玩具(于惇)

玩具

「于禁、帰ったぞー……」
既に深くなっている、とある夜のことである。
社内の様々な部署の社員が参加する飲み会に参加した夏侯惇だが、二次会の途中で帰宅していた。しかしその顔は赤く、足取りは覚束無い。正に酔っているに相応しい状態である。
それに片手には何やら、腕程の大きさの箱を片手に持っていて。
「お帰りなさいませ……相当酔っていらっしゃるようですが、大丈夫でしょうか?」
睡眠中であった于禁は、寝間着姿で帰宅した夏侯惇を出迎える。だがその表情は眠たそうであった。帰宅する前にに夏侯惇が何度も于禁のスマートフォンに電話を掛けられ、無理矢理に起こされたからか。
「すまんすまん。それより、中身は分からんがお前にやる。じゃ、俺は風呂に入ってくるぞ……」
夏侯惇は持っていた箱を于禁に渡すと、覚束ない足取りで脱衣所に向かう。
受け取った于禁は礼を言った後に、回らない頭で中身について疑問を浮かべながら開けた。酔っている状態の夏侯惇が、入浴しようとしているのを止めることを忘れながら。
「……なっ!?」
だが渡された箱の中身に衝撃を受けたおかげなのか、ようやく脳に思考が巡るようになってきたらしい。そこで酔っている夏侯惇が入浴しているのに気付き、危ないからと急いで止めに行く。時は既に遅かったが。
浴室には服を脱いだ夏侯惇が湯を浴びていた。なので于禁は勢いよく浴室のドアを開けて、夏侯惇を様子を確認する。
「どうしたんだ?」
夏侯惇はごく普通に体を洗っている。于禁は一瞬項垂れるも、酔っている状態での入浴は危ないと注意したが、夏侯惇はそれを聞き入れる気は無いようだ。はいはい、と面倒そうに返事をした後に于禁を浴室から追い出す。そして浴室側から鍵を閉められる始末であった。
溜息をついた于禁だが、渡された箱の中身は一旦保留にしておいて、夏侯惇に何かあったらと思って脱衣所の前で待機をしていた。浴室側から施錠をされているが、すぐに夏侯惇を助け出せるようにと。
だがその備えはただの無駄に終わったらしい。夏侯惇は、特に何事も無く浴室から出てきたからだ。重く項垂れている様子の于禁を見て疑問を浮かべるが、何かを思い出した夏侯惇は于禁に問いかける。
「そういえば、箱の中身は何だったんだ?」
夏侯惇は脱衣所に、前からストックするように置いていた下着や寝間着を着ていく。だが于禁はなぜだかその手を止めさせようとしていた。それは未遂に終わったが。
理由は箱の中身が、あまりにも予想外の物が入っていたからである。
「……まず、あなたが持って帰られたあの箱、あれをどこで入手されたのでしょうか?」
「どこで? お前も知ってるだろ? 黒い鳥がイメージキャラクターで、深夜まで営業していて、雑貨や食料が売ってるあの店だ」
簡単な説明により于禁は店を把握したが、眉間の皺を深くさせる。
「……あなたは、それをご自身で購入されましたか?」
「いや、酔った楽進と李典が二次会に行く道中でその店に寄って、ガチャで手に入れたらしい。それをなぜか俺にくれたのだがな」
酔った楽進と李典が紙幣二枚と引き換えにできる、何が出てくるか分からないガチャポンで手に入れたらしい。
だが開封もせずに出てきた途端に飽きが来てしまったのか、たまたま同伴していたので夏侯惇に渡していた。と、それに夏侯惇が更に説明を加えるが、そのガチャポンは未成年は利用禁止とのこと。
夏侯惇は「どうせ中身は酒だろ」と笑いながら言うが、于禁は顔を青くさせて首を振った。なので夏侯惇はどうしてなのか、中身は何かと聞くと、于禁は急いでリビングへと向かって箱を取ると脱衣所へと戻る。そして夏侯惇にその中身を恐る恐るといった様子で見せた。
「……これです」
箱の中身とは、いわゆる大人の玩具というものであった。男性器を模した薄橙色のもので、丁寧にピンク色のパッケージに入っている。大きさは目測からして、夏侯惇が普段から受け入れている于禁のものよりも小さい。
なので夏侯惇は、大きさについての感想のみを于禁に言う。入っていた物に関しては、驚きが全く無いのか。
「なんだ、お前のよりも小さいな」
とてもつまらなそうに言うと、手を差し出して于禁からパッケージを受け取る。その際に于禁は、それを聞くと恥ずかしそうに手渡していたが。
夏侯惇がパッケージを凝視した後、何かを思い付いたらしくパッケージを開封し始めた。
「今からこれを使うぞ。付き合え」
「……えっ!?」
于禁はこの後再び眠ろうとしていたのだが、夏侯惇が玩具を取り出してから見せつけるようにそう言う。驚くとともにそれを断ろうとした。
しかし夏侯惇がそれを妨げるように、于禁の腕を掴む。絶対に逃さない、と言わんばかりに。
「お前を勃たせることなど、容易いことだ。逃さん」
悪巧みをしているような笑みを浮かべた夏侯惇は、于禁の股間に手を出してから軽く握る。
そしてやわやわと揉み始めると、于禁の股間が膨らんできた。悔しさに于禁は思わず鋭く睨みつけたが、夏侯惇は平然とした顔をしている。
「ほら、言った通りだろう?」
「……ッ!」
于禁の悔しげな顔を見て満足した夏侯惇は、つい先程着たばかりの寝間着を脱ぎ始めた。次に下着にまで手をかけると、夏侯惇は裸になる。興奮をしているようだが、酔っているので性器は芯を持っていない。
そして玩具を近くの洗面台で丁寧に洗ってから床に座ると、于禁に見せつけるように脚を大きく開いた。于禁の寝間着の股間の部分には、小さな染みができてきている。
「それに、こんなものを普段はお前は使わないからな……そこにあるならたまには使ってみたい」
自身の入口に、玩具を宛てがった。しかし夏侯惇にとっては小さなサイズであっても、先端部分すら入らないようだ。舌打ちをすると夏侯惇は于禁に命令をする。
「そうだ、お前のを一回しゃぶらせろ」
「……は!?」
驚いた于禁はそれを断ろうとしたが、夏侯惇は腕を引いて寄せる。バランスを崩した于禁は床に膝を着いたので、夏侯惇は押し倒してからその上に覆い被さった。于禁の寝間着のズボンに手を掛けようとする。
やけに楽しそうな顔をしているが、今の于禁は気分的にはその気にはなれないようだ。一方の体の方はとても反応をしているようだが。覆い被さっている夏侯惇を引き剥がそうとするが、それを察したのか再び股間を揉む。
それにより于禁は力が抜け、その隙に夏侯惇はズボンと下着を素早く脱がす。下着に窮屈そうに押し込まれていた于禁の怒張が現れたが、夏侯惇の視界に入るとすぐに天井を向いた。
「ん……んぅ……」
それを見るなりすぐに夏侯惇は口に含むと、今すぐ于禁に射精をさせるために舌を巧みに使って怒張を刺激し始めた。
怒張の弱い部分を集中的に舌で責めると、于禁は吐精したくなったようで苦しげな息を漏らす。それを聴覚で拾った夏侯惇は、とどめにと鈴口のあたりを舌で突いた。
すると于禁は射精し、夏侯惇はそれを全て口腔内で受け止めた。だが喉には通さずに夏侯惇の口腔内の粘膜から、物足りない様子の于禁の怒張を解放させると、精液を漏らさないように口を閉じる。勿論、于禁を煽る為に口角を上げるのを忘れずに。
覆い被さっていた于禁から離れると、脚を開かせて座る。少し口を開け手の平を近付けると、于禁の精液を垂らした。それを指に絡ませると、入口に指を入れる。于禁の怒張を口に含んだ理由は、吐き出した精液を潤滑油にしたかっただけらしい。
「ぁ……んっ、あ……」
于禁の方を見ながら、見せつけながら、自身の入口を解していく。入れる指の本数を次第に増やしながらも。于禁はそれを、荒い息を吐きながらただ見ていた。視線を外すという思考を忘れてしまったのか。
玩具が入りそうな程に入口が解れたところで、玩具を持って入口に宛てがった。
「はっ、あ、ん、ぁ……はいる、文則以外のがはいる……」
よく解れているのか、玩具は吸い込まれるように入口に向かうと、そのまま奥まで入っていった。夏侯惇はとても嬉しそうに、玩具で遊び始める。
一旦引いてからまた押し込む際に、前立腺を重点的に強く突く。その瞬間が、夏侯惇にとっては凄まじい快楽であったらしい。次に玩具を引かせた際にも前立腺に当てると、腰をゆらゆらと揺らした。しかし性器は相変わらず芯を持てていないので、ひたすら揺れているのみで。
「あ、あっ! ぁ、あ、ア、ッゃ、あ……!」
玩具をまるで于禁以外の人間に犯されているように、激しく出し入れをする。やはり、于禁によく見せつけるのも忘れないように。
すると夏侯惇の『煽り』に于禁は耐えられなくなったらしい。まだ射精をしたい様子の自身の怒張を一瞬だけ見た後、玩具で遊んではしたなく喘ぐ夏侯惇にゆっくりと近付く。
「……そこまで、それが良いのですか?」
とてつもない感情の昂りにより、于禁の眼の瞳孔が開きかけていた。玩具で遊んでいる夏侯惇はそれに対して僅かに頭を縦に振る。期待を大きく込めながら。
すると于禁は玩具で遊んでいる夏侯惇の手を掴んだ。それに驚いた夏侯惇は手を止めていると、于禁がその手を無理矢理に離してから玩具を手に持つ。先程の夏侯惇のように覆い被さりながら。
「これが、良いのでしょう?」
于禁は熱い吐息と共に、その疑問を頬に掛けながら玩具で夏侯惇の入口を苛め始めた。しかし夏侯惇自ら遊んでいた時よりも、浅く挿入しては抜くを繰り返す。玩具で一番の愉しさを得ていた前立腺へは、ほんの微かに当てる程度で。
喘ぎながらも焦れてきた夏侯惇は前立腺を強く擦るようにねだるが、于禁はそれを聞き入れようとしない。寧ろ聞こえないふりでもしているのか。
「ゃ! ちが、もっと奥が、いい!」
自ら快楽を得ていた時よりも腰を大きく揺らした。それにより芯を持っていないふにゃりとした性器までも揺れる。于禁はそれを視界の端で捉えると覆い被さっていた体を離すが、代わりに反応していない性器に顔を近付けた。
未だに腰を揺らしているので、于禁の目の前で性器も揺れる。それを数秒凝視した後に、于禁は夏侯惇の性器を咥えた。勿論、玩具での入口の抜き挿しも忘れずに。
口腔内に夏侯惇の性器が入るが、それでもやはり硬度を持たないようだ。アルコールのせいであるのは分かっているが、于禁はわざとそれを全て咥え込むように、えずきながら上顎を掠めるとそこで止める。まるで舌が侵入してから、口腔内を蹂躙されているような気分に浸る。
今、夏侯惇の何もかもを蹂躙しているのは于禁の方であるが。
「あ、ァあ、あ、あ! っは、ぁあッ……!」
そこで于禁はようやく玩具で前立腺を責め始めた。だが予告も無しに唐突であったので、夏侯惇は体を跳ねさせながら凄まじい快楽を受ける。
「っ、やぁ、あ、イく、ぁ、ア、あっ」
口腔内に含んだ性器に変化など無いというのに、夏侯惇は絶頂を迎えそうと言う。だが于禁はそれを促すように玩具で前立腺を責める速度や強さを上げ、そして口腔内の性器を舌でゆっくりと這わせ始めた。
するとそれがとどめとなったのか、夏侯惇は果ててしまったらしい。だが射精はしておらず、ただ腰をいやらしく痙攣させるのみ。それを見て悦に浸った于禁は玩具を抜き取り、唾液塗れとなった性器を吐き出した。
夏侯惇の入口も口も、ぽっかりと開いていた。于禁を更に誘うように、それぞれ卑猥な粘液を垂らす。
夏侯惇は玩具だけでは満足しないのか、于禁の名を呼ぶ。
「ぶんそく……ほしい……」
起き上がれない夏侯惇は脚を于禁の腰に辛うじて絡める。その時の夏侯惇の顔は赤いだけではなく、性欲に忠実である雌のようであった。
大きな喉仏を上下に動かした于禁は、途端に自身の怒張を夏侯惇の入口へと宛がった。これから激しく善がらせ、狂わせると言わんばかりに。
すると夏侯惇は歓喜の笑みを浮かべ、早く早くとせがむ。なので于禁はそれに応じるかのように、一気に怒張を入口の縁にめり込ませると、奥へ突き刺した。
「ひゃぁああっ!? あ、あぁッ!」
やはり玩具よりも得られる快楽は大きいらしい。夏侯惇は悲鳴のような喘ぎ声を上げると共に、腰を大きく痙攣させる。于禁の腰に絡めていた脚が床に落ちたが、その様は先程よりも官能的であった。
そして于禁も大きな快楽を得られたのか、夏侯惇の腹に怒張を収めた瞬間に射精をした。熱く狭い粘液の中に、目一杯精液を叩きつける。
「ふ、うっ、あ……」
于禁が獣のような声を出すと、夏侯惇に理性など無くなっていた。へそを両手で撫でながら「ちんちん……」と、呟く。
だが于禁は何も言わずに、怒張で腹の奥を激しく突き始める。中の精液が泡立つ程に掻き混ぜるように。
脱衣所で何度も何度も、夏侯惇の喘ぎ声と于禁の獣のような吐息と腹の中で精液が掻き混ぜられる音、そして二人の肌がぶつかり合う音が加わって聞こえ始めていく。ここはもう、人間の種族の言葉という『音』など聞こえなくなっていた。二人は、れっきとした人間の種族であるというのに。
そうしていくうちに二人は何度も、数えきれない程に絶頂を迎えると、于禁はようやく怒張を引き抜いた。夏侯惇の腹の中に何度も精液を吐き出したのか、泡立った精液が夏侯惇の入口から大量に流れ出てくる。
「ぶんそく……」
ようやく夏侯惇が先にまともな人間の言葉を発すると共に、気を失ってしまった。
于禁はその夏侯惇の体をすぐに丁寧に清めると、ベッドに静かに横にさせてから二度目の眠りに就いたのであつた。
その際、夏侯惇の唇に優しいキスをするのを忘れずに。