あるクリスマスの夜
クリスマスの夜だった。
クリスマスというと一般的には『聖』なる夜と呼ばれているが、一部では特に特定の時間帯のことを『性』なる夜とも呼ばれている。なので夏侯惇と于禁はその『性』なる夜を過ごそうとしていた。しかし二人は年末ということもあり、大量の仕事とそして残業漬けの最中だ。
だがその中でも何とか二人で過ごそうと、クリスマス当日に必死で仕事に一区切りをつけてきたのである。
「疲れた顔をしているな……」
「夏侯惇殿こそ……」
二人はほぼ同時にへとへとになりながら家に帰っていた。そして互いにシャワーを浴びて揃って下着姿で寝室へと向かい、夏侯惇は于禁をベッドに押し倒す。その時には壁掛けのアナログ時計は21時を示そうとしていた。
しかし二人は明らかに疲れた顔をしていたが、閉まっているカーテンを確認すると、部屋の照明を落としてサイドランプを点ける。だが二人の疲れた顔がやけに浮いていた。
「少し、少しだけでもいいから目を閉じてもいいか?10分だけでも……」
「いけません!その『10分だけ』が実際はそれ以上にもなる可能性があるというのに……!これ以上、私ではなくてもそのような過ちは……!」
于禁は『○分だけ』という言葉に何か因縁があるらしい。夏侯惇の肩を掴んでガクガクと揺さぶって眠気を飛ばそうとした。すると夏侯惇の顔色が悪くなる。
「おい、揺ら……ゔっ、きっ、気持ち悪い……」
于禁の顔は青ざめた。そして「申し訳ありません!」と謝った後に体勢を逆転させ、夏侯惇を押し倒すような形にさせる。
「深呼吸して下さい!ゆっくり!深呼吸を!」
于禁は必死にそう言うと夏侯惇はその通りにする。だがそれがいけなかったのか、夏侯惇は意識を失うように眠ってしまった。
「何……だと……!?」
于禁は深く絶望した。だがこうなった以上、無理矢理に気持ちよさそうに寝息を立てる夏侯惇を起こす訳にはいかない。
そこで諦めがついたのか、于禁は夏侯惇の横に仰向けになると睡魔には勝てなかったらしい。すぐに眠りについてしまっていた。
※
「……はっ!?今は何時だ!?」
夏侯惇は飛び起きた。辺りを見回すと、明らかに夜が明けているのが分かった。閉まっているカーテンの隙間からは眩しい日光が差し込み、微かに鳥のさえずり声が聞こえるからだ。
咄嗟に昨夜充電し忘れていて、バッテリー残量が残り10%となっているスマートフォンを確認する。日付が変わっていることだけを確認した瞬間、とどめを刺されたような気分になって深く項垂れた。
その直後に于禁も目が覚めたようで、同じく状況を確認すると死んだような顔をする。
「かなり久しぶりに寝過ぎたのか、腰が怠いです」
「俺も腰が怠い……」
こうして二人の今年のクリスマスは終わったのであった。