火
陽が登り切る直前に、夏侯惇は自分の寝室の寝台の上で目を覚ました。だが何も着ていないので、空気の冷えに体を震わせる。
隣には于禁が仰向けになってすやすやと眠っていて、夏侯惇と同様に服など着ていない。だが寒そうな様子は微塵もなかった。試しに肌に触れてみても、冷たさは全く感じられないでいて。
そういえば昨夜は于禁に強引に抱かれていたということを、夏侯惇は思い出す。しかしその瞬間に、夏侯惇の体に異変が起きていた。
その異変とは于禁に散々に可愛がられた胸や股が、とても疼くというものである。夏侯惇の肌に昨夜于禁がつけていた、香油の甘い香りが体の奥深くまで染み付いていたからか。
「んっ、ぁ……ぶんそく……すき……」
すると消えたと思っていた、夏侯惇の根底に沈んでいた情欲が再び燃え始めると止まらなかった。山を燃やす炎のように、いつの間にか燃え広がっていく。
なのでか夏侯惇の一つの瞳を虚ろにさせながら于禁の太い首に顔を近付けると、そのまま軽く歯を立てる。だが香油の香りが強く感じられ、思わず噛む力を強めてしまったようだ。その瞬間に于禁は驚いて飛び起きた。
「なっ……!?」
于禁は目を見開き何かと思っていると、既に発情している様子の夏侯惇が上に覆い被さる。そして持っている情欲で、まるで広く延焼させるかのように再び同じ箇所を軽く噛んだ。
「ぶんそく、抱いてくれ……」
そして夏侯惇は于禁の萎えて柔らかくなっている怒張に手を伸ばし、それを片手で握った。だが怒張は何の反応も示さず、于禁がただ小さな呻き声を上げるのみで。
「お待ちを、今の私では……」
今の怒張では何もできない、于禁はそう言おうとしている。だが納得のいかない様子の夏侯惇は、その反論を封じる為に握っていた手を離す。そして于禁の上に覆い被さるのを止めたと思うと、夏侯惇はふにゃりとしている怒張に顔を近付けた。
「俺の、命令が、聞けないのか?」
夏侯惇は情欲で熱くなっている目で于禁の萎えている怒張を見るなり、それに向かって息を軽く吹きかけた。仰向けになっている于禁の体がびくりと跳ねる。
「ぐっ、ぅ、お止め下され……!」
「だめだ、まんぞくさせてくれ……ぶんそく……」
綿のように柔らかく笑った夏侯惇は、そのまま于禁の芯を持っていない怒張を口に含む。しかし初めて硬くなっていない怒張を口に含んだらしい。あまりの口寂しさに、眉を下げる。
「ふぁっふぇふれ」
夏侯惇は恐らく『勃ってくれ』と言ったのだろう。于禁はそれを上手く聞き取れなかったらしい。首を僅かに傾げる。
理由は怒張を夏侯惇の口腔内に入れられた挙げ句、口を動かされる。その際に快楽が襲い、言葉を聞き取れる余裕がなかったのか。
「まっ、ぅぐ! ぅ……!」
待てない様子の夏侯惇は急かすように、于禁の柔らかい怒張を口腔内で刺激する。熱く狭い粘膜で全体を包み、裏筋には厚い舌を這わせ。
夏侯惇の口腔内はまるで女のとても善い膣の中のように、于禁はそう感じられた。なのでか于禁の怒張は昨夜のような姿へと、元の凶暴な姿へと急激に戻っていく。
むくむくと大きくなった怒張を口腔内で感じ取ると、夏侯惇はとても悦んだ。その影響なのか、口腔内からは唾液がじゅるじゅると出てくる。
「夏侯惇、殿……!」
于禁の目を見ながら、夏侯惇は大きくなった怒張を丹念にしゃぶり続けた。なので于禁はこのままではふやけてしまうのではないか、そう思っていると夏侯惇はようやく口淫を終わらせる。夏侯惇の唇が離れると、唾液によるぬるりとした糸が生成されていた。
于禁の怒張は夏侯惇のいやらしい唾液に塗れている。それが愛液のようだとぼんやりと思っていると、夏侯惇は于禁の腰のあたりに跨った。
夏侯惇の体の中心は、昨夜同様に萎えていた。そして胸の腫れは引いていない。顔を赤らめ始めた夏侯惇だが、それを于禁に目一杯見せつける。
だが于禁からしたら、夏侯惇のその姿は絶景の一言であった。自身の体の上に乗り、女のように淫らな様を晒しているのだから。なので于禁は背中を寝台に合わせた状態で自然と息を荒げる。
「おれを……こんな、いやらしい体にした、お前のせいだからな……」
誘うようにそう言った夏侯惇は、卑猥としか言いようがない股に于禁の怒張の先端を充てがった。怒張には自身の唾液に塗れているので、まずは縁からぬちゅりと粘液が触れる音が鳴る。
「ぁ! あぁ、ん……!」
しかし股の縁に怒張が触れたその時点で、夏侯惇は善がるように喘いだ。股の縁でさえ、于禁の怒張を酷く求めているようで。
それを見た于禁は、ようやくスイッチが入る。夏侯惇の細くもない逞しい腰を掴むと、そのまま怒張で股の奥までを抉っていく。
「んっ……ぁ……」
すると于禁の長く太い怒張は容易く最奥まで貫き、夏侯惇の腹からぐぽりと音が鳴った。怒張が最奥まですぐに到達したのだ。
「ッや!? ぁあ、や、あ、あっ!」
一気に最奥までスムーズに入ったうえ、腹の中は昨夜の時点で既に于禁の怒張の形や大きさを細かく記憶していた。やはり昨夜、そこを何度も可愛がられたせいなのか。
しかし入口付近は緩いが、最奥は強く強く怒張を締め付けた。まるでそこだけ独立した意思を持っているように。
于禁はその締め付けにより、夏侯惇の腹の中で薄い精を吐く。その衝撃で夏侯惇は絶頂を迎えたようだが、昨夜同様に相変わらず腰を痙攣させていた。
「ぁ! や、はぁ……あ、ァあっ!」
腰を痙攣させて激しく息を切らせながら、夏侯惇は少し休もうと思っていた。しかしそれを于禁は阻止すべく、腰を掴んでいた手を下にずらして肉付きの良い尻へと移動させる。
「あなたにはすぐに責任を取って頂かなければ、困りますが」
「らめ……ぁ! ぬいて、はやく、ぅあ、やあっ……!」
于禁は尻の肉を力強く揉むと、夏侯惇の背中は弱く反る。ビクビクと胴を前後に揺らしているが、それは于禁からしたら『抜くな』という意思表示のように見えた。
「あなたのその体は、私の為にあるのではないのですか?」
すると揉んでいる手を離したと思うと、于禁はそのまま尻の肉の両方を弱く叩いた。夏侯惇は短い悲鳴を上げる。
「ひゃ! らめ、そこ、たたかないでぇ……!」
夏侯惇本人はそう言うが、股は喜んでいる意思を示す。その証拠として、怒張を肉壁で更に強く締め付けていて。
「ぐ、ぅ……ぁ、はあっ……!」
あまりの締め付けに、于禁は重い呻き声を上げながら興奮した。だからなのか、先程よりも強く夏侯惇の尻の片側を二回同じ場所を叩く。
「あぁ! はぁ、ん……ひぁっ!?」
パァンと大きく乾いた音が二回鳴ると、夏侯惇の背中が強く反った。同時に、またもや股の中が悦びを表す為に怒張を締め付ける。
「……足りませぬか?」
尋ねた于禁だが、夏侯惇は涙目になっていき首を必死に横に振る。それに鼻で笑ってしまった于禁は、腰を上下に激しく揺らしながら尻の肉の両方を何度も叩いた。
「ぁ、ひあっ、あぁ! らめ、イく、イく、体がもっと、えっちになっちゃう、あ! そこ、たたいたららめ、ァ、ん、しきゅうも、いじめないで、や! イく、イぐからぁ! こわれる、ぁ、あ! イグ、ん、ゃ、ぁ! あぁッ!」
于禁が腰を揺らす毎に、寝台の軋む音が鳴る。それに合わせて夏侯惇の腹の中で、粘液と粘膜が大きく擦り合わさる音も。そして肌と肌が激しくぶつかり合う音、そして夏侯惇の官能的な嬌声と様々な音も混じり合った。
すると夏侯惇は涙を自然とボロボロ流しながら再び射精を伴わない絶頂を迎える。だからか背中を弓のように強く反らせた。叩かれた尻の肉の一部分や顔を、火のように朱色に染めながら。
于禁が腰の動きを止めると、二人の荒く熱い吐息のみが聞こえてきた。
「しゅき……ぶんそく……」
するとあまりの甘い余韻に、舌を上手く動かせていない夏侯惇が呆けた表情で手を伸ばす。于禁はそれに応じるように上体をようやく起こすと、夏侯惇の手を自身の背中に回して一時的に支えた。于禁の胴には、夏侯惇の流した涙がべっとりとつく。
「まだ、続けられますな?」
「ん、ぅ……もっと、しきゅうをずこずこして……」
夏侯惇が僅かに前後に腰を振ると、くちゅくちゅと水音が聞こえた。
だが于禁は夏侯惇の体勢を変えるべく腰を掴んで上げると、大人しくならない怒張を一旦引き抜く。
夏侯惇の股からは、吐き出していた精液が大量にではないが漏れてくる。その刺激により、夏侯惇はまたもや小さな絶頂を迎えてしまった。腰を小さく痙攣させる。
「ぁあ、きもちいい……ぁ……ん……またイっちゃった……」
于禁は溜息をつくと、夏侯惇に背中を向けさせる。その途中で一部分が赤くなってしまった尻が見えると、その部分にに数本の指をゆっくりと這わせた。
「はっ、あ……ぁ、ん、あっ……」
夏侯惇の魅惑的な尻が、大きく揺れる。于禁はそれを見て更に息を荒らげた。
「何と、いやらしい尻だ……」
そして掴んでいた腰をそのまま降ろす。元の場所へと戻すように、再び夏侯惇の股に怒張を全て挿し込んだ。
腹の中は怒張を歓迎するように締め付けると、一定のリズムで上下に軽く振る。
「あっ、あァ、あ、っ……あ……!」
怒張の先端が最奥を突き、またもやぐぽぐぽと腹の内側が啼いた。同時に快楽に狂った夏侯惇も、法悦に浸りながら啼く。このときの夏侯惇には、怒張でひたすら最奥を打ち付けられることしか頭にないようで。
しかし夏侯惇の体の中心の萎えなど、もはや最初から『そのようなもの』としか思えないでいた。
なのでかそれを見た于禁は下から突き上げるのを中断し、まずは夏侯惇の口に親指と人差し指を入れる。そして上顎をなぞってから舌を指で摘み、少しの力で引っ張ってやると、夏侯惇の口の端から多量の唾液が出てきた。指で掻き混ぜるように充分に絡ませた後に指を取り出してから、夏侯惇の中心の萎えに少しだけ触れる。
夏侯惇の体がビクリと動いた。感度を拾うことはできるらしい。それを理解した于禁は親指と人差し指で輪を作ると、それに萎えたものを通してから上下に動かした。
恐ろしくも、久しぶりの体の中心への刺激に夏侯惇は動揺する。
「ぁあ、あっ、ん、ちんちん、きもちいい! はぁ、ぁ……アぁっ!」
夏侯惇は于禁にもたれてから、顎を仰け反らせると絶頂を迎える。すると夏侯惇の萎えは続いているものの、体の中心から無色透明な液体を吐き出した。
夏侯惇は今、潮を噴いたのだ。
直後に肩を上下に大きく動かし、夏侯惇が呼吸を整えていた。そこで于禁は何も言わずに、下から怒張を激しく突き上げる。
「ゃあァ! ぁ、あ! もう、イけないかららめぇ! や、ぁ、あっ! ぉ、あ!」
唐突のことに再び顎を仰け反らせながら、夏侯惇は怒張に突かれる度に善がり狂った。そして腰を淫らに振る。
「やだぁ! しきゅうこわれちゃう! あかごが、つくれなくなっちゃう!」
「それは、よろしくありませぬな」
于禁はそう言いながらも、怒張を抜く気は無かった。腹の中は未だに締め付けてくれるからだ。なので怒張で腹の中を激しく擦り上げていくうちに、薄くなった精液をぶちまける。低く重い呻き声を于禁が上げた。
「ッう! ぐ……!」
夏侯惇の腹の中に、于禁の薄い精液が充填される。そして甘い息を吐きながら、腹の中の熱い感覚にうっとりしたと思うと、夏侯惇はそのまま静かに眠るように気を失った。頭をガクリと下げる。
「私も、好きですよ元譲……」
于禁は目を伏せながら、夏侯惇に言えなかった言葉を返す。そして夏侯惇のまだ火のように熱いうなじに唇を近付けると、触れるだけのキスをした。今は凶暴さを現していない自身の怒張を、腹からそっと引き抜きながら。