花で映える(惇于惇)

花で映える

雨がよく降っている昼間から、夏侯惇は灯りが無く薄暗い隠れ処に居た。滞在している理由はとても簡単で、于禁と体を重ねている最中だからだ。
場所は寝台ではなく硬い床。恐らく于禁が訪ねて来るなり、すぐに組み敷いてしまったのだろう。于禁の体の周りには手土産と見られる、様々な色の花が数本散乱していた。その上に于禁の長い髪が広がっており、花が綺麗な黒色に覆われている。
「ぅ、あ……! あっ、ぁ、ん!」
着物を脱がせるのが面倒なのか、帯を外して襟が開かれている。だがさすがに冠と簪はこのままでは危ないと思ったらしい。于禁の頭から素早く引き抜いて、離れた場所に放り投げる。
夏侯惇は顕になった于禁の肌にすぐに唇で吸い付き、舌を這わせた。顔を赤らめた于禁は、抵抗という言葉を一時的に忘れて淫らに喘ぐ。
その時点では于禁は手土産の花々を、どうにか手放さないでいる。しかし脚を開かれると、于禁の体の芯が興奮に帯びていく。そこでつい手土産の花々を手放してしまった次第だ。
そして今は夏侯惇が懐にこっそり入れていた、香油が入っている小さな瓶を取り出す。少量しか入っていないので、それを自身の手の平に垂らした。もう片方の手の平で薄く伸ばしてから、指にまで上らせていく。そうすると手全体が香油に塗れた。
夏侯惇は雄々しい息遣いをしながら、右手のその指を于禁の桃色の穴に軽く触れる。今からここを解すという合図として。
「ッ! や、ぁ、はぁ……かこうとんどの……」
するとようやく于禁は首を横に振って拒否をしたが、腰から下はそうではない。脚を自ら更に広げながら、隠れ処の天井を向いている下半身を揺らす。それに下腹部が疼くのか、腰をゆらゆらとよじっていた。
「ではこのまま、放っておいてもいいのか? 俺は別に構わないが」
夏侯惇が意地を悪くしながらそう言うと、于禁の瞳に涙がじんわりと浮かぶ。心身共に耐えきれないのだろう。なので重ねて首を横に振ってから、強く懇願する。
「それだけは、どうか……!」
この于禁の顔が堪らないと思った夏侯惇は、発言を繋げ始めた。唇の端をゆるりと上げる。
「どうか? どうかが、何だ?」
焦らすように穴の周りを指先で撫でた。このぬるついた感覚が、于禁にとっては考えを吐き出す邪魔をするらしい。発しようとした言葉の最初の部分が嬌声に変わると、その後はまともな言葉が出てこなかった。ひたすら喘ぎ、夏侯惇にいやらしい様子を見せる。
すると穴が大きく蠢いたことを、夏侯惇が何となく察知した。
「どうした? 何を言いたかった? 答えろ」
わざとらしく指の動きを大きくすると、中への刺激が増した。于禁は我慢できなくなったのか射精をしてしまい、それが夏侯惇の頬にまで若干だが飛び散る。
于禁は自身の精液の飛沫が付着した箇所を、恐る恐る見てしまう。既にどろりと顎にまでつたっていて、落ちる様子はない。髭にしがみつくように絡みついているからだ。
夏侯惇が再度「どうした?」とからかい気味に聞いた。そこで心の内が爆発すると思った于禁は、夏侯惇の髭から顔に視線をぎこちなく動かしていく。
「私を……こ、子種が空になるまで、可愛がって下され……!」
言い訳よりも先に欲望が口に出た。一瞬だけ自身の発言が不味いと思ったのか、口を小さく開閉させる。だがそれを聞いた夏侯惇は先程の声音から、重いものへと大きく変えていった。本気になってしまったらしい。
「……いいぞ」
言葉だけでは簡単だったが、瞳や声は食われるのかと思う程に恐ろしかった。于禁がぞくりと背筋を震わせていると、夏侯惇はまだ挿し込んでいる指を強引に押し込む。その時には楽しげな表情へと、変わってきていた。
「ひぃ! あ、う、んぁ、あ……」
突然に来た圧迫感に于禁はかなり動揺したが、感情を大きく表現させる余裕など与えないつもりらしい。ぐいぐいと指先が食い込んでいくと、次第にうねる粘膜に直に触れられた。ぬぷぬぷと擦れる音が鳴ったので于禁の体が大きく跳ね、足を無意識に閉じようとする。だが夏侯惇はそれを許さないのか、足の間に体を入れて物理的に阻止をした。
それにより于禁の無意識は無くなったが、代わりに喘ぎ声が大きくなっていく。同時に、于禁の下半身の持ち上がりが強くなった。腹にまで竿がくっつきそうである。
「ァ、あ……! あ、やッ、あ……ア! んぅ……!」
「空にしろと言ったのはお前だろう」
次に指の関節をぐにぐにと動かして穴を大きくしていく。しかし于禁は相変わらずその程度でも気持ちが良いのか、腰を小刻みに震わせてからまたもや射精をした。自身の胸に飛ばすが、その際に穴の中を締め付けていたらしい。夏侯惇は眉間に皺を寄せる。
「まったく……俺が挿れる前に終わってしまうではないか」
呆れた夏侯惇は溜息をつくが、何かを思ったのか指を引き抜いた。当然、于禁からは弱々しい非難の声が上がる。
「なっ!? ど、どうして……!?」
足を上げて夏侯惇の体に絡めるが、反応は皆無。ぽかんと呆然としていると、夏侯惇が于禁の下半身に手を伸ばした。于禁はそこだけをいじるつもりだと思ったのか、夏侯惇を咄嗟に蹴ろうとする。しかし体に力が上手く入らず、ただ足が深く絡んでいっただけだ。
于禁が悔しげな感情を薄く見せたところで、夏侯惇は笑い声を混ぜながら言う。
「このままではお前が満足して終わりそうでな、やり方を変えようと思ったのだ」
やわやわと硬い下半身を握り、于禁は咄嗟に精液を吐きかけた。しかしその瞬間に夏侯惇が強く握り、強制的に阻止される。苦痛と快楽が侵食してくるなり拮抗し、于禁の頭が混乱してきた。
なのでか瞳に浮かんでいるだけの涙が、ぼろぼろと溢れ出ていく。
「可愛らしいな」
夏侯惇はその一言のみを放つと、唇を合わせた。くぐもった声が于禁から上がるが、それを無視して舌で唇を這っていく。于禁の見た目よりも厚い唇の感触が、夏侯惇にとっては気持ちが良いと思えた。ねっとりと舌全体で濡らす。
「ん、んんッ!? んぅ……!」
溶けてしまうかのように、于禁の顔が垂れていった。そこで下半身がまたもや膨らむが、夏侯惇はまだ射精を許さないらしい。握る力は全く変わらない。寧ろ先程よりも強くなっているように于禁は思えた。恐らく、于禁の気のせいなのだが。
何度も何度も舐めてから堪能し終えたのか、夏侯惇は満足げに唇を離す。于禁の目は一見すると閉じているように見えるくらいに、蕩けていた。
「イきたい……」
于禁の頬から顎の髭へと、涙がはらはらと花弁のように落ちる。その様子を見た夏侯惇は酷く興奮し、加虐心が大きくなっていった。
「それを聞いてやってもいいが、俺も満足させろ」
一旦起き上がった夏侯惇は、于禁の下半身からも手を離す。そして于禁の口に指を突っ込んでから、ぐちゅぐちゅと乱暴に掻き混ぜていった。于禁にとってはそれでさえかなりの刺激になってしまうのか、下半身の疼きが止まらなくなっていく。
しばらくして指が唾液に塗れたところで、指を抜いてから夏侯惇が足を開いた。于禁は何がどうなのか分からなくなり、混乱が増していく。
すると夏侯惇は唾液がべっとりと付着した指を、自身の入口に向かわせた。止めて欲しいという叫びを上げたい于禁だが、それですら甘いものに変換される。
「ゃ、ぁ! ちがう、あなたが……!」
「ッう、ぁ、あ……あ、ん……」
入口に指先が入ると、夏侯惇の口から切なげな声が出た。尻に異物が入るという経験は久しぶりらしく、無意識の困惑が見える。それでも夏侯惇は苦しさも見える呼吸をしながら、指を進めていく。最初はとてもゆっくりと、丁寧に指を押し込んでいった。すると入口が意思を持ったかのように、ぱくぱくと自然に開いていく。次第に気持ちよくなってきたらしい夏侯惇は、指をずるずると侵入させる。
最中に僅かな痛みも勿論感じていたが、夏侯惇はその感覚を無視しても問題が無いと思っていた。なので挿れる指を増やしていく。
結果的に指で解し終えたが、その様子を見ていた于禁は発情期の動物のように凝視するのみ。相変わらず下半身が膨らんでいたが、夏侯惇に弄って貰わなければもう満足しないらしい。整う気配のない呼吸を吐く中、夏侯惇の緩い股を再度見る。
「お前のを、挿れるぞ……」
もはや暴走している于禁の下半身に、夏侯惇はその上に跨ってから入口をぴとりと充てがった。貫かれる悦びを数回程度は経験しているので、夏侯惇はまずは息を飲む。
一方で少しの刺激を与えられた于禁は、小さな呻きと喘ぎが合わさったような声を上げた。下半身への久しぶりの感覚に、快楽をどう受ければ良いのか分からないらしい。何度も何度も、夏侯惇に雌の体として扱われていたのだから。
しかしそれを気に留める余裕のない夏侯惇は、腰を下ろしていく。
「ぁ、あ……ア! ぁ、あっ……んぅ、ぁ……!」
やはり于禁のものはかなり大きい部類に入るので、夏侯惇は未だに慣れない圧迫感やに襲われる。それでも自身の指よりかは、遥かに気持ちが良いらしい。内側のぬるついた粘膜で、于禁の下半身を擦りつけていく。
「っ、げんじょう……! んん、は、ぁ……あ!」
于禁の頭の中に許容範囲を超えた感情が流れてくる。だがそれが何か全く分からないまま、下半身が夏侯惇の股に順調に食われていった。
くびれの部分に差し掛かったところで、夏侯惇は全体重をどっしりと掛ける。すると重みでくびれが埋まっていったが、痛みや苦しみが電流のように走った。一瞬のことであったが、夏侯惇は驚く。心臓が大きく鳴っていることに気付き、少しだけ左胸を睨んだ。
そうしていると下に敷かれている于禁が、よろよろと手を夏侯惇に伸ばした。
「もう少し、ちからを、ぬいて下され……そうすれば、はいるはずです……」
普段よりも動きが悪くなってしまった舌を必至に動かし、于禁はそう助言する。すると夏侯惇にとってはかなり説得力があったのか、言う通りにしていった。
まずは力を抜くことだが、深く深呼吸していく。肺にたくさんの空気を吸い込んだ後に、ゆっくりとそれを吐いた。しかし途中で咥えている股が締まって深呼吸が途切れそうになる。そうしていると于禁が夏侯惇を見てから肘を立て、指をわなわなと動かした。
気付いた夏侯惇は、か弱い声で「どうした?」と尋ねる。同時に体も震えていく。
「くちすいを……」
そう言った于禁は恍惚によりまだ、はっきりとした言葉を出せていない。
どうしてそれを求めているのかは分からないが、夏侯惇は従う気になっていた。あまり経験したことのない感覚に、不安が押し寄せているからだ。
床に手を着けてから、それを支えにしながら上半身をゆっくりと倒す。だがそれでも、腹の入口で小さな衝撃を受けたらしい。掠れた声を上げたが、于禁を再び覆い被さる体勢になる。
すると于禁は早速、夏侯惇と唇を合わせた。しかしそれは触れる程度のものではない。現に二人の唇が触れた瞬間に、于禁が夏侯惇の唇を食うように吸ってきたからだ。厚い唇で同じく厚い唇を吸い、舌が覗くとそれも容赦なく吸う。二人の唾液が混じり合い、どんどん溢れていく。
口付けの気持ち良さに、夏侯惇の目付きや腰が砕けた。更に意識が口腔内の方に向くと、于禁はそれを待っていたのか腰を揺らした。
「ん、んん!? んっ……う、んん!」
気を抜いてしまったのか、夏侯惇の腹に于禁の怒張がどんどん刺さっていく。恐ろしい程に順調に夏侯惇の体が于禁の方へと吸い込まれていくと、するりと二人の肌が密着した。夏侯惇はあまりの気持ち良さに目を見開き、体をひくひくとしている。熱く吐く息を、于禁は口腔内でしっかりと拾っていた。
その一方で于禁も、夏侯惇の腹の中がとても気持ちが良いらしい。揺すっていた腰を止まらなくなり、次第に夏侯惇が久しぶりに受け入れるということを忘れていく。夢中になって、夏侯惇の狭い肉を激しく抉った。
「あ、ぁや、あ! ぁ、ひ、アぁ、ッ……ぁ、ん……!」
大きな律動により二人の顔がずれ、合わせていた唇が離れてしまう。だが夏侯惇は于禁にしがみつく。首のあたりに口を寄せると、流れ出る唾液でべちゃべちゃにしながら歯を立てようとした。
だが力が入らず、夏侯惇は舌を這わせることしかできなく悔しがった。快楽の波により流されると、夏侯惇はごぽごぽと鳴る股を犯されながらひたすら喘いで狂う。床を掴むように、強く握り締めながら。
「ごまんぞくは、されましたか……!」
「や、ぁ、お、あ……んっ、ゃ、きもちいい、いく、ぁ、ぁア、ぉ、あっ!」
相変わらず于禁の腰が止まらない。自身の大きさや形、それに熱を焼き付けるように腰を振った。夏侯惇にいつも、念入りにされていたように。
夏侯惇は顔を上げることができないので、表情が見えなかった。しかし首を縦に僅かに動かしている。首の辺りで夏侯惇の頭が擦り付けられることが分かると、于禁は「出る……!」と呟いた。そして夏侯惇に合図も何もすることなく、腹の奥に精液を勢いよく叩きつける。
「あっ、あ……ぉ、ぁ……!」
「んぁ、あ、ぁ、ん……はぁ、げんじょうのなか、きもちいい……」
奥にまでたっぷりと精液が入ると、夏侯惇はその感覚により達してしまった。手を握る力が弱まり、そのまま二人の鍛えられた腹の間に精液が溜まる。腹がぬるついてしまったが、二人は気にせず快楽を愉しむ。ついでに、二人の体は全体的に赤みを帯びている。それほどに、二人は互いしか見えていないのだろう。
肌がぶつかり合うぺちぺちという音、外で雨が降りしきる音、それに床が微かに軋む音が周囲から鳴っていた。室内で重く響く、夏侯惇の腹の中を抉るぐぽぐぽという音も。
次第に于禁が体勢を逆転させると、夏侯惇は組み敷かれてしまう。まだ于禁の方が体を動かすことができるので、先程の口付けの続きをしていた。
そして貫かれる度に夏侯惇の体が震え、へその下が膨れる。何度かそれを繰り返すうちに、夏侯惇の腹が不自然に突き出ていた。勃っていた下半身は萎え、人間としては不自然な外見になってしまっている。それでも于禁は芯を失ったものを引き抜く気は無い。この姿が、たまらなく愛しいのか。
腰の動きを止めた于禁はそれを見る。しかし視界の端に、手土産として持って来ていた色とりどりの花が床の上に散らばっていた。なので視線を変えると、その中で白い花を一つ手に取ってから夏侯惇の腹に乗せる。
息を整えている最中の夏侯惇だが、意識が朦朧としていた。なので于禁の行動がよく分からないでいる。だが于禁は微かに微笑んで、こう思っていた。
白い花のおかげで、夏侯惇の赤い体がよく映えていると。