ある日、ハワイに居る春日は沖田博士に呼ばれていた。何でも凄い発明品か完成したので、実験台になって欲しいとのことだ。だが実験台になって欲しいとは、あまりにも直球過ぎる。それでも春日は、溜息をつきながら指定された時間の指定された場所へと向かって行った。
場所は異人町のとある二階建ての雑居ビルである。会社などが入るようなビルに、本当に沖田博士が居るのかと思った。春日は怪しく思いながら、建物の横にある古びた階段を登っていく。
とある扉の前に辿り着くと、貼り紙がしてあった。「モジャ公以外は立入禁止」と。春日はそれを見て、他の者が余計に入って来るのではないかと思った。しかし勝手に剥がす訳にはいかないので、沖田博士と話してから剥がそうと考える。
ドアノブに手を掛けると、扉ががちゃりと開いた。鍵が開いているようだ。入ってすぐそこには、幾つかの段ボールと四角形の機械のような物が目に入った。次に沖田博士の存在を確認する。
「おぉ、モジャ公来たか」
「あぁ……それより沖田博士、扉の貼り紙取ってもいいか?」
「勿論じゃ。もう必要無いからの」
沖田博士が頷いたので言った通りに貼り紙を剥がすと、それを折り畳んでから再び入室した。
「それはもう捨ててもよいぞ。それよりモジャ公」
「分かってる分かってる」
沖田博士の言葉を聞いた春日は、折り畳んだ紙を手でぐしゃりと潰した。そして沖田博士が少し離れたゴミ箱を指差すので、そこに向けて投げる。見事な弧を描いて入った。
心の中で小さくガッツポーズしながら、春日は四角形の機械のような物を注視する。色はくすんだ銀色で大きさは春日の腰よりも低い。厚みは成人男性の二人分はあるだろう。所々に繋ぎ目があり、かなり不格好だ。沖田博士自身で、溶接でもしたのだろうか。
「モジャ公、よく聞いてくれ」
自信ありげに、沖田博士が咳払いをする。一方で春日はおそうじ丸のような発明品に違いないとしか思っていなかった。それでも特に構える様子はない。
「これはの……思い浮かべた者が、見える装置なのじゃ!」
「そうだな」
春日のリアクションは薄い。やはり、と言わんばかりの視線を送っていた。沖田博士としては大発明のつもりらしいので、春日は次第に呆れてきた。
「最後まで聞くのじゃ! なんと、遠くに居る者でも、見えるのじゃ! それに触れることができる! どうじゃ、モジャ公、試してみたくなったかの?」
必死に沖田博士が熱くアピールしてくる。すると遂に春日が折れてしまい「分かった分かった」と投げやり気味に言いながら、沖田博士の言う発明品をまじまじと見た。
「これは……どうやって使うんだ?」
「ホッホ、簡単じゃ。ここを開いての……」
春日が興味を持ったことにより、沖田博士は嬉しそうに説明をし始めた。
この機械には小さな蓋があるが、溶接した箇所との見分けがつかない。その上にどれが蓋なのか忘れてしまったらしく、溶接の継ぎ目部分を片っ端から触れる羽目になった。当然、春日はそれを手伝わされる。
幾つもの箇所を確認した結果、機械の真ん中に蓋があった。他の箇所から探していたので、春日はしなくても良い苦労をしたことになる。思わず小さな息を吐くと、蓋を開けていく。
ぱかりと簡単に開き、出てきたのは複数のボタンである。赤いボタンが一つ、白いボタンが三つだ。その中でも白いボタンには何やら記号が記してある。形が丸と三角、それに「止」だ。
「このボタンは……? 沢山あるが」
「それはのぅ、まずは赤いボタンが電源ボタンじゃ」
沖田博士がそう言いながら赤いボタンを押す。すると機械から小さな唸り声が聞こえてきた。電力が通り、内部の様々な部品が動いてから振動しあっているのだろうか。正直、どこまで部品が細かく入っているのかは分からない。だがこの音の小ささから察するに、そこまで緻密に入ってはいないのだろう。
機械の唸り声が消えると、沖田博士が説明を続ける。赤いボタンに向けて指をさすと、流れるように「止」へと移動させた。
「これは文字通り止めるボタンじゃ。電源が切れる」
「あぁ、そうみたいだな」
見たとおりのボタンだった。そして最後にと、丸と三角のボタンを指さす。これらは見ても何のボタンなのか分からず、春日は首を小さく傾げた。
「これはな、まずは丸いボタンは、何かを思い浮かべた後に押すボタンでな、ゆっくりと思い浮かべたものが見える。三角のボタンは思い浮かべてから、中止をしたいときに押すボタンじゃ。モジャ公、分かったかの?」
簡単な説明を終えた沖田博士は満足げであるが、一方で春日は丸いボタンと三角のボタンのことをいまいち理解していない。しかしこれは百聞は一見にしかずということなのだろう。とにかく、機械を作動させてみるしかない。
春日は四つのボタンを見ながら、沖田博士の説明を思い出した。そしてしっかりと、沖田博士の方を見る。この機械を作動させるという意思を、態度で示していく。
「分かった。とりあえずやってみるぜ。じゃあ……」
「思い浮かべるのは、何でか分からんが一人でしか機械が上手く動かなくての……だからモジャ公一人で実験してくれんかの。ワシはしばらくハワイを散歩するわい。モジャ公、後できっちりと結果を教えるのじゃぞ」
「えっ」
思い浮かべようとしたところで、沖田博士は素早く出て行ってしまった。しんと静まり返った室内で、春日は扉をぼんやりと見つめてしまう。
「……とりあえず、ちゃっちゃと終わらせるか」
春日はこの機械のテストなど、長くとも十分程で終わるかと思っていた。なのですぐに終わらせる為に、目を閉じた。今までにあった室内の景色はなく、ひたすら暗闇により埋まった。
自ら作った暗闇を見ながら、春日はどの人物を思い浮かべようとした。そこでふと出てきたのは、桐生である。そういえば桐生は、若い頃はどのように過ごしていたのか。或いは、どのような人物と極道の人生を歩んで来たのか。
それらの疑問を浮かばせながら、暗闇の中に桐生の姿を出す。春日がよく知っている、グレーヘアーで、黒のワイシャツを着ている桐生だ。
思い浮かべることは、これでいいだろう。なので次に目を開けると、目の前には、いつの間にか桐生の姿あった。思い浮かべたままであるので、春日は思わず「桐生さん」と呼ぶ。
「どうした? 春日」
ただ現れるだけかと思っていたが、春日の予想を上回った。まるで本物の桐生のように、返事をしたのだ。それも、コツコツと履いている革靴の音を鳴らし、そして近付いて来ながら。
一歩後ろに下がろうとしたが、やはり本物の桐生だと思えてきた。なので春日は足を踏ん張り、その場に留まる。
「桐生さん、調子はどうですか?」
なるべく自然な会話をして、この沖田博士が発明をした機械の実験を終えようとした。しかし桐生はムッと、不機嫌そうな表情に変わっていく。何故だろうか。春日は首を傾げると、つい桐生にぐっと近付いてから顔色を確認した。
桐生の顔をまじまじと見るが、いつもとは変わらない。前に同じ世界に居たからこそ分かる、かなりの強者の顔をしている。
「ん? 春日、どうした? 俺の顔に何か付いているのか?」
「いえ、そうではなくて……いや、何でもありません」
首を横に振った春日は、機械の三角ボタンを押そうとした。そこで、桐生がその手を止める。
「待て。今の俺には、俺の意思がある。意味は分かるか?」
「全く分からないんですが……あの、桐生さん、どういうことですか?」
言葉の通りで、春日は桐生が言っている意味が全く分からなかった。理解ができなかった。更に首を横に振ると、桐生はふぅと一つ息を吐く。まるで何か、重要なことを話す準備をしているかのように。
「まずは冷静に聞いてくれ。俺の意識が、今はこの体にある。本当の俺は、今は横浜に居る筈なんだ」
「確かに、日本に戻りましたね」
そっと手を握る。体温により、柔らかい温かさがあった。何故だか桐生に触れられて安心をすると、納得していく。
「……分かりました。桐生さんがそう言うなら」
「すまねぇな。だがしかし、俺はここからどうすればいいんだ?」
「あっ、確かに……!」
ハッと気付いた春日は、このままではいけないと機械の方へと向かって行った。そして一度桐生の顔を見た後に、三角のボタンを恐る恐る押す。これで桐生は目の前から消える、そう思っていたが違うようだ。三角のボタンを押してもなお、桐生はここに存在している。
おかしい、きちんと三角のボタンを押した筈なのに。首を傾げた春日はもう一度、と三角のボタンを押した。しかし機械の反応はなく、桐生は変わらない。
「どうした?」
「いえ、その……」
桐生に何と説明したら良いのか分からなかった。これは沖田博士の発明品、と言っても桐生と沖田博士は面識がない。
頭を抱えようとすると、桐生がそっと近付いた。そして機械に手を伸ばす。
「これがおかしいのか? だったら叩いたら直るだろ」
「えっ、ちょ……」
流石にそれはまずいと、春日は桐生を止めようとした。だが桐生が機械を叩く方が早かった。力強く、桐生が機械の側面を平手でばしんと叩く。何やら鈍い音が鳴る。
「ふぅ……これで、いいだろ」
そう言った桐生が機械の様子を見ると、春日はとにかく否定をしようとした。すると、機械から変な音がしばらく鳴る。ピーという電子音のようなものが。
電子音がようやく止むと、直後にバチンと弾けたような音が聞こえた。更にまずいと思った春日は、機械の電源を切ろうとする。この機械の不調と、それに機械を壊しかねない桐生という脅威を排除しようと思ったのだ。目の前の桐生には、申し訳ないと思いながら。
思い立ってからすぐに電源ボタンを素早く押した。そして居なくなったであろう桐生の方を見るが、電源ボタンを切ってもなお居る。春日は驚きのあまりに目を見開いた。
「な、何で……!?」
「ん? 何がだ?」
桐生の姿が消えない、と口にするのはあまりにも失礼だ。なので春日は口をつぐんでから、再度桐生の手をそっと握る、柔らかな暖かさは変わらない。
すると桐生が何故だかぐいと近付いてきた。春日は驚きのあまりに後ずさるが、桐生が手を伸ばす。その手は、春日の腰へと触れている。まるで包み込むように、そっと。
「桐生さん……!?」
「どうやら俺は……お前のような暖かい人の肌が恋しいようだ」
春日は意味が分からなかった。なのでどういう意味なのか聞こうとすると、桐生の指がさわさわと動いていく。何かを弄っているような手付きである。桐生の手は腰から背中へと上っていくと、体を引き寄せられた。まるで、抱擁でもしているかのような体勢になる。春日の心臓が、妙に高鳴っていく。
桐生の体との距離がぐっと縮まると、心音が伝わってしまっているように思えた。春日は顔を伏せ、恥ずかしさに頬を熱くさせる。まるで自身が恋をしている若い女のようだと錯覚してしまう。それとは程遠い存在だというのに。
同時に、仄かに甘いような香りがした。春日の鼻腔をくすぐる。
「どうした?」
低く優しい声がした。顔の皮膚の熱の範囲が更に広がると、春日は言葉が出なくなっていく。
「……ッ、その……」
「何だ、お前も可愛い顔をするじゃねぇか」
すると桐生の指で、顎をくいと持ち上げられた。赤くなってしまった顔が、桐生に向けられてしまう。なので春日は手や首でその顔を隠そうとした。あまりにも、見苦しいと思ったからだ。
しかし体が全く動かない。桐生の視線や指先だけで、拘束をされているような気分になる。
春日はどうしようかと必死に考えていると、驚くべき感触が唇に伝わる。桐生に、軽いキスをされたのだ。頭の中が真っ白になっていく。その中でも桐生の唇の柔らかい感触、それに生暖かい吐息が自身の唇に伝わった。
不快感はどうしてなのか皆無。寧ろ初めてキスをしたように錯覚してしまう。
「き、き、き!?」
「……だめだ、もう、我慢ができねぇ」
動揺している中で、桐生の口からそう聞こえた。幻聴だったらよかったのだが、生憎にも意識は確実にある。証拠として、唇にまだ様々な感覚が残っているからだ。
回らない頭の中で様々な思考を巡らせていると、桐生がもう一度キスをしてくる。だが次はキスの時間が妙に長い。
唇同士が丹念に合わさっていくと、春日は鼻で息をし始める。通常の呼吸をしていいのか、分からなくなったからだ。この状況、目の前に居る人物のせいであるが故に。
すると次第に、呼吸への不快感は繊細な泡のようにするすると消えていく。いつもは見せない表情を、桐生が見せていたからだ。こちらをただ見るだけではない。視線には、灼熱のような温度が含まれていた。
しかし唇が離れる。春日は唇が寂しくなり、桐生の名を呼んだ。
「き、きりゅうさぁん……」
かつて桐生はこのような表情で、女を抱いていたのだろうか。そう考えると、どこに向けて良いのか分からない嫉妬心が芽生えた。この考えがおかしいと、微塵も思えないまま。
自然と甘える声を吐いてしまう。その嫉妬心が、深い願望へと変わってしまったのか。
「春日……」
桐生の声にも熱が乗っていた。名を呼ばれると、心臓のあたりが疼いていく。感情が、大きく動いていく。この感覚は、以前はあまり抱けなかった恋心なのだろう。春日はすんなりと受け入れると、ぎこちなく口を開いた。
「桐生さん……すき……」
感情に従って気持ちを伝える。するとどうだろうか。今まで桐生に対して反応しなかった下半身が、むくむくと膨れ始めた。春日も一人の男だ。異性の裸の写真などを見て性的興奮により勃起したことなど、何度もある。しかし男相手になど、今まで一度も無い。
「そうか、ありがとう。春日」
桐生が腰を押し付けてきた。春日と同様に勃起をしており、膨らみを押し付けられる感覚がとても嬉しく思える。春日は笑みを浮かべ、桐生の下半身の膨らみの大きさを感触だけで受け止めた。
すると次は、春日から唇を寄せていく。身長は同じくらいのものの、春日の方がほんの僅かに高い。気持ちだけ首を下ろすと、桐生もキスをした。
たった数秒で離すつもりであった。しかし離そうとしたところで、桐生の舌が伸びる。
「ん、んんっ!?」
伸びてきた舌は、餌を捕らえるように春日の舌に触れた。桐生の舌は、視線のように熱い。それがすぐにぬるりと舌が絡み合い、春日の舌を翻弄していく。
「んっ、ふ……ぅ……! んんっ、ん……」
次第に背中にあった桐生の手が、下に向かっていく。腰、尻、足の付根へと移動すると、春日のジーンズのベルトに手をかけ始める。カチャカチャと音が鳴った直後に、ベルトが外れた。未だに桐生に舌で遊ばれながら、春日は自らジーンズのチャックを下ろした。床にジーンズががちゃんと落ちる。
そして下着もずらすが、ゴムの部分が太ももに来たところでキスが終わった。二人の間に唾液の糸が張るも、か細いのですぐに切れてしまう。
「きりゅう、さん……」
春日はまだキスが足りないと思えた。なのでだらしなく舌を伸ばすが、桐生にそれを無視される。今、桐生の視線は春日の股間に向いていた。
「それだけで満足しようとするな。そういえば、この部屋に座るところは……くそ、ここがホテルだったら……」
悔しげに呟いてから桐生が辺りを見回すが、ここは仮にも沖田博士の研究室である。まともな椅子は無い。だがそれでも春日を抱き寄せながら探していたが、見つからなかった。
手を出して来ないのでそろそろ我慢ができなくなっていた春日は、桐生の首の後ろに手を回した。焦れていることをアピールする為である。
すると顔を近付けるが、その瞬間に桐生がバランスを春日の方へと崩してしまったようだ。さすがにこれには春日は甘えている場合ではないと思った。背中から床に落ちるのは、少し分が悪い。受け身などができないからだ。なので床に落ちることを覚悟しながら、体が傾いていく。
数秒が経過したが、背中を打ち付けるということは無かった。恐る恐る目を開けると、桐生が片手で春日の体を相変わらず抱き寄せている。そしてもう片方で、沖田博士の発明品である機械に手をつけていた。この状況を把握した春日は、安堵の息を漏らす。
「春日、怪我はねぇか?」
「は、はい……」
桐生の顔を見つめてから、返事をする。咄嗟に怪我は無いと答えたものの、痛みの有無など分かっていない。完全に混乱が解けていないからだ。
「桐生さんこそ……ん……?」
すると桐生の手が触れている先を凝視してから、ようやく気付いた。桐生は今、機械のボタンを押している状態なのだ。それも、丸のボタンを押している。春日はそれが、微かにまずいと思える。
桐生がボタンを押したとなると、考えられるのはまずは「ここがホテルだったら良かった」ということだ。あり得ないと思うのだが、これは沖田博士の発明品である。目の前の桐生の存在といい、僅かにあり得るとも思えてしまう。
「桐生さん、ボタン、押しました……?」
「ん? あぁ、押したな。これがどうした?」
先程思っていたことは何か、そう尋ねようとしたが、変に見られるだけだ。聞かないでおこう、そう考えた瞬間、いや瞬きをするといつの間にか部屋が変わっていた。床には厚い絨毯が敷いてあり、部屋の真ん中に大きなベッドがある。扉が一つあるが、開くかどうかは不明だ。
二人は絨毯の上に倒れており、春日が下敷きになっていた。もしや、と春日は桐生の顔を見る。桐生は大きな動揺をしており、辺りをキョロキョロとしていた。
「おい、思ったことが……いや……」
そこで春日は確信をした。この部屋は、桐生の願望そのものであると。
「きりゅうさ……」
だが桐生の名を呼ぶ、その途中で開かないと思っていた扉が開く。二人が同時にそれに注目すると、まずは桐生が驚きの声を上げた。
「なっ……!」
扉の向こうは暗闇だが、その前には桐生によく似た若い男が立っている。白のジャケットに、黄色のワイシャツ姿。顔をまじまじと見ていると、桐生が耳元でそっと話し掛ける。
「あいつは……昔の俺だ……二十歳くらいか……」
「えっ?」
聞き間違いかと思った。しかし桐生が先程の言葉を繰り返すので、まずは「はい」と返事をする。そして脳内で桐生の言葉を反芻させるが、何も理解ができない。
「……あいつの前では、俺のことを鈴木と呼べ」
「はい?」
鈴木という名前に馴染みがない春日は「鈴木……?」と、疑問を浮かべながら復唱した。春日は桐生が一時期使っていた偽名のことを、全く知らないからだ。偽名のことを出した桐生は眉を寄せて何か考えるような表情をするも、溜め息をつくと諦めてしまった。
「とにかく、俺のことは鈴木と呼べ」
「はい」
桐生、ではなく鈴木がそう命令すると、春日はとりあえず頷いた。そして「鈴木……鈴木……」と自己暗示をするように小声で言っていると、開けた扉を閉めた桐生が口を開く。
「おい、お前らは誰だ」
桐生は二人に向けてそう言い放つ。顔色は警戒心の一色になっており、二人を睨んでいた。
どう説明したら良いのか、春日は自身のことはある程度の説明はできる。しかし偽名である鈴木のことは何も分からない。なので春日はどうすべきか考えていた。
すると春日の今の格好を見た桐生が、それを凝視する。そういえば、二人は性行為をする直前であった。鈴木はまだ服装が乱れていないものの、春日はスラックスや下着が降りている。それも、勃起している姿が丸見えだ。春日は咄嗟に隠そうとしたが鈴木がその手を抑え、妨害されてしまう。
「……楽しみのところ邪魔したな」
桐生は踵を返して扉のドアノブに手を掛けた。警戒色から、気まずそうな様子へと急変したからか。そして扉を開こうとするが、鍵が掛かっているように扉が開かない。桐生は扉をガタガタと揺らしながらも、扉を開こうとした。
「くそ! 開かねぇ!」
扉に向けて怒っていた。だがそれでも扉が開くことはなく、遂には勢いの良いキックやタックルをしていた。扉はびくともしない。
「どうしてだ……」
何度もそうしていくうちに、桐生は諦めた。扉に背を向けると、ぐったりと縋る。しかし、二人の方へは視線を向けないまま。
それを見かねたと言うべきか、鈴木が桐生に話しかけた。
「お前も混ざらねぇか?」
「どうしてだ。俺にはそんな趣味はない」
桐生はすぐに断り、対して鈴木はただ肩をすくめる。なので春日はこの会話に入るべきか迷ってるいると、鈴木が春日の勃起している性器をぐっと握った。突然のことであり春日は気を抜いていたので、喉から小さな悲鳴が吐き出される。
「ひゃ、ぁ!」
どくどくと脈打っている性器から、我慢汁が垂れてきた。それを潤滑油にしながら、性器をゆっくりとしこしこと扱かれる。
「ん、んっ、ア! ぁ……あっ、あぁ」
鈴木の手のひらで優しく擦られていく。摩擦により春日の性器が次第に膨らんでいくと、先端が膨らんだ後に精液がびゅるびゅると飛び出してきた。その瞬間に春日はあまりの気持ち良さに、顔を仰け反らせる。
だが春日の性器はまだ満足していない。未だに勃起をしながら、びくびくと血管を浮かべている。
男にイかされたのは初めてであるが、春日の頭や体が鈴木を求めていた。なので「もっとぉ……」と誘うと、鈴木がニヤリと笑う。
「あぁ春日、もっとしてやるから。だがな……おい、そこのお前も……ふっ、勃ってるじゃねぇか」
ぼんやりとしていく視界の中で、春日は桐生を見る。鈴木の言う通りに、桐生の股間はよく分かるくらいに勃起していた。春日自身がイく姿を見て、興奮してくれたのだろうか。
「なっ……! 違う、これは……」
「認めろよ。こいつ、春日を見てムラムラしたんだろ?」
桐生はこれ以上は反論をしてこなかった。鈴木に完全に言い当てられたからか。証拠としてやはり何も言葉を返さないのと、目が大きく泳いでいた。鈴木は鼻で笑う。
すると負けを認めたかのように、桐生が二人の元に歩み寄ってきた。その際の足取りは控えめである。
「あぁ、俺に似たお前が、モジャモジャ頭を……いや……」
「フッ、若いな。ほら、こいつの服を脱がせるのを手伝ってくれ」
春日の足からジーンズやトランクスをようやく抜けると、次はアロハシャツと白いシャツに手を掛ける。興奮のあまりに、春日は何もない下半身を大きく開いた。勃起しているあられもない姿を、もっと鈴木にアピールしたいからだ。
脱がされている時折、勃起した性器がぶるんぶるんと上下に揺れる。吐き出した精液の飛沫を飛び散らせていると、桐生が床に座ってこちらをじっと見てきた。白いシャツまで脱がされると、穴が空くくらいに見つめてくる。
今、春日を射抜いている視線は二つある。見られているだけでも精液をとろとろと流すと、桐生か手を伸ばしてきた。ようやく春日に手を出してくれたのだ。
「おい、こいつと俺の二人なんだぞ? これ以上は射精をするな」
春日は桐生が性器を扱いてくれると期待していたが、その予想は外れてしまう。桐生のごつごつとした手で春日の性器を手のひらで包むと、ぐっと力強く握ったのだ。春日はまたもや小さな悲鳴を出す。
「ひ、ひゃ! 握らないでぇ……」
眉を大きく下げて懇願するが、桐生は無視をした。するとそっと顔を近付けた。眼と眼が合った、その瞬間に数秒のキスをされる。
「なんだ……お前、可愛いな」
「んぁ……きりゅうさん、ありがとうございます……」
あまりの嬉しさに、春日は舌がしまえなくなる。それを見た桐生と鈴木はほぼ同時に「でけぇ犬みてぇだな……」と呟く。
「ん? おい、年功序列だぞ。まだお前は手を出すな」
鈴木が桐生の手を掴み、春日から離れさせた。手が離れた瞬間に、春日はか細い嬌声を出しながら更に精液を流す。
「どうしてだ。こっちに来いと言ったのはお前だろ」
すると動作も同じであった。拳よりも先に桐生と鈴木の二人は、またもや同時にスラックスのベルトを外し始めたのだ。それを見た二人は舌打ちをしながらも、下着も降ろしてから勃起したペニスを取り出す。どちらも太く、そして長い。これを体に貫かれると思うと、春日は喜びの震えが止まらなかった。
「ちっ、仕方ねぇな。おいモジャモジャ、俺達のをしゃぶれ」
「はぁい……」
目までも垂らした春日は二人のペニスを見てから、恍惚の表情で舌を突き出す。
まずは鈴木のペニスを口に含みながら、桐生のペニスを手で扱いた。口腔内で独特の匂いや味を感じながら、舌で鈴木のペニスを責めていく。
「ん、んぅ……んんっ、ん……」
ペニスは口の中にどんどん入り、奥歯のあたりまできた。目を鈴木の方に向けると、切羽詰まったような顔をしている。気持ちいいということらしい。時折に「いいぞ、その調子だ……」と言っている。
一方で桐生も「上手いな……」と褒めながら春日の頭を撫でていた。
特に裏筋や先端に舌を這わせていくと、鈴木がくぐもったような息を漏らす。それを耳で拾いながら、桐生のペニスから出ていた我慢汁を利用して扱いた。なるべく早く、そしてくちゅくちゅといやらしい音が鳴るように。
「っぐ! はぁ、あ……ぁッ、春日、そろそろ……!」
鈴木のペニスが膨らんでいく。春日はそれを舌で受け止めようとしたが、鈴木がペニスを口から抜いていた。どうしてなのか、と春日が残念に思いながら聞こうとする。その瞬間に二つのペニスから、熱い精液が噴き出す。だが二人は春日の顔を狙わずに、鎖骨や胸に精液を浴びせていく。
「ぁ、ゃあ……せーえきが、あつい……!」
精液が止むと、春日は次は桐生のペニスに顔を近付けた。しかし桐生にそれを制止させられ、代わりに体を持ち上げられる。
「おい、床でヤらずに、ベッドでヤるぞ」
「あぁ……確かに、そうだな」
頷いた鈴木は、桐生と共に春日の体を持ち上げた。ベッドにまで運ばれると、多少の乱暴さを出しながら投げ出す。
「んぅ、ん……はぁ……」
春日は自ら足を開くと、胸に掛かった二人の精液を指でぬるぬると塗りたくる。浅黒い肌に、白色が上塗りされていく。
「ヤり方は分かるのか?」
鈴木がそう質問すると、桐生は頷いた。どうやら桐生曰く、裏の社会でもそのような関係を持つ者たちも居るらしく。なので当然のように鈴木は知っていた。説明が省けたので、春日の片方の膝裏を持ち上げる。
「春日、ここに入れるぞ。だがまずは、解さねぇとな」
尻の穴を指差されると、春日の下半身がきゅんとなった。今からここを二人に、みっちりと犯されるのだから。二人の太く長いペニスで、激しく。
「ぁ、ぁ……うれしい……」
こくこくと頷くと、まずは桐生が春日の胸に手を伸ばした。精液が付着しているが、指先で精液を掬う。そしてそれを尻の穴に持っていくと、入口の皮膚をぬるぬると撫でていく。
「んっ、ん……きもちいい……」
「そうか、気持ちいいか」
桐生が軽く笑うと、手持ち無沙汰の鈴木が春日の後ろに回った。
「俺のことを忘れるな」
若干だが不機嫌そうな声色をしている。春日にもたれさせると、胸に手を伸ばして触れた。精液で未だにぬるついている。春日は肩をびくりと跳ねさせるが、それを無視してから胸の突起を指先でぐいと押す。
「やぁ!? ぁ、や……きりゅ……鈴木、さん……」
「ん? どうした?」
唇を耳元に寄せてから、低く甘い声で囁く。春日の耳が真っ赤になったので、耳たぶを唇でやわやわと挟んだ。たったそれだけで、春日は射精しそうになる。だが桐生が春日の性器を握り、射精を止めた。
「おい、まだイくなって言ってるだろうが」
怒りを含んだ声で、桐生に注意される。春日はただ曖昧な返事しかできず、鈴木に耳たぶを弱く弄られたまま、射精できずに苦しむ。
桐生は春日の尻の穴を解す為に、指先をまだ硬い入口につぷりと挿入した。春日の顔が一気に真っ青になり、そして異物感により気分が悪くなっていく。
「や、まって、きりゅうさん、ぁ、まって……」
「あ? 待てるか。我慢しろ」
そう言って桐生は春日の性器を掴んだまま強引に指を挿れていく。春日の体に冷や汗が浮かび、鳥肌さえも立つ。それを見かねた鈴木は「若いな……」とただ呟いてから、胸の突起を指で摘んだ。春日の体に、甘い痺れが走る。
「んやぁ! そこは……はぁ、あっ、ぁ……」
「気持ちいいだろ?」
再び甘い声で耳元で囁かれ、春日は脳が溶けそうになっていた。いや、いっそのことこの甘い声で溶けたいと思った。
喘ぎながらも、肯定の為に喘ぎ声混じりの返事をする。鈴木がフッと笑うと、桐生がムッとしながら指をくちゅくちゅと動かした。指を第二関節にまで、スムーズに入っていく。どうやら、春日の意識が耳や胸に逸れてしまっていたらしい。
「お……入る、はい……ん? このしこりは……何だ?」
桐生が首を傾げながら、指を色んな角度に動かしていく。そしてとある一点に指先が触れた、その瞬間に春日は高い悲鳴を上げる。
「ゃ……っあ!? ぁ、あ! そこは、らめぇ!」
どうやら、桐生の指先は春日の前立腺に触れていた。とてつもない快楽に、春日は全身を震わせるが、桐生に性器を掴まれたまま。またもや射精をできなかった。更に苦しみが混じる。
「もう、イかせて! おねがい! もう、やだぁ!」
「まだだ」
背後にいる鈴木が胸の突起をコリコリと軽く潰すと、春日はじたばたと暴れる。我慢の限界がきていた。
「イくなら、俺達でイくんだな」
桐生は一気に入口が緩んだからと、挿入する指を増やした。春日は大きな圧迫感により呼吸ができなくなるが、酸素不足により自然と深呼吸をしていた。大方、呼吸が整う。
「ん、んんぅ……はやくぅ……」
すると無意識に淫らに腰を振り、桐生の挿入の助けをしていた。早く射精をしたくてたまらないからだ。
桐生の指が数本入ったところで、指がずるりと引き抜かれた。春日は「あッ……」と声を漏らし、瞳に涙が浮かんでいく。尻の入り口は、自身でも分かるくらいに収縮を繰り返しているのが分かった。同時に手で握って抑圧していた春日の性器を自由にさせる。射精はしてないものの、一気に出た我慢汁でびしょ濡れになった。
「くそ……おい、そこらの女より体がエロいじゃねぇか、モジャモジャ……」
緩くなった入り口を凝視しながら、桐生がそう言う。そのような言葉を聞くが、春日の興奮が大きくなるばかりだ。鎮まる気配などない。
桐生が春日の両方の膝裏を持ち上げると、勃起しているペニスをあてがった。
「おい、イきてぇ時は、言うことがあるよな?」
鈴木が胸を責める手を止めてからそう尋ねると、春日が口をつぐむ。言うべきこと、そうとなるとよく聞く決まり文句を思い出した。
普段ならば口にするのは恥でしかないが、今はそのようなものなどない。理性など焼き切れてしまっているからだ。なので春日は小さく口を開いた。
「おれの……おれの、まんこに、きりゅうさんのちんこが、ほしい! きりゅうさんのちんこで、たくさん、イきたい……!」
「ふっ、言えたじゃねぇか」
軽く褒めると、桐生はペニスを春日の入口にぬちゅりと密着させた。そして腰をぐっと押し出すが、先端がなかなか入らないようだった。春日は下品に腰を振りながら、挿入を助ける。
「ぁ、ッあ、はやく、ほしい、きりゅうさんの、ちんこ、ほしい」
「ッぐ……! 分かっている!」
ぱんぱんに膨らんでいるペニスをぐりぐりと押し付けられ、春日はそれだけでも達してしまいそうだった。更に背後に居る鈴木が、相変わらず胸の突起をこねくり回している。もうじき、胸の突起が腫れてしまいそうだった。
「おい春日、早くしろ。俺も勃っているんだぞ」
切羽詰まったように鈴木が言いながら、胸の突起をつねってきた。急かしてくる。春日は目を見開き、腰をゆらゆらと揺らした。
これは射精の前触れである。春日は「イくぅ……!」と言い放った直後に頭が真っ白になった。
「ゃ、あ……! あぁッ!」
春日がようやく射精をすると、自身の精液が胸にまでかかる。ここまで届くとは思いもせずに、精液が垂れる胸をじっと見てしまう。
「おれ、ここまで……ぅあ、あっ!? ぁ!」
意識が入り口ではなく他の場所へと向かったので、狭く閉じていた入り口が一気に開く。桐生の太く長いペニスが、春日の腹へと沈んでいった。一瞬だけ、呼吸ができなくなり、短い息をただ吐く。
「ぁ、あ! やだ、きりゅう、さん、ッは! ア、あ」
「ぅあ……! モジャモジャ、気持ちいいじゃねぇか……!」
すると自然に膝が閉じるが、鈴木によって膝裏を持ち上げられた。恥部が桐生に丸見えである。
「おい、イかせたら次は俺だぞ」
「仕方ねぇな……」
桐生が舌打ちをしながら、腰を揺らす。その動きはかなり乱暴で、春日が身に着けている金色のネックレスが音を鳴らしていた。
そして肌と肌が勢いよくぶつかるので、舌を噛んでしまうかと思える。必死に口を半開きにしていた。
「ぁ、ァ! きりゅうさん、ッや、あっ、はぁ! ッい、あ、ん! はげしい!」
「ん? 何を言っている。エロい顔して喜んでるじゃねぇか」
動きが更に激しく、そして腹の中の粘膜に打ち付ける。すると春日の心に一種の幸福感が芽生えた。男として生きている以上は、味わえないものなのだろう。出したことのない高い声を上げる。
腹の中では桐生のペニスの大きさや形、それに熱さの何もかもを拾った。
「ん……んっ、ぁ、あ、イく、きりゅうさんの、ちんこでイく、ぅあ、ッア、あ、やら! イく、イく……ァ、っはぁ、あ、あ!」
身をよじるも、鈴木により体を固定されているものだ。なので強制的に絶頂を迎えた。つま先や太ももに力が入りながら、腹の中がきゅうきゅうと締まる感覚を覚える。
同時に桐生がくぐもった吐息を漏らす。ペニスがこれでもとかと思うくらいに膨らむと、熱い液体が叩きつけられる。
「ひゃあ……! あつい……!」
「ぐぁ、あ……! はぁ、はぁ……!」
たっぷりと精液を注ぎ込まれると、ペニスを引き抜かれた。ずるりと、先端が引っ掛かった後に腹の中で空白が生まれる。柔らかい入り口からは精液がごぽごぽと流れ出ている。
「はぁ、はぁ……んんっ、あ……」
春日は何かを喋ろうとしたが、上手く喋ることができなかった。舌が、上手く回ってくれないからだ。
「可愛かったぜ、モジャモジャ」
小さく微笑んだ桐生は、春日と唇を合わせた。ほんの、触れる程度である。
「次は俺だぞ」
幼子のように、鈴木が不貞腐れる。春日の膝裏を解放した。ベッドの上にだらりと落ちると、春日の体の向きが変えられる。四つん這いの体勢になった。すると鈴木がその背中にゆっくりと伸し掛かる。
「ん……あ、んぅ」
「春日、好きだぜ」
耳元で鈴木がそう囁く春日の体がゾクゾクと震えた。先程の興奮や喜びが混じっているのだろう。春日は自然と「はい……」と答えると、唇が移動していく。向かった先は、うなじである。
「はぁ、あ……きりゅ……すずき、さん……」
鈴木はうなじに何度もキスをしていた。それも、大きなリップ音を立てているのである。
「春日……」
若い頃の桐生とは違い、この年齢になると愛撫が丁寧である。激しく責められたのもよかったが、今のこの状況も良いと思えた。春日の快楽が、徐々に大きくなっていく。
このままずっとこうしていたいと、脳内でふわふわと思考を広げていた。すると未だにペニスを勃起させている桐生が春日の方を見る。やはり若いからか、物足りないらしい。見かねた春日が、桐生に話し掛けた。
「んぁ、あ……きりゅうさん、すんません……もうちょっと、まってください……」
「待てねぇよ」
すぐに痺れを切らしてしまったらしい桐生は、春日の頭を掴む。そして口腔内に、勃起したペニスを突っ込まれた。あまりの突然のことに、春日は嗚咽を吐きかける。
「んぅ!? ん、んっ、ッ! んぶ、ぶ……んん、ん!」
挿入しているかのように腰を何度も打ち付けられ、春日の喉まで犯していく。ペニス独特の雄臭い匂いや味など、不快に思わなかった。寧ろこの香りで、興奮が引き立てられるのである。春日は夢中になってしゃぶってしまっていた。これが、先程まで自身の腹の中を犯したものだと。
「ちっ、何をしているんだ」
鈴木が怒り気味に舌打ちをすると、桐生に負ける訳にはいかないと春日の腰を掴んだ。ようやく勃起しているペニスをあてがうと、入り口に食わせるように挿入していった。
「ん! ん、んぅ! ん、ぷはぁ! あ、ぁ、きもちいい、すずき、さん! ちんこがあつい!」
途中で桐生がフェラチオを止めさせると、腹の中が再び締まった。体が悦んでいる証拠である。もう、入り口に挿入されなければ達することができないかと思えた。
挿入もやはり穏やかなのか、腰をゆるゆると振っている。だが桐生の動きとは違い、好い場所を探るように。
「春日、春日……ッ! 好きだ、好き、だ……!」
鈴木の声が次第に切なくなっていた。しかし春日は喘ぐのに必死の為に、ただ腹の中でペニスを受け入れることしかできない。なので腹の中を締め付けながら、体を揺らす。
「ぁ、あっ!そこ、すずきさん、そこ、らめ!ア、ゃあ、イく! またちんこで、イっちゃう! あ! ぁ、ッはぁ、あ!」
「っはぁ、あ……! 春日っ……!」
「……ッ、は、ぁ!? ひゃあぁ!」
腹の中が精液で満たされると、その感覚で春日は絶頂を迎えた。後に精液を噴き出すと、ようやく性器が萎えていく。しかし鈴木のペニスは勃ち上がっていた。腹の中にみっちりと入っている。
「おい、俺も混ぜろ」
「あ?」
明らかに苛ついている様子の桐生は、春日の体を持ち上げた。そして鈴木に再びもたれかかる体勢になると、またもや同じ状態になる。
春日を押し付けるように肩を掴むと、桐生は入り口にペニスをあてた。鈴木が挿入している中で、桐生も挿入するつもりらしい。さすがに無理だと危険を察知した春日は、ぶるぶると首を横に振った。
「まって、もう、むりだから!」
「あ? 大丈夫だ、入る」
次は首を大きく振ってから鈴木に助けを求めるものの、ニヤリと笑いながら「面白そうじゃねぇか」と言っていた。春日の顔が、一気に青ざめる。えげつない拷問を前にしているかのようだ。
「やだ、きりゅうさん! あ……ぁ……!?」
先端を押し付けられると、入り口にめり込んでいく。
「や、やらぁ! こわれるからぁ!」
「そんな訳ねぇだろ」
人の体というものは、不思議であった。既に柔らかくなっている縁が、受け入れるように広がっていったのだ。春日はあり得ないと頭を振るが、桐生のペニスがスムーズに入っていた。
「ぅあ……! 狭いな!」
鈴木は圧迫感に呻き声を漏らす。そして桐生も「狭いな……」と呟くが、腰を引かせるつもりはないらしい。先端がどんどん入っていくと、遂にはずるりとペニスの全体が埋まっていった。春日は衝撃により、喉から空気を漏らす。
「ひっ、は……はぁ……!」
「これは……なかなかいいな」
桐生が小刻みに腰を動かすと、鈴木の息が上がってくる。春日の腹の中の粘膜に包まれているうえに、同じ大きさの凶器と呼べるペニスがもう一本入っているからだ。だがこのまま春日を快楽の沼に沈めるべく、背後から抱きしめた。
「んっ、は……ぁ……」
何度か空気を漏らしていくうちに、ようやく自身が酸欠状態になっていることに気付いた。春日は必死に酸素を求めるが、同時に凄まじい快楽が襲ってきていた。しかし鈴木に体を固定されている為に、逃げることができない。
「や、やぁ!? あ……あッ……ぁあ!」
「もっと動くぞ」
桐生がそう言うと、腰の動きがゆさゆさと大きくなっていく。鈴木は下から突き上げるように、腰を振る。春日の中で限界が来ると、ただ切れてしまっている理性が消えた。唇からはしたなく唾液を垂らしながら、女のように喘ぐ。
「ぁ、あっ、あ、イく! でっかいちんこで、またイっちゃう! おかしくなっちゃう!」
するとぱんぱんと何度もペニスに突かれていくうちに、腹の中で異変が起きた。腹の奥が、疼いているように思えたからだ。しかし何なのか分からないでいると、桐生がゆるゆるとペニスを引かせる。春日は止めないで欲しいと求める、その瞬間に思いっ切りペニスを叩きつけられた。
頭が真っ白になり、垂れている唾液が止まらない。それに、桐生のペニスは腹の中ではなく『腹の奥』へと辿り着いていた。ぐぽり、と異音がへその辺りから聞こえたからだ。
「んぁ、あ! おっ、お!? そこ、らめぇ!」
「何だ? ここは」
鈴木のペニスも、いつの間にか腹の奥に入っていた。あまりの異物感に呼吸がまたもやできなかったが、桐生の容赦無い責めにより呼吸ができるようになる。そして春日の腹が不自然に膨らむと、それを破るように二人がバラバラに腰を振る。
突かれる度に小さな快楽に襲われると、春日は達した。精液を大量に放ってから萎えると、体が凍えているようにガクガクと震える。
「もう、イったからぁ!」
舌足らずに二人に訴えるが、挿入しているペニスを引き抜く気配はない。寧ろここからが本番だと言わんばかりに、春日の腹の奥をぐぽぐぽと責めていく。
「ここは、子宮か?」
桐生が冗談っぽく言うが、それは春日の耳の中に強く残った。そうだ、ここは子宮である。自身でそう刷り込むと、思考が堕ちていく。
「んんっ……おれの、しきゅう……」
呟くと本当に存在しているかのように、不自然に膨らんでいる腹を擦った。すると二人の精液を求めるように、腹の奥を締め付けた。
「おれ、ガキをつくりたい……」
春日の声には恍惚さが乗っている。背後で聞いていた鈴木は「いいぞ」と返すと、律動を強くする。桐生は最早、言葉を出す余裕が無いらしい。無言で腰を振ると、春日の腹の奥を擦り上げた。
「ぁ、ッお、お、お!? イく! でっかいちんこで、イく! おれのしきゅうを、ついてる! ぉ、お! もうイくから、ゆるして、ゆるして! ぁ、っや、あ、なんか、クる、ぁ、お……!」
春日の萎えた性器がぶるんぶるんと上下に揺れる。
もう、萎えたというのにこれ以上は絶頂を迎えることなどできないだろう。そう思っていたが、腹の奥が再び疼くことを感じた。このまま、萎えたまま絶頂を迎えてしまうのだろうか。
「ふ、ふぅ……ふっ、春日、そろそろ俺は限界だ……!」
下から突き上げている鈴木のペニスが膨らんでいく。春日は声を漏らし、そして喜ぶ。自身の子宮に、鈴木の精液を受け止めることができるからだ。
桐生も同じである。鈴木のペニスが膨らんだことにより、春日の腹の中が物理的にきつくなっていた。微かに声を漏らしながら、ペニスを同様に膨らませる。
「俺も、そろそろ出してぇな……!」
「んんっ、はやくぅ……!」
まずは桐生が腰を引かせると、次に鈴木が春日の体を持ち上げる。二本のペニスが、中途半端に挿入されている状態だ。春日はどうしてなのかと体をよじらせていると、桐生が貫くようにペニスを叩きつけた。ごりゅと、腹の奥を殴られる。
「かはッ……!」
春日は言葉にならない快楽により、何も考えられなくなる。そして絶頂を迎えた感覚があったが、性器は萎えたままだ。勃起することなく、達してしまったらしい。
思わず正気を取り戻しかけたが、体がずどりと落ちていくのが分かった。背後の鈴木が、体を持ち上げることを止めたからだ。春日自身の重さによりペニスで深く抉られると、萎えている性器から無色透明の液体が噴き出した。
春日はもう、男の体には戻れなくなる。
「……ッ!? ひゃあァ!?」
甲高い悲鳴を上げた春日は腹の奥に精液を流し込まれてから、がくりと失神したのであった。
※
気が付けば、春日は沖田博士の研究室の床に倒れていた。服は乱れておらず、僅かに寝汗をかいている。
何だかとてつもない夢を見たような気がしながら、発明品である機械を見つめていたのであった。