目を覚ませばまたしても眩しい日差しが目に入った。どうやら日付が変わっていたらしい。つまりは、ここで何時間も眠っていたということになる。
春日と一晩を過ごしたが、とても満足のできる行為をできて桐生の気分はすっきりとしている。それは何年ぶりというレベルだ。体を起こしてから背中の応龍に触れる。体を弱く伸ばすと、いつもより体がほぐれる気がした。
まだ眠っている春日を見れば、すやすやと子供のようの寝ている。そしてトレードマークであるチリチリとした髪に少し触れてみると、少し痛んでいるような気がした。そこで、これは地毛なのだろうかと考えるが、このような髪型を春日自らがするのだろうか。だが春日の性格からしたらあり得なくはない。
すると笑いがこみ上げてしまった。春日が今の髪にした理由は、何かに巻き込まれたからだと少し思ってしまったからだ。なのでつい声に出てしまうと、春日にそれが聞こえたようだ。何度か眉間の皺を深くした後に、瞼を上げる。そしてこちらの姿を見るなり、大きく驚いた。
「えぇっ!? なんで!?」
春日が当たり前のリアクションをした後に、立ち上がろうとした。そこで全裸であることに気が付いたのか、局所を手で隠しながら何やら騒ぐ。どうやら昨夜のことを覚えていないらしい。
「えっ!? どうして俺……いや、桐生さんも裸!? なんで!?」
反応が面白いと桐生はクスクスと笑うと、正解をとても直球的に述べた。躊躇など、全くない。
「どうしてかって? お前とセックスをしたからだ」
「ぶっ! せ……せ……!?」
春日としては言い慣れない言葉であったのだろう。顔を真っ赤に染め上げるが、その様子がとても可愛らしい。この年になっても初な反応をしてくれて、桐生は春日自体に全く飽きる気配がない。
「ちなみに、俺が上だ」
「……え、えぇ!?」
すると春日は理解が追いつかなくなったのか、頭をかきむしる。しかし現実なので変わる筈がなく、手の動きを止めた後に項垂れた。
「き……桐生さん、俺……」
すると春日の顔が青ざめていくが、何かに気付いたのだろうか。なのでそっと近付くが、春日が距離を狭くすることを拒んだ。体をすっと引かせたのだ。そこでベッドから落ちかけたので、慌てて春日の体を掴む。
「おい、大丈夫か!?」
「は……はい……」
春日の頭が逆さになっていたが、体を必死に持ち上げると水平に戻った。溜め息をついて安心をすると、春日が小さく礼を述べてから再び口を開く。
「あの……俺、なんか……腰が痛いんですが……」
「あぁ、すまねぇ。昨夜は激しくしすぎた。つい、な」
目の前の春日の顔のいたる皮膚が、鮮やかな赤に再び染まる。情事のことを思い出したのか、或いは思い出せず想像でもしたのか。観察をしていると、春日の局所が丸見えになっていた。ベッドから落ちるときに、手を自然と手を離してしまっていたのだろう。
萎えてはいるがそれを見ると、春日が「何見てるんですか!」と局所を手で隠してしまう。まるで桐生自身が異常のように言い放った。
それを残念に思い内心で舌打ちをすると、春日がこちらに向き直る。
「……あの、俺と、その……せ……いや、あの、アレをしたのは、罰ゲームか何かですか……?」
恐る恐る何かを聞いてくると思えば、内容はやはり春日らしいものである。自分自身を、卑下するようなものだ。桐生はそのようなことをうっすらと気付いていており、卑下をするということが気に食わないと思っていた。無意識に顔をしかめると、春日が怯える。
「え、や……やっぱり……お、俺……」
「違う。俺が望んで、お前とセックスをした。そして俺はお前とセックスができて良かったと思っている。それ以外は、無い」
すると春日の顔が晴れてくるが、やはりどうして自身が相手なのかと疑問に思ったらしい。口からそれが出るが、桐生はそれにはっきりと答えた。
「俺は、お前が好きだからだ」
「えっ、好き……!?」
春日は驚愕した後に、局所から手を離そうとした。だがそこで隠しておかなければならないと思い出したらしい。震わせていた腕を見た後に、それをがしりと掴んで持ち上げる。
しかし筋肉の塊であるので、重い。後は衰えるしかない自身にとっては辛いが、力を込めていると突然に軽くなる。春日自ら、腕を上げてくれたのだろう。
鼻をすする音が聞こえる。それは春日から聞こえてくるが、泣いているのだろうか。すると春日が俯いたので、その顎をくいと指で持ち上げた。春日の大きく真っ直ぐな瞳からは、ぼろぼろと涙がこぼれていた。涙は透明で清らかで、淀みなどいまったくない。澄んだ液体がとても綺麗に思えた。
「俺、こんなに人に好かれたのが、初めてでぇ……! もう、どうすればいいのか分からなくてぇ……!」
春日の出自からしてそのような言葉が出てもおかしくはない。そう思っていると、何度か声を上げてから春日が抱きついてきた。やってきた体は熱いが、その熱さが心地よいと思えた。
それよりもと、桐生は春日の背中の龍魚を擦る。滑らかな肌触りをしているが、そういえば昨夜はここを触れていなかったことに気付く。なので春日を宥めるように、そして触れなかった分だけ触ろうとすると、春日が顔を上げる。
子供のように鼻水を垂らしており、そして涙を相変わらず流している。なのでシーツでそれを優しく拭った。顔が綺麗になると、春日の頭をそっと撫でた。
「俺はお前のことが、心から好きだ。これは、本当だ。だがお前は、どうなんだ。昨夜はあんなことをして、今更なんだが……」
春日との恋は、今までとは順番が全く違うと思った。普通は異性同士であれば、自然と心同士で惹かれ合ってから恋となり、そして体同士の繋がりに発展する場合が多い。
しかし今回だけは、まずは春日の体を食ってから気持ちを確かめている。まるで若い頃に戻ったように錯覚してしまうと、春日の返事を待った。
様子を窺ってみれば唇を半開きにしており、放心状態になっているようだ。桐生はてっきり改めて心を整理してから、否定でもされると思っていた。
そのような予想が外れたので桐生はどうすればいいのか分からなくなっていると、春日がようやく口を再び開けた。だが顔は変わらない。
「お、俺は……分かりません……でも、桐生さんを、嫌いじゃないことは確かです。いや、本当で……」
春日が言葉を言い切る前に、桐生はそっと抱き締めた。これにはやはり驚いてしまっているが、当然の反応なのだろう。なので「すまん」と詫びを入れてから体を離す。春日は、こちらを静かに見ていた。
だが春日とこうしていられるのはこれで最後なのかもしれない。なので春日の皮膚を存分に触れた後に、手さえも離す。もう、二度と好きな存在の肌に触れられないと思いながら。
「……そろそろ茜さんの家に行く支度をしよう。動けるか?」
「え、は、はい! 動け……あ! 腰が、痛い……!」
腰の痛みを忘れていた春日はその場で呻くと、桐生は溜め息をついてから体を支えた。そして龍魚を撫でるように、背中に触れると春日から礼の言葉が出てくる。
二人はベッドから出ると、洗面所で顔を洗う。まずは桐生が洗うと、次は春日である。だが背中をなかなか屈めることができないらしく、かなりゆっくりと体を折っていった。その動きなはまるで老人に見えた。
「大丈夫、です……! 多分……! 俺のことは、お気になさらず!」
「本当かよ……あぁ、分かった」
洗面所には二人分のアメニティの歯ブラシがあるので、一つを取ってから磨いていく。口の中がミントにより爽快になっていき、ある程度まで磨いたところで春日の洗面をようやく終えたところであった。次は歯磨きで、それは大丈夫なのだろうと見ていた。だが予想は大きく外れる。
「あっ、何もしなくても、腰が……!」
遂には立っているだけで腰が痛くなってきたらしい。このままでは支度が終わらないうえに、部屋から出るのは無理だと悟った。なので桐生は春日の腰を掴んで体が倒れないようにした。だが歯磨きは無理でも、数回程度のうがいならできるらしい。春日は何度も口をゆすいだ。
そこで後から抱きつく形になったのだが、どうしてなのか春日の顔が真っ赤になっていく。勿論、何も知らない桐生は首を傾げた。
「おい、どうした……?」
「いや、なんでも……あっ、これは……!」
すると鏡越しに、春日の下半身が緩やかに勃起しているのが見えた。もしや今の体勢になって、昨夜抱かれたことをようやく思い出して意識したのだろうか。随分と可愛らしい様子だと思った。
「おい……春日……分かった。辛いだろう、何とかしてやる」
口を開いているうちに、桐生までも昨夜の熱が戻ってきてしまったようだ。僅かに逸物が持ち上がる。まだ、この愛しい肌に触れることができるのだと内心で静かに喜びながら。
互いに全裸であるのですぐに目視で確認することができ、春日は必死に視線を逸らそうとしていた。
そのような春日をベッドに戻していくと、仰向けに寝かせた。春日は抵抗の為に起き上がろうとするので、それを妨げるために覆い被さってから手首を掴んだ。春日は腰が痛いのでこの手を振り払うことができないのか、腕をぼとりとシーツの上に落とした。諦めを見た桐生は、口角を上げながら手首を掴んでいた手を離す。
「きりゅう、さん、俺……」
「ん? どうした?」
優しく返事をすると春日は放とうとした言葉を忘れたかのように、口をあんぐりと開ける。それは閉まる気配が無いので、代わりに栓をするように唇を合わせた。
「ん、ん……!」
そしてシーツに落ちた春日の腕が上がると、そのまま桐生の背中へと行く。それは自身のの応龍に触れるように、指が背中をなぞった。擽ったいが、それよりも興奮の方を感覚が優先する。なのでか、逸物が完全に勃起をした。昨夜に続けてそうなるのは、これもまた久しぶりである。
「そういえば春日、お前の気持ちをはっきりと聞いてないが、俺のことをどう思う?」
唇を離してから湧いてきた質問をすると、春日は未だに顔を赤らめていた。そしてまたしても視線を外されるが、顎をそっと捕らえてから見つめた。
「春日、答えてくれ」
「俺は……桐生さんのことを、やっぱり嫌いにはなれなくて、それで……こうして見つめられると、何だかドキドキして……これは、何でしょうか……?」
春日から返ってきた言葉に、桐生は確信をした。自身のことが、好きであると。
なので桐生は手を離す代わりに、唇の周りを何度も軽くキスをしていく。時折にリップ音が鳴ってしまい、そして刺さる顎髭が痛い。それでも、桐生はキスを続けた。
すると春日は耐えきれなくなったのか顔を逸らしてから、桐生の首の後に手を回した。これは、受け入れても良いという合図なのだろうか。そう考えた桐生は春日と唇を合わせ、そして舌を出して春日の歯列をなぞる。春日から熱い息が漏れると、相当に良いことが窺えた。
なので次に上顎や歯を行き来すると、春日は焦れてきていた。再び腕が落ちたかと思うと、春日自身の下半身を触れていた。まるで、自慰でもするかのように。
「ふぅ……んん、ん……ぅ!」
口腔内が唾液に溢れてきた。舌を動かしてから春日の舌を絡めるが、やはり春日にとっては慣れないことなのだろう。ぎこちない動きで桐生の舌にすりすりと擦りつけてきた。
ぬるつく舌同士が緩やかに交差していくと、桐生の鼻息が荒くなっていった。対して春日は鼻息が弱いだけで、まだ口で呼吸をしようとしているのだろう。まだキスにさえ慣れないその様子が、可愛らしいとしか思えない。だが呼吸ができなくなるのは、桐生にだって困る。そのようなことで春日に苦しんでほしくないからだ。
唇を一旦離すが、その際に唾液の線で二人が繋がれていた。しかしそのようなものは顔を少しでも動かしてしまうだけで、容易く切れてしまう。桐生は線が切れる様子を視界の端に入れた後に、そういえば春日に答えを言っていなかったことに気付く。春日の答えが、あまりにも桐生にとって嬉しすぎるものだったからだ。
「……お前の、俺への気持ちを、そういえば正解を言っていなかったな」
軽く唇にキスをすると、春日が視線を逸らしてしまう。恥ずかしいのか分からないが、僅かに自身の気持ちに気付いるのだろうか。後ろめたいとでも思っているのだろうか。
正直になればいいのにと、囁くように春日の名を呼ぶ。そして念を押すように言葉を続けた。
「春日、お前が持っているその気持ちは、俺のことが好きだってことだ。よく覚えておけ」
伝わったのは分からない。いや、伝わっていて欲しい。証拠には未だに自身の刺青に触れている春日の指がある。例えエゴでもいいから春日と想い合いたい。桐生は心の中で祈っていると、春日の口がパクパクと開閉を繰り返している。何か言いたいことでもあるのだろうか。
桐生は話を聞く為に、春日の目をよく見た。だが「そんなに見られちゃあ、恥ずかしいですよ……」と控えめに困った後に、観念をしたのか口をまずは横に開いた。
「いや……その……つまり、桐生さんと俺は……りょ、両想いってこと、ですかね……」
かなり自信が無いようだが、春日は正解を述べている。なので桐生はそれを褒めるように、頬や唇にキスをしていった。
「あぁ、そうだ」
そして唇の端を上げて見せると、春日の顔が夕日のように鮮やかに染まっていく。桐生はそのような反応がやはり眩しいと思いながら、次は密着するようなキスをしていく。すると春日の腕が背中から腰へと回った。しかしそこでは落ち着かないらしく、手が背中に戻っていく。
「俺……桐生さんの背中が好きで……その、龍の背中が……」
まるで恥じらう乙女のように春日がそう言ってくれると、桐生の下半身に血が集まっていくように感じた。なので見れば、萎えていた逸物が勃起をしている。
それを春日の体に押しつけた、その瞬間に春日が目を見開いてから目尻を垂らす。これは、受け入れてくれるという現れなのだろうか。
「桐生さん、俺はいいですから、その……俺とセッ……いや、あの……」
やはりセックスと言うことを躊躇しているようだ。桐生はそのような春日を見て頬を緩ませると、唇にキスをしてから喉へと流れていく。
濃い髭と立派な喉仏を持っているのにも関わらず、セックスにおいてはまだ経験が浅い。見た目とは違い過ぎるが、それもまた可愛らしいと思える。なので桐生は直球に「お前は可愛いな」と言う。勿論、春日は否定をするも、もう一度言ってやると春日は負けたようだ。恥ずかしげに「はい……」と返していた。
「俺とセックスをするんじゃなかったのか? まずは足を開かないといけないが、できるか?」
優しく問いかけると、春日が控えめに足を動かした。両膝をゆっくりと開く。その間に桐生は春日の下半身を握れば、小さな悲鳴が聞こえてくる。少しでも触れた時点で、感じてくれているのだろうか。
なので桐生は握る手に力を込めれば、春日の体が弱く跳ねる。微かな嬌声を吐いているが、昨夜の感覚を取り戻したかのようだった。見れば春日の顔はいつの間にか、蕩けているようだった。顔を赤くし、目が大きくただれているからだ。
「ん……桐生さん、いつでも、きて……」
春日としては目一杯誘ったのだろう。先程の言葉で窺うことができる。
「いいのか? お前を、目一杯狂わせることだってできるんだぜ?」
自信満々でそう言えば、春日はゆっくりと頷いた。また二人で直に繋がって狂いたい、桐生もそう望んでいた。
春日の熱い吐息を顔で受けながら、桐生は筋肉に包まれた太ももを掴む。やはり触り心地は艶やかとは言えないし、柔らかくもない。だが桐生はそれが良いのだ。それは春日のことが好きである、ただそれだけの理由だ。
「あ、ぁ……桐生さん、好き……」
そこでようやく春日が想いを直接吐く。声音はとても必死であり、春日の感情がよく分かる。
桐生の頭の中が大きく揺れるが、これは幻聴ではない。現実なのだ。春日の太ももを掴んでいた手がぴたりと止まる。
待ちわびていた言葉に、桐生は何度も脳内で反芻させた。だがこれからも春日から想いを聞くことができるのだろう。なのでここで手を止める訳にはいかないと、手を膝裏へと移動させてから持ち上げた。そして体勢を変え、桐生は膝立ちになる。改めて春日の卑猥な体を見るが、それだけでも達してしまいそうであった。それくらいに、桐生としては刺激が強すぎるのだ。
「お前のここ、いやらしいな」
そして春日の下半身ではなく、尻へと視線と指を巡らせる。昨夜は散々に可愛がっていた箇所は若干ピンク色になっており、くぱりとよく拡がっていた。
指先で突いてみれば、春日が控えめな嬌声を上げる。そして体をよじらせるが、動きを止めるように次は指をずぶりと挿入した。当然、春日の喉からは悲鳴が上がる。
中はとても熱く狭い。やはり女の膣よりも締まりがよく、指を食われるかと錯覚してしまう。
「ひゃ、ぁ、あ……桐生さん、そこは、やら……!」
「嫌だと? そういう訳にはいかねぇな」
鼻で笑うと、春日の本音ではない言葉にそう返す。
そして指を曲げて動かすが、熱さに包まれている為に指が溶けてしまうかと思えた。だがそれで指が溶けてしまうならば、桐生としては本望である。愛する者の体に、自身の体の一部を捧げたことになるのだから。
「ゃ、やぁ! きりゅうさ、動かさないで!」
春日がイヤイヤと首を横に振るが、桐生は自身の内にある欲望を抑えることができない。それに体を受け止める意思を、春日は示していた筈だ。なので桐生は口角を大きく上げながら、指を曲げては肉壺の様々な場所を押していった。
どこを指で押しても、春日は好い反応しか出さない。桐生としては悦楽の一言である。
しかし様々な場所を指で突いているが、好い反応をしていた箇所がなかなか見つからないのだ。どこにあるのかと探るように動かす一方で、春日の喘ぎ声が増えていく。
それを聞いて桐生の鼻息が荒くなっていくと、しこりのようなものを触れた気がする。確かこれだった筈なのだと、そこを強く押す。するとどうだろうか、春日の体が魚のように跳ねた。
「やぁあ! そこ押しちゃらめぇ!」
春日は唾液をだらだらと垂らしていた。なのでやはりここなのだろうと、桐生は春日の反応も構わずにしこりを何度も押していく。春日が快楽に善がっている姿を、じっくりと観察する。春日がその視線に気付くと「見ないでぇ!」と言うが、桐生はそれを無視した。
春日の喉が枯れるかと思うくらいにしこりをいじめていくと、いつの間にか桐生は射精しそうになっていた。春日に散々な恥辱を与えた結果、かなりの興奮をしてしまったのだ。
口腔内を歯で強く挟めば、微かに鉄の味がする。それを味わいながら、指を引き抜いた。肉壺の入り口は、激しく収縮を繰り返している。
自身の鼻や口から出る空気はとても熱い。それを感じながら、桐生は春日の腰を掴んだ。射精を我慢したせいで不快に思っているであろう逸物を、肉壺にあてがう。
「……ぁ、きりゅうさん、はぁ、あ、はやく、きて……はやく、きりゅうさんの、ちんこでイきたい……!」
「あぁ、俺ので、たっぷりイかせてやる」
分かるくらいに目が血走るのが感じた。互いに雄の吐息を吐きながら、目を合わせる。春日はこちらを真っ直ぐに見ており、桐生も同様である。久しぶりに心も体も繋がることができる、何と素晴らしいことなのだろうか。桐生は喜びに浸りながら、腰を動かした。
逸物の先端は、肉壺にすぐにめり込んでいく。既に柔らかいのでとてもスムーズに入る。くびれなど、容易く飲み込んでしまったのだ。その際に春日を見れば、先端が入ったことにより体を大きく震わせていた。これは歓喜の震えであることは間違いない。
「ぁ、あ……きりゅうさんの、おっきい……」
春日が笑顔でそう言った。桐生は礼を述べる代わりにと、更に逸物を挿入していく。入り口は緩まっているが、中はそうもいかなかった。やはりたっぷりと締め付けてくれるのだ。
桐生は一瞬だけ声を上げてしまうが、すぐにそれどころではなくなる。押し進めていけば、待っているのは凄まじい快楽だからだ。
「狭いな……! おい、春日、もっと奥にいくぞ……!」
そう言った後に、逸物を根元までねじ込んだ。やはり春日の肉壺は、何とも代えがたい気持ち良さがある。よくも他の男に狙われなかったのだと、つい溜め息をついてしまう。春日の性格からして、同性であっても惚れられる可能性があるからだ。
すると春日が甲高い悲鳴を上げる。根元まで全て入り、目の焦点が一瞬だけ合わなくなっていた。
「ひゃあ! ぁ……きりゅうさん、それ、いい……」
「そうか……だが、俺はもう我慢できねぇから動くぞ、おら!」
言う通りに、桐生は我慢の限界がきていた。腹の中で逸物をきつく包まれては、射精をしない訳がない。だが桐生はどうしてもと耐えているのだ。
腰を掴む力を強めた後に、桐生は腰を揺さぶり始めた。最初は小さな揺れだったものの、気持ちがいいので次第に大きくなる。同時に春日の嬌声も大きくなるが、それが堪らなく聞き心地がいい。それは春日の顎が、緩やかに仰け反っていてもなお。
「ッ……春日、気持ちいいか?」
「はぁ、はっ、きりゅう、さ、ぁ、あん……きもちいい! おれ、おれ……もうイきそうです!」
春日がシーツに唾液を垂らしながらそう言うと、桐生は腹の奥に先端が到達するように腰を振った。春日の首に提げているネックレスがちゃりちゃりと音と立てながらシーツに落ちていく。
春日がこうして快楽に溺れている姿を見ながら、桐生は逸物を弱く引かせていく。すると春日が手を伸ばす。
「やらぁ! まだ、おわらないでぇ!」
春日がそう懇願する。桐生は獣のような息を吐いた後に、腰を思いっきり押しつけた。逸物が腹の中ではなく腹の奥に到達する。春日のへその下が不自然に膨らんだ。
「んっ……!? ここに、きりゅうさんの、ちんこが……」
春日は愛しげに自身の腹を擦ると、皮膚の上からそっと指を押す。その感覚が腹の奥にある桐生の逸物まで伝わってくる。そして嬌声ではなく空気を吐き出すと、そこから穴でも開けるかのように、逸物を叩きつけた。
皮膚と皮膚がぶつかり合うが、乾いた音が室内に鳴り響く。これは、二人が愛し合っている音でもある。桐生はそれを耳に入れながら、腰を振っていく。
「ぁ、あ! ッや、あ! きりゅう、さ! はげしい! ひゃ、ア! もうイく! イく! きりゅうさんの、ちんこでイく!」
「あぁ、俺ので、早くイけよ!」
語気を強めると、春日の腹の奥が更に狭くなった。自身が放つ強い言葉に、興奮でもしているのだろうか。
「やらぁ! おれ、まだ……ッぁ、ぁあ!」
春日が弱い射精をすると、そこで萎えてしまった。昨夜は射精をさせ過ぎたからかもしれない。精液は腰の辺りを伝った。それはシーツに吸い込まれていくと、消えるように染みこんでいく。
だが桐生はそのようなことで性行為を止めるつもりはなく、単純に自身の逸物がまだこうして芯を保っているからだ。一旦、腰の動きを止めてから、春日のその一連の動きを凝視していた。
舌なめずりをした後に、律動を再開させる。次に射精をするのは自身だと思いながら、奥に先端をぶつけていく。
「あぁ、あ! きりゅうさん! おれ、もうむりだからぁ!」
「まだいけるだろ、春日」
春日の言う「無理」には嘘がある気がした。何故ならば、こうして逸物で腹の奥を再び突かれて喜んでいるからだ。なので構わず腰を動かしていった。
次第に春日の腹からぐぽぐぽと音が鳴る中で、桐生は再び射精感がこみ上げる。ここで射精をすれば、春日はどれほど悦に浸ってくれるか。楽しみで仕方がなかった。
「ッぐ……! おい春日! 出すぞ!」
もう我慢などできない。桐生はそう宣言した後に、痕がつくと思うくらいに腰を掴む力を強めた。
春日の返事など待っている余裕がない。なので逸物で肉壺の奥を擦りつけた後に、遂に射精をした。逸物からはあまり勢いのない精液が注がれるが、春日はそれでも嬉しいようだった。恍惚の表情で「あつい……」と熱に浮かされたように呟いている。
何度も息吐いた後に、桐生は汗に塗れていることに気が付いた。汗の雫がぽたりぽたりと、無駄な脂肪などない春日の体の上に落ちていく。
「気持ちよかったか?」
逸物は射精により芯を失っているので、それをゆっくりと引き抜きながらそう訊ねた。しかし春日は声を出す余裕など無いらしく、こくこくと頷くばかり。だがその姿でさえ愛執の心が湧いてくる。
顔から滴る汗を手で雑に拭った後に、春日の上に覆い被さってからキスをした。だがすぐに終わったものの、春日が手を伸ばしてきた。もっとして欲しいということらしい。なので何度も何度もキスを雨を降らせていると、春日がキスの合間に拙い言葉を放つ。
「はぁ……あかねさんのところは、あした……」
それを聞いて桐生は重要なことを忘れていたことに気付く。春日も自身も、茜の元に尋ねるという目的があったのだと。
しかし春日の今の状態からして、外を歩かせる訳にはいかない。なので桐生は、若干だが頭を抱えていたのであった。