雪夜

雪夜

クリスマスイブの夜に、春日はサバイバーのカウンターで一人で不貞腐れていた。しかしサバイバーは誰も居らず、室内の照明は最低限のものになっている。マスターはどこかのバーのクリスマスパーティーに参加しているらしい。
一方で春日は何も予定が無いので、ジャケットのみを脱いで大人しくグラスに入った水を飲んでいた。少しの寒さを感じながら。
難波はホームレス仲間と何やら用事があり、紗栄子は客のかき入れ時だとかなり張り切っていた。足立はどうせどこかのキャバクラにでも行っているだろうと思うと、小さな怒りが湧いてからグラスに残った水をあおった。
室内から外を見ると、カップルが何やらはしゃいでいる。春日はどうでも良さそうにそっぽを向くが、どうしても会話が聞こえてしまう。内容は「雪が降っており、珍しい」というものだ。
確かに、横浜で雪が降ることは珍しい。しかし春日は共にそれを見る者が居ないので、立ち上がってからグラスを洗い二階に上がった。こういう日は早く寝て、明日に何か起きた時に備えるべきだと。
マスターが用意してくれている空き部屋に入るが、照明が点いていないので暗い。だが街からの人工的な明かりにより、視界が悪くなることはない。ジャケットを脱ぐとスムーズに鍵を閉めてから、元々敷いてある布団に横になる。
尻ポケットからスマートフォンを取り出すと、何も通知が来ていないことを確認すると充電しようとした。そこで、着信が来る。相手は足立だ。春日は盛大な溜息をつくと、どうせ酔いながら電話を掛けて来たのだろうと思いながら通話を始める。
『よぉ! 春日ぁ!』
スピーカーからは足立の陽気な声と、それに店内の人々の騒がしい声が聞こえた。とても盛り上がっていることがすぐに分かる。だが数秒後に、キャバ嬢たちの「もっと遊びましょうよ」という言葉が聞こえた。キャバクラに行っていることは予想通りである。
「……なんだよ、店の子たちと遊ばなくていいのか?」
普段はとくに羨ましくはないのだが、今は自身とは真逆の状況にあるので謎の妬みが湧いてくる。これは単純に、短期的な感情だ。それを分かってはいるが、春日は素っ気無い態度を取ってしまう。
「俺はもう眠たいから、じゃあな」
そう嘘を言って通話を無理矢理に終わらせると、スマートフォンを充電してから畳の上に放り投げる。つまらなさそうに天井を見ると、瞼を降ろした。
しばしの沈黙ができるが、外は酔っ払いの騒がしい笑い声で何も集中ができない。春日は自然と体を丸め、ただ目を閉じて過ごしていた。
するとどれくらい時間が経っただろうか。酔っ払いの声たちはあまり聞こえなくなったものの、相変わらず暗い外に居る歩行者は酒に酔っては大声を出している。眠れなくはないがどうにも腹正しく思えていると、スマートフォンが通知が来たことを知らせる。
画面を見ると、またしても足立からの着信であった。ついでに時刻を確認すると、日付が変わっている。春日は苛々しつつも、仕方なく通話をする。スピーカーを耳にあてた。
『よぉ! 春日! 今からお前んところ来るからな! 後でな!』
先程とは違い、スピーカーから聞こえる周囲の音は静かめだ。足立が店から出たことが分かるが、相変わらず声は元気そのものである。
通話を終了したことの音を数秒間聞いてから、春日はスマートフォンを耳から離した。
しかしどうして、夜が明けていないのに足立は店を出たのだろうか。いつもの足立であれば、もう一軒行くだろう。春日は疑問に思いながらも部屋から出て、一階の店の部分に降りた。そして出入口付近の席に座ると、寒さに耐えながら足立を待つ。店内が静まり返っているなか、春日はぼんやりとカウンターの辺りを見ながら。
少しすると足立が来たようだ。着信があり、店の前に居ることを知らせてくる。春日は内側から鍵を開けると、足立をサバイバーの建物内に入れた。
足立は意外と、仄かに酔っている程度である。白い髪には、溶けかけた雪がちらほら乗っていた。
「春日、泊めてくれ」
「えぇ……」
出入口の鍵を閉めると、足立がそう頼んできた。春日はこのような酔っ払いを泊めることを躊躇したが、仕方ないと思い頷く。
「ありがとよ! 少し遠い銭湯でさっぱりしてきたから、あとは寝るだけなんだけどな!」
そう言ってドカドカと階段を上り始めた。春日はそれに着いて行くと、二人で狭い部屋に入る。春日は今から眠るつもりであるので、照明は点けない。
「だが、何で俺の所に……? 朝まで遊ぶつもりかと思ってたんだがな」
「朝まで? そうしたかったが、体力が持たなくてな……」
足立が遠い目でどこかを見る。春日が咄嗟に謝ると、足立が「俺は気にしてねぇ」と返して布団の上に横になった。だがそこは春日が寝る場所なので、指摘をしようとする。そこで足立が、布団を軽くポンポンと叩いた。
「一緒に寝ようぜ」
「……はぁ!?」
あまりの予想外過ぎる発言に、春日はあんぐりと口を開けた。驚きの声を、大きく上げながら。
しかし足立と別の意味で寝たことは一度だけある。きっかけは足立が「キャバ嬢になってみろ」と言ったことだ。その後に春日の尻を触った足立が、事に及んだ次第である。
だが事後は自身ならまだしも、足立まで腰の痛みを訴えていたのだが。
「なぁ、いいだろ?」
春日の腕を引いた足立だが、突然に雰囲気が変わった気がする。よくは分からないが、同性に見せる表情ではない。
これが、特に気持ち悪いなどとは思わなかった。寧ろ春日の性器が、期待により酷く疼いてしまう。一度しか経験が無いのだが、癖になってしまったのだろうか。
「いや、俺は……」
本能に従うかどうかの返事に困ると、待てなくなった足立が春日の手を引く。それにより足立の体の上に乗ってしまうが、硬い筋肉と脂肪の支えによりどうということは無かった。だがそこで、足立により組み敷かれてしまう。
足立が舌なめずりをしながら、春日の両手首をしっかりと捕まえる。
「おい、待て……! 酔っているのか!? 俺は、女の子じゃねぇぞ!」
抵抗しようとしたが、足立の方が力が強い。なのでびくともしない足立を睨んだ。しかし足立には全く効果がない。仮にも酔っているというのに。
「寒そうだから、暖めててやるよ。少し前に言ってたゴムだって、あと二個は残ってるだろ? 約束は守らねぇとなぁ?」
足立のニヤついた顔が近付くと、春日の唇にキスをする。せめてと口を閉じようとするも、足立が先手を打っていた。舌を突き出してから唇を割られてしまう。それにより、足立の舌が春日の口腔内に侵入していく。上顎や歯列をなぞり、春日の反応を伺う。
足立の口付けはとても巧みであった。経験豊富だからか、すぐに春日の抵抗の意思などあっさりと溶けてしまう。
「っふ……ぅ、ん……!」
二人の厚い舌がねっとりと絡み合い、そして唾液がどろどろと湧き出る。それを掬うようにと足立の動きが変わるが、春日の理性はもうない。自然と足立の背中に手を回すと、求めるように指を弱く立てた。
足立がそこでキスを止めると、春日の全ての皮膚がほんのりと赤みを帯びている。そして弄ばれたことにより、唇の端からは唾液を垂らしていた。瞳も垂れており、普段の面影もない。勃起だってしてしまっている。
「エッロ……」
そう呟いた足立は、春日のワイシャツのボタンを外していく。部屋は冷えているが、肌は興奮により熱い。だがそれよりも粘膜はもっと、灼熱だと思えた。
足立はワイシャツの全てのボタンを外し終えると、脱がせていった。肌が見えた瞬間に、足立は春日の胸にすぐにむしゃぶりつく。まるで赤子のように、春日の片方の胸を吸い上げたのだ。胸の尖りが、主張をしているかのように大きく膨らんでいく。
「ッあぁ! は、ぁ……!」
胸板を反り、春日は気持ちよさそうに喘いだ。それを見た足立の気がよくなったのか、吸い上げた後にそれを舌の上で転がす。
「ひ、ゃあ、あだち、さん……ー」
丹念に舌で尖りを押し潰していき、中心部を舌先で抉る。胸からは何も出ないというのに、何かを待っているかのように尖りを虐め始めた。
春日はあまりの気持ち良さに、目を細めて心臓を高鳴らせる。これ以上のことを期待してしまいながら。しかし片方の空いている胸が寂しいと、春日は自ら指で尖りを触れ始める。最初はやわやわと押すだけであったが、足りないと思ったのか指先で摘む。挙句の果てには、先端を引っ張っていった。
「ん、んっ……きもちいい、ぁ、はっ、あ、ん……!」
「お前は本当にエロいな……」
顔を上げた足立が唇を僅かに離してからそう言うが、春日は「もっと……」と胸を押し付けた。なので足立は笑いながら、再び胸を舐めていく。
すると一時的に恥も何もかも忘れてしまい、春日は勃起した下半身を足立に押し付ける。ぐいぐいとアピールしているが、その刺激も好いと思えていた。いやらしく足立の体に擦り付けていると、それを止めさせるように尖りに歯を立てる。春日の体が大きく跳ね、射精をしかけた。だがそこで、足立に股間を握られてしまう。
「ゃ、あ、あだちさん! イきたいのに、ぅあ、はぁ……」
「そんなつまんねぇことでイくなよ」
胸を可愛がることを止め、足立は素早く服を全て脱がせ始めた。次に春日のスラックスを取り払い、広い範囲に染みができている下着を降ろす。
春日の体に人工的な光が落ちるが、妖艶にしか見えない。様々な光の色が、春日の体を照らしていた。
「ん……? あぁ、すまん。そういえば、ゴムは忘れちまったよ」
ヘラヘラと笑いながら、春日の両膝を持って開く。春日の下半身からは我慢汁がダラダラと垂れ、股は小さな収縮を繰り返していた。
「で、どうして欲しいんだ?」
足立が顔を凝視すると、春日は恥ずかしげに手で顔を隠そうとした。快楽を与えられていないので、少しの正気を取り戻してしまっていたのだ。足立は手首を掴みそれを阻止すると、春日が口籠りながら何かを言う。だが聞き取れないので、足立は問い直した。
「俺にどうして欲しいんだ?」
「……足立さんのちんこを……俺のけつに入れて、ずこずこして欲しい……」
「それだけか?」
分かってはいるが、わざと詳しく聞き出した。春日は耳を真っ赤にして口を引き結ぶと、それを緩めていく。
「足立さんのちんこを、俺の奥まで突っ込まれて……俺の中で気持ち良くなって、中に精液をたくさん出されたい……!」
「まぁ、いいだろう。合格だ」
足立は春日の下半身に纏わりついた我慢汁を指で掬うと、それを尻に塗りたくる。どうせ春日の部屋には、そういった類の物が無からだ。
縁を丹念に濡らすと、待ち侘びている肉の壺の入口に指先を入れた。勿論、中はとてつもなく熱い。春日は入口をぎゅうと締めてしまうが、表情は正反対に弛む。相当に、足立の挿入を望んでいることが分かる。
「ッあ……足立さん、早く……」
「待て。俺だって気持ち良くなりてぇから、無理矢理にはヤれねぇんだよ。まだ狭くてな」
足立がそう説得するが、春日はイヤイヤと首を横に振る。このままでは、春日が暴れてしまう。そう考えた足立は、再び春日の胸に吸い付く。次は、先程は指で摘んでいた方だ。もう片方に比べて、さほど赤くは腫れてはいない。
わざと音を立てながら、春日の胸の粒を吸い上げた。春日は体をビクビクと跳ねさせながら、気持ちよさそうに喘ぐ。
「そこは……もう、らめ、ゃ、ぅあ……! はっ、ぁ、あ!」
春日の意識を逸らすことはできているだろう。なので挿入したままの指を進めていった。第一関節が入り、第二関節も入る。その頃には肉壺が持ち主の意思を見事に反映してくれたのだろう。どんどんと粘膜が柔らかくなっていき、指を動かすと縁に伸縮性があることを確認できた。
もう一本指を挿れるが、すんなりと飲み込んでいく。なのでその二本の指で、肉壺の中を掻き混ぜ始めた。
「ひぃ! ぁ、あぁっ! ゃ、あ……はぁ、ア、あん、んん……!」
指の挿入でさえ。春日には限界が来ていた。ふくらはぎを張り、つま先を真っ直ぐに力強く伸ばす。太ももの内側には強い力が入っており、今にも達してしまいそうな状態である。二箇所を同時に責めていることもあってか。
「もう、そこまで気持ちいいのか? 淫乱な体だなぁ」
一時的に胸を舐めることを止めた足立がそう煽る。春日はそれに反応してしまうと、首を小さく左右に動かした。だがそれは否定には見えず、強がりにしか見えない。足立は唇の端を大きく吊り上げると、まるで褒美と言わんばかりに胸を強く吸い上げた。
「ッやぁあ! ちくび、とれちゃう!」
そう言いながら、春日は達してしまう。腰をかくかくと動かしながら精液を放つ。腹にまで飛び散ると、足立は満足げにしながら唇を離した。そして挿入する指を急激に増やし、春日を虐めていく。
「ぁ……あだちさん! さっき、イったから、ぅあ、はっ、あ……!」
先程果てたばかりだというのに、あまりの刺激の強さに春日の瞳が濡れ始めた。もうじき、涙がこぼれるだろう。
足立の口角が下がらないまま、ようやく自身の服を脱ぎ始めた。スラックスは大きく膨らんでおり、興奮していることが一目で分かる。春日はそれを凝視しながら、足立が全裸になる様子を待っていた。相当に待ち遠しいのだ。
我慢の限界を迎えているらしく、足立はすぐに服を全て脱いでから覆い被さる。そして破裂しそうなくらいに膨張している怒張を、膣の入口にぴとりと密着させた。先端が膨らんでいるが、少しずつであれば入るだろう。
「ッつぁ……あだちさん、やさしく、しないで……」
ようやく来た感覚に、春日は艶めかしく喜ぶ。その証拠として、脚を広げると、足立の背中にぐいぐいと引っ掛けたからだ。そして足立の体を固定する。もう、逃さないと言わんばかりに。
重いものが伸し掛かった感覚に、足立は驚きはした。しかし春日の脚だと分かると、その脚に挟まれながらも膣に怒張の先端を押し付ける。入口からぬるりと柔らかく、足立はすぐさま小刻みに腰を揺らした。
「……ぐっ! 優しくするだと!? そんな余裕なんて、あるわけねぇだろ……!」
「あ、や、ぁ、っは! あ、ん……ぁ、ア……」
浅いところを突いてきた。一番膨らんでいる、先端が縁を通り抜けなければならない。穴を開けるように、怒張をぐりぐりと捩じ込む。ようやく縁を通り抜けた。ずぼりと、膣の中に気持ち悪い程に脈打っている足立の怒張が入り込む。
すると春日は脳が強烈に揺さぶられた感覚に陥る。つまりは、怒張が体内に入ったことにより色欲がどんどん高まってきているのだ。春日の瞳から涙が落ちた。それが合図になったかのように、足立の怒張がぐいぐいと奥に進んでいく。侵入は止まらない。
「っうぁ! あ、もっと、あだちさん、のが、はぁ、ぁ……ほしい……!」
膣の中はとても熱く狭い。そのような中を押し進むことですら、足立にとっては強すぎる快感だ。これを体験してしまっているので、もう癖になってしまっていた。
涙をぼろぼろと流しながら春日は喘ぎ、そしてよがり狂う。足立の背中に手を回し、必死にしがみついた。しかし力を振り絞っているので、爪を立ててしまっている。足立の表情が仄かに歪んだのが見える。
「っふ、ぅ……! ふぅ、ふー、う、ぁ……ッは……!」
かなり大きく思える足立の怒張が入りきると、すぐさま激しいピストンが始まる。肉の壁を強く擦り付け、時折抉っていった。結合部は摩擦により、肉壺の中のように熱く感じる。
それに奥まで入っており、春日は頭がおかしくなりかけていた。もう、足立に犯されることしか、考えられないのだ。クリスマスイブの夜も、この冬の寒さも、そして雪が降っているこの夜も。
「ここも、気持ちいいか? 俺のちんこが、もっと欲しいか?」
「う、ぅあ! あだちさんのちんこが、ほし、もっとずこずこして、ぁ、ア! やぁ、イくから、やだぁ! イぐ、イく、ァ、んッ、んぁ……あぁ!」
厚く重い肉同士が絡み合う中、二人はほぼ同時に絶頂を迎えていた。まずは春日が射精をすると肉の壺を収縮させる。そして足立がその締め付けのあまりの気持ち良さに、春日の膣の中に少量だが精液を吐き出した。
春日は涙が雨のように流しながら、体を強張らせる。視界が涙で一杯になり霞むと、足立の顔の輪郭がぼやけた。
「ァ……」
足立の名を呼ぼうとした春日だが、声が出ない。そして萎えた怒張が抜かれると、股から水滴のような精液が出てくる。
足立は春日の全身にキスを浴びせていった。直後に「ここにシャワーはあったか……?」とぼやきながら。
何も答えられないでいると、足立は何かを思いついたのか上着を羽織ると扉を開けて部屋を出た。事後なのでぼんやりとしていた春日だが、ふと寂しくなる。閉まった扉をぼやけた眼で見つめた。
「どうした?」
数分後にようやく扉が開くと、足立が小さな洗面器のような物とタオルを持っていた。春日は起き上がろうとしたが、まだそのようなことはできない。
足立から「じっとしていろ」と言われながら、暖かい物が触れる。持って来たのは、ぬるま湯を張った洗面器と清潔なタオルであった。それで春日の体を拭いてくれているのだ。手付きは多少だが荒々しい。足立らしいと、春日はふと思う。
しかし拭く部分は弄った場所のみで、一度湯で洗ってから足立も同様の箇所を拭く。そして下に降りてそれを処理すると、再び戻ってから煙草を取り出して火をつけた。時計を見ると、深夜の二時を過ぎているのに気が付く。
「……もう、クリスマスになっちまったな。春日、メリー・クリスマス」
天井に向かい吸った煙を吹きかけてから、足立がそう言った。春日はこの雰囲気が堪らなく良いと思えたのか、足立に抱き着く。恋人同士らしい、甘い空気が流れていたからだ。
なので肩にすりすりと頬を擦り付け、甘えたい証拠を見せつける。笑った足立は、吸っていた煙草を春日に咥えさせる。春日は弱い力で煙を吸うと、ゆっくりと吐き出した。同じ煙草の味を、春日に与える。
「うまいか?」
「ん……」
小さく頷く。もっと構って欲しいと言わんばかりに、春日は煙草の火を近くにあった灰皿でじっくりと確実に消す。そして足立と共にどすんと布団の上に倒れると、ぴったりと密着した。足立の体は相変わらず暖かいと、春日は離れ難くなっていく。
「可愛いな」
そう言うと、足立は春日の髪をぐしゃぐしゃと撫でる。嬉しそうにした春日は、ようやく涙が引いてきた瞳で足立を映し出す。
すると何かに満足したのか、春日は「メリー・クリスマス……」と弱々しく呟いたのであった。窓から見える、白い空を見ながら。