無事に退院した桐生が、昔の写真を見せてくれた。曰く終わり支度をするというので、春日が手伝っていたときである。場所は神室町から少し離れたマンションだ。桐生は現在、そこで一時的に自宅療養することになっている。見舞いに来た際に、桐生に手伝って欲しいと言われたのだ。
春日は入院前の桐生の姿しか分からない。なので顔が痩せこけており、体は病的に細くなっていることにショックを隠せなかった。それは桐生に対しては失礼なことではあるのだが、春日はどうしても顔に出していた。桐生はそれを見て「大袈裟だな」と笑って流してくれる。
この時の桐生は写真を整理していた。アルバムに収められたものや、箱に入ったものなどあるが数は少ない。桐生の人生はソンヒからちらりと聞いたのだが、それは壮絶であったらしい。何かと戦い、そして失うを繰り返してきたと。春日は桐生の人生の重さを感じる。
そこで桐生の若い頃の写真が出てきた。若かりし頃の桐生の顔は初めて見るが、年齢はちょうど二十歳の頃なのだろうか。流石の桐生である。若くとも貫禄があった。
隣には髪の長い男が居るが、いかにもチャラそうな見た目をしている。しかしこの写真は桐生とその男が笑顔で肩を組んでいるところだ。相当に仲が良いと同時に、チャラそうだとか思ってしまい失礼に当たるとすぐに気付いた。だが春日は口には出していないので、せめてもの罪滅ぼしにとこの男について聞いた。
「桐生さん、この隣の男は桐生さんと仲が良かったんですか?」
「ん? こいつか……こいつは、俺の兄弟だった奴でな……」
「この人が兄弟!?」
驚いた春日は大声でそう言ってしまうが、すぐに咳払いをした後に謝罪をする。
「すいません、大声を出しちまって……それにしても、桐生さんに兄弟がいらしたんですね。いや……何も知らなかった俺が悪かったというか……」
謝罪の言葉を次々に紡いでいく春日だが、桐生は首を横に振ってから写真を見る。目はどこか懐かしそうにしていた。この兄弟の男と、しばらく会っていないのだろうか。
事情があって会えないのかと思った春日は、桐生の背中を押そうとした。
「桐生さん、その人に何年も会ってないんすか?」
「あぁ……そうだな。会っていない、いや、もう会えない」
「えっ、あの……俺、何か失礼なことを言ったかもしれません」
春日は肝をかなり冷やした。桐生のことは何も分からないのだが、この世に居ないということはつまり、と春日は察した。
「いや、いい。こいつとは、昔の思い出について振り返りてぇと思っていてな……あぁ、他の写真もあるな……俺ばっかじゃねぇか……」
他に写真があるのだが、桐生の言う通りに写真は桐生のみが写ったものしかない。兄弟であった男は、桐生のことを楽しそうに撮影していたのだろう。そう思えると、春日の口角が上がっていく。
するととあることを思いつく。今この姿の桐生も、写真に収めようではないかと。物として残る思い出を作りたいと。
春日は思いつくなり、スマートフォンを取り出した。そしてカメラを起動させると、レンズを桐生に向ける。
「ほら、桐生さん笑って下さい!」
「あ? あぁ……ふふっ、前にも、兄弟だった奴にそう言われながら写真を撮られていたな」
昔懐かしむように桐生が言うが、その顔はとても穏やかである。春日は冷やしていた肝を完全に落ち着かせると、シャッターを切るボタンに手を添えた。今すぐにでも撮影できるようにしているのだ。
「じゃあ、撮りま……」
「待て、お前も入れ。肩を組もう」
「えっ!?」
春日は桐生の言葉に驚く。つまりは、兄弟の男とのように写真を撮るということなのだろうか。しかし春日としては兄弟でもないし、直属の舎弟でも何でもない。
自身のような人間が良いのだろうかと思っていると、桐生が手をぐいと引いた。春日はバランスを崩し、桐生の元へと来てしまう。そして密着をすると桐生が「ほら撮れ」と言ってくれる。なので撮影ボタンを押した。そうすると、何か妙な感覚が過った気がする。これは何なのだろうかと春日は疑問に思ったが、桐生を見れば何も異変はない。
「じゃあ、撮り……」
撮影をすると言い切るところで、春日の中で異変が起きた。視界がぐにゃりとした後に、隣から聞こえる桐生の声が小さくなっていく。これは気を失う前兆のようなものだが、どうしてなのだろうか。たかがスマートフォンで、桐生と共に写るだけである。それだというのに、春日の意識が薄れていく。視界は真っ暗になり、何も聞こえなくなった。
パニックになる余裕などないまま、春日は気を失った。
※
目を覚ますと、春日は神室町内に居た。
しかしどうして神室町に居るのだと思っていると、風景がいつもと違うことに気が付いた。
「ここは……!?」
見たところはピンク通りなのだが、春日が知っているものとは違う。いや、厳密には知っているのだが、これは「昔の」神室町だ。春日は驚いて辺りを見回す。
「二十年以上前……バブルの頃か!?」
道ばたに無造作に捨てられているゴミ、いつもとは違う街並み。ミレニアムタワーが無いこと、それに建物の壁や電柱に貼られているチラシを見て気付いた。どれも求人のチラシなのだが、桁があまりにもおかしい。それにきちんと、西暦から月日まで律儀に書いてあった。それには一九八八年と書いてあるからだ。春日は驚愕をした。
「しかし何でだ? 何で俺は……」
「おい」
「ん?」
背後から聞き覚えのある声がした。それは先程まで聞いていた声であるが、それは桐生の声とかなり似ている。いやまさか、まさか桐生ではあるまい。
そう思った春日は振り返る。目の前には、桐生に似た若者が居る。桐生が見せてくれた若い頃の写真の姿そっくりだ。服装は同じだが、瓜二つの別人なのだろうか。
「……いや、桐生さんじゃないしな」
肩をすくめながらそう呟くと、それが聞こえていたらしい。桐生らしき男が怪訝そうに口を再び開く。
「どうして俺の名前を知っている? 誰だお前は」
「えっ」
つまりこの男は桐生だということなのか。すると桐生らしき男に数秒睨まれる。春日は思わずおののいてしまうが、目の前に居るのは桐生だ。
もしもここが本当にバブルの神室町であったら、春日は今の世に存在してはいけないということになる。頭が混乱していき、頭を抱えてしまう。
「おい、赤いスーツのモジャモジャのおっさん、大丈夫か?」
「おっさん!? 桐生さんにそう言われるのは……いや、何でもないです」
桐生からは初めて言われる言葉に、春日は新鮮に思えるが同時に違和感を覚える。春日の知っている桐生ならば、自身は年下であるので年上らしい態度を取ってくれるからだ。
「は……? 変な奴だな」
すると桐生は踵を返そうとしたが、春日はそれを止めようとした。手をがしりと掴んでしまう。
「あ?」
「あ、あの……」
桐生は自身よりも年下ながらも、とてつもない圧を放っていた。春日はそれに負けそうになっていたが、この時代でまともに話しかけられるのは桐生しかいないと思える。なので勇気を持って話しかけた。
「あの、桐生さん、俺迷っちまって……だから、着いて行っていいですか?」
「……あ? 何でだ? ……ったく、しょうがねぇな。俺は今から飲みに行くんだ。行くぞ」
「えっ!? いいんですか!? あっ、でも俺……財布がねぇ……」
財布が無いことを思い出し、様々なポケットをまさぐる。しかしどこにも財布が無いのだ。春日が顔を青ざめさせていると、桐生がくすくすと笑った。笑っているときの顔は、春日の知っている桐生と雰囲気が全く同じである。どうしてなのか、安堵をしてしまう。
「変なおっさんだな。分かった。金なら幾らでもあるから、俺が奢ってやる」
「えっ、いいんですか!? ありがとうございます! このご恩は……」
春日は姿勢を正してから頭を大きく下げる。一方の桐生は相変わらず堂々としていた。だが春日はそのようなことなど気にならない。寧ろ当たり前だと思った。
「お前、名前は?」
「春日です! 春日一番です!」
名乗ると、桐生は「めでてぇ名前だ。いい名前じゃねぇか」と褒めてくれた。このように名前を純粋に褒めてくれるのは久しぶりである。春日は大きな笑みを浮かべながら返事をした。勿論、感情を現す為だ。
「ありがとうございます! 俺、そう言われて嬉しいです!」
「お前、名前で……いや、何でもない。じゃあ行くぞ。適当なバーに行くが、春日は入れるか?」
桐生は自身の名前に何かに気付いたらしいが、すぐに話題を切り替えてくれた。やはり桐生は優しいと思いながら、二人は歩き出した。
神室町にはバーなど幾らでもある。なので桐生が適当に指を差したバーに入る。ここは大通りに面した、シンプルな外装のな店だ。桐生らしいチョイスだと思いながら、春日はひたすらに桐生に着いて行ってから店に入る。
店内はそれなりに空いていた。カウンター席が幾つかあり、テーブル席は一つしかない。こじんまりとした店である。
二人は空いているカウンター席に座れば、壮年の店主が対応をしてくれた。
適当に桐生と同じものを頼んでから、すぐに提供された。まずは桐生が一口飲んでいくが、とても様になっている。これだけ若いのに、貫禄が凄まじい。春日は桐生の大人の雰囲気に飲まれると、負けじとグラスに唇をつける。度数が高い。思わず吹きかけた。
「大丈夫か? 春日」
「は、はい……ん? これ……ウィスキーのロックですか?」
桐生と同じものにした自身が悪かったがもう遅い。頭にアルコールががつんと回ると、目眩さえ起きていた。座っているのにも関わらず、椅子から倒れてしまうかと思える。隣に座っている桐生は、案じてくれた。
「おい春日、大丈夫か?」
「は、はい……大丈夫……れす……」
呂律が回っていない。それに自覚はあるのだが、矯正できないくらいに頭がぼんやりとする。見かねた壮年の店主が、水の入ったグラスを差し出してくれた。春日は礼の後に一気に飲み干す。
「あ、ありがとうございます……」
「まだ一杯目だが、ここで帰ろう。すまんがマスター、会計」
桐生が財布を出してから会計をしてくれる。その間に春日は二杯目の水を飲んでいた。少しは落ち着いた気がして、椅子から立ち上がることはできた。だが足がもつれてしまう。
「春日」
会計を終えた桐生が、手を差し出してくれる。酔っているので感情の堤防など軟化していた。なので涙をぼろぼろと流してしまうと、桐生が驚く。
「お、お前……! 何で泣いて……!?」
「い、いやこれは、違うんですよ、桐生さん……あれ俺、何で泣いて……?」
思えばここまで元気な姿の桐生を見たのは何年ぶりだろうか。最初に大阪で見かけた時は、このように元気だったのかもしれない。春日は勝手ながらも、桐生の健康な姿に更に涙を流してしまう。人間とは、時や病には抗えずに残酷だと思いながら。
「……少し、落ち着いた所に行こう。そうだな、適当にホテルに入って、少し休んだ方がいい。春日、お前は多分、疲れているんじゃねぇのか?」
春日は桐生の手を取った。そして言葉を聞くとすぐに頷き、バーを出る。店主や他の客に心配をされたが、春日は桐生に寄りかかることしかできない。相手は年下の筈であるというのに、春日の知っている桐生として捉えてしまう。良くないことであるのだが、その考えは止まらない。
外に出れば、神室町の喧噪が体中にぶつかってくる。慣れている筈なのだが、この時は何もかもが嫌になっていた。春日の大きな瞳からは涙が止まらない。
「春日、あのホテルで一旦休め。大丈夫だ。俺が傍に居る」
桐生が優しい声でそう言ってくれて、指差すホテルは目の前にある。それなりの高さがあるが、まだ新しい。この街では珍しくラブホテルの類ではなく、春日は安堵を大きくしていた。
二人でホテルに早速入る。桐生が並んで歩いてくれたうえに、春日の足の動きが遅くなるとそれに合わせてくれた。春日は感謝を言葉に出そうとするが、嗚咽が止まらなくなってくる。涙で視界さえ霞む。
フロントに向かうが、従業員は特に変な顔をしないでいてくれる。さすがプロだと思っていると、桐生がスムーズに部屋を取ってくれた。
金を払い鍵を受け取るが、その後にホテルマンが近付いてきた。しかし桐生が「いい」と断ると、ホテルマンはすっと下がってくれる。春日は部屋に着いてからでも、必ず感謝を言葉にしなければならないと思った。
エレベーターに乗るが、桐生はずっとこちらのことを案じてくれている。
取った部屋は低い階層の部屋だった。すぐにエレベーターが止まると、扉が開く。そこで春日が歩き出そうとするが、酒がかなり回ってきてしまったようだ。上手く足が動かない。視界は上手く平行に保てずに、立つことすら難しいようだ。
気付いてくれた桐生は、そっと手を差し出してくれる。まるで、体調の悪い女を気遣っているかのような丁重さだ。
「春日、もう少しだ。もう少し、耐えてくれ」
「はい……」
体調が回復すればお礼を言わなければと思うが、自身はそれ以外に何ができるのか考えた。桐生は確か風間組に居る筈だ。シノギの手伝いなど言語道断であり、何か他愛もない愚痴を聞くことは写真に居た髪の長い男がするだろう。言葉以外では何も礼ができない。
それでいいのかと思っていると、桐生がとある扉の前で足を止めた。どうやら取った部屋はここらしい。桐生が中に入ろうとすると、他の部屋に女一人が入って行くのを見る。ここはやはりラブホテルの代わりにも使われているのだろうかと考えてしまう。
「どうした、春日。早く入るぞ」
解錠をすれば、すぐに扉は開く。そして二人で部屋に入るが、扉は今では最新のオートロックが導入されているようだ。扉が閉まるなり、自動で施錠する音が聞こえる。
ベッドに運ばれてからようやく春日は横になり、そして少しは楽になった気がする。
「桐生さん、ありがとうございます」
「いや、いい。それより……何でだろうな、お前のことを見てると、舎弟か何かに思えてくるぜ」
「舎弟!? まぁ……たしかに、そうですけど」
春日は思わず弱く笑ってしまう。確かに、桐生の舎弟のような位置に収まっているような気がする。否定などできない。
部屋を見渡せば、ツインルームであった。隣にベッドメイキングされた綺麗なベッドが二つあり、桐生はその縁にどかりと座る。
「今夜はゆっくり休め」
春日の知っている桐生のように、柔らかく笑みを浮かべてくれた。やはりこのような人となりは、いつまでも変わらないのだろう。春日はそう思いながら、いつの間にか眠ってしまったのであった。
深夜になったのだろうか。暗闇の中で水が流れる音がする。そこで春日の意識が戻っていくが、気付けば隣のベッドに桐生の姿がない。代わりに、脱衣所らしき場所に照明が点いていることに気付いた。桐生がシャワーでも浴びているのだろうか。
ゆっくりと起き上がれば、体の重さなどがあまり無いように思える。慎重に立ち上がってから、この部屋の照明のボタンを押した。部屋が一気に明るくなる。
「俺……まだ戻れていないのか……ナンバとか、足立さんは今頃どうしてるかな……それに、桐生さんは……」
「俺か? シャワーを浴びてたところだ」
「うわぁ!?」
呟いたところで、桐生の声が背後からした。振り返れば、何も隠していない全裸の桐生が居る。タオルは持っているのだが、濡れた髪を拭う気は無いらしい、だらりと垂れた状態で、桐生の手の中にある。春日は特に構わないのだが、そのままで寒くはないのだろうか。
「いや、何でもないです。それより……桐生さん、ありがとうございました。でも、俺……お礼しか言えなくて……」
「別に構わねぇよ。それに、お前にそのしんみりとした態度はどうもしっくり来ねぇからやめろ。とりあえずシャワー浴びてこい。少しはスッキリするさ」
桐生からそう言ってくれると、春日は妙に納得してしまう。確かに、このような態度は自分らしくない。
なので桐生の言う通りに、シャワーを浴びることにした。着替えのことは考えていないのだが、桐生同様に全裸でもいいだろうと思える。男同士で、別にいいだろうと。
脱衣所に向かいスーツを脱いでいく。ジャケットを脱いだ後にワイシャツを脱いだ。その直後に未だに全裸の桐生が何か言い忘れたことがあったらしい。こちらに来るが、背中の龍魚を見るなり一瞬だけ顔が強張る。
「お前……カタギじゃねぇのか」
「は、はい、昔はそうじゃなかったんですが、今はカタギです……」
そういえば桐生は春日のことを何も知らないことに気付く。自身のことをほとんど話していないのだ。少し気まずくなっているが、桐生は背中を見て言う。
「……少し、見てもいいか? これは、何の彫り物だ? 魚と……?」
「龍魚です」
「龍魚か、いいじゃねぇか。俺は応龍なんだが、色はまだついてなくてな……」
桐生が背中を見せてくれるが、それは春日が知っているものではない。言う通りに色は付いておらず、応龍の黒い線のみが彫ってある。桐生にもこのような時期があったのかと、春日は驚いてしまう。当たり前なのだが、当たり前に思えない。
「そうですか……桐生さん、いつかは必ず、その背中のもんが、立派になりますよ!」
「ふっ、何だお前、俺のことを何でも見透かしてるみてぇだな」
桐生がおかしそうに笑ったが、そこで言いたいことを思い出したらしい。浴室の扉を指差す。
「シャワー、温水が出にくいから気を付けろ」
「分かりました」
桐生が立ち去ると、春日はスラックスまでも脱いだ。そしてトランクスまで脱ぐが、この脱いだものをどうすればいいのだろうかと考える。
「桐生さーん!」
自身も全裸でいいだろう。そう考えながら脱衣所から出るが、桐生は相変わらず全裸だ。ベッドの縁に座ったまま。そういえば脱いだ衣類はどうしたのかと聞こうとしたところで、こちらを見て面白いのか吹き出す。
「お前、どうしたんだ」
「桐生さんこそ……いや、それより、桐生さんは着ていたものはどうしたんですか?」
「あぁ? 洗濯機に決まってるだろ。脱衣所に洗濯機があるんだが……」
春日は生きている時代の物に慣れすぎて、寧ろ今居る時代の物にあまり目に馴染みがなかった。桐生に妙な顔をされるが、今更に誤魔化しようがない。
立ち上がった桐生は、溜め息をつきながら共に脱衣所に行く。そしてとある場所を指差すのだが、それを見れば確かに洗濯機であった。春日は慌てながら、教えてもらった礼を述べる。
「洗剤は無いが、とりあえず適当に洗っておけばいい。大丈夫だ。駄目になったら買えばいい」
流石バブル思考。春日はそう思いながら、言われた通りに洗濯機に脱いだものを入れる。すると桐生は再び脱衣所を出る。なるほど、自身が脱いでから洗濯するまでを待っているらしい。
春日は洗濯機を見る。操作方法はボタンを見れば分かるので、見た通りにボタンを押していく。すると洗濯機が動き出した。そこで春日は浴室に入る。
桐生の「温水が出にくい」は本当であった。おかげで冷水が出ることが多く、春日の体は冷えてしまう。なので急いで浴室を出てから、アメニティにタオルを取り出した。水気を拭き取るが、それでも寒い。ベッドに潜ろうと、脱衣所を出た。
「春日、大丈夫か?」
傍から見ても、寒そうに見えるらしい。桐生は少し心配そうにしていたが、全裸である。シュールな光景だ。しかし春日は思うが、そういえば寒くはないのだろうか。
自身の肌を見れば、鳥肌がかなり立ってる。それにやはり寒い。春日は早口で、桐生に言う。
「き、桐生さん……ほぼ冷水が出てきて、寒いんです。俺、ちょっと布団に入ります……」
急いで布団に入るが、シーツは冷たい。だが先程よりかは随分とましに思える。春日はそのまま暖まるのを待つが、つま先がかなり冷たい。これは相当に掛かるのだろうか。
だが頭のみは出して桐生と会話をする方がいいだろう。なので頭のみを覗かせていると、隣の部屋から何か物音が聞こえる。春日は耳を澄ませてみるが、明らかにこれは性行為の際の女の声だ。急に顔を赤らめてしまう。
「どうした? 春日」
気付いているらしい桐生だが、わざとらしく聞いてくる。意地悪だと思うが、春日はやはりこのようなことに慣れてはいない。自身は童貞故に。
「い、いや……! その……」
しかしどう言えばいいのだろうか。分からないまま桐生の方を見るが、特に何も反応をしていないようだ。相変わらずベッドの縁に座っており、動く気配はない。
一方の春日は次第に股間が反応してきてしまった。膨らんでいくが、布団を被っているので桐生に見られることはない。だがいつかは知られてしまう状況である。春日は考えるが何も良い策が思い浮かばなかった。
「どうした? 勃っちまったのか?」
からかうように桐生がそう言うが、見事に言い当てられてしまった。春日は何も言えなくなると、黙ってしまう。
「……本当なのか?」
壁の向こうからは、規則的に女の喘ぎ声が聞こえてくる。このホテルの壁は相当薄いのかと今になって思えたが、春日のものは完全に勃起してしまっていた。なので恥を忍んで、被っていた布団を自ら捲る。
「……ちょっとトイレ行ってきます」
「待て」
「はい……?」
そこで桐生が重い声で呼び止めるが、見れば少し機嫌が悪そうだ。見苦しいものを見せたからなのだろうか。春日の中でそのような不安が過った。
「……俺も、勃ってきちまった」
桐生は頭を抱え始めながらそう言う。
確かに、桐生の性器はむくむくと天井を向いていた。若いので勃起具合はかなりのものである。春日は自身にもそのような時代があったのだろうか。いや、異性に乱暴に手を出すことは意に反するし、かと言って異性慣れしていないこともある。若い頃の時を刑務所で過ごしていたからか。
「じゃあ桐生さん、先に……」
股間を押さえながら座るが、桐生は首を横に振った。どうやら、案があるらしい。
「春日、抜き合いしようぜ。そっちのが効率がいい」
「はぁ……!?」
抜き合い、春日はしたことがない訳ではない。しかしそれを桐生とするのはどうにも勝手が分からなくなりそうだ。それに桐生とは互いに舎弟同士の身分でもない。春日からしたら、ヤクザのカリスマなのだ。畏れ多い。
断ろうとしたのだが、桐生が立ち上がってからずいずいとこちらに向かってくる。そしてあっという間に、春日の目の前に来ていた。思わず春日は恐怖に震え上がる。
「なぁ、春日」
気付けば桐生の息は荒くなっており、体を押し倒そうとしているのが分かる。このままでは抜き合いを越えて、襲われるのではないのかと思えた。春日は体を震わせる。寒さもあるが、恐怖で。
「き、桐生さん……だめです。こんな、俺みてぇな駄目なおっさんの相手をしちゃあ……桐生さんは、まだ未来のある若者なんですから……」
声が震えながらもそう言い切るが、桐生は引いてはくれない。そして遂には、痺れを切らした桐生が体の上に覆い被さってくる。互いの勃起しているものが肌に当たった。熱いうえに、我慢汁でぬるぬるとしている。
「なぁ、春日……そういえば、お前はどれくらい女と経験があるんだ?」
「えっ……? お、女の子とですか……? いえ、その……」
桐生から質問をされるが、春日は言い淀んでしまう。この年で童貞ということが恥ずかしいのだが、ここは答えるべきなのだろうか。童貞だからと言って、桐生は馬鹿にする人間ではないのは分かっている。
やはり答えるべきか、そう悩んでいると桐生が体を触ってくる。
「なぁ、春日、俺、昨日抜いたばっかなんだけどよ……自分でするの飽きたんだ。口で抜いてくれねぇか?」
「……へ?」
今何と言ったのか。フェラチオをしろと言ったのか。これは聞き間違いかと思ったが、桐生の荒い息が顔に掛かってくるのでここは現実だ。春日の心臓が大きく鳴り始める。
「男に、一回されてみてぇと思ったんだ……男に口で抜かれたら、どんな気持ちになるのかってな……」
断りたいが、今の春日が我が儘を言える身分ではない。ここはやはり言う通りにするしかないと思え、ぎこちなく頷く。
「わ……分かりました……」
ここは頷くしかない。そう思えてきた春日は首を縦に振る。すると桐生の体が退いてくれた。
しかし桐生はそのままベッドに乗り上げると、膝立ちをする。春日は仕方ないように起き上がるが、目の前には桐生の立派な性器がある。だがよく使い込んではいないようで、程よく黒さがあるのみ。それでも春日は喉をごくりと鳴らしてしまう。
「じゃあ、しゃぶってくれ……春日……」
春日は再度喉を鳴らすと口を開ける。そして観念をしたかのように、桐生の性器をぱくりと加えた。青臭い味がするが、シャワーの後なので不快感は控えめだ。だがとにかく大きかった。春日は顎がすぐに疲れてしまう。
頭上からは呻き声が聞こえるが、これが気持ちいいのだろうか。春日は疲れた顎を動かすと、桐生の声がより多くなる。
「あ、はぁ……気持ちいいな……」
すると春日の中で何かが燃えた。ここまで気持ちがいいのなら、快楽を全て支配してやりたいという衝動に駆られる。なので深く咥えた後に、舌を突き出してから性器の先端をべろりと舐めた。桐生の体がびくりと跳ね、更に面白く思える。
「ん、んぅ、ふ、ふぅ……」
「っぐ! おい、咥えたまましゃべるな……! はぁ、ぁ……春日、裏筋も、舐めてくれ」
桐生の手が伸びてくると、頭をやんわりと撫でられた。思えば人に頭を撫でられたことは久しぶりである。それが嬉しくなってしまった春日は、言う通りに裏筋にまで舌を這わせる。苦い味がしたが、桐生の反応は大きくなっていた。
「はぁっ、はっ、出る……!」
桐生の性器が膨らんでいくと、口腔内にとても苦く粘ついたものが注がれていく。精液だということを把握するのに時間を少し要したが、とにかくこのようなことは初めてである。春日は口の中に注がれた精液を、喉にごくりと通してしまう。味はやはり苦い。
「っは、はぁはぁ! 春日……飲んでくれたか?」
確認をするかのように桐生の手が離れていく。すると解放されたので、春日の口から自然と硬度のある性器が離れていった。唾液の糸と共に、性器が出てくる。
まずは味覚について桐生に訴える。味覚が不快で仕方が無いのだ。
「ぷはぁ……! はぁ、はぁ、ぁ……きりゅう、さん、にがい……」
目尻に涙が溜まりながら、桐生を見上げる。すると桐生の顔が一瞬だけ歪んだのだが、何か癪に障ることをしたのだろうか。考えてみるが、何も思いつかない。
「あぁ、だが、ちゃんと飲めたじゃねぇか。偉いぞ。だが……もう少し、付き合ってくれ」
「えっ……?」
腰を引かせながら、桐生は春日の体を押し倒す、そして再び覆い被さると、顔が近付いた。荒い息はまだ続いており、未だに興奮が止まないのが分かる。しかし先程顔を歪ませたことが気になって仕方が無い。聞こうとしたのだが、そこで桐生が驚愕の行動に移った。何と、唇を合わせてきたのだ。
これでは抜き合いではなくセックスなのではないか。童貞ながらも春日はそう思った。だが唇を塞がれており、そう言うことができない。
すると一瞬だけ唇が合わせられた後に、桐生の顔が離れる。
「春日、俺はムラムラしてたまらねぇ……体、借りるぞ」
「え、ちょ、桐生さん!?」
何かを言う暇がない春日はぽかんとするしかない。そして抵抗する脳もないまま、体をまさぐられた。
まずは首元を撫でられた後に、胸をやんわりと揉まれる。しかし女のようには柔らかくはないので、手は腹の辺りへと下りていっていた。
「なぁ、男同士って、気持ちがいいのか?」
「わ、分かりませんよ! 俺には、そんなこと分かりませんよ!」
そして言葉を続けようとしたのだが、咄嗟に桐生に勃起している股間を握られる。春日は短い悲鳴を上げた。
「あっ! き、きりゅう、さん……!」
「だがその前に、慣らさないといけんねぇから、抜け」
「ええっ!?」
かなり無茶な要求である。そもそも、このまま抜いてしまえば春日のものは萎えてしまうだろう。この時代の桐生とは違い、若くはないのだから。
「ちょ、待って下さいよ桐生さ……」
「抜け」
「はい……」
有無も言わさない桐生は圧を加えるように睨んでいた。春日はそれに圧倒されてしまう。自身の股間に手を伸ばすと、緩やかに握った。このまま、桐生の目の前で抜かなければならないのか。
すると桐生に凝視されているのが分かった。これはしなければならないということである。なので春日は恥ずかしいながらも股間を握る。よく勃起しているが、最近は射精の回数は一度が多い。枯れてきれいるのがよく分かる。このまま射精をしてしまえば、桐生と抜き合いどころではないし、このまま抱かれるというならばどうするのだろうか。これ以上、男の体はどうにもできないだろう。
それらを考えながらも、春日は股間を手の平で擦っていく。桐生に抜いている姿を見られているというのは恥ずかしいが、股間が限界を迎えているのだ。擦れば擦る程に、手は止まらなくなる。
「はぁ、はっ、ッ、は、はぁ、きりゅうさん、今、俺も……んッ、ぐ、ぁ、あぁ!」
あっさりと果ててから萎えてしまった。手の平に精液が乗るので、ティッシュで拭き取ろうとした。そこで桐生に止められる。
「待て。それをローション代わりにする」
「はぁ!?」
ローション代わりとは何なのだろうか。どこにそれを使うつもりなのだろうか。しかし頭は自然と縦に振っており、桐生の了承を得てしまっていた。
桐生の手が動くと、春日の手首を掴む。そして何本もの指で精液を掬い取られると「足を開け」と言われる。
もう訳が分からないうえに、体がだるい。射精直後というのもあるが、疲れているのかもしれない。だが、桐生の言葉を否定するという意思が頭になかった。足を自然と開いてしまうが、閉じようとした。そこで桐生が体を間に入れてくる。物理的に足を閉じられなくなった。これはまずい。
「春日、足を開け」
「な、何をするつもりですか!?」
「セックスだ」
何を言っているのだろうか。春日は「はぁ!?」と言うが、桐生の表情は冷静だ。これでは自身がおかしいと錯覚してしまう。
隣からは相変わらず女の喘ぎ声が聞こえ、少し耳障りに聞こえてしまう。それに心臓がドンドンと鳴り、それらが混ざって騒がしい。どちらかを、押さえられないものか。
「少し興味があるんだ、男同士ってのに。それで……お前で試してみたい」
「いやそんなことさっき一言も……」
「いいか?」
桐生の声が一段階低くなったが、これは怒っているのもあるのだろう。春日は恐れてしまうと、足の力が緩む。ぐったりと開いてしまうと、そこで膝裏を掴まれた。桐生は完全に興奮しているが、このような中年の男を見てどこが興奮を保って居られるのだろうか。そう疑問に思っていると、尻を触れられた。春日はまたしても短い悲鳴を吐き出す。
「も、もしかして……ケツを、本当に使うんですか!?」
男同士のそれは聞いたことがある。突っ込まれる側は尻を使うと聞いたが、勃起している男のものなど入るのだろうか。いや、その為にわざわざ射精させられたのだ。桐生は本気で入れるつもりなのだろう。
顔を青ざめかけると、桐生が尻の割れ目を撫でてくる。すると「意外と柔らかいような……」と呟くがそのようなことはない筈だ。興奮で感覚がおかしくなったのかと疑ってしまった。
「ここか」
すると尻の穴を探り当てられたので、精液に塗れた指は穴の周辺を触れる。擽ったいと思っていたが、時折に股間のものの根元と尻の穴の間に指がずれてしまう。そこが好いところだったのか、春日の中で男として受ける快楽を得てしまったらしい。妙な声を出してしまう。
「っあ、ぁ、はぁ……え!? い、いや、これは……ひゃ、ぁ! ん、桐生さん、ちょ、そこは……!」
「何だ? ケツよりもここがいいのか? 変な奴だな」
首を傾げながら桐生がそこを指で何度も撫でられていく。突かれていく。春日の頭の中が真っ白になったかと思うと、そのまま射精感がこみ上げた。しかし股間は萎えている。このままでは射精などできる筈がない。
「あぁ、あっ、ッは、何か、くる! 桐生さん、まって! 俺、もうイくから、まって!」
「あ? お前もう萎えて……」
「ぁ、ア、イく、イく! あ……ぁ、ッう、あぁ!」
腰が痙攣したかと思うと、春日は果ててしまった。しかし射精などしていないが、これはもしかして女のように果てたのだろうか。そう思うと、自身の体が男ようには見えなくなる。これではまるで、女ではないかと。
「フッ……お前……エロい体してるな……早く挿れさせろ」
感嘆の息を漏らした桐生は、指で穴を突いていく。すると不思議なことに、穴が柔らかくなっていくのだ。ここは硬い排泄器官なのであって、外からの侵入など拒むようにできているというのに。
桐生が何度も何度も指を動かすと、容易く指が入ってしまった。苦しみなどない。春日は驚きのあまりに、ここは現実の世界ではないと思えてしまう。
「ほら、春日……お前のエロい穴に、俺の指がどんどん入ってるぞ。そんなに俺の指がいいのか?」
「ゃ、ちが……! 桐生さん、これは……ひゃ!? ぁ、アぁ! 指が全部入ったぁ!?」
見れば桐生の指一本が、丸々尻の穴に入っていた。まずは圧迫感が押し寄せてくるが、桐生はそのようなことなど構わずに指をぐちぐちと動かしていく。様々な方向に動いていき、指の関節が粘膜にごつごつと当たる。その感覚が次第に春日の中で快楽に変換されていった。閉じなくなった口から舌を覗かせながら、喘いでいく。
「っあ、は、ぁ、ん……! ん、ぁ、桐生さん、きもちい! あっ、ッは! あ、イく!」
背中が大きく反った後に、またしても射精感がこみ上げる。しかしこれは先程のように、萎えている状態でまた果てるのだろう。春日はそう思いながら、絶頂を迎えた。足がぴんと伸び、つま先が弱く張る。
「春日、これで気持ちがいいのか? だが俺のものがまだあるぞ?」
桐生が指を引き抜いた。ぐちゅりと卑猥な音が鳴ったが、春日はそれを気にするどころではない。桐生の性器が欲しくなったのだ。
指よりも太く長い性器。これを挿入されたらどうなってしまうのだろうか。尻が疼いていくと、春日は無意識に足を大きく広げる。もう、止まらないのだ。春日は淫らに桐生の性器を求めていく。
「桐生さん、俺のケツに、桐生さんのでけぇちんこが、欲しいですぅ……!」
「おい春日、先にそう言ってくれるとは、思わなかったぜ……!」
桐生が口角を大きく上げると、腰を掴んできた。そして性器の先端が尻の穴にあてがわれると、春日は期待のあまりに腰を揺らした。早く、桐生の性器が欲しくて堪らないのだ。
「きりゅうさぁん、はやく、ちんこ」
頷いた桐生は腰を押し込む。すると不思議なことに、性器はどんどん奥に入っていく。同時に甘い痺れが、全身を襲う。これはあまりに体が喜んでいるから、このうようなことが起きているのだろうか。そうに違いない。圧迫感は不思議と無く、まるで粘膜が桐生の性器に応じて伸びているのか。
そう思った春日は、だらしなく腰を揺らし続けた。桐生の挿入を促すが、思惑通りに性器はどんどん入っていく。まずは一番太い先端が入り込めば、後はずるりと入ってしまった。気持ちが良すぎて、春日は頭がおかしくなると思えた。
すると春日はあまりの嬉しさに、萎えているものから無色透明の液体を桐生に向けて放ってしまう。これは尿なのかと思ったが、匂いはしない。
「……お前、潮を噴いたのか?」
「しお……?」
春日の意識は快感に持って行かれてしまっている。その中で桐生が何かを発言したが、意味がよく分からないでいた。なので首を傾げながらそう聞くが、桐生は笑ったままで答えてはくれない。
「まぁ、いい。それより俺のはどうだ? お前の中はきつくて最高だ」
「ん、んぅ……! きりゅうさんの、おっきい、あつい……!」
「可愛いな」
幼稚な返事しかできなかったが、桐生がそう褒めてくれた。礼にと軽いキスをしてくれると、腹の中がよく蠢いているような感覚がある。まるで桐生の性器をよく包み込んでいるかのようだ。
「っは、はぁ……全部、入ったな……春日、動くぞ」
相当に気持ちがいいらしい桐生がそう言った後に、腰を軽く揺さぶられた。粘膜に桐生の凶器のような性器がぶつかってきて気持ちがいい。春日は腰を何度も痙攣させて、絶頂を迎える。このままでは、男に戻れなくなるかと思えた。女の体の味など、一度も経験がないというのに。
「ぁ、あ、きりゅうさんの、ちんこ、きもちいい、あ、あ! ッは、は、ぁん、ん! ぁ! ア……イく! イく、きりゅうさん、イくぅ!」
またしても潮を桐生に向けて放つが、少し遅れてから桐生が射精をしてくれたようだ。腹の中に、精液を大量に注がれる。
しかし若さ故にまだ足りないらしい。一度性器を引き抜かれるが、尻の穴から精液がとろとろと漏れていた、桐生から見れば、さぞかし卑猥なことなのだろう。
「バックでヤるぞ」
「ん、んぅ……」
体を持ち上げられてから、四つん這いの体勢になる。だが腕に上手く力が入らずに、尻が桐生に向けて突き出す形となった。
少し恥ずかしいと思っていると、桐生が腰を先程よりも強く掴む。春日はそれだけでも、尻の穴を収縮させてしまう。
「あ、ア……桐生さん、ちんこ……!」
「分かってる。挿れる……ぞ!」
ぱちゅんと音が鳴ったと同時に、春日の体に淫らな衝撃が走る。腹の中が再び桐生の性器で満たされると、あまりの嬉しさに絶頂を迎えた。もう何度目なのかは分からない。
「ッあ、ぁあ! もう、イきたくない、きりゅうさん! ぁ、あ! もう、こわれる!」
「壊れるだと? 俺を満足させてからそう言え。ほら、動くぞ!」
桐生の腰が、突然に激しく動き出す。互いの肌がぱんぱんとぶつかり、時折に痛いと思えた。しかし快楽によってそれは相殺されていく。
そこで春日はついていけず、とてつもない快感を体に受ける。全身が揺れ、そして喉からは女のような嬌声を吐いた。
「ひゃぁ! ぁ、ア! きりゅうさん、ゆるして、きりゅうさん、ッは、はぁ、ア!」
涙さえ出てきた。春日は拭うこともできないまま、桐生の射精を腹の中で受けていく。これで二回目となるが、体がより雌に向いてきたと思えてしまう。体は大きく悦んでいる。だが脳はまだ堕ちきっていないようだ。
「そろそろ、観念しろ! 春日、また動くぞ! はぁはぁ、お前の中、気持ちが良すぎて、またイきそうだ!」
桐生はどうやら自身の体で満足している様子だ、するとそれを聞くなり、春日の脳があらぬ方向に働いてしまう。それは、桐生の性器に媚びるように。
「ぁ、あ! きりゅうさ、ん! おれを、まんぞくするまで、つかってください! ぁ、あ、ん、ん! きりゅうさん、おれ、もう、イきすぎて、しあわせですぅ!」
目からは涙を、口からは唾液を垂らしながらそう言うと、春日はそこで気を失った。好きになった感覚が、どんどん遠くなっていく。
※
「おい春日! 大丈夫か?」
「えっ……?」
長い夢を見ていたのかもしれない。そう思いながら春日は意識を取り戻していく。
目の前には心配そうに見ているグレーヘアーの桐生の顔があったが、目が合った瞬間に夢の内容のようなものを思い出してしまう。若い頃の桐生に、激しく抱かれていたのだ。
頭の中にそれが全て入り込み、春日の顔は熱くなっていく。
「い、いえ何でも……!」
「顔が赤いぞ? どうした?」
「何でもありません! しゃ……写真の整理の続きをしましょう!」
春日はそう言って他の写真を見たが、他の写真も見たことがない桐生の姿が写っている。主に、ダークグレーのスーツを着ていた時代だ。
これも夢として出てくるのだろうか。春日はそう思いながら写真を整理したが、密かに期待してしまっていたのであった。