰りましょう!」
「んー? あぁ、分かった分かった。だが、少しくらいはいいだろ」
続けて桐生も一気にの喉にウイスキーを流したところで、マスターがようやく戻ってきた。どうやら足りない食材があったらしく、調達していたらしい。帰ってきてから、そのような報告を受けた。
春日はそのような店の経営でいいのかと思ったが、ここは不思議とマスターに災難が降るようなことは起きていない。運がいいのだろうかと思いながら、桐生と共に酒代を払い店を出た。
ここはハワイ。この辺りは繁華街とは言えないものの、人の通りはそれなりにある。現に二人の目の前を現地住民が歩いて行くのを見た。
「変な呪文の男はあっちだ」
すると桐生が店を出て後ろの方を指差してそう言った。だが春日はそのような噂を信じ、そして見に行ってどうなるのかと思った。
やはり桐生は酔っているのだろうと、腕を掴むとホテルの方へと引っ張っていく。桐生は抵抗したものの、どうやら力が入らないらしい。春日に引かれながら、歩いてホテルを戻ろうとした。
「……ん?」
日付が変わってもなお、人がまだ行き交う。その中で、手を引かれている桐生が足を止めた。桐生の前を歩いていた春日は、その反動で転びそうになる。
「ッ! うお! ちょ、桐生さん! どうしたんですか!」
振り向いてから少し怒り気味に言うが、桐生はそのような春日の様子など微塵も気にしていない様子だ。思わず、春日は肩をがくりとしてしまう。
「……どうしたんですか、桐生さん」
手を離したら、桐生がどこかに行きそうだ。そう思いながら春日がそう訊ねるが、桐生はどこかを見ている。何か見つけたのだろうか。
「いや、誰かに見られている気がしてな……」
「誰かって、こんなに人が居るのに、見られてっるって……酔ってるせいなんじゃないんですかね」
溜め息をついた春日は再び桐生をホテルへと戻そうと、足を進めようとした。だが桐生はそれに着いて行く気配はない。まるで、散歩を拒否している犬のように動かないのだ。
「ちょ……! 桐生さん! 行きますよ!」
「……あぁ、ちょっと待ってくれ」
すると桐生は若干ふらふらとしながら、どこかに行こうとしていた。春日はそれを止めようとするが、桐生の力が強くなってきていた。なので寧ろ春日が引かれていくと、桐生に着いて行く形になる。行き先は、細い裏路地であった。
「桐生さん! 止まって下さい! それ以上は……ん?」
前を見れば、裏路地に一人の老人が佇んでいるのが分かる。こちらを見ているが、特に警戒している訳ではない。だがこのような場所で見知らぬ人間と目を合わせるのは良くないと思えた。なので春日は桐生に再度止まって欲しいと言うが、足が止まる筈がない。遂に、老人の前まで来てしまっていた。
老人は特に何事も無いような雰囲気であるが、桐生が睨んでいた。もしかして、この老人が子供に戻る手がかりとなるのか。
「……特徴と一致している。こいつだ」
「えっ……? でしたら、何でここまで来たんですか?」
「分からねぇ」
桐生が即答をすると、春日はその場で体を崩しかけた。それくらいに、予想外の答えだったからだ。
「ほら、ホテルに行き……ん? なんか、聞こえるような……」
すると突然にお経なのか分からないものが聞こえてくる。顔を青ざめさせた春日は桐生の方を見るが、何も聞こえていないようだ。首を傾げて「どうした?」と言っている。なので佇んでいる老人を見れば、口が小さく素早く動いていることが分かった。もしかして、これが桐生が言っていた子供に戻る怪現象なのだろうか。
危険を察知した春日はここから逃げようと、足を動かそうとした。そこで視界が歪むと、桐生の焦った声が聞こえたのを最後に、気を失う。
※
長い夢を見ていたような気がする。そう思いながら、春日は目を覚ました。そこは見覚えのない天井や壁があり、反射的に素早く起き上がってから周囲を見る。だがどこを見ても、自身が知っている場所ではないと思えた。
「……ッ! おい、春日、目を覚ましたのか!?」
聞き覚えのない男の声がすると共に、姿を現した。目の前にはグレーヘアで、黒のワイシャツを着た壮年の男が立っている。だが見るからに一般人ではないような雰囲気があり、春日はギロリと睨む。
「春日、おい……お前……」
「なんだおっさん! あんた誰だよ! 何で俺の名前を知ってるんだよ! ……っは! 親っさんは!?」
「親っさん? 荒川真澄のことか?」
男は春日が探している人物を知っているようで、立ち上がる。だがそこで気付いた。自身がいつもの服装ではなくアロハシャツという、浮かれた格好をしているからだ。
「なっ……!?」
「……春日、今のお前には理解できねぇかもしれねぇが、ここは、お前が知ってる時代から、三十年経っている時代に来ちまったんだ」
「はぁ!? ふざけんじゃねぇぞ! おっさん、何へんなこ、ぐっ……」
春日は咄嗟に目の前の男に殴りかかろうとした。しかしそれを察知したのか、手のひらで軽く受け流される。相手は自身より強いと、すぐに把握してしまう。だが手を出してくる気配はないので、春日は男と距離置いてから鋭く睨む。
「俺は桐生一馬だ。よろしくな、春日」
相手の男、桐生は殴りかかってきた自身に優しい声でそう言って手を差し出した。再度拳を出しても、先程のように効かないのかもしれない。なので春日は、悔しいが大人しく手を差し出した。桐生が握手をしてくる。
「そうだ春日、具合が悪いところはねぇか?」
「ない」
そっぽを向くと、桐生がやれやれと肩をすくめた。その仕草に苛立った春日は舌打ちをすると、寝ていたベッドの縁に座った。そこで、どこか体が疼くような気がした。胸を押さえながら、ベッドの上に転がる。
「おい、大丈夫か! 春日!」
「き、桐生のおっさん……なんか、俺、体がおかしい……」
具合が悪いことを訴え、そこでどこが悪いか目を閉じてみる。まずは体の疼きだが、それは下半身にあるとすぐに気付いた。なので素早く立ち上がりながら「小便」と言って立ち去ろうとする。そこで、桐生に止められた。
「……待て」
その声はかなり低い。春日は思わず怯えてしまい、そして足が強制的に動かなくなる。桐生を見れば、まるで龍のような、凶暴な存在に思えた。今拳を交わしても、勝てる筈がないだろうと思いながら。
「な……何……」
「お前、何か隠して……」
そこで桐生に、自身が勃起している姿を見られてしまう。途端に桐生が顔を赤くするが、どうしてなのだろうか。同性の生理現象で、そこまでの反応をするものなのだろうか。
「いや、その……」
桐生がこちらの股間を凝視しているが、途端に春日は気持ちが悪いと思えた。だがここはどこなのか分からないうえに、桐生の強さもあって逃げられないだろう。
それでも、春日は手洗いに行きたいと申し出た。
「……わ、分からねぇ。俺自身のことなのに、分からねぇ、春日、お前って、意外と可愛いんだな」
春日は驚きながら桐生を見る。男にそのような目で見られるのは初めてだが、不快感がある。しかし桐生にはどう考えても逆らうことはできないと考えた。
荒川真澄に会うまでの無鉄砲さがまだ残っているが、とても敵う相手ではない。すると何だか、桐生が伝説の極道のような存在に見えてくる。
「ぁ……俺、慣れてない……」
微かな声でそう言って壁へと背中をつけると、桐生が迫ってきた。大人の男でも怖いとあまり思わなかった春日は、初めての感覚に体を震わせる。
「大丈夫だ、優しくするから」
桐生が壁に手を付けると、ゆっくりと顔を近付けてきた。そして耳元に唇が来ると、桐生が優しく囁く。
「春日、楽にしろ」
その瞬間に、春日の耳が真っ赤になる。ただの男の声だというのに、このような反応をするとは思わなかったのだ。膝がみるみるうちに崩れ、視界が下がっていくと桐生が視線の高さを合わせてくれる。桐生の甘い声で、春日は脳が溶けたかと思えた。
目の前に居る男は、もうただの男の顔ではない。女を抱く男の顔をしている。春日は年齢からしてそのような経験はまだない。しかしソープで生まれ、そのような男を見てきたので分かる。
「ん……でも……」
上目遣いで桐生を見れば、顔をしかめていた。自身の何がいけないのかと思っていると、顎を掬われる。
「お前、よくそんな顔で襲われなかったな……綺麗な顔をして……」
桐生がそう言えば、柔らかく唇を合わせられた。そういえば、誰かに恋をするという感情が無かった春日は、途端に桐生に恋をしたような気分になる。先程あった不快感等は、すっかりと消えてしまったのだ。
「桐生さん……」
残っているのは性欲のみで、桐生への恋心があれば、何も経験がない春日でも分かる。桐生の唇を追った。
「春日……」
再び唇を合わせられるが、仄かに酒のような味がする。これがキスの味なのかと思いながら、桐生に抱き寄る。そして甘える動作を見せれば、鍛えられた腕が腰に回り始める。
「ん、ん……」
今から大人になるのだ、春日がそう思っていると、桐生の舌が侵入してきた。確かこれはディープキスというもので、大人がするキスだという認識があった。
春日は自身も舌を出せばいいのかと思い、桐生の舌に少し触れてみる。すると餌を捕まえる生き物のように、容易く絡められてしまった。だがその瞬間に、春日の中で凄まじい快感が広がった。これは、自慰では得られないものだ。
「んんっ……!」
くぐもった声を出していると、桐生は深いキスをしながら器用にアロハシャツを脱がせていく。アロハシャツとは簡単に着ることができ、そして脱ぐことができるものである。
あっという間に脱がせられると、次はベルトをカチャカチャと外し始めた。ここもまた器用に外すと、すぐにジーンズを下ろされた。履いているトランクスが出てきたが、勃起しているのでよく膨らんでいた。そこで桐生の唇が離れていく。
「……ベッドに行くか?」
「う、うん……」
春日はもう桐生を直視することができない。甘い声で囁かれ、そしてキスをされたので好きになってしまったのだ。なので頑なに直視できないでいると、桐生がクスクスと笑いながら腰を掴み、腕を優しく掴まれると瞬く間に抱きかかえられる。今の春日は鍛えていないので、軽いのだろう。
ベッドの上に乗せられると、ぎしりと軋む音が聞こえた。すると春日は緊張をしてきてしまい、体が丸くなる。
「言っただろう、優しくするってな……」
仰向けに寝かせられると、次第に息が荒くなっていた桐生が上に乗り上げてきた。成人男性であるので重さが感じられるものの、それよりもとあることに気付く。桐生が、自身に対して勃起してくれているのだ。
「はぁ……俺のが、勃っているのが、分かるか?」
「うん……」
桐生のものは恐らくは大きいのだろう。春日は期待に胸を膨らませるが、男同士でどうやるのかは分からなかった。異性同士ならば育った環境などで分かるのだが、同性同士はさすがに聞いたことがない。なので首を傾げていると、白いシャツを脱がされる。桐生の前に、縦にも割れていない、幼さの名残がある体が露出した。
「フ……可愛いじゃねぇか」
笑みがこぼれるのを見ていると、春日は悔しくなる。なので桐生のワイシャツを引っ張ってたくし上げると、そこには綺麗に鍛えられた大人の体があった。思わず、春日は興奮のあまりに声が出る。
「わ、桐生さん……」
「お前もいずれかはこうなる。俺も脱ぐぞ」
そう言った桐生は、黒いワイシャツを脱ぐ。そして軽く畳んでから体を捻るが、その際に背中に立派な刺青があることに気付く。
「き、桐生さん、背中のそれって……」
「ん? これか? 別に自慢するものでもねぇよ。待ってろ、下も脱ぐから」
桐生は春日の反応など気にすることなく、ベルトをカチャカチャと外してスラックスを下ろす。下着が見えたが、予想以上に下半身が大きい。勃起していても分かる大きさに、春日は目を背けそうになった。
だが好きになってしまった人間のものならば、どんなものでも気になってしまう。春日とて、普通の欲を持った人間なのだ。拳を握りしめながら、桐生の下半身を見る。姿を現すと、やはり自身のものよりも大きい。それによく黒ずんでおり、皮が剥けていた。これが大人の男の股間ということがよく分かる。
「お前も脱げ、ほら」
トランクスのゴムに指を掛けた桐生は、そのままずり下ろす。だが出てきたのは、桐生のものとは比べて小さい。それに色はピンク色をしており、皮を被っている。春日は情けない気分になった。
恐る恐る桐生の方を見れば、特に嘲笑う気配はない。寧ろ、愛しげに見つめてくれていた。
「どんなお前でも、俺は好きだ」
そう言ってくれた桐生は、自身のものを優しく触れる。そして手のひらで優しく包んでから、ゆるゆると上下に動かし始めた。これもまた自慰では得られない快楽に、春日は体を大きく震わせる。
「はッ、は……桐生さん、きもちいい……」
素直にそう述べれば、桐生は安堵をしてくれる。すると我慢汁がとろとろと溢れてきたので、桐生はそれを手のひらに馴染ませた。それを、潤滑油にしようとしているのだ。
「気持ちいいか、じゃあこれはどうだ?」
次は扱くのではなく、被っている皮を剥くようにゆっくりと手を動かしていく。これもまた気持ちがよく、春日はうっとりとしながら笑みを浮かべた。
「それも、すき……でも、桐生さんも、気持ちよく、なってくれよ……」
春日は桐生の動く手を止めた後に、大きな胸を押した。桐生は大人しく手を止めてくれると、押した方向にややずれる。起き上がる間ができたので起き上がると、桐生の立派なものを見た。
「桐生さんも、気持ちよく、なりたいだろ? たしか……」
勿論、よく見ていないので分からないのだが、エロ本などの類いは見たことがある。その通りにするならば、まずは桐生の太い肉棒に顔を近付ける。かなり雄臭い匂いがするが、それのおかげで春日の興奮がより一層大きくなった。
まずは先端に唇を寄せるが、やはり立派なものである。それをぱくりと口に含むと、桐生の苦しげな声が聞こえた。
するとその桐生の反応が面白いと思い、いたずらをするように先端をちろちろと舌で舐めていく。桐生の声には更に苦しみが含まれる。
「ぅ……! おい、春日、もう、いいから……!」
無視をした春日はそのままべろりと舐め続けているが、次第に桐生の肉棒が膨らんできた。ただでさえ大きいというのに、射精の寸前になるとここまでになるのか。春日の脳内はもはや好奇心で満ちている。
そうしていくうちに、桐生が頭を掴んでくる。もしや離すのではないのかと思えたが、がっちりと固定をしてきた。このまま、春日の口腔内に向けて射精をしようとしているらしい。だが春日はここまできて、嫌ではない。なので迎え入れるように舌を突き出していると、遂に熱いものが流れてくる。待望していた、桐生の精液だ。苦いが不味いとは思えない。
「ん、んぶ、んんっ……! ん……!」
「はっ、はぁ、春日……!」
桐生の方を見れば、顔が歪んでいた。それくらいに、自身の口淫が良かったというのか。喜んだ春日はそのまま、流れてきた精液を飲み込む。それは思ったよりも粘ついており、そして何よりも濃い。喉にしっかりと通る感覚が伝わった。
「一回、離すぞ」
ぬるりと肉棒が抜かれると、自身の唾液と共に飲み残していた桐生
の精液が垂れる。その様を見て、桐生はかなり高揚しているようだった。
「桐生さん……俺の体を、もっと好きにして」
どうするのかは分からないが、慰み物でよく見るように足を開いてみた。すると桐生が恥部を凝視してくるので、春日はこれでいいのかと思える。
「ねぇ、桐生さん……」
「……ッ! おい、春日、後で泣いても、知らねぇからな」
「俺は泣きません、早く、桐生さん」
ぎこちなくだが誘うと、桐生はそれに上手く乗ってくれたらしい。口に手を当てて、体を震わせている。
「あぁ、分かった」
何度か深呼吸をしたところで、桐生が決意をしたように春日の足を持ち上げる。そして自身のものへと手を伸ばしたかと思うと、それを通り過ぎた。向かった先は、尻である。
「……え?」
「知らねぇのか? 男はな、ここを使うんだ」
桐生が意外そうな顔をするので、大きく頬を膨らませた。そして「知ってますよ!」と知ったかぶりをすると、桐生が口角を上げた。
「ほう、知っているのか。だったら、ここを、解せるか?」
「や、やってみせますよ!」
変な意地を張ってしまったことをここで後悔したが、もう遅い。
なので少し考えてみるが、尻はやはりどう考えても排泄器官だ。しかし桐生がそこを男は使うと言うので、信じるしかない。そして次に考えたのは、解すという言葉だ。辺りを少し見てみれば、ローションの類いはない。
うんうんと悩んでいると、春日はとあることを思いついた。口の中に残っている粘液を確認すると、舌を出してから手のひらに落とす。厭らしくねっとりとしており、よく手のひらに落ちた。それを指に絡めてから、尻に持って行った。要はある程度まで解せばいいのだと。
「ここを、こうするんだろ?」
得意気に指を突き立てるが、ここはよく閉ざされていた。入る筈がない。春日は焦っていると、そこでようやく桐生が助け舟を出す。
「ここはな……」
そう言って桐生の太い指が伸びてきた。尻に向かうが、少しの粘液を指に付着させると、尻の穴をちょんちょんと触れてくる。だが擽ったいという感覚しかない春日は、笑う声を出してしまう。
「っふ、ふふっ」
「春日、そうやつて、余裕を出せるのは今のうちだぞ」
「……え?」
桐生の言葉の意味が分からない春日は首を傾げた。本当に、桐生の言っている意味が分からないのだ。
「桐生さん、どういうこ……ッひゃ!?」
とある箇所に触れられると、春日は今まで感じたことのない感覚に襲われた。触れられた場所は尻の穴と下半身のものの間だが、所詮は皮膚だ。そう思っていると、桐生が更に指で突いてきた。春日はまたしても気の抜けた声を出す。
すると体は止まらなくなり、いつの間にか腰を揺らしていた。分からない。何も分からないのだが、気持ちがいいことだけは分かる。なので同様の快楽を得ようと、春日は桐生にねだった。
「桐生さぁん……もっとぉ……」
「ここがいいのか? だが、ここもいいだろ?」
そう言って桐生は、尻の穴の縁を触れた。しかし先程とは違い、きつく閉ざされている訳ではなかった。桐生の指を歓迎するかのように、少しずつ緩んできているように思えるのだ。
桐生の巧みなテクニックに、春日は表情をだらしないものに変える。
「は、はぁ……ぁ、あ、桐生さんのが、入る」
「もう少しだ、春日。もう少し……」
指がぐにぐにと動いていくと、遂に指先が入っていく。未知の感覚があり恐怖もあるが、目の前には桐生が居る。春日は安心をしながら桐生の大きな背中に手を回す。龍に、抱きついた。
「もう少し……!」
「ぅ、はぁ、桐生さん、くるし……は、ひゃ!? 指が! 指が!」
桐生の指が、一本だけだがようやく入った。脂汗をかいてしまっているが、今はそれどころではない。桐生の体の一部が、自身の体の中に埋まったのだ。まずは嬉しさがこみ上げるが、桐生は喜んでいるのを待ってはくれない。指が、ぐるりと回すように動いたのだ。春日は女のような声を上げた。
「ッひ!? ぁ、ア、ん……」
「これだけでも、気持ちがいいか?」
訊ねられたのでこくこくと頷くと、桐生の唇の端が上がった。
「だが、もう少しだ……」
見れば桐生は我慢がもうできない様子だ。勃起している肉棒は我慢汁をだらだらと垂らしており、室内の照明でてらてらとよく光っている。よく使い込まれた風合いがより強調されていた。
「でも桐生さ……ぅわ!? そこ、は、ぁ、あ!」
桐生のことを心配していた春日は、とある一点を指先で触れられて体がよく跳ねた。男の体の中にそのような部位があるのかと考えたが、その思考は桐生の激しい指責めにより中断される。
とにかく、指で触れられる箇所が気持ちいいのだ。春日は射精が止まらない。頭が真っ白になりかけた。
「ぁ、あ! なんで、きもちいい、ぁ、ゃ! なんで、きりゅうさん、なんで」
「ここが、男が感じるところだ……もう一本、入るか?」
悩んでいた桐生だが、春日は相変わらず気持ちがいいとアピールをする。腰を振り、そして背中に回している手でぎゅっと桐生の体をより包んだのだ。するとそれが桐生に伝わったらしく、尻に圧迫感が加わる。挿入している指の本数が増えたのだ。
「ひぅ!? ぁ、ア……きりゅうさん、もっと、きてぇ……!」
媚びるように言えば、桐生が唇を合わせてくる。すると快感が倍増したのか、またしても射精をした。自身の胸によく飛び散る。一種の花のような模様ができた。
「ん、んぅ! ん、ん……!」
舌を捕らえられ、そして上顎にぶつかる。するととてつもない快楽が走るが、その間にも桐生がぐちゅぐちゅと尻の中を次第にかき回すようになっていた。
その卑猥な音に、春日の興奮が最高潮にまで上り詰めた。すると更に指の本数を増やされ、春日は自分でも分かるくらいに中を引き締める。幸せだと思った。
だがその瞬間に桐生の指が引き抜かれ、唇が離れていく。春日は突然のことに呆然としていると、背中に回していた腕さえ引き剥がされる。声が出ない。
「春日……いや、俺が持ち上げられるか?」
一人でぶつぶつと呟いていると、意思が定まったらしい。大きく息を吸ってから吐くと、春日の腰を掴む。
「落ちるなよ」
桐生がその一言を告げると、体が宙に浮いた。桐生に抱き上げられたのだ。後に桐生が膝立ちをすると、腕がプルプルと震えている。何が起きたのか分からないでいると、膝が桐生の肩に掛かった。そこで桐生が言う。
「駅弁、分かるか?」
「えき……べん?」
だが春日は桐生の言う言葉に思い当たるものがない。寧ろ今の状況とはほど遠いものを思い浮かべていると、桐生の肉棒の先端が尻に向けられる。そこで何もかもが分かった春日は、目を見開く。
「あ……ぁ、きりゅうさん、もしかして……」
「いくぞ」
春日の言葉を聞く余裕がもう無いのか、桐生は先端でまずは尻の入り口となりかけている箇所に触れる。肉棒は熱く、そして外見よりも大きい。そのようなものが自身の体に入るのかと思うと、恐怖ではなく興奮で一杯であった。
「ぁ、きりゅうさん、まっ……うわ!?」
ぬちゅりと先端がめり込むと、自身の入り口は喜んでいるかのように開くのを感じた。それもあってか、すぐに先端がずるずると入る。
そして体がどんどん沈んでいくが、今の体勢では桐生に抱きつかなければならない。なので鍛えられた体に精一杯抱きつくと同時に、体の中で何かが弾けた感覚がある。見ようにも見れないでいるので、桐生の方に視線を向けた。自身に欲情してくれている視線を返してくれる。
「少し、入ったぞ……はぁ、お前の中、熱くて狭いな……!」
「え……?」
首を傾げていると、やはり自身の体がどんどん沈んでいく。そして尻の中が異物感に塗れていると、ばちゅんと音が鳴る。気付けば、結合部が桐生の肌と密着しているのだ。春日は悲鳴と共に、喜びの射精をしてしまっていた。突然のことであり、春日は混乱する。
「ひゃあぁ!? なに!?」
「……ぐっ! 全部、入ったぞ、春日、どうだ?」
桐生がそう聞きながら、腰を揺らしてくる。桐生の体にしがみついている春日は、ひたすらに喘ぐことしかできない。
「ぁ、ア! うごかないで、きりゅうさん、はぁ、あ……や、ん……! あっ、ア、ぁ!」
「動くな? あんあん喘いでるくせにか? ほら、気持ちいいだろ?」
挑発するように腰を激しく揺さぶる。桐生はこの体勢に慣れたようで、腰や尻を持ち体を固定してくる。一見すれば、幼子をあやしている大人に見えなくはない。
「やらぁ! や、ぁん……! ッ、やだぁ! っは、はぁ、きりゅうさん、たすけて、なんか、くるぅ!」
「ん? 何が、来るんだ? 言ってみろ」
言葉でどう現せば良いのだろうか。今の頭では、春日には到底表現できない。なので首を横に振りながら嬌声を上げていると、何度目か分からない射精をしてしまう。だが若いことに、まだ股間は元気だ。
腹の中を擦られる感覚は、何とも言い難い気持ち良さがあった。
「あぁっ! もう、また、なんか、くるから! もう、やめ!」
「ほらほら、春日、止めない方がいいぞ?」
桐生が腰を強く揺らした。春日は股間ではなく腹が疼いていく。どんどん食われていくが、春日はもう戻れない。そう感じながら、桐生の体に更にしがみつく。一方で桐生は息を切らしながら、春日の体をより一層包み込んだ。
そうされていくと、桐生の肉棒が膨らむ。もうじき、射精をする合図だ。
「はぁ……ぐっ! 春日! 中に出すぞ!」
桐生の力んだ声が聞こえるが、春日はどうにもしようがない。なので桐生の顔を見つめていると「いい顔だ」と、褒めてくれる。それが嬉しくなり、中を締め付けてしまった。そこで桐生の肉棒から精液が吐き出される。とにかく、熱かった。
「んあぁ……きりゅうさんの、せーえき……」
頭の中はまるで蕩けるかのようだった。それくらいに桐生の熱が体の中から伝わり、体中に行き渡るかのようだった。
体を仰け反らせて自然と手を離してしまったが、桐生が体を固定してくれている為にベッドの上に落ちることはない。
「はぁ……きりゅうさんの、せーえき……はぁ、はぁ、もっとほしい……」
気付けば桐生の肉棒や精液のことしか考えられなくなっていた。なので自然とそう口にすると、桐生が少し怒ったような気がした。ただの気のせいだろう。
「……だったら、これはどうだ?」
きりゅうが訊ねた後に、体を持ち上げられる。すると挿入されていた肉棒が抜けていくので、春日は慌てるしかない、そうしていると、一気に体が落とされた。勢いよく、腹の中に肉棒が刺さったのだ。それは腹の中ではない、腹の奥に、桐生の肉棒があるのだ。
「はッ……!?」
瞳孔が大きく開いたと同時に、腹の中でごぽりと妙な音が鳴った。感覚としては先程よりも深いところに桐生の肉棒が入っているように思える。
すると桐生は何も言わずに腰を激しく打ち付けた。たんたんとリズムの良い音が鳴るが、これは互いの肌が強くぶつかり合う音である。
「ん! んっ、ぁ、あっ、ア、あ!」
もはや喉から嬌声しか出ない。それくらいに、今までとは比べものにならないくらいのものであった。
桐生が律動をする毎に小さくごぽごぽと聞こえるが、頭の片隅で不安が過る。なのでどうにか逃げようとするが、桐生の腕や肉棒によって逃げることはできない。肉棒に、ひたすらに犯されていく。このままもう戻れないと思ったが、それでもいいと思った。桐生に犯されることが、あまりにも幸せだからだ。
「ぁ、あ、らめ! きりゅ、さん、はぁ、ぁ、おれ、おれ、もう、あたまが……!」
「ほら、もっと啼けよ、一番」
ふと名字ではなく名前で呼ばれ、春日は本当に頭がおかしくなりかけた。すると股間で放尿感があったが、見れば透明で無臭の液体であった。これは何だろうと思ってしまう。
「っは、は……潮か……?」
桐生がそう疑問を口にしながらも、腰の動きは止めない。春日を激しく揺さぶる。
「あ、あ! まって、きりゅう、さ! また、なんか、くる!」
「ッぐ、ぁ、はぁ……はぁ、俺も、そろそろイきそうだ……!」
桐生の瞳は情欲に支配されていた。その瞳と視線が合うと、何もしていないのに体が反応する。もう、桐生に何をされても感じてしまうのかもしれない。春日はそう思いながら腰をがくがくと震わせた。
だがそこで体力に限界がきていることを感じる、聴覚や触覚が、次第に薄れてきているのだ。目を細めた春日を見た桐生は、ラストスパートとして、更に腰を素早く強く打ち付ける。それはまるで、鋭いもので貫いているようだった。
「ぁ、あっ、ん! ん! ゃ、あ……おれも、イく! イく!」
桐生の言葉を真似してみれば、腹の奥で桐生の肉棒が膨らんだ。そしてすぐに精液が注がれると、春日は喉を仰け反らせて湿った熱い吐息を吐いた。
そこで、春日の意識は消えた。