いわゆる記念に
夏侯惇は執務や曹操への対応で忙しくなると、元々短めにしていた髪を伸ばすことが多々あった。だが次第に時間に余裕ができてくると、伸びてきた髪を結わずに短く切っているが。
ちなみに切るタイミングは、大抵は夏侯淵に「伸ばすのか」と聞かれたときだ。最近の夏侯惇は髪をあまり伸ばしたくないらしい。夏侯惇は夏侯淵に切る理由として「手入れが面倒だから」と話していて、夏侯淵は納得していたが本当は別の理由があるようだった。
髪を切る前の夜のことだった。ちょうど互いに時間が空いていたので、夏侯惇は自身の隠れ処で于禁と酌み交わしている。服装は平服姿で、窓際に置いてある大きな二人掛けの椅子に並んで座りながら。
すると于禁は夏侯惇の長い髪をまじまじと見る。二人の繁忙期はよく被る傾向にあり、遠目からしか見る機会が無いようなのでそれは珍しそうに。それに対し夏侯惇は、自分より少し高い場所から凝視されていて違和感を覚えた。
「……俺の頭に何かついているのか?」
「いえ、あなたの長い髪が珍しいのでつい」
「あぁ、これか……髪は長い方が好きなのか?」
「いえ、私はあなたの髪の長さを気にしませぬ。長くとも短くとも、あなた自身が好いているので」
于禁は平然とした表情で、そう流暢に答えると夏侯惇の空になった盃に酒を注ぐ。夏侯惇は「そうか」と返事しながら盃に注がれた酒を見た後、于禁の言葉を数回反芻させると于禁の顔を驚きながら見た。于禁の方からそのような言葉を聞くのは珍しいらしい。いわゆる、于禁からの不意打ちの言葉というもので。
「……えっ」
「あっ!? その……!」
焦る表情に変わった于禁だが、一方の夏侯惇はニヤニヤし始める。盃に注がれた酒を一気に煽ると、床に盃をゆっくりと置く。そして于禁の肩に腕を回すと、夏侯惇は唇を于禁の耳元に寄せた。
「俺は短い髪でいる方が好きなのだが、理由は分かるか?」
夏侯惇はそう耳元で囁くと、于禁は顔を赤くして「分かりませぬ」と首を横に振る。だがそのときには于禁の股間は既に膨らんでいた。その反応を見て夏侯惇は笑う。
「それはな、この首にお前が印をつけやすいようにだ」
そう言うと耳元から離れて席を立つ。
「あの、夏侯惇殿……?」
夏侯惇は座りながらそう聞く于禁の上にまたがると、于禁の太腿の間の空いた座面に膝立ちになり、于禁の肩に掴まる。自分の方が少し目線が上になったと一時的な優越感に浸りながら。
すると于禁の顎を掴んで唇を合わせる。その後に于禁の口腔内に舌を捩じ込み、舌を絡ませた。于禁は舌が入って来た瞬間にあまりの気持ちよさに眉を下げながら瞼を閉じる。それをちらりと見た夏侯惇は顎を掴んでいた手を離し、于禁の首の後ろに両手を回して抱き着くと同じく瞼を閉じた。
于禁は舌を弄ばれながらも夏侯惇を抱き返す。最初は腰の辺りに手を回していたが、次第に下に降りていくと尻をやんわりと揉み始める。夏侯惇はびくりと体を跳ねさせた。
しかし酒により口腔内は既に熱いのか、それを逃がすように唇を離して時折空気を吸い込む。それが冷めると再び、その熱さを求めるように唇を合わせて互いの舌の熱さを感じ取っていた。二人の粘度の高くなった唾液とそれに、口付けの快楽により漏れる声が混ざり始める。
「ぁ、ふっ……ん……」
「んっ、う……」
最初は于禁により衣服の上からやんわりと尻を揉まれていたが、徐々に激しくなっていく。強く揉んだり持ち上げてみたりと、夏侯惇はそれだけで性的な快感を感じるらしい。そのときには夏侯惇の股間も膨らんでいた。
もはやどちらの唾液が判別がつかなくなるほど、二人の唇の端から顎までそれを垂らすとようやく唇を離した。二人は息切れをする中で瞼を上げると、呼吸音をひたすら整えながらそれぞれ衣服を脱ぎ始めた。
互いに全て脱ぎ終えて全裸になる。互いの雄が血管を浮かせながら、むくりと上に反っているのがよく見える。だが夏侯惇は于禁と同じ目線になり、于禁の右手を自分の口元へ近づけた。
「な、何を……?」
夏侯惇はそう言う于禁の、人差し指と中指と薬指の三本を口に入れた。夏侯惇はそれを、長い髪を時折耳にかき上げた挙げ句、声を漏らしながらちゅぱちゅぱと音を立てながらしゃぶる。于禁の雄を扱うかのように、両手で于禁の右腕を持ち。その光景を見た于禁の鼻息は荒くなってきていた。
しゃぶっていた指にねっとりと唾液がつくと夏侯惇は口から離し、にやりと笑い于禁の肩を掴み再び膝立ちになった。そしてそのまま浮いていた于禁の右手を掴むとそれを尻へと持っていく。
「早く……」
それを見て于禁は察した。なので右手を夏侯惇の尻穴へ向かわせ、人差し指で穴を突く。
「ぁ、あっ……ん……!」
夏侯惇は微かに喘ぎながら脚をガクガクと震わせた。だが于禁はそれを気にしながら人差し指をぐるりと回して、それを無理矢理入れる。唾液が潤滑油の役割になってくれているのか、すんなりと根元まで入った。
「既に、この中が熱いようですが」
「っ……! 喋るな、早く全て入れろ!」
「……はい」
息を荒くしながら夏侯惇は指示した。なのでそう返事した于禁は人差し指の先をぐねぐねと数回折り曲げた後、中指を入れようと尻穴をゆっくりと押す。
「あ、あん、やめっ、ぁ……」
「止めて欲しいのですか?」
「ちがう、ぁ、んっ……」
于禁は指先を沈めていくとどんどん沈んでいき、ようやく根元までたどり着いた。夏侯惇は再び微かに喘ぐ。
「ん、あ、あ……ぁ……!」
夏侯惇はよがりながら腰を振る。だがそれを見た于禁は限界が来ていた。指を即座に引き抜き、夏侯惇を横抱きしてから寝台へと担いで行った。
「なっ!? おい、どうして止めた……!」
顔を赤くしながら、夏侯惇はそう抗議するが于禁は話を全く聞く気も無かった。夏侯惇を乱暴に寝台の上に仰向けに下ろす。だが夏侯惇は腰に力が入らず、体勢を変えられないらしい。それでも肘と首だけは動くので、それらを何とか立たせて寝台に乗ろうとしている于禁の方を見る。
「あのままの体勢ではではお辛いと思いまして」
そう言って于禁が寝台にぎしり、と音を鳴らしながら乗る。だが言葉と行動が一致していない。于禁は平静を保つのは、興奮のあまりもう無理のようだ。それに本人は分からないまま。
すると無防備な夏侯惇の両脚を持って開かせ、下半身へと顔を近付ける。夏侯惇の尻穴はほんのりと桃色になっていた。それを見た于禁が喉を鳴らすと、再び夏侯惇の尻穴に指を二本挿入して、更には雄を口に含み始めた。
「あ! ぁ、やめ、同時には、ぁ、あ、ん、ぁ! ゆび、ふやさないで、や! あっあ、んっ、やぁ、あっ、あ!」
すると尻穴に入れる指を三本に増やされていた。尻穴に指をぬこぬこと素早く抜き挿ししながら、于禁は夏侯惇の雄を狭く暖かい口腔内で包んで舌先で刺激を与える。夏侯惇の腰はガクガクと揺らしていた。寝台に敷かれている布を強く握る。
すると于禁は指を少し引き、夏侯惇の前立腺を指でぐいと何度も押した。
「あ、ぁあぁっ! やめ、今、それ、あっ!? あ、やめ、ぁ、あっ、んあ、あぁ、あぁっ……」
夏侯惇は敷かれている布を握る力が出なくなると、于禁の口腔内で射精をした。于禁はそれを全て飲み込むと、含んでいた口を離す。夏侯惇の雄はまだ萎えておらず、先端に口付けをした後に。
「……かなり溜めておられたのか、濃いようで」
「そのような暇が、無かったからな……」
于禁は寝台の上で四つん這いになると、息の荒い夏侯惇の腰を掴む。そして座ると同時に夏侯惇を膝立ちにさせた。
「……ですが、そこまで耐えられたようで、私は嬉しいです」
于禁は一人ではまともに膝立ちをできない夏侯惇を、愛おしげに見上げる。だが夏侯惇は次の性的な刺激を欲しているらしく、その言葉に対してこくりと頷いただけだった。
なので于禁は夏侯惇の両腕を自分の首に回す。そして夏侯惇の尻を両手で持った。
「ぁ、あ、ぁん……」
尻を少し触られただけでびくりと反応した夏侯惇だが、于禁と顔を近づけると再び口付けをして舌を絡ませる。于禁の口腔内には少し夏侯惇の精液が残っていた。なので口腔内には苦い味が広がる、はずだった。夏侯惇の味覚は麻痺していたのか、なぜだが甘く感じているようで舌を更に絡ませた。甘い蜜を、味わうように。
するとしばらく絡ませていた舌はようやく離れるも、甘さを求めて夏侯惇の舌だけは于禁の口腔内の至る所を蹂躪し始める。
蹂躪される側の于禁の脳が、溶けそうなくらいに気持ちがいいらしい。なので最初は目を見開くも次第に目を細めていき、于禁の唇の端からはだらだらと唾液が垂れた。
「ん!? ふぅ、んっ、んぅ……」
于禁の漏らす声により、夏侯惇はより蹂躪する度合いを上げる。すると歯列をなぞり、上顎までなぞるとようやく唇を離した。于禁は息切れをしながら夏侯惇を睨むが、それに対してニヤリと笑って返されていたが。
それに少し苛立った于禁は夏侯惇の男性にしては豊満な胸元に唇をつける。そしてガリ、と赤い痕をつけた。
「そんなものが、仕返しか?」
夏侯惇はそう挑発すると、于禁はムッとした。その際に夏侯惇は垂れていた髪を耳に掛ける。
「では、このままの体勢でしましょうか」
普段よりも更に眉間に皺を寄せた于禁は夏侯惇の腰を掴むと、ゆっくりと自分の雄に目掛けて降ろしていく。そして雄の先端が尻穴につくと、先端を少しずつ埋めていった。
「ん、ぁ、あっ、あ……」
三本の指よりもかなり太くて熱いので、夏侯惇は背中をしならせた。だが満足そうな顔をしている。そこで于禁は夏侯惇の腰ではなく背中に手を回すと、自分の方へと引き寄せていく。互いの肌が密着したが、肌も熱いらしく夏侯惇は「あつい……あつい……」と、顔を蕩けさせながらうわ言のように呟いた。
だが于禁は夏侯惇がその様子の間にどんどん雄を沈めた。半分まで入った時点で、夏侯惇は汗をかきながら控えめに喘ぐ。
「ぁ、ん、あぁ……」
すると夏侯惇は回していた両腕の力が入らなくなったのかずり落ちる。なので于禁は夏侯惇の背中に回していた両手を離すと、ずり落ちた両腕を自分の腰へ回してから、縋るようにもたれさせた。
確実に回したことを確認した于禁は、再び夏侯惇の腰を掴むと再び雄を沈めていった。ぬるぬると進んでいき、ようやく根元まで入る。于禁の雄は夏侯惇の狭く暖かい肉に包まれ、それだけでも射精しそうだったが何とか耐えた。衣服を脱ぐ前の、熱い口付けを交わした時点で限界がきていたというのに。
そしてそのときには二人の視線はほぼ同じ高さになったので、視線を合わせる。于禁は夏侯惇を犯したくてたまらない、という目をいつの間にか変わっていた。夏侯惇はそれを見て脳が一瞬で雌になったようだ。于禁の雄を包んでいた肉をきつく締まらせる。
「ぐっ……! 夏侯惇殿、動いても、宜しいでしょうか……!?」
息を荒げ、汗をかきながら于禁はそう聞くと夏侯惇は頷くので、すぐに上へと突くように腰を揺らした。
「ぁあ! あっ、あァ……ぁ、あっ、んぅ、あ、ん、アっ! もっと、ほしい、あ、ぁん、ァ、あっ、あ、アっ、ぁ、あっ、あ!」
寝台が激しく軋む音がするがそれにも負けず、夏侯惇は女のように喘ぐ。それに体勢からして腹の中をごりごりと擦り上げていたのか、夏侯惇は雄を射精をさせながら腰を振ると、まだ切っていない長い髪が揺れた。それにより于禁の鼻孔を、夏侯惇の髪の匂いがくすぐらせて余計に興奮させていた。
夏侯惇の精液が二人の胸元までかかったが、そのようなことは気にならないようだ。于禁が下から突き上げる速度を上げ、二人の胸元の汗と精液がぬるぬると滑っていても。
「では、あなたのお望み通りに激しく、突きます故に」
于禁はもう余裕がないのか、夏侯惇の腰を掴む力を強めるとガツガツと下から腹の中を突き上げた。于禁の腿と夏侯惇の尻たぶがぶつかり合い、ぱんぱんと大きな音が鳴る。
「ァあっ! そこ、もっと、ぁ、あっ、あ、あっ、イく! や、アっ! あ、あ! ぶんそくの、きもちい、ひあぁ! らめ、ア、ぁ、イっちゃう、ああ、あっ、あ、ぶんそくので、イく、ぁ、ァあっ……!」
すると夏侯惇の腹の中で、びゅるびゅると射精した音が勢いよく聞こえた。そのときには于禁は獣のような唸り声を上げていたので、それを聞いた夏侯惇も興奮のあまりに射精をして互いの腹にかかる。
「はぁ、はぁ、ぶんそく、あついの、もういっかい……」
夏侯惇は雄を挿入されていながらも腰を淫らに振って于禁を誘惑する。そのときに結合部からは、濃い精液によりごぽごぽと音が鳴るが、于禁の雄がみっちりと埋まり栓をされているので出てこなかった。
未だに雄が萎えていない于禁は「えぇ」と短く返事をすると、埋めていた雄をゆるゆると入口まで引く。そこでようやく中へと出していた精液が流れ出た。
「あっ、ぁ、あ、ん……」
于禁の先端のくびれが前立腺を掠めたところで、于禁は先程よりも少し角度を変えて再び雄を埋めた。自分で出した精液のおかげで簡単に入っていき、卑猥な水音が鳴る。なので夏侯惇の腹の中から、まるで女の性器から出る愛液を出しているかのよう、于禁は錯覚してしまっていた。
「っ……! ぅ、きつい……!」
再び挿入して半分以上まで埋めた時点でも、夏侯惇の腹の中はよく締まっているらしい。腹の中で残っていた精液は流れ出ず、奥へと押し込まれた。
「んあ、あ、あっ! らめ、アん、ァあ、アっ、あ! そこ、らめ、や、ぁ、あ、らめ、すぐにイくから、らめ、そこらめ! あっ、きもちいいから、イっちゃう、あ、ァ、あぁっ!」
ぐいぐいと埋めていき根元まできたところで、雄の先端は夏侯惇の結腸を微かに触れる。ただそれだけで夏侯惇は雌のようによがり狂った。
「ふぅ、ふぅ……ここですか……」
于禁の雄の先端は夏侯惇の結腸の入口へと確実に辿り着くと、そこを激しく突いた。夏侯惇が于禁の上に乗っているので、かなり奥へと入ったようだ。夏侯惇の腹からはずちゅずちゅと音が鳴り、時折ごぽごぽと精液が混ざる音も聞こえた。
そのときの夏侯惇には理性は無いのか、口から涎をダラダラと垂らす。
「ぁ、あ、そこらめ、そこよわいから、ア、あっ! ごしごしするのらめ、ァっ、らめ、あ、あっ、らめ、おかしくなる、ア! あん、めすになっちゃう、ァ、らめ、ぶんそくのめすになっちゃう、アッ……あ、ぁ、イく、イく、ぁ、イく、あっ、ぁああっ!」
夏侯惇は射精せずに絶頂を迎え、一方の于禁は唸り声を上げながら夏侯惇の腹の中に再び射精をしていた。腰をガクガクと揺らしながら、夏侯惇はあまりの快楽に残っている片眼から涙を流すが、その瞳は虚ろになっていた。
「ぐぅ……、はっ、はっ、はっ、気持ちよかったですか?」
于禁は未だに冷めない熱を持ったままそう聞くが、夏侯惇は顔を赤くしながら息切れをしているのみで何もリアクションを起こせなかったらしい。それを見た于禁は夏侯惇の流した涙をぬろりと舌で舐めとると、腹の奥まで入っていた雄をかなりゆっくりと引かせる。夏侯惇の体はびくびくと跳ねた。
「……愛しています、元譲」
夏侯惇の耳元でそう囁くがやはりリアクションは返ってこなかった。汗をかいていて、呼吸をしていて、心臓もきちんと動いているのに。
だが于禁は最後に、と雄を下から思いっきり確実に結腸へと突いた。
「っ、や、や、あ、あぁあああっ!」
ばちゅんと激しい音が鳴ったともに、夏侯惇は悲鳴を上げた。夏侯惇の雄からは透明な液体が吹き出すとそのまま失神して、体はがくりと脱力する。それを于禁はしっかりと抱き上げて仰向けに寝かせた。
「長い髪の元譲も、勿論愛しております……」
于禁は失神した夏侯惇の体から雄を抜くと、汗により顔に張り付いた長い髪を優しく払い、首に大きく強く、赤い痕をつけたのであった。