雨音にかき消されて
「……雨か」
ある夜のことだ。于禁は夏侯惇との性行為が終わった直後、荒い呼吸を整えきれていないところだ。いつの間にか雨が降り始めていた。気付いたら聞こえていた外の雨音と、二人の荒い呼吸が重なる。
于禁に寝室の上のベッドに組み敷かれ、両腕を背中に回していた夏侯惇はそれを離す。一方の于禁は両腕を夏侯惇の顔の横に沈めていたので、それを上げながら夏侯惇に埋めていた、コンドームが被せてある雄をゆっくりと抜く。
「んっ……はぁ、ぁ……お前が、入ってる途中から、降り始めていたのだがな」
次第に呼吸が整ってきた夏侯惇はそう言う。
「あまりにも夢中になっていて気付きませんでした」
使用済みのコンドームの処理を素早くするために于禁は、夏侯惇に背中を向ける。すると性行為中につけた幾つもの背中の爪痕が目立っており、夏侯惇は思わず目を逸らす。そこまで爪痕が背中についているとは思いもしなかったらしい。
「……いつもは天気予報を毎日見てるというのに、今日の分は見ていなかったのか?」
「いえ、確認はしていましたが、今日は久方ぶりに夏侯惇殿と夜を過ごせるので忘れていました」
続けて性行為をするつもりは無いが、于禁は再び夏侯惇を組み敷く。
そして互いの肌を合わせて体温を感じ合う。
「最近はお前の部署は、色々と忙しくなってきたからな……」
「えぇ、おかげであなたを何日も抱けず大変でした」
于禁は夏侯惇と額をくっつけ合い、互いに指を絡め合う。
「相当溜まっていたのか?」
「ストレスがですか?」
「いや、下の方だ」
夏侯惇は笑いながら答える。雨音は先程よりも強くなっていた。
「直球ですね。それは、その……」
于禁は額を離し、絡ませていた指を解くと言葉を詰まらせる。少し恥ずかしがっているのか、視線を逸らした。夏侯惇はそれを見て口角を上げる。
「溜まっているなら俺に言え。喜んで口で空になるまで抜いてやる。手でするより、口で抜く方が俺は好きだからな」
「ですがあなたは……」
「日を改めて返してくれればいい。その時は楽しみにしている」
夏侯惇の言葉の意味を理解した于禁は、口元を右手で覆う。そして顔を赤くした。