于惇SS(三国)

雨音の隣

雨音の隣時刻は早朝前だろうか。辺りはまだ暗いうえ、外は土砂降りだった。それもかなり耳障りに思える程に。その音で目が覚めた夏侯惇はのそりと寝台から起き上がり、掛けていた夜着の裾を捲ると窓から外を見る。「寝ている間に降ったのか」そう言うと、再び…

溶ける体温

溶ける体温寝台へと誘うと、すぐに夏侯惇は于禁を組み敷いた。二人の表情は既に発情していて、いち早く粘膜同士を合わせたくてたまらないらしい。夏侯惇は貪るように于禁と唇を合わせる。それと同時に夏侯惇は于禁の服を脱がせ、于禁も夏侯惇の服を脱がせてい…

雪が溶けたら、また

雪が溶けたら、またそれから数日後の、太陽が真上にある頃のことだ。最近は戦況も城内の様子も落ち着いてきていた。そこで于禁は書物庫でたまたま会った夏侯惇に話しかける。同じ棚に用があったらしく、視線だけは向かい合って互いの肩を密着させながら。「夏…

冷えた空気と体温

冷えた空気と体温「于禁、疲れているところすまんが、今からすぐに街へ見回りに行くぞ」ある日の冬の黄昏時のことだ。城内での鍛錬が終わった直後の直刀を持った于禁に対して、平服姿の夏侯惇はそう話しかけた。「承知いたしました」于禁は了承の返事をすぐに…

いわゆる記念に

いわゆる記念に夏侯惇は執務や曹操への対応で忙しくなると、元々短めにしていた髪を伸ばすことが多々あった。だが次第に時間に余裕ができてくると、伸びてきた髪を結わずに短く切っているが。ちなみに切るタイミングは、大抵は夏侯淵に「伸ばすのか」と聞かれ…

云えば云うほど

云えば云うほどある日のことだった。戦場に居るような甲冑姿の于禁は城内を歩いていると、女人たちとすれ違いざまにとある会話が聞こえてきた。その会話の内容とは『ふとした瞬間に、好いている者から可愛らしいと言われ続けてから、どんどん自分の容姿が可愛…

焼きすぎたお節介

焼きすぎたお節介夏侯惇は時折、失明した片眼がまだあってものが視えるように錯覚してしまうときがある。なので平衡感覚を失うことがごくまれにあった。それはほんの一瞬だが、本人でさえなぜかは分からないらしい。それが起きるタイミングはいつも不規則なの…

獣は一頭でいい

獣は一頭でいい肩甲骨のあたりまで髪を伸ばしていた夏侯惇はある夜、髪を切ることにした。理由は単純で、日常生活で何かと邪魔になるからだ。かと言って結うのも面倒。なので夏侯惇の私室にて夏侯淵に耳に少しかかるくらいまで切ってもらうように頼んだ。ただ…

鏡と

鏡とある夜のことだ。夏侯惇と酒を呑む約束をしていたので、于禁は平服姿で夏侯惇の隠れ処へと来ていた。既に夏侯惇は居るらしく、屋内の明かりが外から微かに漏れていた。それを確認した于禁は出入り口の扉を軽くノックする。「夏侯惇殿、私です。于禁です」…