つらなるふたり(于惇于)

つらなるふたり

この日は特にこれといった出来事が起こらなかったが、夏侯惇は無性に酒が飲みたい気分になったらしい。日々積み重なっていく、世話の焼ける曹操のことや軍務のせいだろう。なので夜になるとまずは眼帯を外してから、私室で酒を次々と喉に流していく。
夜着姿であるが、最初はきちんと着ていた。しかし次第に酔って乱れていき、肌蹴ていく。それに顔の周辺が赤く染まる。夏侯惇はこの瞬間とそれに、頭に酒が回っている時がとても幸せだと思えた。
なので夏侯惇は次々と酒を飲んでいると、どこからか事情を知った于禁が訪ねて来る。私室の扉越しから「何かありましたか?」と心配げな声が聞こえたが、夏侯惇にしては珍しくぶっきらぼうな返事を返した。
「何でもないから、放っておけ」
「ですが……」
「何でもないと言っているだろう」
自然と夏侯惇の言葉に怒りが入るが、自身ではあまり気にしていないようだ。于禁の緊張し始めた雰囲気が伝わってきているのが、微かに分かったのだが。
「分かりました。ですがお時間を少しでも良いので頂けないでしょうか。無理に酒を飲まれていると、失礼ながら思いまして」
鼻を鳴らした夏侯惇が仕方なしに承諾すると「このような格好で、失礼致します」という挨拶と共に、夜着姿の于禁が私室に入って来た。まずは夏侯惇の姿を見て、大きく驚く。
「夏侯惇殿……!? そのような格好をされては、体を壊します!」
必死の形相になった于禁は、急いで夏侯惇の元に駆け寄ると乱れた夜着を直し始めた。しかし夏侯惇は于禁の後頭部を見るなり、手で押し退ける。一瞬だけ、つまらないと思ったらしい。
「おい、何もしてこないのか?」
鼻で笑った夏侯惇は、于禁の顎に手を添えた。そして挑発するように顎を撫でると、于禁は誘惑に打ち勝つように眉間に深い皺を刻む。夏侯惇は于禁の顔を見て更に笑った。
「……貴方は酔っていらっしゃるので、早く休んで下され」
遂には頭を勢いよく振ってから于禁がそう言うが、夏侯惇は従う気など皆無。なので顎に添えていた手を一旦離してから、首の後ろへと回していく。
そこで于禁がもう一度抵抗しようとしたが、夏侯惇から熱のある囁きを受けた。
「今は酒のせいで勃たないから、俺を抱いていいぞ」
于禁の顔がカッと、夏侯惇よりも赤くなる。しばらく目を泳がせながら、夏侯惇を視界に入れては外していく。挙動不審になってしまったのだ。
その様子を横目で見て、からからと笑った夏侯惇はそのまま于禁と共に寝台に倒れる。夏侯惇が下に敷かれた。首の後ろに回していた手を、逞しい背中に回す。于禁のその背中が、驚きからびくりと跳ねた。
「上官の誘いを断るのか? いい度胸をしているな」
着物越しに背中を擦られると、于禁はどうにもできなくなる。まるで動物が飼い主に撫でられ、無抵抗の状態になってしまったように。
「ッ……! 分かりました……」
そこでようやく于禁と目が合うと、夏侯惇が手を離してから自身の夜着に手を掛ける。するすると夜着を脱いでいくと、于禁はごくりと喉を鳴らしてそれを凝視した。酔っているので当然、体や息に熱を帯びている。
体から夜着を剥がし終えると、于禁は改めて夏侯惇の体に見惚れた。
当然のように、夏侯惇の体は筋肉隆々だ。本来は女がそのような体を好む筈なのに、男である于禁は女のように心の内で歓声を上げてしまう。つまりは于禁は夏侯惇のことを好いて好いて、たまらないのだ。最早、盲目的になっている。夏侯惇もまた然りであるが。
「俺を勃たせろ」
そう言いながら、夏侯惇は萎えた下半身をぶるんぶるんと揺らした。于禁はそれでさえも興奮するのか、静かに返事をすると夏侯惇の体に手で触れる。
皮膚は酒により熱かった。于禁はその艶めかしい温かさを手の平で感じ取ってから、見た目よりも遥かに柔らかい胸に触れていく。
実は最初は鍛えられているので硬いと思っていたが、実際に触るとふわふわとしている。なので于禁はその感触を楽しむ為に、やわやわと揉んでいった。
「ん、ぁ! は……あっ、ぁ……」
夏侯惇は体をぐねぐねと捻らせ、揉まれたことによる快楽を楽しんだ。普段からかき上げている髪が乱れる。唯一残っている片目を細め、笑みを浮かべながら。
やがて尖りを指をわざと強く何度も摘んでやると、夏侯惇の体が痙攣したように寝台の上で腰を浮かせる。于禁はそのときに「失礼」などと言ったが、実は謝罪する気持ちなどない。寧ろもっと強請れと思っていた。
なので自然と視線が鋭いものとなり、いつもより眉間の影が濃くなる。
「俺を……勃たせろ……」
組み敷かれている側だというのに、夏侯惇は煽ることを止めない。激しい火に向けて風を扇ぐように、夏侯惇は似たような言葉をまたしても于禁に向け続けた。
そうしていると于禁の中の火が、手に負えないくらいに燃えてきたらしい。夏侯惇の腰を掴んでから体をうつ伏せにさせた。体が浮いた感覚に驚きはしたが、夏侯惇は変わっていく状況を緩やかに把握する。
膝の裏が于禁から見えると、肉づきのよい太腿をすぐに動かす。四つん這いの体勢に自ら変え、張る気配のない下半身をぶらぶらと揺らした。
このときの夏侯惇は無様だと思ったが、于禁からの視線を感じると何もかもがどうでもよくなったらしい。尻を揺らし、更に下半身の揺れを大きくする。
「……では、どうすればよろしいのでしょうか?」
みっちりと閉じてしまっている小さな入口を見ながら、于禁は夏侯惇の尻を軽く揉んだ。筋肉で硬いが、良い形をしている。その外見を目でも楽しみながら、于禁は問う。
「この淫乱な雌穴で、ぶんそくの……性欲処理に使っていいから、乱暴に犯してくれ……!」
夏侯惇に恥じらいなどなく、そして詰まりもなく于禁にそう言った。あまりの滞りの無さに于禁は顔をしかめたが、夏侯惇は尻たぶを拡げて待ち構える。腕の支えが無くなったので、上半身は寝台に沈んでいた。
しかし、于禁はわざと面倒そうに呟く。
「そもそも、使うには解さなければなりませぬが」
「……だったら、ここにぶっかけてからにしろ」
更に尻たぶを開くが、これが限界らしい。夏侯惇の指先が白く染まっていく。
「仕方ありませぬな……」
衣服が擦れる音が聞こえたが、それは一瞬であった。于禁はすぐに夜着を取り払うと、自身のそそり勃つ怒張に手を添える。先端からは既に先走りが垂れていた。「最初からずっと、我慢しておりまして」と于禁が尻に向けて言うと、まずは先走りを潤滑油にしながらしこしこと扱く。夏侯惇の入口周りをよく見ながら。
于禁の息が間を置いて小さく上がるのが聞こえたが、先走りが竿全体に塗られたのだろう。滑りが良くなると扱く速度が増していき、それに比例して于禁の息遣いや竿を擦る音が大きくなっていった。おかげで夏侯惇の背後からは于禁の興奮した呼吸と、ぬちゅぬちゅといやらしい音がよく聞こえる。
「……ッ! 出る……!」
すると于禁は膨らんだ怒張の先端を夏侯惇の尻、特に入口に向けた。夏侯惇の背中が期待により動いたが、それを自身で制する。
「ぅ、ア、あ……!」
深い息を伴った唸り声を出した于禁は、同時に怒張から精液を吹き出す。無事に夏侯惇の尻に熱いものをよく浴びせると、于禁は多少ながらすっきりとした顔をした。目の前には、精液の飛沫に塗れた夏侯惇の尻がある。
だがこれでは怒張は治まらないので、夏侯惇の尻に掛けた精液を指に取った。
「今から解しますが」
「ん、んぅ……」
返事と共に夏侯惇の指先の白色が薄くなっていく。それに腕が震えているが、興奮から来るものだろう。だが于禁はそれについて何も言わず、精液を絡ませた指を入口に持っていく。
縁をなぞると、夏侯惇の体がびくりと跳ねた。尻が揺れるが、于禁は確実に入口を精液で慣らしていく。指先をくいくいと侵入させていくと、夏侯惇はこの時点から悶え声を出した。
「あ……ぁ、はっ、ア、んゃ、ぁ……!」
入口はまだ狭いので、于禁の指を拒むようにぐいぐいと押し返す。それがどうにも気に食わないと思った于禁は、夏侯惇の尻を空いた手で軽く叩く。夏侯惇の口から「ひゃ!?」と小さな悲鳴が聞こえた。
ごつい体が大きく揺れ、尻が震える。それを見た于禁はもう一度尻を叩いた。しかし次は先程よりも強めだったので、白い尻にうっすらと紅葉が浮き出る。
「やだ、たたかないで……!」
痛いとは言っていないが、夏侯惇はそう懇願する。だが于禁は白色によく映える鮮やかな赤を見ると、指を更に押し進めた。
「勃たせろと仰ったのは、貴方では?」
荒い息を吐きながらも、なるべく冷静な口調で于禁が答える。すると夏侯惇は少しの間だけ制止の声をつぐんだので、于禁はどうしたのかと尻を叩いた。
「ぃ、ひゃぁ!?」
まずは乾いた音に驚くと、遅れて感じる痛みに夏侯惇は脚をもぞもぞと動かし始める。于禁は自身の膝で夏侯惇の脚を完全に固定して、動作を封じると更に尻を叩いた。
尻全体が朱色に染まったところで、入口の慣らしを再開させる。夏侯惇は口腔内に溜まった唾液をどうにもすることができなくなり、だらだらとこぼして回らない呂律で声を出す。
「やらぁ! まだ、たたなないから、はやく!」
一つの指先がようやく縁の中に入った。夏侯惇は次は布団を掴み、指先を白くさせていく。それを見て我慢がならないと思った于禁は、指を一旦引き抜いた。夏侯惇からは気の抜けた声が出て、口から唾液を垂らしている顔を振り向かせる。
だが于禁は夏侯惇の体を無言で低く持ち上げると、布団の上であぐらをかいてから自身の上にそれを乗せた。大男である夏侯惇の体重が伸し掛かる。動揺が隠せない夏侯惇の顔がよく見えることだけを確認してから、尻に手を這わせていく。
夏侯惇は慎重に于禁の首の後ろに手を回した。そして吐息を漏らすと、于禁は厳しい顔で入口に指先を入れていった。
「ぁ、あ……ぅあ、いたい、ぁあ……!」
次は一本ではなく二本の指先を突っ込む。まだ縁が柔らかくなっていないので、半ば強引である。なので夏侯惇からは、痛いと訴えているような悲痛な声が出た。
唾液が遂には顎の髭に浸透すると、于禁はこれ以上は落ちないようにと唇を塞ぐ。夏侯惇は顎を上手く閉じられなくなっている。なので于禁の舌が容易く入っていった。
「んッ!? ん、んぅ!」
酒の味が目立つので一瞬だけ顔をしかめたが、于禁はすぐに舌で夏侯惇の口腔内をぬるりと一周させる。それも、唾液が溜まっていることも気にせずに。
すると縁の閉まりが多少は緩くなった。それを指先で拾った于禁は、躊躇なく指を奥に入れていく。夏侯惇は身をよじらせるが、腰が砕けていき体をゆるゆると動かし始める。どちらにせよ、于禁は夏侯惇の体を自身の腕で固定するつもりだったらしい。空いた手で夏侯惇の腰に手を回してから、強く掴んだ。
そこで唇を離すと、夏侯惇の眼まで垂れていた。于禁がようやく笑みを浮かべると、まだ残っている目の方の瞼に軽く口付けをする。
「……先程よりかは、入りました」
その間に于禁は指を入口に深く突き入れていた。内側は縁より狭く、そして皮膚よりも遥かに熱い。回数としては慣れてはいるが、やはりこの熱さに触れると溶かされそうだと思えた。
しかし夏侯惇の口からは最早、抵抗の声が出ない。出てくるものと言ったら、未だに落ち続ける唾液か、熱い吐息くらいだろうか。于禁は視線を脱力して恍惚の表情に、次第に変わろうとしている夏侯惇の顔に向ける。何と、愛しいのだろうかと思いながら。
対して夏侯惇は辛うじて頭を上下に数回振ると、于禁は更に指を侵入させた。
「っは、ぁ……あ、ん……はやく……」
夏侯惇の足のつま先のみに力がこもると、于禁は力を抜けと言わんばかりに前立腺に触れた。途端に夏侯惇の体が崩れると、更に指を埋めていく。指が入りきると、二本の指でそれぞれ違う動きをした。だが肉の穴は狭いので動きは小さい。
それでも、于禁は徐々に指の動きを大きくさせていった。夏侯惇の下半身が全く反応しないことを確認して、内心で溜息をつきながら。
「もしや、尻を叩かれる方がお好みでしょうか?」
すると于禁はそう質問してみる。次に夏侯惇は頭を左右に小さく振ったので、于禁は「仕方がありませぬな……」と呟いた。その直後に指をもう一本を強引に突っ込むと、夏侯惇は数度だけ体を痙攣させる。
「ゃ、ア、はぁ、ぁ!」
肉が蠢き、指をぎゅうぎゅうと締め付けた。圧迫感に于禁は表情を険しくしてから、それに抗うように指を広げる。喘いだ夏侯惇はうわ言のように「早く」と急かしてくるので、于禁はまたもや内心で溜息をついてから指を引き抜いた。その自由になった片手で自身の怒張を固定してから、もう片方の腰に触れている手で夏侯惇の体を降ろしていく。
解れたであろう縁に先端が触れると、于禁の体がぞくぞくとした。そして夏侯惇の顔を見ると、勃ってくれない下半身を見つめているのが見える。ムッとした于禁はその視線を逸らすために、腰を掴んでいる手を離してから顎に添えた。
「今は、そこを使われないでしょう。なので放っておきましょう」
于禁が放つ言葉に夏侯惇が何か言おうとしたが、それを封じるように怒張で縁を貫いていく。夏侯惇の反論が、淫らな喘ぎ声へと突然に変わった。
「んひ、や……ぁあ、あ、ッア!?」
太く長い于禁の怒張が縁を擦っていき、肉に辿り着いた。夏侯惇は悦んで快楽を得て、目を見開いた。そして宣言通りに雌穴で于禁の性欲処理を始める。
進み続ける怒張を包んでから扱くように蠢いた。夏侯惇の意思が、腹の中にまで伝わっているのだろう。于禁の怒張から精液を絞るべく、形を変えていく。
「……ッ! きつい……!」
「ぁ、っひ……! ぶんそくのまらが、けっかんが、よくういてる……!」
口角を勢いよく上げた夏侯惇は、自ら腰を落とす。そのおかげか、夏侯惇の腹の奥にまで先端が到達した。互いの下半身の毛が肌を擽る。
そしてへその下の辺りを注視した于禁は、夏侯惇の体を小さく揺らす。
「ぁ、あ、ぅあ、ぁ、っあ、ぁ!」
ぐぽぐぽと音が鳴り、更に于禁の怒張を抱くように締める。すると于禁は一時的に動きを止めてから、夏侯惇の腹の奥にしっかりと精液を注いだ。その瞬間に于禁は低い唸り声を上げ、夏侯惇は高い悲鳴を上げた。ほぼ同時のことである。
「っあ……ぁん……まだだ……」
すると首の後ろに回していた夏侯惇の手が、力が入らなくなり解かれていく。それには于禁はさすがに慌てた表情で、夏侯惇の体を必死に支えた。逞しい腰や背中を、両手で縋らせる。
どうにか体勢を維持できると、于禁は腰を激しく振っていく。次は夏侯惇の頭を、確実におかしくさせるように。
「ぉ、オッ!? らめ、またついたら、こわれちゃう! せいよくしょりが、あ、ゃ、あ、ぁあ!」
先程と同じ量の精液が入っていく感覚に、夏侯惇は一旦乱れることを止めた。言葉とは裏腹にうっとりとしながら、割れた腹が精液により膨れるということが相当に嬉しいらしい。だが腹の奥は、変わらず勃起している于禁の怒張を咥え続けている。
「まだ、終わっていませぬが」
萎えている下半身を見やった于禁は、夏侯惇の肉の穴の中で果て続けた。夏侯惇も于禁に乱暴に犯され、何度も絶頂を迎えていたが。
ようやく于禁の怒張も萎えると、ぶるりと抜いた。夏侯惇の腹の中から大量の精液が溢れ、布団を汚していく。流れ出る感覚に夏侯惇が微かに声を漏らす。
「んっ、ん……!」
于禁の脛にまで掛かるが、本人は気にしないまま夏侯惇と軽く唇を合わせた。
だか唇が離れていくなり、夏侯惇が途切れ途切れに口を開く。
「……してやる」
「はい……?」
言葉を聞こうとしたが、それには無理があった。于禁は夏侯惇を布団の上に寝かせながら、聞き直す。するとどこに体力を温存していたのか、夏侯惇が于禁に手を伸ばした。于禁の腰に行き着くと、そのまま下に降りる。驚いた于禁は体を硬直させるが、その隙を与えないように夏侯惇は指を動かした。
いつの間にか布団の上の精液を指で拾っていたらしく、于禁の尻に滑り込んだ。小さな悲鳴を上げたが、無理矢理に捩じ込まれると苦痛の表情を浮かべた。一方で夏侯惇はふやけた笑顔しか作れないらしい。それを于禁に向ける。
「……ぶんそくも、きもちよくしてやる」
「え、ちょ……!」
その瞬間に夏侯惇の指先が前立腺に着く。于禁は先程の夏侯惇のような喘ぎ声を出す。しかし夏侯惇はそのまま、捏ねるように前立腺に触れた。すると于禁に射精を伴わない絶頂が起きる。全身が数秒だけ弓のように張った。
「んゃ、ぁ……あッ!」
直後に二人は荒い息を上げるが、夏侯惇はまだ前立腺を弄り続けた。于禁は嬌声を上げるが、一瞬の隙を突いて夏侯惇の胸元に唇を寄せる。そして歯を立てると、夏侯惇の指が少しだけ止まった。
「っう、ぐ……はぁ、あ……!」
豊かな胸に赤色が刻まれると、夏侯惇は対抗するように于禁の前立腺を刺激した。びくびくと体を痺れながらも于禁は、胸の他にも様々な場所に痕跡とそれに歯型をつけていったのであった。
互いの体や顔が、体液によりどろどろになっていてもなお。