乱世は未だ続く。赤壁の戦いで劉備・孫権軍が勝利し、曹操軍は敗北をして撤退をした。だが紫鸞はどこに介入するということも無くなった。
ある時は曹操に仕え、ある時は孫権に仕え、ある時には劉備に仕える。それらを繰り返していくうちに、この乱世は終わらないと感じたのだ。なので紫鸞は静観の構えを取る為に、一度里に帰った。
ここは季節問わず桜が咲き誇っており、冬の厳しい寒さなど知らないようだった。その中でも一際大きな桜の木に向かえば、見覚えのある後ろ姿が見えた。死んだ筈の張角である。
紫鸞は大きく目を開くが、立ち止まることなく張角に近付いていく。足が、止まらないのだ。本当はすぐにでも止まって欲しいというのに。
その理由は張角に合わせる顔がないからだ。
「紫鸞……」
こちらを見る目はとても悲しげなものだ。太い喉から発せられる、艶やかで低い声がそれをより一層強くさせる。紫鸞は、ただ俯くしかない。この乱世をいち早く止めたい張角の前では、何も言えなくなっているのだ。
自身の存在で、自身の行動で、この乱世がより大きくなっているように思える。そのような気がした故に。
「張角……」
静かに名を呼び返せば、そこで張角がずいと近付いた後に抱き寄せてくる。
香の甘い香りがした。心地よいものだ。
「お前が無事で、本当に良かった……俺は、お前の身が心配で……!」
張角の顔を見れば泣いていた。それほどに、生還していることを喜んでくれているのだろう。紫鸞は、小さな笑みを浮かべながら頷いた。
「大丈夫だ。こうして生きているから」
返事をすれば、張角の瞳から流れる涙の勢いが強まる。少し位置が高いので、手を伸ばしてから指先で優しく拭う。涙は暖かかった。
「そうだ、どこか怪我はないか!?」
大袈裟に張角が腕や肩を触るが、紫鸞は今のところどこも怪我をしていない。なので笑みを意維持した。
「怪我はないから……もう、泣かないでくれ。それでも神医なんだろ?」
「神医……? そんなの、もう昔の話さ……俺には、医者を名乗る資格もない……」
張角が触ってくれていた手がだらりと落ちる。これは心を現しているようで、紫鸞は心を痛める。自身の発言のせいでそうさせてしまったのかと。
そこで紫鸞はここに来た用事を思い出した。わざわざ張角に会いに来たのだ。土産には冷めてしまった肉まんしかないが、それを渡す。張角の頬が緩んでおり、涙は止まった。
「……ありがとう」
礼を言ってから一口食べる。すると相当に美味いらしく、二口三口目と食べていっていた。その勢いは腹を空かせた子どものようだ。
立ったまま食っていたが、行儀が悪いとは思わない。見れば張角は何も口にしていないように思える。頬はこけて、顔色が悪い。世の民のことを痛んで、そうなったのだろうか。紫鸞は拳を握りしめる。
「街で買ったんだ。冷めてしまったけど、美味そうに食べてくれてなによりだ」
「……あぁ、紫鸞、お前の分は?」
「いいよ。もう食べたから」
本当は嘘である。最近はあまり食欲がなかった。この世の情勢のせいで、食う気にならないのだ。それを張角に話す訳にはいかず、どうにか誤魔化そうとした。
しかし張角が怪しげにこちらを見れば、こう言い放つ。
「紫鸞、嘘をついているな? 俺には分かる。まだ……半分も食っていないからお前も食え。美味いぞ」
「……分かった」
諦めてから張角から半分の肉まんを貰った。これは街でも美味いと評判の肉まんであるが、試食などしていない。ただ、張角が食べそうであったので買ったのだ。自身の好みの食べ物のことなど考えていなかった。
すると久しぶりのまともな食事に、紫鸞はすぐに半分に分けられた肉まんを完食してしまった。あまりの美味さにだ。張角が柔らかく笑う。
「お前も腹が減っていたんじゃないか……」
張角も完食した後に体を少し伸ばす。
そういえば張角は誰も居ない里に居続けて何をしているのだろうと考える。見渡せば幾つかの廃屋と桜の木しかなく、それにこのままでは情勢も知る由もないだろう。そう思った紫鸞がそれについて話そうとするが、張角が首を横に振る。分かっているようだ。
「俺はここで、ずっと書物を読んでいるんだ。ここには、書物がたくさんあるからな」
「書物か。例えばどんなものがあるんだ?」
「そうだな……薬学、植物、たまに兵法だな……兵法は俺には必要がないが、あるから読んでいる。案外面白いぞ。専門外だから余計にな」
張角が兵法書を読むとは意外だ。紫鸞は「へぇ」と相づちを打っていると、張角が何か気付いたような顔をする。
「あぁ……ここでずっと立ち話をするのも何だから、俺が寝床にしている所……とは言っても廃屋だが、上がってくれないか」
奥にある建物を指差すが、そこはこの中でも一番大きな廃屋であった。木の壁は朽ち、そして倒れそうになっているがどこか安定をしており倒壊する予感がないように思える。不思議だ。
張角に着いていけばその建物に入る。中は生活感があった。着物が壁に掛けてあり、薬草が干してある。そのせいなのか薬のような匂いがよくしていた。しかし不快ではない。
大きな部屋が一つあり、家具が必要最低限にある。机椅子は一つ、寝台も一つ、それに食器のようなものも一つだ。棚には書物がびっしりと並んでおり、成る程と紫鸞はそれらを見た。張角の生活を想像した後に「一晩でいいから泊めてくれないか」と、そう言う。張角は勿論と頷いてくれる。
「食器は一つしかないが、それでも良いなら」
「あぁ、いいさ……」
自身は張角と共に居れば良いのだ。なので早速に寝床に座れば、着ている着物を緩やかに脱いでいく。紫鸞なりの誘い方だ。だが時はまだ夜ではないので、断られる可能性もあるのだが。
「紫鸞……」
張角の方から喉を鳴らす音が聞こえた。そこで張角がどのような生活をしていたか思い出せば、男として発散できないことに気付く。しかし時は既に遅く、視界は既に天井を見ていた。押し倒されたのだ。
「張角……やはり男なんだな……」
自身に対して発情してくれたのが嬉しくなり、手を伸ばしてから頬を擦る。やはり痩せこけているのか、骨ばっていた。それでも張角の頬を触り続けた。
「紫鸞……」
消え入りそうな声で自身の名を呼んでくれると、覆い被さってくる。薬草の匂いと共に、どこか甘い香りがした。これは香なのだろうか。香を浴びていたのだろうか。
「張角……」
名を呼び合えば、そこで二人の唇が自然と合わさる。互いの唇は痩せているが、それでも柔らかいとい思えた。すると夢中で吸い付き、張角の唇を求める。口付けは更に激しくなっていった。
「ん、んっ……ぅ、ん……」
息を漏らしながら張角の体の線を拾っていく。まずは自身よりも大きな肩に触れ、そして太い腰に触れる。そうしていると、張角が手をがしりと掴んだ。捕らえられてしまう。
何度も何度も唇を寄せられた後に、着物を脱がされていく。平らな胸がすぐに露出すれば、張角の唇が離れた。見れば張角には普段はない色気がある。何と言えばいいのか分からないが、それがやけに紫鸞の心を擽る。
そして張角の頭が降りると、平らな胸をちろちろと舐められる。擽ったいが、嬉しかった。自身のような色気も何もない体に、食いついてくれているのが。
「っは、はぁ……はぁ……」
「ここ、いいか?」
丁寧に質問してくるので頷くと、張角の頭が更に動いていった。胸の谷間や乳頭を丹念に舐め回していくのだ。更に擽ったいが、やはりそれでも嬉しい気持ちが勝る。
胸が唾液に塗れれば、着物などを全て脱がされる。あっという間に裸になれば、張角も同様に裸になる。着物を脱いでいくのを見ていたのだが、張角の体も痩せこけていた。殆ど何も食べていないことが窺えると、体を燻らせながら問う。
「あまり、食べていないのか?」
「……あぁ、食欲がなくてな」
「それは嘘だ」
はっきりと断言してしまってから、理由を考える。するとすぐに見つけることができた。自身が与えた半分の肉まんを、がっついて食べていたからだ。だが貧困により飢えているのではない。何かに躊躇して飢えているのだろう。
更に考えていくが、張角のことだ。貧困に喘ぐ民たちの気持ちに寄り添いたいからなのだろう。なのでそれを口にした。
「民たちのことを思ってか?」
訊ねてみれば、張角の口が閉じた。そして眉間に皺を寄せながら視線を逸らすが図星なのだろう。すると起き上がってから、張角の体を寧ろ押し倒した。下半身はしっかりと膨らんでいるので、これが終わったら何か食べようと思った。
しかしそれよりも、張角に言わなければならないことが一つある。それは小さな怒りだ。
「民たちのことを思うのはいいが、だからと言って自分の身を削るのは良くない。そんなこと、民が喜ぶ筈がない。同じ目に遭わなくてもいいんだ。気持ちさえ分かれば」
張角は何も言わなかった。言い返せないのだろう。なのでそのまま起き上がり、そして張角の体を起こす。
顔はすっかりと沈んでしまっており、相変わらず黙ったままだった。だが聞き入れてくれたのは確かであるので、ゆるりと笑みを浮かべながら提案をする。
「だから、後で街に行って何か食べに行こう。大丈夫だ、金はある。それに張角は顔を隠せば衛兵には見つからない」
「……本当か?」
「本当だ」
「……分かった」
返事と共に再び押し倒されれば、そのまま口付けをされていく。それはまるで食い物を食うように荒く、貪られているような気分になった。それくらいに、欲してくれているのだろう。
息を漏らしながら張角の体に触れる。体にはあまり治してこなかった怪我が幾つもあった。これは前にも何度か見ていたが、やはり痛々しい。自己犠牲のし過ぎが原因である。
怪我の痕を指でなぞりながら、何度も何度も唇同士の隙間を作っていく。大きさや形は様々であった。
次第に抱き合っていくと、張角の体が暖かくなってきた。熱が、大きくなってきたのだろう。
「っはぁ……紫鸞……」
もうじき良いだろうと、膝を上げてから張角の腰に巻き付く。だが自身の重みにあまり耐えられないのか、ずしり、と張角の体が下りていく。
「っ……! すまない……」
張角の体があまりにも弱っているので、紫鸞は膝を下ろした。そして「すまない」と謝りながら張角の顔を見る。眉が大きく下がっており、とても悲しげだ。
「張角、また今度でいい」
「今度か……」
言葉をそのまま呟いた張角だが、自身の言う「今度」がいつなのか分からないらしい。近い未来か、或いは。
「……大丈夫だ。この乱世が続いても、張角の傍に居る」
「本当か?」
張角は不安気である。この乱世とはいえど、いつまで続くのか分からないからだろう。少し考えた紫鸞は、張角の体を見てから言う。それは張角を喜ばせるものであった。
「張角の体が、元気になるまでだ」
「俺の体が、か……そんなこと言ったら、俺はいつまでもこの不健康のままだぞ?」
笑いながら言うので、紫鸞も笑いながら返す。
「だったら、鞭打つまでだ」
「厳しいな」
互いに一笑いした後に、張角が近くの棚から壺を取り出す。見れば軟膏のようだが、自身はどこにも怪我をしていない。
首を傾げていれば、張角が匙でそれを掬った後に手のひらに広げる。色は濁った白色で、やはりどう見ても軟膏である。
「これが、何だか分かるか?」
「軟膏……?」
「いや、違うな。これは、筋肉を一時的に弛緩させる薬なんだ。塗ってもいいか? 大丈夫だ、ほんの一時的だから」
張角が言うならば、と紫鸞は考えた後にどこに塗るのかすぐに分かってしまう。それは自身の排泄器官になのだろう。
一気に顔が熱くなっていくが、張角はそれを指先に掬っていた。紫鸞は顔を相変わらず赤らめながら足を開く。今やきつく閉じている箇所が、よく見える。最後に張角に弄って貰ったのは、いつ頃だったのだろうか。
そう考えていると、張角が手を伸ばしてきた。そして指先が排泄器官に辿り着けば、優しく軟膏を塗られていく。ひんやりとしているので、体が強張った。
縁から入り口まで、しっかりと塗られていく。
「……っひ!」
「少し、我慢してくれ……よし、粘膜に塗ったから、少しすれば一時的に筋肉が弛緩するだろう。少し待つ間に……口吸いをもっとしてくれ」
「あぁ」
二人の唇がすぐに合わされば、何度も何度も舌同士を擦りつける。そして唾液を何度も交換していくと、尻に違和感が生じた。張角の言う、筋肉の弛緩が始まったのだろう。
唇を一方的に離され、紫鸞の舌が張角の方に伸びていく。しかしそれでも離れてしまえば、張角が尻に手を再び伸ばしていた。
尻の違和感が大きくなっていくと、張角の名を呼んだ。張角は、微笑む。
「指、入れるぞ?」
「んっ、ん……入れて……」
張角の骨ばった指が排泄器官に入っていく。そこはきつく閉ざされていた筈だが、みるみるうちに張角の指が見えなくなっていた。すんなりと入っていっている。
違和感はある。しかしその軟膏のおかげで痛みなどは無かった。代わりに入り口付近の感覚がない。
指先が入り、そして中にいくにつれて感覚がある。異物感がこみ上げてきたのだ。だがこの感覚は何度も経験があるので、ひたすらに我慢するしかない。なので目を閉じていると、張角に舌で瞼を舐められた。落ち着かせてくれているのだろうか。
嬉しくなった紫鸞は目を閉じながら、張角から受ける感覚を楽しむ。そうしていれば、指がすんなりと二本入っていく。このようなことは初めてであったが、その軟膏とは便利だと思った。
「すぐに楽にしてやる」
頭上から優しく低い声が降ってくれば、大きな安堵が押し寄せる。そして体の力が抜けていけば、すぐに指が何本も入っていった。次第に気持ちよさを感じていく。
「っあ……はぁ……」
紫鸞はすぐに張角の指の動きに溺れていった。体を捩らせながら快感を得れば、その間に瞼を開ける。目の前には張角が勿論居り、自身の排泄器官を性器へと変えようとしている。
そして目を開けたからなのかは知らないが、張角の指の動きが変わっていく。それは拡げるのではなく、弄るような動きになったのだ。これはもしかして、前立腺を突いてくれるのかもしれない。
紫鸞は期待を膨らませながら張角に抱きつけば、やはり指は前立腺に触れていく。少しでも触れられれば、紫鸞の体がびくりと跳ねる。あまりにも、気持ちがいいからだ。
「ゃ! あ、あ……! 張角……!」
「ん? どうした? ここが、好きなのだろう?」
わざと、意地悪を言われているような気がした。紫鸞は大きく頬を膨らませたが、前立腺を何度も小さく突かれていくので萎んでいく。そして出るのは嬌声だ。ひたすらに、紫鸞は声を上げた。
「すき、だけどもっ……! ぁ、あ……ん、んあ、ぁ、あ!」
「紫鸞、いい声だ。もっと、鳴いてくれ、我が美しい鸞よ……」
次第に指が入っている部位からぬちゅぬちゅといやらしい音が立っていく。もうじき、ここは中までも緩まるのだろう。
このまま張角のものを受け入れると思うと、紫鸞は興奮で頭が一杯になる。煩悩など普段は必要ないと断つことができるというのに、今は断ち切ることが全くできない。歯すらを立てられないくらいに、敵わないのだ。
次第に頭の中が真っ白になっていき、何も考えられなくなる。
「う、ぅあ、あ……!」
巧みに張角の指が動いていけば、自らの体は制御が利かなくなる。どのような戦況よりも恐ろしく感じたが、今は張角の前だ。委ねるしかないと、体の制御を止めた。
「紫鸞……」
そして名を呼ばれる度に、どきりと胸が鳴った、これが、胸が疼くというおことか。心の中で納得をしていると、腰ががくがくと震えてからものから白濁液を吐き出した。達したのだ。
「偉いぞ……」
褒められた後に指が引き抜かれれば、腹の底まで疼いてくる。張角のものを酷く求めているのだ。そうとなれば、張角にそれえを伝えた。それも、かなり直接的に。
「張角の、魔羅が欲しい……腹に、全部欲しい……」
「ほう、恥じらいながらでも言わせようとしたのだが、これは驚いた。お前からそうして誘ってくれるとは……勿論だ。お前が望むものを与えよう」
張角の雄の顔が出てくれば、自身の腹の底が揺れたような気がした。これは、張角のそのような顔に惹かれているのだろう。そう思うと堪らなくなる。
「早く、張角……!」
もはや下半身が言うことが聞かない。腰を淫らに振りながら張角を誘えば、ようやく魔羅をあてがわれる。これは何度か挿入されていたので分かるが、やはり禍々しい姿をしていた。色は赤黒く、そして血管がどくどくと浮いている。
自身にはないものだが、それが寧ろ良いのだろう。腹の底、何度かそれで突かれた箇所が反応をした。早く、突かれて善がりたいのだ。
「あぁ、分かっている、紫鸞……!」
張角の声に強い張りが生まれるや否や、すぐに魔羅がずぷりと入っていく。やはり軟膏のおかげなのか、容易く入ってしまう。
その感覚は紫鸞としてはとても心地が良かった。魔羅の熱を感じながら、口を半開きにして悦ぶ。
「あ、あ……! あ、はぁ、ん……んっ、ん……!」
大きさはかなりのものだ。しかし挿入口は柔らかいのでどんどん埋まっていった。まるで滑るように、そこが粘液でも分泌しているかのように。
「っぐ……! ぁ、はぁ……中、気持ちいいそ……! 紫鸞……!」
張角の「気持ちがいい」の一言で、またしても紫鸞は果てそうになった。あまりの嬉しさにだ。
「張角……なら、早く……!」
しかし張角の魔羅は全て入っていないし、このまま全て入ってしまえばどれほどおかしくなれるのだろうか。そう考えると頭が蕩けてしまい、必死に腰を振って挿入を促す。張角の魔羅は、そのおかげかずるずると入っていく。紫鸞の顔は、弛むばかりだ。
すると魔羅が全て入り、体に甘い痺れが起きる。これは悦びなのだ。悦びからくるものなのだ。
紫鸞は何度も射精をしつつ、喘いだ。
「あ、ぁ、あぁっ……! はぁ、はぁ、ちょうかく……」
呂律さえ回らない。そのような中で紫鸞は古びた天井や、痩せこけた張角を仰ぐ。幸せとは、このようなことなのかとふと思った。太平の要として居た為に、このようなものとは縁が無かった故。
張角の魔羅で一杯になれば小さく揺さぶられる。凄まじい快楽が襲いかかってくれば、下半身が萎えるまで射精を続ける。このようなことは初めてであった。だが張角は頬に唇を落としながら、更に責めていく。次第に腰の動きが大きくなってきたのだ。
「っあ!? まだ、うごかないで! ぁ、あっ、はっ……! はぁ、はぁ!」
「だが、これが良いのだろう? っふ、ふぅ……紫鸞、そろそろ、出るが……」
張角の言う「出る」など分かっている。本来ならば女にする種付けを、自身にしてくれるのだ。これだけ喜ばしいことはない。
頷けば、張角の腰の動きが止まった。すると唸り声が聞こえるが、まるで獣のようだった。腹の中で張角の魔羅を勢いよく締め付ける。精を搾り取るかのようだった。
「っう……! ぁ、あ!」
そして腹の中に目一杯注がれると、目の前がちかちかと光るような気がした。そうだ、これで張角に種付けをされたのだ。そう思うと紫鸞は張角に抱きついた。しかし力が入らない。
見かねたのか、張角がしっかりと抱き締めてくれた。二人の体は、繋がったままだ。
「はぁ、はぁっ……紫鸞……!」
これ以上は何も言えないらしい張角が、名を呼んだ後に口を閉ざす。だがそれに対して何を言えばいいのか分からなくなり、自身までも口を閉ざしてしまった。
二人の間に荒い息が聞こえるが、そこで張角の腹から音が鳴った。空腹を知らせるものだ。紫鸞は思わず笑ってしまうと、張角は頭をかいた。この状況に似つかわしくない音を鳴らしてしまった為に。
「ふふ……体を綺麗にしたら、街に行こう」
「あぁ、そうだな……すまない」
そこで張角のものが萎えれば、引き抜かれる。どろりと精が溢れてくるが、これを見て紫鸞はふと思った。どうして自身はこれを受け止められないのか。しかし考えている間に張角の姿が見えなくなったと思いきや、桶と手拭いを持ってくる。準備が良い。
「体をまずは拭こう」
「あぁ……」
先程の淫猥な空気など無くなったようだ。だが青臭い匂いはまだしており、少し顔を歪めてしまう。それに気付いた張角が換気をしようとしたのだが、まだ離れて欲しくないと思えた。弱々しく手を掴む。
「……まだ、もう少し」
「分かった」
そう返してくれると、張角が軽く体を拭いてから抱き締めてくれる。安心する暖かさがあった。
次第に眠たくなっていく気がしたが、張角は腹を空かせている。眠る訳にはいかないのだが、体を繋げたことにより体力を消耗し過ぎたのかもしれない。張角に小さく謝る。
「すまない、張角……」
「いいさ、少しは米がある。それで凌ぐから」
そう言ってくれると、紫鸞の力が一気に抜けた。そしてそのまま一時的に木を失っていく。
※
目を覚ませば、空は暗くなっていた。しかし里から出られないということはないので、頭巾を深く被った張角と共に街へ下りる。街は賑やかであった。
屋台や食堂がたくさんあり、食い物のいい匂いがする。肉の焼ける音、米が炊ける熱気、人々の歓談。全てが、食欲をそそる。二人の口からは、唾液が垂れそうであった。
そして紫鸞が「何が食べたい?」と聞けば、張角は笑顔で答えてくれた。「お前となら、何でも」と、紫鸞にとっては嬉しい言葉である。
すると二人は最も肉の匂いが強い店に入り、料理を堪能していた。香辛料で味付けをして火で炙った肉や魚があり、涎が出るものばかりであった。空いた席に向かい合って座れば、早速に店員が注文を聞いてくる。紫鸞が喋った。
「おすすめで」
そう言えば店員はすぐに頷き、料理人に注文を伝えた。待っている間に、二人は話していく。
「……そういえば、誰かとこうして店で食うのは初めてだ」
「そうなのか?」
「あぁ、そういう暇も金も無くてな……紫鸞、改めてありがとう。楽しく食事できそうだよ」
二人で話しているうちに、料理が運ばれてきた。大きな皿が一つと、椀が三つだ。匂いの通りに厚く切った牛などの肉に香辛料で味付けをして、炙ったものがある。それに脇に野菜なども備え付けてあるが、主役は肉である。肉は随分と大きかった。
椀には炊いた米が二人分、それに残りの一つの椀には桃が二個あり随分と豪華だ。しかし周囲を見れば同じようなものが並んでいる机もある。なるほどこれは浮かないと思った。
二人は箸を持つと、早速食べていく。まずは主役の肉だ。先程体力を消耗した紫鸞にとってはかなりの美味い味に思えた。どんどん口に入れていくが、張角も同様である。それを互いに見た二人は笑う。
しかし里で食べた半分の肉まんには敵わないと思う。単純に、腹の空き具合のせいなのかもしれない。
「遠慮しないで食べてくれ、張角」
「あぁ、勿論だ。お前との席だからな」
そう言い合うと、二人は笑顔で食事をしていったのであった。料理を残さず平らげ、そして酒を追加する。それは大きな酒壺を持って来るので、二人は驚きながら店員を見た。だが店員は普通の量のようで、寧ろ二人を不審がる。
紫鸞がすかさず「何でもない」と言うと、椀に酒を注いでいった。まずは張角のものからだ。そして自身の椀にも注ぐと、盃を交わすように乾杯をしてから酒を喉に通していく。豪勢な料理の後の酒は、とても美味かった。それに、目の前には張角が居る。余計にだろう。
「あぁ……今は平和で楽しいな……」
「そうだな。こんな世の中が、あったらいいな……」
程よく酔いながらそう話していたが、二人の望みは生きている間は叶うまい。未だ、遠くでは戦が続いているのだから。