また梅が咲く頃に

 梅の花が全て散る前のことである。慶喜と土方の二人が旅をしている途中に、たまたま近くを通りかかった神社に参拝をしていた。空には時折に雲が見えるのだが、雨は降らないのだろうと予測している。
 この神社は何の神が祀られているのかは分からないのだが、それでも土方は良い神様が祀られていると思った。なので旅の安全を祈願する。
 本殿の周辺には梅の木が何本も植えられているが、見頃はもう終わっていた。花びらのほとんど地面に落ちている。だがこれが本格的な春の訪れを示しているのだ。土方は花びらを殆ど纏っていない木を見上げた。
「……梅の花が、ほとんど散ってしまっていますね」
「あぁ、そうだな。梅の花が境内の中にあるから、見頃だった景色はさぞかし美しかったのだろうな」
 慶喜は少し残念そうな顔をしているが、土方も同じである。美しい見頃の花を見ることなど、この時代でどの身分でも贅沢なことなのだから。世で美しいものに代表とされるのに、花をよく連想できるのもある。
「……そういえば、ここは何の神が祀られているのだろうか」
「分かりませんが、神主は……居ないようですね。聞いてみようと思ったのですが」
 よく見渡せる境内には二人以外居ない。巫女くらいは居てもいいのだが、誰一人姿が全くないのだ。何か他の仕事でもしているのだろうか。加えて他の参拝客も居なかった。やはり梅の見頃を終えたのも関係しているのかもしれない。
「まぁ、いい。参拝が終わったし、境内を見て回ろう。他の花も植えてあるだろうから」
 本殿から離れた二人は、改めて散っている梅の木を見る。地面に落ちている花びらの色は薄い桃色だが、参拝客に何度も踏まれたのだろう。黒ずんでいたり、ちぎれてしまっている。土方はそれを見て、眉を下げてしまった。
 しかし散った花びらとは、必ずこうなる運命なのだ。残念に思ってから視線を逸らした後に、慶喜の方を見る。
「どこかで菓子でも食おうか。だがその前に……まだ境内で、梅の花が散っていないところを探そう。俺は梅の花がどうしても見たくなってきた。なるべく探すぞ」
「はい」
 慶喜の提案に土方が頷くと、二人は歩き出した。乾いた地面を踏みしめていく。
 地面に落ちている梅の花びらが、風で舞う光景が広がって美しい。それを見た土方は、咲いている姿も美しいだろうと脳内で想像する。これまで、何度か梅の花が咲いているところを見ていたからだ。とはいえ、それは幼い頃であるのだが。
「土方は、何の菓子が食いたいか?」
「貴方は本当に菓子が好きですね……共に頂けるならば、何でも」
「ふふ、お前はそればかりだな」
 慶喜が肘で小突いてくるが、土方は小さな笑みで返した。
「それならば……団子が食べたいです、慶喜様。みたらしがいいです」
「お前のわがままを聞くのは楽しいな。梅よりみたらし団子の美味い店を探したくなるじゃないか」
 そして慶喜が手を掴み、手を繋いできた。思わず土方は顔がほんのりと赤く染まってしまうが、ここは人目につく場所だ。しかし慶喜の手を払う訳にもいかず、ただ照れの感情で手を震わせる。
「ふふ、お前を見ていると飽きないな」
「お戯れを」
 微かに頬を膨らませると、慶喜がそれを突いてきていた。すると空を見上げたのだが、空模様が何だか怪しいように見える。これは、天候が悪くなる前兆なのだろうか。
 慶喜を見れば同じことを思っていたらしい。空を見上げて「天気が……」と呟いていた。その瞬間に、空が雲で真っ暗になる。
「どこかで雨宿りを……くっ! 間に合わないか! ここの神社で雨宿りをさせてもらいましょう。大丈夫です。雨宿りくらいなら、罰は当たらないでしょう」
 慶喜の手を掴み、急いで神社の本殿のある方向へと向かう。そして適当な建物に、草鞋を脱ぎ捨ててでも入る。その瞬間に雨がざあざあと降り始めた。もう少し遅ければ、雨に濡れていたかもしれない。自身よりも、慶喜を雨で濡らす訳にはいかない。
 安堵をした土方は、室内を見る。ここは本殿かと思ったが、どうやら物置だったようだ。木箱や本が沢山積まれており、少し埃臭い。
「ここは本殿じゃないのか?」
「私もそう思っていましたが……物置のようですね。少し外の様子を見てみましょうか」
 扉は閉めていない。なのでそのまま外を覗くが、土方はあまりの驚きに声が出ない。そしてそれを慶喜に知らせたいのだが、声が出ない。
「土方、どうした?」
「いえ……その……外が……」
「ん? 外?」
 指を差して慶喜にどうにか伝えようとすると、察してくれたようだ。慶喜が外を見れば、目を見開いて驚いていた。
 二人が驚いている理由、それは散っている筈の梅の花が咲いていたからだ。雨は降っているものの、花びらが落ちてしまうことはない。
「どうしてだ……!? どうして……!?」
「私には全く……雨が止んできましたよ、慶喜様」
 見れば雨は次第に止んできているように見えた。先程のは通り雨だったのだろうか。なので外に出れば、空から雨の糸が垂れることは無かった。雨が止んでいる。
「通り雨だったのかもしれません。それにしても……どうして梅の花が……?」
「ん? おい……梅の花が、散っているぞ? どういうことだ?」
 慶喜の言う通り、梅の花は散ってしまっていた。どういうことなのだろうか。
「しかし、あれは私達の幻覚ではなかったということになりますが……いえ、慶喜様と見られましたが、できれば本物が良かったです。我が儘を、天は聞いてはいませんが」
「あぁ、そうだな。今年の梅は諦めよう。だが、次の梅の時期は、必ずお前と見たい」
「勿論です」
 外がちょうど晴れてきた頃に、慶喜がそっと笑う。土方はその顔がまるで花開くように見えてしまっていた。いや、土方にとっての一番の「花」は慶喜なのかもしれない。咲いていても、乱れていてもなお美しい。
 すると土方は慶喜に外に出ようと促した。二人で急いで草鞋を履けば、境内からは手を掴んで走って出る。慶喜はどうしたのかというような顔をしているが、今は話す余裕がない。どうしても「この花」を、乱したくなったのだ。我慢などできる筈がないので、慶喜の手を引いてまずは神社から遠ざかっている次第。向かうは、適当な山の中だ。敷地からは抜けることができたのだろう。
「土方!? どうした、ひじか……うう、ん!」
 人気の居ない場所に辿り着けば、急いで慶喜の赤みのある唇を塞ぐ。まるで咲いている梅の花を乱すように、それは乱暴に。
「ん、んぅ……! ふ、ふん、ん……!」
 唇を解放すれば、慶喜の顔が唇のように赤みを帯びる。それもまた綺麗であり、より乱したい欲が強まった。
「慶喜様、申し訳ありません。俺は、我慢ができない男なので……」
「はぁ、はぁ、は、ん……知ってるから、土方、来て……」
 適当にあった木に慶喜の体を縫い止めると、着物の帯を抜いていく。しゅるりと簡単に外れてしまうと、袴をすぐに脱がせる。すぐに肌が露出するが、慶喜のものは既に上を向いていた。土方は無意識に舌なめずりをする。
「慶喜様、もうこんなに……」
 その場で屈むと、慶喜の股間に顔を近付けた。青臭い匂いがするが、それが花の匂いのように思える。
 まるで蜂が針を出すように口を開いて舌を突き出せば、股間に這わせていく。既に皮が剥けている秘部をぬるりと舐めた。
「あ、ぁ……土方、きもちいい……」
 見上げれば、うっとりとした表情の慶喜が両手を伸ばしてくる。そして自身の頭に添えれば、やわやわと後頭部などを撫でられる。整えている髪が乱れた。
「ん、ふぅ……慶喜様、気持ちが良いようで、何よりです」
 目を細めながらそう喋れば、慶喜が更に髪を乱していく。もはや寝起きのような頭をしているに違いない。そうした慶喜を仕置きしなければと、土方は股間を深く咥えていく。黒い茂みを乗り越え、深く深く。
「ぁ、あ! 土方! 魔羅が、気持ちいい!」
 慶喜の腰がかくかくと震える。それに咥えている股間が膨らみ始めたので、もうじき射精をするのだろう。亀頭を口腔内の粘膜で一杯に擦りつければ、頭上からは慶喜の小さな悲鳴が聞こえる。
「っひ! あ、あぁ、あ! 土方! でる! でるから!」
 わざと股間を吸い上げるような真似をすれば、慶喜の腰が小刻みに揺れた。同時に熱いものが口の中に注がれる。慶喜が精を放ったのだ。土方は喜んで喉に通していくが、量は少ない。容易く飲み干せてしまった。
「あぁっ! ぁ、ん……ん……ひじかた……」
 愛しげに慶喜が名を呼んでくる。なのですぐに股間を解放した後に、腰を上げた。慶喜と顔を近付ける。
「慶喜様、好いております。さぁ……」
 慶喜の着物の襟を開くと、豊かな胸が見える。土方はこの胸が好きで堪らない。まるで赤子にでも戻ったような感覚があることは勿論、慶喜が気持ち良さそうにしているところが見られるからだ。
 乳頭を見れば、前から可愛がっている証拠がすぐに目に入る。仄かに腫れており、膨らんでいる。土方は赤子のように、すぐに片方の乳頭を咥えた。
「あ! ぁ……ひじかた、うまいか……?」
「ふぁい」
 咥えながら返事をしたので、何とも間抜けな言葉が出てしまったと思える。しかし今は訂正などしている余裕がないのだ。今は、慶喜の胸を堪能しなければならない。まるで乳でも飲むかのように、ちゅうちゅうと音を立てて吸い上げた。
「ひゃぁ!? あ、あ……! そこ、いい!」
 もう片方の乳頭は、手を伸ばしてから指で丹念に潰していく。程よい硬さがあるので、こりこりと指の腹を何度も動かした。
 次第に慶喜の体が淫らに染まっていく。このままでは人前にで出れないだろう。いや、今の姿の慶喜を見た者は、必ず誘惑されてしまう。だがここは山の中であり、人気がない。近くには神社がある始末。
 そうにも関わらず、土方はまるで挑発するかのように乳頭から唇を離した。慶喜の片方の胸は自身の唾液に塗れている。
「人が来たら、どうされるおつもりですか? こんなに乱れて……」
「ぁ、あん、ん……おまえが、こうしたんだろ、っう! ぁ、あ!?」
 慶喜が口答えをしてくるので、指で更に乳頭を潰していった。かなり気持ちがいいらしく、慶喜は体を仰け反らせた。だが背中が剥き出しという訳ではないので、木の皮が擦れてはいないだろう。土方はそこに安堵をした。
 しかしこのままでは慶喜が辛いだろう。早く果てさせなければと、乳頭から手を離した。赤く腫れており、まるで何かの熟した果実のようだ。それを、口に含んで味わいたくなってしまう。土方はそう思うも、耐えた後に慶喜の片足を上げる。目指すは、挿入口だ。
「慶喜様、この中に俺の魔羅が欲しいですよね?」
「ん、ぅ……ぁ、はぁ、ほしい……ひじかたの、おおきなまらが、ほしい……! はやく、くれ……」
「よく言えました慶喜様。しかし、このままでは貴方の体に負担を掛けてしまうので、少し失礼します」
 そう言った土方は、慶喜の股間から滲み出る先走りを潤滑油にして擦り始めた。最初は何も音がしなかったが、徐々にぬちゅぬちゅといやらしい音が聞こえてくる。土方はこの音を聞いて、堪らず囁きかけた。
「ほら、慶喜様、聞こえますか? 貴方の魔羅から、何とも卑猥な音が」
「あ! はぁ、はぁ……! ぅ! っは、はぁ……!」
 呻き声を出した後に、慶喜が果てる。しかしそこで精液を手の平で受け止めた。にちゃにちゃと指先に慣れた様子で絡めていくと、それを慶喜の挿入口にぴとりと触れる。
 そこはひくひくと収縮を繰り返しているのが、触れただけでも分かった。ここに少しでも早く魔羅を挿入しなければと、土方は指を差し込んでいった。ぬるぬると、順調に入っていく。
「ぁあ! ゆびが、はいってくる! ひじかた、ひじかた! くちすいをしてくれ! ひじかた!」
 慶喜が口吸いを求めてきた。勿論、それに応じない理由など、土方にはない。なので顔を近付けた後にすぐに唇を合わせると、その瞬間に指を深く挿入口に侵入させる。慶喜から、大きなくぐもった声が聞こえた。
 中はとても蠢いており、指でさえも食いつくように締め付けてくる。ここに、魔羅を挿入すればどれだけ気持ちがいいのかは知っていた。女よりも遙かに好く、もう戻ることはできない。元より、慶喜のことが好きであるので、離れるという選択肢は無いのだが。
 そこで慶喜の手が伸びたが、これは土方の責めを緩和させる為ではない。更に責めて欲しいと言わんばかりに、背中に手を回してきた。それは、とても愛しげに力を込めて。
「ん、ん、んぅ! ん、んっ、ん!」
 舌を絡めながら指をずぶずぶと挿入していけば、慶喜の体が大きく震える。これは射精か何かの前触れなのだろうか。そう思った土方は、わざと指の動きを止めた後に、唇を離した。悪戯をした子どものように、笑みを浮かべる。
「まだですよ」
「やらぁ! ひじかた、おれ、はやくだしたい!」
 首をぶんぶんと横に振り、そして駄々をこねる。その様子がただ可愛らしいと思え、穴に挿入している指を引き抜く。
「仕方がありませんな……」
 わざと溜め息をついた後に、袴を取り払う。着物は羽織ったままで、いつの間にか限界を迎えていた魔羅を取り出した。慶喜の目の色が変わり、それは好物を目にしたかのようになっていく。相当に、これが好きだということが分かる。
「はぁ、まら……! ひじかたの、まら!」
 喜んだ慶喜は、自ら片足を上げてから恥部をこちらに晒す。指で少しは解したということもあるが、縁が柔らかそうに赤み帯びている。ここに容易く、魔羅が入っていくことだろう。更には唾液を垂らしており、よほど欲しているのが分かった。
 土方はこれから味わう快楽のことを考えると、笑みが止まらなくなる。
「そこまでお好きになったのですか?」
 慶喜がこくこくと頷くので、土方は上げている片足を掴んだ後に更に足を広げた。慶喜には辛い体勢となるだろうが、木に縋っている。体勢を崩すことはないだろう。
 そして慶喜の腰を持ち上げた後に、穴に魔羅をあてがう。縁に触れた瞬間に、慶喜の体が跳ねた。
「っう! はぁ、入る……! まらが、はいる……!」
 これから得る快感は、凄まじいものである。土方は約束された期待により鼻息を荒くしながら、ぬちゅりと縁に魔羅をめり込ませていく。
 そうして触れられただけで、慶喜は小さく喘ぐ。
「っや!? あ、あ!」
「うっ……! 少し入っただけでも、これは……!」
 早くも締め付けてくる慶喜の腹の中に、土方は微かな呻き声を上げる。だがこのままでは止まる訳にはいかないので、腰を進めた。ずぶずぶと、自身の魔羅が見えなくなっている。
 亀頭まですぐに埋まっていくと、慶喜の体が悦びにより震え始めた。直後に相当に良いらしく、僅かな射精をしていた。そういえば、最後に体を重ねたのはほんの少し前だった気がする。量が少ない。このままでは、すぐに萎えてしまうのだろう。
「やぁ! っあ、あ、ぁ! ひじかた、すき! すき!」
 慶喜は腰を振りながら挿入を更に促していった。そして自身の背中に回している手が、早くもだらりと落ちていく。慶喜の体力は、そこまで残っていないことが分かった。
 察した土方は、早く魔羅を貫かなければと思った。慶喜の体を小さく持ち上げた後に、魔羅を突き刺していく。慶喜の体は、相当に気持ちがいいらしい。顎を上げながら、背中を反らせて喘いだ。
 一方の土方も、挿入により魔羅が粘膜にぎゅうぎゅうと包まれていく。この感覚が堪らないのだが、言葉で伝える前に行動で示そうと思った。より一層抉るように、腰を揺らしていく。慶喜の体が同じように揺れ、そして髷を止めてからかなり経った髪が揺れる。
「あ! ぁ……! っは、ぁ、ん、ん! ひじかた、きもちいい……!」
「俺も、気持ちいいです……! っぐ! はぁはぁ……慶喜様、まだこれからです」
 視線を合わせると、慶喜の目が揺れた。同時に腹の中がざらにきゅうと締まると、そのまま慶喜と顔を近付けた。垂らしている唾液の量は多いが、それを舌で舐め取る。
 時折に髭に舌が当たってちくちくとするが、そのようなことを気にしている場合ではない。唇を合わせると、何度も何度も角度を変えながら入念に唇を密着させる。まるで、口呼吸の隙を与えないかのように。
「ふ、ん、ん! ……んんっ、うん、ん!」
 そして腰を激しく揺さぶれば、腹の中をよく魔羅がかき混ざっていく。
 まるで、腹の中までも拡げてしまうかのようだが、そのようなことなどなる訳がない。ずっと、何度抱いても飽きないこの締め付けを保ち続けてくれるだろう。そうとしか思えない。
 すると何度も蹂躙していくと、次第に射精感がこみ上げる。このまま出してもいいのだろうか。まだ、慶喜は達していないというのに。
 なので慶喜の股間を握れば。それは嬉しそうにくぐもった嬌声を上げていく。白い肌をしている全身が仄かに桃色をしており、まるで梅の花でも見ているかのような気分になる。壮麗だ。
「ん! ん! んぅ……! ふ、ぅん、ん……!」
 しこしこと扱けば、簡単に慶喜のものが膨らんでいく。なのでこの調子で射精をさせれば、中がぎゅうぎゅうと、魔羅がちぎれるくらいに締め付けてくる。その勢いで土方は射精をした。慶喜の腹の中に、精液を確実に吐き出していく。
 唇を離せば、慶喜の目が細くなっていた。それに互いのものが萎えたのだが、土方は口付けを何度もしていく。
「んんっ! ん、ん! はぁはぁ……慶喜様、花よりも美しいのは貴方です。貴方は花のような御方です」
「土方……っは、はぁ、ひじかた……」
 力は少しが戻ったのか、或いは最後にと力を込めたのは分からない。背中に再び慶喜の手が回っていくと、二人の体が密着した。体は温かく、やはり人の肌は気持ちがいい。慶喜のものならば、尚更。
「……ですが、貴方とまた梅の花を見ると約束したのは確かです。貴方との約束は、必ず守ります」
「ん……ありがとう。だが、俺は一年中お前と旬の花を見ていたい。約束を、してくれるか……?」
 慶喜の口から唾液が垂れることは減った。しかし顎は唾液に塗れている。そのような慶喜の顔を、懐から出した手拭いで優しく拭っていった。もうじき、体の熱は逃げていくのだから。
「はい、勿論です。こっれからは桜が見頃を迎えますが、梅の花のことも必ず約束を守ります。また、梅の花が咲く頃に……」
 そっと唇を合わせた後に、持っている手拭いで慶喜の体を拭いた。そして着物を着せてから袴を履かせるが、少し寒いらしい。体を重ねた熱など、消えていっているからか。
 このままでは寒くなると土方がどこかで休もうと提案した。勿論、慶喜の体に負担を掛けたので休める意味もある。なので二人は着物をきっちりと直した後に、慶喜は若干ふらつきながら近くの街へと入っていった。
 途中で先程の神社を通り、そして梅の木が見える。しかしやはり花が散っていることを確認すると、土方はまっすぐ歩き出した。慶喜の体をしっかりと支えながら。