無題
陽が沈み、夏侯惇が寝室の燭台に火を点けたところである。燭台は胸ほどの高さのものだが、腰が痛いのか手を添えながら。
すると竹簡をたった一つ持った于禁が訪ねて来たのだが、持っている竹簡は夏侯惇に確認を求めなければならないものであった。それを、夏侯惇に差し出す。
「突然に申し訳ありませぬ」という詫びを聞きながら、夏侯惇は竹簡を受け取った。そのときの于禁は、若干だが申し訳ないような顔をしていて。
竹簡を開いた夏侯惇は一通り、墨で書かれた文字の羅列を確認すると閉じる。確認はすぐに済んだ。
「ご苦労だったな」
夏侯惇が労いの言葉を一言、掛けてから竹簡を机に置く。その瞬間に于禁は夏侯惇を寝台へと連れ行く。唐突のことであったので、夏侯惇は抵抗も何もできないでいて。
「なっ……!? 于禁……!?」
寝台の敷き布の上に縫い留めるように、于禁は夏侯惇に覆い被さる。
「我慢が、できない故に……!」
先程からの顔から一転して、しかし夏侯惇の上に乗った途端に、雄々しさそのものの表情へと変貌させていく。とても荒々しい息を吐きながら。
「おい! 昨夜、散々ヤっただ……ゃ、ぁ、んぅ……!」
騒ぐ夏侯惇の口を、于禁は唇で塞ぐ。そして思考を鈍らせるように、舌を無理矢理に絡ませていく。混じり合う唾液を絡めながら、歯列を丁寧になぞっていく。
すると于禁の思惑の通りに、夏侯惇は抵抗の意思を徐々に失いつつあるが。
「んん、ん……はぁ……」
ようやく口を塞ぐものが離れていったが、夏侯惇の表情も思考も、瞬時に溶けてしまっていた。口付けにより脳が甘く痺れてしまったせいらしい。唯一残っている瞳で、ただ于禁の両眼をぼんやりと見るのみ。
すると目が合った瞬間に、于禁は夏侯惇の着物を全て脱がせていく。見えてくる肌と、昨夜つけたばかりの所有の印も露わになってきた。于禁はそれを舌舐めずりしながら見る。
「消えてしまうので、新しいものをつけましょうか」
そう言うと昨夜つけたばかりの痕に、上書きをするように歯を立てて印の色を濃くした。夏侯惇はもはや艷やかに啼くことしかできず、赤い上書きを素直に受け容れていて。
夏侯惇の唇の端からは、どちらのものか分からなくなってしまった唾液を垂らしている。
「今宵は、少し趣向を変えましょうか……確か、あなたは玩具を持っておられる筈では?」
于禁は既に勃起している夏侯惇の竿を見ながら呟く。そして于禁の言う玩具の在り処を聞くも、夏侯惇は答えないという意識を僅かに持っていたらしい。「どこかにある」と曖昧に答えた。
眉間の皺を深く刻んだ于禁は、夏侯惇の竿に手をかける。先走りが垂れているので、それを潤滑油にして扱いた。
「ぁ、あ! ゃ、ア、はん、あっ、ア!」
扱いていくうちに夏侯惇のゆらゆらと腰が揺れ始めたので于禁は竿から手を離すと、夏侯惇は幼子のように駄々をこねる。
「ゃ、イかせて、はやく、イきたいから、いじって!」
腰をぐねらせ、限界になっている竿を于禁に強調するように揺らす。だが于禁はそれを無視してから、もう一度同じ質問をした。
「玩具は、どこにありますか?」
自身の竿のことしか考えられなくなった夏侯惇は観念したらしい。正直に玩具の在り処を答えた。曰く、棚の奥にあると。
なので于禁は寝台から離れ、その通りに棚の奥を探した。玩具、というより男性器を模した張型を見つけ出す。すぐに于禁はそれを手に持つと、寝台へと戻った。
大きさは自身のものよりも小さいので、于禁は微かに笑いなながら。
「これで、満足するでしょう?」
張型を夏侯惇の口に含ませると、丹念にぬめる唾液を纏わせていく。頬張らせ、くちゅくちゅと張型を動かした。
「ん、んぅ、ん……!」
すると涙目になりながら、夏侯惇は何かを言いたいらしい。于禁はそれも無視して、張型の全体に唾液をたっぷりと塗っていく。夏侯惇の唇の端から、唾液がだらだらと流れ出てくる程に。
ようやく張型を引き抜くと、それを夏侯惇に持たせる。夏侯惇の瞳からは、粒の涙が落ち始めていた。
「今のあなたであれば、容易く入りますので」
息を切らせ、粒の涙や唾液を垂らす夏侯惇は首をふるふると振る。
「ぶんそくので、イきた……ゃ、あ!?」
于禁は険しい表情をすると、夏侯惇の両脚をしっかりと開く。しかし夏侯惇は無意識に閉じようとしていたので、于禁がそれを阻止するように。
昨夜の名残があるのか入口はふやけており、縁はほんのり赤い。それにこのような状況に置かれて反応しているのか、収縮を頻繁に繰り返していた。中の桃色の粘膜が、見え隠れする。
「乾かないうちに、早く。私はここできちんと見ておきますので」
目の前にある竿や入口を、于禁が間近で凝視し始める。じっくりと、観察をするように。
夏侯惇は今まで感じたことのない恥ずかしさに、張型を落とそうとした。全身の隅々まで、赤らめていきながら。
だが于禁がそれを睨むとその赤い体がびくりと跳ね、どうにか張型を手に持つ。
「んはぁ……あっ、ぁ……」
自身の竿のこともあり、夏侯惇はようやく張型を入口へと埋めていく。入口はとても緩いので、面白いように張型の姿が見えなくなっていった。その様子を間近で見て、于禁は口角を上げてしまっていたが。
しかしこの張型は、最奥までは届かない長さである。なので夏侯惇は前立腺を張型の先端でぐりぐりと抉っていく。その淫らな様子を、于禁は息を荒くしながら見ている。なので夏侯惇はかなりの興奮を覚えていた。
「ぁ、あぁ、ん……! きもちいい、っア、みられながら、イく、あ、はぁ……んんっ!」
腰をガクガクと震わせると、夏侯惇は絶頂を迎えた。竿からは濃いとは言えない精液が噴き出しながら。なので夏侯惇は張型を持っている手を離すと、于禁はそれを制止させる言葉を掛ける。
「まだ、止めて良いとは言っていませぬが」
「もう、イったからぁ……」
垂れている瞳で、夏侯惇は訴えた。しかし于禁は首を確実に横に振り、まだ続けるように言い放つ。
脳が痺れてしまっている夏侯惇は涙の筋を頬に垂らし、それに従うことにした。反論などこれ以上は思い付かないのか、それとも于禁の言葉を聞いて従順になることにしたのか。どちらなのかは分からないが。
先端が前立腺までしか届かない張型を再び動かし、前立腺を刺激し始めた。先程のように、抉っていきながら。
于禁はそれを相変わらず観察するように、舐めるように見た。張型が埋まっていることにより、入口の赤みがかる縁が捲れている様を。粘膜から、卑猥な音が鳴る様子を。
「ぁ、またイく、あっ……ひ、イく、イく、ゃ、ア! あ! あっ、ひぁッ!」
張型を引かせた後、潰すように前立腺を押す。夏侯惇は二度目の絶頂を迎えると、腰を先程よりも大きく腰を痙攣させた。竿からは、もはや精液とは呼べない程の液体が弱々しく噴出する。
「……それで、終わりですか」
微かな溜息をついた于禁は、力の入らない様子の夏侯惇が持っている張型を引き抜く。
くびれの部分が縁に引っ掛かると、夏侯惇の逞しい背中が面白い程に反れた。口からは控えめな喘ぎ声が流れ、竿からは透明と言っていいような液体を流していて。
「あぁ、や、ん……! おっきくてあついのが、ほしい、イきたい、ぶんそくに、らんぼうに、おかされたい……!」
入口からは粘液が垂れており、膣のようになっている。どうにか動く両脚を、自ら気持ち程に開く。入口はくぱくぱと大きく伸縮しており、今にもその音が聞こえてくると思えた。
夏侯惇はそうして、于禁を言葉でも体でも誘う。
夏侯惇はその入口に指を持っていく。しかし指にさえ力が入らないのか、上手く曲がらない。存分に于禁に見せたいらしいが、できなかった。それでも、夏侯惇の誘いは于禁に充分に効いたらしいが。
「成程」
短く返事をすると、夏侯惇の両膝の裏を持ち上げて完全に動けなくした。
于禁は着物の裾を少しばかり開く。そして夏侯惇が必死に求めていた、目立つくらいに浮いている血管に覆われた怒張を取り出した。それを、夏侯惇の入口へとすぐに押し込んでいく。
「っぁ、あ……くる、ア、あ、あぁ!」
腹を大きく上下させながら、夏侯惇はそれを喜んで受け入れた。下がろうとしない唇の端が、限界まで吊り上がる。
入口は緩く、更に張型が入っていたので怒張は難なく全て埋まった。唯一きつく締まっている、腹の奥にまで。なので夏侯惇の脳も体も、大きく悦ぶ。
「イく、あっ、ぁ! そこ、すき! ァあ、ぉ、ん、あ! あっ、あ、あ!」
于禁がゆっくりと腰を揺らすと、夏侯惇の腹からはぐぽぐぽと音が鳴り始めた。そして女のように善がり狂う。寝台の敷き布に涙や唾液のごく小さな池を作り、あられもない声を出しながら。
だが今から激しく腰を打ちつけ始めるならば、夏侯惇はどう乱れるのかと于禁の心は躍った。
なので腹からの規則的な異音を聞きながら、于禁は夏侯惇に話しかける。夏侯惇のよく締まる粘膜により、息を切らしながら。
「……ッ、あなたの、良いところは、ここでは、ない筈ですが?」
「んん、ぅ! お、あぁ……ん! もっと、おく、もっと、おくで、すきな、ぶんそくので、イきたい!」
多少的外れな返事ではあるが、夏侯惇は于禁に激しくねだる。その最中に、限界かと思っていた中の締まりを更に強めながら。
食い千切られると思った于禁は、夏侯惇を本能的に睨みつける。
「あなたという御方は……!」
于禁はすぐに腰を激しく動かす。腹の奥を突かれる度に夏侯惇は閉まらなくなった口から、大量の唾液と喘ぎ声を出す。そして瞳からは大粒の涙を。
獣のような湿った息を吐きながら于禁は腰を動かす、というより夏侯惇と肌をぶつけ始めた。室内に乾いた音が響く。
「ひぁッ! ぁ、らめ、ぁ、あ! あたまが、おかしくな、ぅ、んぁ! ぁっ、あ、あ、イく、もうらめ、ごわれる、ん、あ! ぁ! あぁ!」
夏侯惇の竿からは、敷き布にある池を侵食してしまうような透明な潮が勢いよく噴き出る。
同時に、于禁は粘度も色も薄まっている精液を夏侯惇の腹の奥へ注ぎ込む。量は少ないが、夏侯惇の腹はよく満たされた。
「っ、あぁ……あ……」
腹が満たされると、夏侯惇の瞳が虚ろになり始めた。そろそろ、意識が限界なのだろうか。
于禁は血管が浮いておらず、大人しくなった怒張であったものを引き抜いた。大きな穴からは精液がごぽごぽと流れ出て、敷き布の池の数や面積が増える。
それを見た後に夏侯惇のへその辺りへと唇を寄せた。音を立てながら、口付けをする。
「元譲……」
荒い息が残る中で、于禁は夏侯惇の字をそっと呼ぶ。夏侯惇はそれに呼応するように、口をぱくぱくと小さく開く。だが声はもう出ないのか、ただ息を吐くのみ。
それでも于禁は、唇の動きで夏侯惇が出そうとしていた声を察したらしい。なので于禁はへその次に、夏侯惇の唇にもそっと口付けをしたのであった。
その直後に、夏侯惇は気を失ったのだが。