白いリボン
「于禁、これを着てくれないか?」
ある日の夜のことであった。会社から帰宅した夏侯惇は于禁を自身の家に呼ぶなり、そう言ってとある物を渡した。その渡した物とは、畳まれている黒と白の服のようだが異様に布の量が多い。于禁は首を傾げながら広げると、目を大きく見開いた。
それは、自身の人生とは無縁である筈のメイド服であったからだ。視線を今の軽装の格好からメイド服へと、数回往復させる。
「……お断りします」
眉間の皺があり得ない程に深くなっていくと、于禁はそう言って渡されたメイド服を素早く畳んでから夏侯惇に押し付けるように返す。溜息をついた夏侯惇は少し呆れたような様子だったが、何かを思い付いたらしい。
「それなら、俺が着る」
「はい、そうですか……は、はい!? 今、何と!?」
于禁は何かの聞き間違いかと思い、聞き直す。それに夏侯惇は、呆れながら答えた。
「俺が着ると言ったのだが」
ただ驚くことしか、于禁はできなかった。だがそれに構わず夏侯惇はメイド服を広げる。
「サイズ表ではお前向けのサイズであるから、俺でも着れるだろう。ほら、シャワーを浴びるぞ」
「……シャワー!?」
メイド服を片手に持ち、夏侯惇はずかずかと脱衣所へと向かおうとした。それを于禁が驚きの目で見ると、夏侯惇は于禁の腕を取って引き始める。早くと急かすように。
「お待ち下され!」
「待たんぞ」
話を聞く気の無い様子の夏侯惇に、于禁は諦めが見え始めた。しかしまだ諦めに支配されている訳ではないので、于禁は質問をしようとする。引かれている腕を振り払おうとしたが、夏侯惇はがっちりと腕を掴む力を強めていく。そこで于禁は諦めがついたのか、夏侯惇と共に脱衣所へと向かった。
衣服を全て脱いで洗濯機に入れてから、二人は浴室に入る。夏侯惇はごく普通に体を洗っていくが、一方の于禁はそわそわとしていた。妙に落ち着かない様子で、夏侯惇の裸体を見ては目を逸していく。それに気付いた夏侯惇は、于禁に指摘をする。
「……何をしている?」
訝しむ表情でそう尋ねると、于禁の体が大きく跳ねた。
「その……メイド服で、貴方は何を?」
「お前へのご奉仕だ」
于禁の質問を聞くと、夏侯惇は笑い始めた。そして悪戯をしているかのような、何かを企んでいるような顔でそう答える。
その頃には体を洗い終えたのか、于禁に早くと急かしていった。
二人は浴室から出ると水気を、特に夏侯惇は拭き取ってから髪を乾かしていく。下着などは履かず、夏侯惇はメイド服を手に取ると至る場所を触りながら着ていった。
着方が分からないようだが、そうしていくうちに構造を把握したようだ。どうやらワンピースのようなものなので、スラックスを履くように脚から襟元に入れていく。次に襟元を肩まで上げてから、最後に背中のファスナーを閉めるのみ。
だが最後背中のファスナーを閉めることはできないので、于禁にそれを頼んだ。
「チャックを閉めてくれないか?」
夏侯惇は振り返るが、于禁にとってはとても異様な組み合わせであった。サイズは確かに男性用だが、大きな体に纏っているものは黒の裾の長いワンピースに、白く可愛らしいレースやリボンがたくさんついたメイド服である。胸元には、白く大きなリボンがついていて。
于禁は頼み事を聞くことはできても、動揺して体が固まってしまっていた。一方の溜息をついた夏侯惇は、自身で何とか背中のチャックを閉めていく。
「その……申し訳ありませぬ……」
腕を後ろに回してから無理矢理にチャックを閉めた夏侯惇を見て、于禁はようやく体が動く。まだ何も着ていないので、脱衣所に予め置いてある寝間着や下着に手を伸ばす。しかし夏侯惇にそれを妨げられた。「どうしてなのか」という顔を于禁はしながら。
「お前が服を着ていたら、ご奉仕にはならないだろう?」
于禁は盛大に首を傾げてから何かを言おうとしたが、夏侯惇にまたしても強引に腕を引かれていく。
寝室へと辿り着くと夏侯惇はベッドの近くの棚から、ローションボトルを取り出してベッドの上に放り投げる。次にベッドの上に于禁は仰向けに放り投げた。
于禁の上に夏侯惇は覆い被さるが、光景が異様としか言えないでいる。全裸である于禁の上に、メイド服を着ている夏侯惇が乗っているのだから。
夏侯惇はニヤニヤとしながら、于禁と指を絡める。
「は……夏侯惇殿……」
于禁の竿がゆるゆると反応し始めるのを見て、夏侯惇は片方の手をそれに伸ばした。しっかりと掴んでからやわやわと揉む。
「っん、あ……はぁ、ぁ……」
先走りが垂れてくると、にちゃにちゃという音を立てながら上下に扱いていく。硬度や質度が大きくなったことを確認した夏侯惇は手を離した。
しかし于禁はまだ射精をできていない。もう少しで射出しようとしていたが、夏侯惇からの与えられる刺激が無くなり、ただ竿がビクビクと動いている。
「今、奉仕してやるから」
口角を釣り上げた夏侯惇は、限界を迎える直前の于禁の竿を口に含んだ。当然、その瞬間に于禁は勢いよく射精する。瞬く間に夏侯惇の口腔内には精液が満たされていくが、それを全て喉へと流し込んでいった。
何度もそれをされているのにも関わらず、于禁は夏侯惇の頭頂部を触る。そして退いて欲しいという意を込め、力を入れようとしたがどうにも入らないらしい。すぐに諦めた于禁は、触っていた手を離す。
夏侯惇はそれを見て目が笑うと、舌や口腔内の熱い粘膜で竿を包んだ。
「ん! は、ぁん……んっ……!」
メイド服姿の夏侯惇に口淫をされているので、于禁はいつもよりそれが気持ちよく感じた。だがそれを意識的に我慢しようと、両脚に力が入る。それを確認した夏侯惇は、わざと竿を吸い上げていく。
「ッひ!? ぁ、あ!」
夏侯惇の口腔内に二度目の射精をすると、于禁は体をぐったりとさせた。しかし体の奥深くは満足をしていないので、竿はまだ張り詰めている。
そこで夏侯惇が口を離すと、先程の精液をごくりと飲み込んでから、にやりと笑う。
「奉仕は、気持ちよかったか?」
「いえ……」
于禁が弱く首を振ると、夏侯惇は近くに放り投げておいたローションボトルを取り出す。
開栓してから手の平にある程度落とすと、皮膚に馴染むまで温めていった。それを見た于禁は、自ら両膝をゆっくりと開いていく。
「奉仕の、続きを……」
上を向いている竿もだが、既に物欲しげにしている入口が露わになる。夏侯惇はそれを凝視すると、短く「あぁ」と返事をした。
指先で入口をきつく閉じている縁を撫でると、于禁は微かに淫らな声を漏らす。それを聞きながらも、夏侯惇は于禁の胸元に顔を近付けた。夏侯惇が着ているメイド服の胸元についている、大きな白いリボンが于禁の胸に当たる。ちょうど敏感になってしまった箇所に当たったのか、于禁の淫らな声は一層大きくなった。
「ぁ、ひっ、ア、は……んっ……!」
それを無視した夏侯惇は、粒に舌を這わせる。尖っているうえに膨らんでいるので、うまそうにしていた。
そうしながら縁が少し緩くなった気がする、と夏侯惇は思いながら入口を指で突いた。于禁の体が跳ねる。その時に于禁はシーツを握り締めていて、大きな皺ができていた。
「や、ぁ! はぁ、あっ……あ!」
胸の粒を時折吸い上げてやると、于禁の入口に指の第一関節が入った。夏侯惇はその勢いで指をぐいぐいと押すと、ずるりと根元まで埋まる。
その指を出し入れしながら、場所を把握している前立腺を触った。于禁は弱い射精をし、それが夏侯惇が着ているメイド服にかかる。特に胸元のリボンには、他の箇所よりも精液が付着してしまっていた。
「ッあ、ん……もうしわけ、ありません……」
「気にするな。俺は奉仕をしている側だから……な!」
于禁からはこれ以上謝罪の言葉を出さないように、夏侯惇は前立腺をぐいと強く押した。またしても射精をしてメイド服にかかる。そして夏侯惇の思惑通りに、于禁の口からは謝罪の言葉ではなく喘ぎ声のみが吐き出された。
ぐにぐにと指を動かしていくうちに縁が解れてきた。なので夏侯惇は指をもう一本増やし、何度も動かしてもう一本増やすを繰り返す。そうしていくうちに、良い頃合いだと思った夏侯惇は指を引き抜く。
案の定、于禁の入口は更に求めるようにくぱくぱと伸縮を繰り返していた。そこからは、泡立ったローションが流れ出ていて。
コンドームを出し忘れた夏侯惇はすぐに取り出すと、スカートの裾を捲る。下着など身に着けていないので、そそり勃つ怒張が姿を見せた。それに封を切ったコンドームを被せてから、于禁の入口に近付ける。
ぬちゅりと音が鳴ったと思うと、ずるずると怒張を収めていく。
「ア! ぁん、あ……ひ、や、らめ、イく、ぁ、あぁ、あッ」
夏侯惇のモノが胎内に入っていく度に于禁は善がり、そしてぎゅうぎゅうと迎え入れるように締め付けた。中の狭さに夏侯惇は一瞬だけ顔を歪めるが、気持ち良さが一気にそれを追い越す。
「気持ち良いか?」
「っあ……ぁ、ん……!」
まともな返事を、今の于禁はすることができない。やはりと思った夏侯惇だが、それを気にせず奥へと自身の怒張を押し込んでいく。
前立腺を掠めると于禁の喘ぎは大きくなり、口からははしたなく唾液を垂らした。夏侯惇はそれを愛しげに見ると、怒張のくびれで前立腺を刺激する。かなり薄くなった于禁の精液が、メイド服に飛び散った。特にリボンによくかかった。
于禁は自身の精液に塗れたメイド服をぼんやりと見る。そうしていると、余所見をするなと夏侯惇が言ってから、一気に怒張を埋めていった。その時にへその辺りからぐぽりという音が聞こえたので、腹の奥を突いたのだろう。
突然のことに于禁は驚くよりも、悲鳴のような嬌声を上げる。半透明になってしまった精液を弱く噴き出しながら、腹の奥をゆさゆさと揺らされていく。于禁は口から唾液だけではなく、瞳から涙が流れ出た。
夏侯惇は于禁の腰を掴み、数回ピストンをするとつけているコンドームが用を成したようだ。小さな舌打ちをしながら仕方なく引き抜く。
「かこうとん、どの……」
「どうした?」
夏侯惇が二個目のコンドームを取り出し、封を切ろうとしたところで于禁が弱々しく話しかける。優しく返事してから夏侯惇はそれに聞く姿勢を取ると、于禁は震える手で持っているコンドームに触れた。
「なまで、いいので……」
「良いのか?」
「なまで、わたしに、ほうしして下され……」
持っていたコンドームなど床に向けて放り投げると、夏侯惇はすぐに于禁の入口に怒張を向ける。返事をする暇など勿体無いのか、息を切らせながら無言で縁にめり込ませていく。
顔は唾液や涙でぐしゃぐしゃになっている于禁は、まだ全て入ってもいないのにどうにかなりそうだった。夏侯惇も、そうであるが。
「ひ、ぁあ……あつい……おっきい……」
「そう言われると、嬉しいな」
于禁は返事の代わりの笑みを浮かべながら、コンドームが無い怒張の感覚を目一杯感じていた。入口は、それを味わうように咥えている。
狭いことに加えて熱い感覚が押し寄せる夏侯惇は、早く全体を包み込ませたいと腹の中を進めていった。ローションが腹の中にまだあるので、スムーズに入っていく。
「はぁ、あん……ぁ、アぁッ! あつい、あ……イく、ぁあ、ひゃぁ!?」
再び怒張が全て埋まると、于禁の腹の奥は喜びから強く締め付けた。夏侯惇は獣のような息を吐き始めながら、唐突に激しいピストンをする。
それに対し、于禁は両脚を夏侯惇の腰にやんわりと絡めた。
「は、はぁ、はっ、はぁ、きもちいいか?」
たんたん、と規則的な乾いた音が二人の体から聞こえた。その中で夏侯惇はそう聞くと、于禁は快楽に溺れながら答える。
「ぁあ! あっ、ぁ、きもちい、ぅあ、ぁ、イぐ、ア、らめ、イぐ、イぐ!」
「そうか、っぐ……良かった、は、ッはぁ……」
何度目かのピストンで、夏侯惇は于禁の腹の奥に精液をぶちまけた。腹の奥に出されたことにより、于禁の竿からは透明の液体が勢いよく噴き出す。
「ひ、ぁあ……や、あっ!」
夏侯惇の腰に絡めていた両脚はベッドの上に落ち、メイド服を更に体液で汚した。だがそれを見て、于禁は満足感に満たされたらしい。夏侯惇と顔を近付けてから唇を合わせる。
「ん……もっと……」
そう于禁が誘うようにねだった。再び、両脚を夏侯惇の腰に絡めながら。
まだ怒張は萎えていないが、夏侯惇はそれを抜こうとしているところである。于禁のその誘いに嬉しそうに乗ると、更に夏侯惇が着ているメイド服の特にリボンが、于禁の体液によりどんどん汚れていったのであった。